OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.208
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
UKテクノの巨星、オービタルの新作が出たので……
UKのレイヴ・カルチャー発のアーティスト群、例えばザ・プロディジーやアンダーワールド、ケミカル・ブラザーズなどなど、いまではロック・フェスの常連、場合によってはヘッドライナーとしての出演も、というアーティストたちがいますが、その先鞭をつけたのは、やはりオービタルでしょう。フィル、ポール・ハートノルによる兄弟ユニットで、父親が持っていたというたった4トラックのMTRで作った楽曲「Chime」を1989年の暮れにインディのダンス・レーベルからリリース、その後、レイヴ・アンセムとなり、年が変わった1990年にメジャー傘下のレーベルより、再リリースされ、UKのトップ・チャートも最高位17位を獲得します。続く、1991年のファースト(セルフタイトル、通称『グリーン・アルバム』)、1993年のセカンド(こちらも同タイトルで通称『ブラウン・アルバム』)といった作品でその評価を確かなものにしました。その作品の魅力は代表作「Chime」がそうであるように、無駄なサウンドを足さないある種のテクノのミニマリズムをキープしながらも、壮大なメロディやドラマティックな構成がしっかりとあり、ダンスフロアだけでなくリスニング作品としても聴けるところではないでしょうか。そのあたりは、つい最近リリースされたひさびさの新曲「Are You Alive?」にも遺憾なく発揮されていて、さすがのオービタル節と言わざるをえない楽曲でしょう。彼らがテクノに付与したドラマチックな展開はその後のUK発のダンス・ミュージック、例えばプログレッシヴ・ハウスやトランスなどにも影響を及ぼしたとも言えるでしょう。
また彼らといえば前述のようにテクノで最初期にライヴ・アクトとして成功したグループとして知られていて、UK最大級のフェス、グラストンベリー・フェスティバルの1994年のヘッドライナーとしての出演は、まさに伝説といっていいほどの評価を残しました。昨年リリースされた30周年記念アルバム『30 Something』では、「Chime」をはじめ、彼らの代表曲たちがライヴ・アレンジを元に現在の音質にアップデートされた状態で収録されています。そのキャリアは、2000年代に一度解散をしたものの、2008年に再度復活、現在も現役で活動中。また彼らはその表現力を使って、映画やゲームのサントラにも進出、そのあたりもテクノ系のアーティストのなかでも先駆と言えるのではないでしょうか。