2013/10/30~11/5の注目の2作品をレビュー!!
今週もたくさんの新譜が入荷しました! 全部は聴いていられない! そんなあなたのために、このコーナーでは、OTOTOY編集部がオススメする今週の推薦盤を2~3枚ピックアップし、ライターによるレビューとともにご紹介します。音源を試聴しながらレビューを読んで、ゆったりとした時間をおたのしみください。あなたとすてきな音楽の出会いがありますよう。
Autechre『L-event』
Autechre / L-event
【配信形式】
mp3、WAV
【価格】
mp3 単曲 200円 / アルバム購入 800円
WAV 単曲 250円 / アルバム購入 1,000円
難解と突き放して放置できるほど、やっぱりオウテカの音楽の脇は甘くはない。シングルといえども、すさまじい密度の刺激的な音の塊が迫ってくる。カラカラに乾いた、楽しき電子音楽の実験。
今春リリースの2時間超えアルバム『Exai』から、それでも入りきらなかった楽曲がEPとしてリリースされた。『Chiastic Slide』~『LP7』あたりのループしないループ感というか、ヒップホップ的なドープネスに回帰した感のある『Exai』。そこからのアウトテイク的な作品という感覚で聴いてみると、『Exai』的なビートの感触の強い作品と、さらにその先をしめしているかのような挑発的な楽曲が連なる。そういった意味で、良くも悪くもヘヴィー・ウェイトな質量を誇る『Exai』よりも、現在のオウテカを知るには、わりとおもしろいサンプルとして機能するんではなかろうか。オウテカ特有の、微細なリジムの構造と音の変化まざりあった魔術を、たった4曲でも存分に楽しむかとができると言えるだろう。トラック1の「tac Lacora」などは、複雑にスライドするインダストリアルなシンセ音を除けば、実はわりとオーソドックスな4/4的なビートが流れていていたり、トラック3の「Osla for n」では、不規則なメタル・パーカッションの連なりが、微細なズレを繰り返すうちにいつのまにかループへと組み上がっていくような圧巻の構成。名作『LP7』のラスト・トラックにして、オウテカ史上最も美しいアンビエント・テクノ「Drane2」の続編とも言えそうな「newbound」は、『Exai』にはない感覚の壮大で抜けのいい景色を作り出している。リスナーの音への集中力を試し、そしてその先に広がる、想像力を超えた音の自由すぎる遊戯を提示し続けている。(text by 河村祐介)
Mount Kimbie『CSFLY Remixes』
Mount Kimbie / CSFLY Remixes
【配信形式】
mp3、WAV
【価格】
mp3 単曲 200円 / アルバム購入 800円
WAV 単曲 250円 / アルバム購入 1,000円
春にリリースされたセカンド・アルバムからのリミックス・シングルが到着。リミキサーのメンツは、現在のアンダーグラウンドなダンス・ミュージック・シーンの最もカッティング・エッジな部分を抽出したアーティストたちと呼べるほどの豪華なものだ。
ジェームス・ブレイクが、初期の、そのライヴにおいて最も影響を受けていたと言われるマウント・キンビー(実際に彼らが初期サポートを行っていた)。ファースト・アルバム『Crooks & Lovers』では、そのチル・アウトな音像とともに、アンビエント・テクノ~ポストロック的な方向性を持ったチルなサウンドで、ダブステップの新たな方向性を決定付けたと言っても過言ではない。そんな彼らが、今年〈WARP〉に移籍し、リリースしたセカンド・アルバム『Cold Spring Fault Less Youth』。本作はそこからのリミックス・シングル。
デトロイト・テクノの新世代筆頭、Kyle Hallがファンキーなハウスを、レフト・フィールドなミニマル・テクノをリリースするLee Gambleはディープなインダストリアル・ダブ・テクノを。そしてUKのダブステップ/ベース・ミュージック・シーンからはTHE XXのJamie XXらとも親交の深いOnemanが、フライング・ロータス周辺のJeremiah Jaeを伴ってメランコリックなダブステップを披露している。そして、極めつけはジャーマン・ディープ・ハウス・シーンから、ジャンルの垣根を超えてさまざまなアーティストたちから注目を集めるDJ KOZEのリミックスだろう(下記YouTubeにてフル試聴)。彼らしい、幽玄なヴォーカルを生かした、チルな雰囲気を持ちながらもじわりじわりと腰に来るリミックスを披露している。(text by 河村祐介)