ルーツ・レゲエ/ダブ・バンド、ザ・ヘビーマナーズのダブ・アルバム『Extermination Dub』が満を持しての登場。ジャマイカのレジェンド、サイエンティストをダブ・ミックスに迎えた強力盤。ヘビーな低音と飛び出す高音がクリアなWAVデータの音質での体験もオススメです。記事後半には、いまやレゲエやクラブ系、さらにはロックのフィールドなどさまざまなジャンルに広がり、影響を与えるジャンル/音楽要素/録音テクニックでもある“DUB”とはなんぞやという疑問に答える付録対談を掲載しております。本作を体験しながら、その正体に触れてみては?
THE HEAVYMANNERS MEETS SCIENTIST / Extermination Dub
【配信価格】
WAV、mp3ともに 単曲 250円 / アルバム購入 1,800 円
【Track List】
01. DECLARATION OF WAR DUB (THE HEAVYMANNERS)
02. REGGAE SOLDIERS DUB feat. KING YELLOWMAN (THE HEAVYMANNERS)
03. NIGHT BEFORE THE REVOLUTION DUB (THE HEAVYMANNERS)
04. RASTA SAGE DUB feat. SKULLY (SLY & HEAVY)
05. REBEL DISCO DUB (SLY & HEAVY)
06. EYES OF TRUTH DUB feat. SAMIA FARAH (THE HEAVYMANNERS)
07. ITAL CHARGE DUB (THE HEAVYMANNERS)
08. BROTHERS AND SISTERS DUB feat. LINVAL THOMPSON (THE HEAVYMANNERS)
09. MY BASS IS A BULLET DUB (THE HEAVYMANNERS)
10. LOVE IS THE LAST WINNER DUB (THE HEAVYMANNERS)
ダブ・アルバム。ルーツ・ダブの現在形
「ルーツ・ダブの名盤で最初に聴くべきは?」この答えに、いまは迷うことはない。今後はこの盤をすぐに推すこともできる。伝説の名盤たちと同じ価値を持った作品、それを作り出した現在のアーティストを同じ時代に生きる人間として紹介せずにはいられないだろう。
2000年代初頭において、この国のクラブ・ミュージックやルーツ・レゲエのシーンにおいて強烈な印象を残したドライ&ヘビー。彼らの存在によって“ダブ”という音楽を認識した人々も多いはずだ(僕もそんな人間のひとりだ)。その中心人物でありながら、妥協という言葉を知らぬ男が、バンドとしてはひとつピークを迎えたそのときに脱退した(2001年、フジロックのステージ上でだ)。その男とは、“ルーツ・レゲエ”ベーシスト、秋本“Heavy”武士。その後すぐに、現在はダブステップ・シーンにおいては海外でも注目を集めるGoth-TradとREBEL FAMILIAとして活動しつつ、そのルーツ・レゲエ/ダブへの強い信念を具現化するためにヘビーマナーズを結成した。
本作は、そのヘビーマナーズのひとつの集大成とも言えるダブ・アルバムだ。ダブ・ミキシングは、ダブのオリジネイター、キング・タビーの愛弟子、サイエンティストだ。ダブ・ミックスが行われた音源はスライ・ダンバーやイエローマン、リンバル・トンプソンなど、本場ジャマイカのアーティストたちに挑み、その実力が認められたファースト、バンドの成長をみせたセカンドと、どちらの音源からもセレクトがなされている。重い鈍器が跳ねているようなベースライン、軽快に走り抜けるカミソリのようなスネアとフライング・シンバル、脳天に突き刺さるハイハット――まさに王道、横綱相撲というべくダブ・アルバム。ルーツ・ダブの現在形がくっきりとここには示されている。ちなみにジャケットは、1980年代のサイエンティストの代表作と言えるグリーンスリーヴスからのダブ・アルバムのジャケットを手がけていた、トニー・マクダーモント。
以前、秋本武士にインタヴューしたときに、ヘビーマナーズの存在意義として「“レゲエっていうのはこういうスピリットからはじまっているんだ”というところから若いやつらを集めてやりたかった」と、ある種の”伝承“を目的しているということを語っていた。伝説的アーティストと若手のバンド・メンバーと作り込んだ完璧なまでの作品は、まさにその精神を具現化していると言えるだろう。特に聴きどころとしては、ある意味で秋本の憧れの人物あり、レゲエ界最強のリズム・デュオ(ロックと違い、レゲエにおいてはドラム&ベースのプレイヤーが重要視される)、スライ&ロビーのドラマー、スライ・ダンバーとのセッションが実現し、しかもそれがサイエンティストによってミックスされた「RASTA SAGE DUB」、「REBEL DISCO DUB」あたりだろう。クレジットに関して、これらの曲だけ、はっきりと“Sly & Heavy”と記載されているあたり、秋本のその思い入れの強さがわかるだろう。
Text by : 河村祐介
付録対談 : ダブ入門編
ダブステップの例をあげるまでもなく、ダンス・ミュージックのみならず、ロックのフィールドにも入り込み、なにやら音楽に独自のスパイスを効かせる“DUB(ダブ)”。ジャンル? 録音テクニック? 「あのエコーがサイケに効いてる感じ」とか「ベースが重い感じ」とか、なんとなくはわかっていても、その認識あってる? という感じで、その概要を紹介するダブ入門対談。ゲットー低音音楽愛好家、D.J.G.O.と、最近OTOTOYに出没するライターの河村祐介がダブ入門な対談をお届け。ヘビーマナーズのダブ・アルバムをじっくりと聴きながらひたってください。
THE HEAVYMANNERS MEETS SCIENTIST / Extermination Dub
【配信価格】
WAV、mp3ともに 単曲 250円 / アルバム購入 1,800 円
【Track List】
01. DECLARATION OF WAR DUB (THE HEAVYMANNERS)
02. REGGAE SOLDIERS DUB feat. KING YELLOWMAN (THE HEAVYMANNERS)
03. NIGHT BEFORE THE REVOLUTION DUB (THE HEAVYMANNERS)
04. RASTA SAGE DUB feat. SKULLY (SLY & HEAVY)
05. REBEL DISCO DUB (SLY & HEAVY)
06. EYES OF TRUTH DUB feat. SAMIA FARAH (THE HEAVYMANNERS)
07. ITAL CHARGE DUB (THE HEAVYMANNERS)
08. BROTHERS AND SISTERS DUB feat. LINVAL THOMPSON (THE HEAVYMANNERS)
09. MY BASS IS A BULLET DUB (THE HEAVYMANNERS)
10. LOVE IS THE LAST WINNER DUB (THE HEAVYMANNERS)
ダブって?
河村祐介(以下、河村) : いや〜、すばらしいね。ヘヴィーマナーズのサイエンティスト・ダブ。こう、アレだな。ジャーンと飛んで、ドンと来て、ブーンと鳴る。なにもかもすばらしいルーツ・ダブだよな。もうね、秋本武士在籍時のドライ&ヘビーにうちのめされてダブにのめり込んだ俺としては、むせび泣いている。
D.J.G.O. : ほんま頭蓋骨が凹むくらいの衝撃やな。河村くんの場合、膝にたまった水が抜ける効果が期待できるね。いまやダブって、とにかくどんな音楽にも入り込んでるな。
河村 : 日本だとダブというとレゲエとかクラブはもちろんだけど、あら恋とかいるしね。もともとは、ダビングが語源のひとつでミキシングの手法なんだよね。というか、リミックスとかポスト・ロックっぽい手法の元祖だよね。その成立は1970年代初期のジャマイカはキングストン。時代的にはルーツ・レゲエの成立とほぼ同じ時期で…。
D.J.G.O. : そんな早送りの説明やったらあかんで! 面倒臭がらずにちゃんとルーツ・レゲエも説明してや。
河村 : うっ…。語弊はあるけど、ルーツ・レゲエは大雑把に言ってボブ・マーリーが世界に広げたあのスタイルだね。オフビート(裏拍)のリズム・ギターやキーボード、乾いて重いドラム&ベースっていう。歌詞の内容は、よく言われるようなラヴ&ピースな側面もあるけど、レベル・ミュージック的なものが本当は中心なんだ。黒人解放やアフリカ回帰、ゲットーの窮状や差別や支配者階級、資本主義に対する異議申し立てなんかが歌われてる。その背景にはラスタファリアニズムという宗教/思想があるんだけど。まぁ、このあたりは今日は割愛。
D.J.G.O. : 今回はダブやし。
河村 : で、乱暴な言い方をすると、もともとダブって、そのルーツ・レゲエのインストの別ヴァージョンで使ってた手法なんだよね。各パートを抜き差ししたりミックスしなおして、ベースをでかくしたり、エコーをかけたりしたもの。各パートっていうのはヴォーカルも含んでて、容赦なくカットされたり、エコーかけられて効果音みたいにつかわれてることもあるくらい。で、転じて、いまは拡大解釈されて、エコーやリバーブのエフェクト感のある空間的なミックスとか、ヘヴィー・ベースのサウンドを指して、ダブっていうよね。だから、いまはダブというとレゲエ以外のいろんな音楽のベースのものがある。だからヘビーマナーズのダブみたいな、ルーツ・レゲエのダブ音源をルーツ・ダブと呼ぶことが多いね。
D.J.G.O. : ほんで、ダブの誕生て、いつの話?
河村 : その成立は、諸説あるけど、わかりやすいところで言うと1973年のリー・ペリーとキング・タビーの『Upsetters 14 Dub Blackboard Jungle(Blackboard Jungle Dub)』が最初のダブ・アルバムのひとつと言われている。それまでもシングル単位とか、アルバムも近いものはすでにリリースされていたんだけど、完全な成立というとこのあたり。いまのイメージに近いのは、このあたりが完成系って感じ。ダブの誕生には、ジャマイカのゲットーの音楽シーンにおけるサウンドシステムとレーベルの関係みたいなのが重要だから、話して良い?
D.J.G.O. : なんぼでも〜。リワインドは無しの方向で。
庶民の音楽シーン、サウンドシステム
河村 : ジャマイカはもともと1960年代に入るまで自前のレコード会社は皆無に等しかったんだ。あっても植民地なんで、現地のお金持ちの白人向けとかそういう感じ。で、だけど庶民の間には、音楽シーンはあった。
D.J.G.O. : いいねぇ、レコード・ビジネスはなくてもストリートのシーンはあったんやね。
河村 : そのシーンというのがサウンドシステム、言ってしまえば移動型のクラブ/ディスコというかPAシステム。もともとは酒屋なんかがお酒を売るために音楽をかけてたのが最初で、アメリカから輸入したジャズとかR&Bを流してたんだ。
D.J.G.O. : 水商売の片手間やったんやな。
河村 : でも、音楽に手を抜かないというか、粋な不良は良い音楽を知ってるってアレですよ。
D.J.G.O. : かっこいいね。どこの国でもそうなんや。
河村 : だから、わりともろもろの暴力とは切り離せないものだったらしくて、当時のサウンドシステムの2大巨頭と呼ばれているうちの片方は元警察官で、ギャングも恐れるような暴れん坊だったらしいよ。良い曲があると空とか天井にピストルを撃ってよろこぶと。
D.J.G.O. : それがガンフィンガーやピュンピュンマシンの起源なんやね。続きは?
河村 : まぁ、時代が時代だけにゲットー・ミュージックに限らず、どんな芸能も興行と結びついて、そういう部分があったと思うけど。話はもどって、サウンドシステムはライブハウスというよりも、ジューク・ボックス的な機能が拡大したもんだと思ったほうが良いと思う。ギャラ払わなくていいからね。レコードは1回買えば何回も再生できる。
ジャマイカ・オリジナルの音楽誕生
D.J.G.O. : でも、さっきの話だと、そこでかかるのはアメリカからの輸入盤だけでしょ?
河村 : で、他でかからないジャマイカ人がよろこぶ曲をゲットするには、自分たちで作るのが早いでしょ? それでサウンドシステムがレーベルをはじめるんだよ。で、ジャマイカ人好みにジャズとかR&Bをコピーして、その後、ローカライズしていくと……。
D.J.G.O. : あ、そこでスカが生まれるんや。
河村 : それが1962年のジャマイカ独立とほぼ重なるから、ジャマイカ・オリジナルの音楽を作ろうって機運もあったんだろうね。その頃から、レコードのリリースも本格化していく。で、そのスカの誕生もそうだけど、サウンドシステムでうけるものを作るというのが、ジャマイカの音楽業界の気質のスタンダードになると。
D.J.G.O. : へえ、その後のクラブ・ミュージックと一緒やん。DJが現場でかけてうけがよかったらリリースするって。
河村 : まさにそうだね。そして、ダブが誕生するすこし前、1960年代末になるとサウンドシステムが乱立してくる。で、この頃になるとレーベルも増えてきて、ライヴァルを蹴り落としてでもレコードを売って儲けたいわけだ。レーベルはレーベルでダンスの現場で自分たちの楽曲を話題にしたい、で、サウンドシステム側も独自の曲を手に入れてライバルに差をつけたいと。で、利害が一致した有力なサウンドシステムは、レーベルからリリース前のプロモをもらったりしてたんだ。あるとき間違って作ったヒット曲のインスト・ヴァージョンを、「これは!」と思ってあるシステムがかけて、それが大ヒットしたんだよ。みんなで合唱するみたいな。
D.J.G.O. : 1回のレコーディング経費で2回売れたんやね。ボロい商売やな〜。
河村 : ゲットー・ビジネスだからね。「金の成る木みつけた!」って感じだよね。このジャッキンな感覚、シカゴ・ジュークとの付き合いで散々経験してるでしょ? 豪くん。
D.J.G.O. : みんな悪気がないから。余計に胸がいっぱいになってくる。
河村 : で、リズム・トラックにリード楽器を足したり、いろんなインストを作るんだよ。新録しないでも金になるから。2次使用料なんて、もちろんなし! いまはもうちょっと良くなってると思うけど、著作権なんてオール・フリー状態なのがジャマイカだから。
D.J.G.O. : アーティストなんてレコーディングのときの日銭ばらいでしょ?
河村 : そうそう。ブラック企業どころの話じゃないよな。でも、このつかい回しフリーの慣例がジャマイカの独自な音を生んでいくんだけど… で、あとはディージェイがしゃべり芸(トースティング)を入れたヴァージョンをリリースし出すのもこの頃だね。
1970年代当時のルーツ・レゲエの7インチ・レコード。そのシングルの盤面。左がA面でプリンス・アラ「Stone」、右はそのB面。ダブ・ヴァージョンが収録され、ミックス・バイ・キング・タビーと記されている。言ってみれば世界ではじめてのリミキサー・クレジット。タイトルは「Great Stone」、ダブはわりと原曲をもじったタイトルが多かったり。
ヴァージョンと、ダブ・プレート
D.J.G.O. : ジャマイカはMCのことをディージェイ、いわゆる曲をかけるDJのことをセレクターっていうやん。ラジオのDJみたいやな。
河村 : これはラップの元祖と言われてるけど。サウンドシステムでは、インストにのせてディージェイが話術で会場を盛り上げて、それもレコード化したんだ。ジャマイカは経済状況もあって、あんまりアルバムを売るという文化が無くて。それで基本は7インチのシングル市場だったのね。まずは経費削減、そしてサウンドシステムでの使い勝手もあって、その7インチのB面にはインストが入ってた。それをディージェイが使ってたと。で、そのインストには大抵“Version”って書かれてたと。
D.J.G.O. : お、それは俺も知ってるわ。河内音頭みたいやね。ほんでインストがだんだんと進化していってダブになるんやな。だからダブのことをヴァージョンと呼ぶ場合があると。
河村 : そうそう。ちょっと話を戻すと、1970年代に入る頃には、このヴァージョンもすでにダブの前段階として楽器のバランスが変わって、ベースが大きいものとか、ドラムの抜き差しが行われてるものがあったと。サウンドシステムで気持ちのいい音っていうのがとにかく基準だったから、エフェクトというよりもリズムっていうのが重要だったんだと思う。
D.J.G.O. : ダブはキング・タビーが作ったことになってるよね。さっきもアルバムの名前でてきたけど。
河村 : 1960年代末に話をもどすと、さっき言ったようにサウンドシステム用の特別なインストや新譜のテスト・プレスを欲してたんだけど、いまと違って、現場で鳴らすにはレコード盤が必要だったんだ。CDRなんてないからね(笑)。アセテートっていう粘土みたいな素材で作る簡易レコードを使ってたんだけど、キング・タビーはレーベルに頼まれて、これを作る技師だったんだ。あとはそのためにミックスを変えたりもしてたみたい。腕のいい、レコード・カッティング・エンジニアであり、ミックス・エンジニアであったと。
D.J.G.O. : 出たダブ・プレート!
河村 : そうそう。ダブが誕生する以前から、そのアセート盤はダブ・プレートとかダブスとか、単にダブって呼ばれてて。
D.J.G.O. : いまのレゲエとか、その影響が大きいダブステップは、再生メディアがCDRでも発売前の新譜とかその人しか持ってない特別な音源のことをダブとかダブ・プレートって言うね。あとはスペシャルとか。で、そのアセテートによく入ってたヴァージョンだから、ダブって言われたんでしょ。
河村 : だね。で、タビーは、もともと電気屋だったんだ。で、その電気屋の技術を生かして、サウンドシステムもやっていて。そこでは最新技術のエフェクターとかスピーカーを使って、とにかく当時ではすごいシステムをやってたんだって。で、そのなかで、お客にうけるものを追求しながら、既存の曲の自分独自のスペシャル・ヴァージョンを作っていたと。そこで試したミックスやエフェクトがダブ・ミックスになったと。それが1970年代の初頭。
ダブの波及
こちらは、リー・ペリーものの当時の7インチ、左からA面→B面で。左から2番目には単にヴァージョンと書かれているが、実際はダブ・ヴァージョンが入ってる。右から1番目はジ・アップセッター“Revelation Dub”と。アップセッターはリー・ペリーの別名。
D.J.G.O. : おお、ついに出た。でも、ダブもさっきのスカの話みたいに、これもやっぱりいまのDJが牽引するダンス・ミュージックみたいだね。
河村 : しかも、リミックスの元祖だからね。
D.J.G.O. : リー・ペリーはどうなの? さっきの最初のダブ・アルバムのところで名前がでたけど。
河村 : 彼はやっぱりアーティストとかプロデューサーだと思う。タビーはあくまでもミックス・エンジニア。人がレコーディングした音源のダブ・ミックスをタビーはミックスするけど、ペリーは自分でプロデュースした音源をミックスするのが基本だから。でも、彼は最初期にタビーとダブ・アルバムを作ったり、ダブ直前のインスト・ヴァージョンにしてもベースがばかでかいミックスを作ったりとか、間違いなくオリジネイターのひとりだと思うよ。
D.J.G.O. : タビーは電気屋の職人さんみたい。
河村 : たしかに。ダブの誕生も、ある意味で最新技術を使って、サウンドシステムに最適化したって部分も少なからずあると思う。あと、彼の弟子で、有名なところだとプリンス・ジャミー(後のキング・ジャミー)、そしてサイエンティストなんだ。だからヘビーマナーズのダブ・アルバムはまさに、これらのオリジナルのダブのスタイルを持ちながら、さらに進化させたという感覚のもの。今回は、この対談に合わせてクラシック・ダブ・アルバムも紹介しようと思ったけど、あえてしないで、いまこの時代にこのダブ・アルバムがリリースされたからコレをぜひ聴いてほしいな。クラシックはいつでも聴けるからクラシックなのだし。もちろん、このダブ・アルバムもクラシックになると思うけど。これを入り口にして欲しい。で、ダブはこの後、イギリスを中心にヨーロッパなんかでも70年代後半から人気を集めていくんだよね。
D.J.G.O. : 当時のパンクスはダブ好きやったみたいやし。80年代のスリッツとかポップ・グループとかフライング・リザーズのニューウェイヴ / ポスト・パンクのダブ利用につながっていくんや。
河村 : セックス・ピストルズのあとにジョン・ライドンがはじめたPiLももろにだよね。でも、ダブの過激で破壊的な音もそうだけど、やっぱりルーツ・レゲエのレベル・ミュージックとしての部分もあると思うよ。あと、それと同時期にUKではエイドリアン・シャーウッドのON-Uなんかがなんかも生まれて、イギリス独自のレゲエも生まれていくと。ルーツ・ダブ自体は、80年代後半にはジャマイカ本国では作られなくなるんだけど… まぁ、それはまたの機会で。
D.J.G.O. : ジャンルでもあり、テクニックでもありって、しかもミュージシャンじゃなくて、本来裏方のエンジニアが生み出したって。
河村 : だからこそ、間口が広いんじゃないかな。エンジニアっていうかミキシング作業って、いまやほとんどどんなジャンルでもやる唯一の作業だしね。そこでエフェクトとか抜き差ししたら、どんなジャンルでもある意味でダブよね…。
D.J.G.O. : きりないな。それにしても、もっと、他のダブ・アーティストとか、ON-U、ニューウェイヴ、ポスト・ロックとか、いまのダブステップとかももっと触れたかったなぁ。
河村 : だねぇ。そのあたりは、読者の方の熱いリクエストが… お待ちしていおります!
D.J.G.O. : またねっ! ヤマン!
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PROFILE
元DRY&HEAVY・現REBEL FAMILIAの秋本武士を中心に2001年ごろに結成。翌年Shing02とともにFUJI ROCK FESTIVALホワイトステージに出演。それから5年の準備期間を経て、アルバム『THE HEAVYMANNERS』をリリース。アルバムにはスライ・ダンバー(スライ&ロビー)とのセッションによるユニット『SLY&HEAVY』や、ノエル・スカリー・シムズ、アンセル・コリンズ、イエローマン、GOTH-TRAD、Linval Thompson、Shingo02、KILLER-BONG(THINK TANK)など、国内外の数多くのミュージシャンが参加している。