「しっかりむちゃくちゃに」対談 : 谷ぐち順 x ぽえむ ──リミエキと2マッチ・コラボ作ハイレゾ先行配信
ご存知、Limited Express (has gone?)、そして形容しがたさにおいては右に出るものはいない、2MUCH CREWの合体アルバムがリリースされる。この2バンドでスタジオに入り、そして生まれたのがこの衝撃作『CHAMPURU OF DOOM』。ローファイでスカムでユーモラス、そして得体のしれない強力な磁場を持つこの作品、すでに半開き輪ゴムどめジャケット(衝撃的すぎて一般流通できなかったとか…… )が話題になっておりますが、OTOTOYではそんな衝撃的すぎるフィジカル・リリースを前に、約2週間ほど先行配信です! しかもハイレゾです。
ハイレゾ先行配信!
Limited Express (has gone?)×2MUCH CREW/CHAMPURU OF DOOM(24bit/48kHz)
【Track List】
01. OBSCURE DESIRE OF…
02. ぞくぞくふらふら
03. PARLAMI DI MI / LA DOLCE VITA
04. SUPER LOVERS
05. SOUND AND VISION
06. ANARCHIC ADJUSTMENT
07. TV破壊クラブ
08. FIORUCCI
09. CAN I KICK IT ?
10. CHAMPURU OF DOOM
【配信形態 / 価格】
左 : ハイレゾ版
24bit/48kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 1200円(税込) / 150円(税込)
対談 : 谷ぐち順 x ぽえむ
おそろしや、おそろしや…… 2009年、一部の好事家たちを震撼させた衝撃の1stアルバム『Bubble You』から7年、まさかの2マッチ・クルーが音源を出す。しかも、Limited Express (has gone?)とコラボ・アルバムだなんて! すでにSNSでは例の半開き&ゴム・バンド・ジャケットがバズっておりますが、いや、それに劣らず、音も、もうこれは衝撃的すぎる内容ですので、まずは聴いてください。ハードコア、オルタナ、ジャンク、アシッドハウス、ジューク、ラップ、電子音響に会話(!?)、えっとあとなんだっけか? さっきシンナーでドロドロに溶けたウォール・オブ・サウンドみたいなのも聴こえたぞ……幻聴? しかもOTOTOYはハイレゾですよ。結論、大人が本気を出すと怖い! まさにそれ! ということで〈Less Than TV〉主宰、Limited Express (has gone?)のメンバーでもある谷ぐち順、2マッチ・クルーのぽえむの対談をお届けしよう。
インタヴュー : 河村祐介
写真 : 小原泰広
緊張しすぎて、2マッチのメンバーがレコーディング来なかったもん
──交流というか。谷ぐちさんと2マッチの面々は、ずっと10年ぐらい同じイベントに出たりというのはありますよね。
谷ぐち : 10年以上ですよね。
ぽえむ : そう。でも、そこまで密にっていうわけでは…… 遠くもないんだけど…… 近いんだけど…… みたいな。でも谷ぐちさんとか、僕らからしたら、ホント大先輩じゃないですか。
谷ぐち : 先輩じゃないですよ!
ぽえむ : 先輩ですよ! 俺らバンドはじめたの遅いけど、全然バンドやってないときから〈レスザン〉はあったし。それでバンドをはじめてからもいろいろ出ると〈レスザン〉の人と一緒にやることが結構多くて。「また〈レスザン〉の人だ」って(笑)。
──だんだん近づいてきたぞ、って。
ぽえむ : 本当にそうなんですよ。うちのメンバー、本当に〈レスザン〉が好きだから、すごい緊張してましたよ。
谷ぐち : そうですか? 全然知らなかった。
ぽえむ : 緊張しすぎて、メンバーがレコーディング来なかったもん(笑)。
──今回は谷ぐちさんから声かけたんですか?
谷ぐち : そうですね。
──谷ぐちさんが2マッチとのコラボをリミエキでやるっていうのは何か理由があったんですか? 他にも谷ぐちさんのバンドはあるわけで。
谷ぐち : そもそも、今年のはじめあたり、(飯田)仁一郎が「今年の計画」みたいなのを送ってきて。「〇月、これをやる」がずらっと書いてあって。でも、俺、そんなに長いのを送られてきても最初の3行ぐらいしか読めない(笑)。そのなかに、俺、読んでなかったんですけどスプリットの話があったみたいで。そしたら仁一郎が「谷ぐちさん、スプリットで何かアイデアありますか?」って言われて。
──そこから。
谷ぐち : ちょっと前にHave A Nice Day!と一緒にスプリット出してたじゃないですか。あれをやって「リミテッドならいいな」と思ってたんですよね。リミテッドの中でも、やっぱり自分も加入してこれからもっと変わっていきたいっていう気持ちがあったんですよ。だから、ちょっと思い切って今回2マッチに声をかけて。でも本当にセンスの面で、バンドとしてかなり違いがあるかなと思ったんで…… 。自分の中では、結構挑戦だったんですね。刺激を貰いたかったんですよね。
──絶妙な距離感みたいなところで。
谷ぐち : それがあったんですよね。だから、俺もバンドのみんなも、2マッチ側に断られるんじゃないかなって。やっぱ、2マッチってものすごい、かっこたる美学があるじゃないですか。だからそういうのを崩してしまうようなことになってしまっても、こっちとしても申し訳ないし、でも、だからこそ思い切って頼んだんですよね。
ぽえむ : 話を貰って、うちのメンバーに訊いたんですよ。うちのメンバー、だらしないっていうか、メールって大体すぐ返ってこないんですよね。でも今回は結構すぐ返ってきて「やろうよ、やろうよ」って。「おお、じゃあやろう! 」って感じになって、「コレは2マッチ的にもいい感じだな」って。2マッチってほんと普通のライヴとかでも全員揃わなかったりするじゃないですか。連絡も取れない、連絡が取れないっていうか、連絡が遅いんだよね(笑)。それがこんだけ即レスがくるっていうのはすごい。だけど、実際会うとみんな緊張しちゃうんですよ(笑)。
谷ぐち : でも確かに、OKの返事が早かった。うちのメンバーもOKという感じだったんで、ちょっと意外だった……意外っていうよりは「やった!」っていう、「やってくれるんだ!」って。そうしたらもう「しっかりむちゃくちゃにやろう」というところにはなりますよね。しかも、ちょっとびっくりしたのが、最初のスタジオに2マッチのメンバー、全員が来たんですよ。
ぽえむ : 回を進めると、どんどん来なくなって(笑)。
谷ぐち : ライヴにも集まらないのにはじめは全員来てて。
ぽえむ : 1回目、俺はちょっと仕事で遅れて行ったら、「こんな感じでちょっとやってみたんだけど」って「CHAMPURU OF DOOM」を聴かせてくれて、「もう最高!」ってみんななってて。
──スタジオでやっているような曲はなんとなくわかるんですが。4曲目「PARLAMI DI MI / LA DOLCE VITA」のアシッド・ハウスっぽい楽曲はどうやって?
ぽえむ : あれは僕が作ったハウスの曲。うちのメンバーがダンス・ミュージック要素を入れたいって言い出して。なんか作りかけの曲がたくさんあったんで、「あ、コレあった!」って(笑)。一応、ニーノ・ロータのカバーです。
──こう、プリプロという曲を持ち寄るみたいなのは?
谷ぐち : 最初のスタジオで、事前に曲を作るよりは「こんな曲があったらいいね」というのを決めよう、みたいな。曲の質は関係ないっていう言い方は乱暴かもしれないですけど、それよりも「こんな曲」と「こんな曲」みたいな感じで決めて、それでアルバムが構成されてるのがいいんじゃないかってなったんですよね。
──そういうコンセプトがまずあったと。
ぽえむ : 僕らはコンセプチュアルだから(笑)。で、全員でラップしようみたいなのも最初あって。歌詞が書けないっていうのはあったけど(笑)。歌詞は難しいですね。
谷ぐち : ゆかりとぽえむさんが掛け合いするっていうのが、曲で聴いたら結構よかったんすよね。
ぽえむ : なんか、「あれ、かっこいいぞ!」って。
谷ぐち : かっこいいんすよね。
ぽえむ : さらに途中で会話入れようって(笑)。
──あれ(「ぞくぞくふらふら」)すごかったですよね。夢占いの話が突然。たぶん音源聴かないでこれ読んでる人、ポカーンですけど、そうとしかいいようがない(笑)。
谷ぐち : 思いつきで、これはみんな笑うだろっていうアイデアを出し合って形にしたっていう感じですよね。でも、例えばタイトル曲「CHAMPURU OF DOOM」なんかは完全に「いまこんなこと絶対に誰もやらないぞ」みたいに最初にやってた曲だったし。(笑)。
ぽえむ : 「何だろう、コレ」っていう。一番ナゾ&キーな曲みたいな感じしますよね。
谷ぐち : そうですね、タイトル曲ですけど。
──「CHAMPURU OF DOOM」が、できたことによって、あとはおもしろコンセプトを突き詰めるじゃないですけど…… 。
谷ぐち : そうですね。割とそういう部分も。
ぽえむ : 「いろいろできそうじゃない」ってなって。曲を増やそうって。
谷ぐち : 時間がけっこうなかったんですよね。集まれる時間も少ないので。2マッチもそうだし、僕たちも割とそうなんですよね。
ぽえむ : だから、何曲かは即興みたいな感じでやってるし。
「やっぱり、かっこよくなりすぎてるかな~」
谷ぐち : でも今回作って思ったのは、やっぱり2マッチって徹底してるんですよ。スタジオで録ったやつを聴いて、ちょっと「それっぽい」ノリになってるなって思ったら、ぽえむさんからひとこと入るんですよ。次のスタジオ入りのときとかに、「やっぱり、かっこよくなりすぎてるかな~」。曲を作るときに、「かっこよくなりすぎてるかな~」というフレーズが何回も聞けて(笑)。
──ふつうないですね。
谷ぐち : それで、ちょっと初心に帰れたっていうか。自分は割とそういうところは徹底してやってたんだけど、でも正直言うと、最近そうでもなかったんですよ。そこまで意識することはなかったっていうか。そうなんですよね。やっぱりでも、そういうのに触れられて。
ぽえむ : だけど僕らからしてみたら、谷ぐちさんとかU.G MANとかレスザンって、その道の先輩みたいな。異端っていうイメージがずっとあったんですけど、なんか、その異端だった人たちがずれていったわけじゃなくて、いまやどんと真ん中にいるイメージがあるんですよね。それは変わったとかじゃなくて。シーンが変わったっていうか。
谷ぐち : それは感じてるんですよね。ストレンジなものがあまりなくて、もう、「スカムの意味も変わった」みたいな。「だんだん言葉の意味も変わる」みたいな感じのところがあるから、だからコレやりたかったんですよ。2マッチが本当になんて言うんだろうというぐらい、とことんくだらないやつ「なんだこれ!」って怒りが湧くぐらいの。
ぽえむ : でも、たぶん谷ぐちさんが見てる2マッチのライヴって、2マッチ史上でも、結構なひどいときで。あの、なんだっけ。俺とマイキーとファック・マスター・ファックしかいなくて。で、この3人って楽器が弾けないんですよ。楽器が弾けない3人だけが残って、はじまるまで外で飲んでて、飲み過ぎて出番に行けなくて(笑)。出番を変わってもらったの。で、出番を変わってもらって、僕らがたぶん最後になったんですけど、でもベロベロに泥酔して。
──楽器も弾けないし、普通ならステージいるだけで迷惑(笑)。
ぽえむ : そういうときは大体漫談みたいになるんですけど、客にマイク回して。それで最後になぜかファックさんが、そこにあったピアノで「ねこふんじゃった」弾いて終わったという(笑)。
谷ぐち : 伝説っすよ(笑)。
ぽえむ : 俺もね、あんだけ酔っ払ってたのに覚えてる。あれは酷かった(笑)。
谷ぐち : だってピアノ弾きはじめたら、自然に蓋が閉まったんですよ、バーンって(笑)。ありえます?
ぽえむ : 笑いの神が(笑)。
谷ぐち : 降りてますよね(笑)。
──ひどいなぁ、スカムのミューズに愛されたユニット(笑)。
ぽえむ : 大体谷ぐちさんと一緒にやってるときって、俺とマイキーとファックさんっていうのになるんだよね。その時ってメンバーの編成的に一番ヒドいんですよね。
谷ぐち : 見てると大体ヒドいっすもんね。大阪のあれとかね、すげえ酷かったもん(笑)。ヒドくないときってあるんですか?
ぽえむ : ない(笑)。
──「ない」って胸張って言われた(笑)。
いまのスカムってちょっとおもしろスカムみたいなのが多いじゃないですか
谷ぐち : でも、こういうの必要だと思うんですけどね。なんか、それぐらいまで振り切れなきゃだめなのかなって。いま、初心に帰らなきゃなっていうところではあるんですよね。僕も別に丸くなったわけじゃないですけど、自然な流れでこうなってるんですよね。
ぽえむ : 僕らも前のアルバムがもう7年前なんですよ。あのとき、「10年やってこんなもん」って言ってて。17年目に入って…… 。むしろ下手になるし、機材壊れるし、人も来なくなる。歌詞も覚えられなくなってきて(笑)。最近作った新曲もあるんだけど、何回かやってるんだけど歌詞が覚えられないから、もう歌詞の行数がものすごく減ってきたんだよね(笑)。で減ったとこがいまやスキャットになってる。
──「これがスキャットのはじまりである」ってはじめてものがたり的な。
ぽえむ : みんな歌詞とかよく覚えられるなっていうね。ラッパーの人とか。谷ぐちさんも弾き語りやってるし、すごいなって。
谷ぐち : でも、全然覚えられなくなってますね。石田(ECD)さんでも本当に全部予習していかないと頭に入らないって聞いて、すげえ安心して。「同じだ」って思って(笑)。だから俺も事前にめっちゃ予習して、そうじゃなきゃ歌詞忘れちゃいますね。
ぽえむ : 俺の場合は予習しても忘れるんだから(笑)。
──なるほど、だったらやっても意味ないだろって(笑)。
谷ぐち : 石田さんはもっとしろって。一週間ぐらい前からセットリストを反復して、初めてやるライヴでも歌詞を飛ばさないって言ってましたね。でも、もう、脳が縮んで隙間ができたほうがいい感じのモノが鳴り響きますけどね(笑)。でもそう思ってきたんですよ。考えるのがめんどくさくて、放棄してしまうことが増えると、それはそれでやっぱいい効果を生むというか。
ぽえむ : 落語家の高座で寝るみたいな(笑)。
谷ぐち : それなんですよね。やっぱ2マッチとやって思ったんですよね。徹底してるんですよね。やっぱり突き詰めてますよ。あと、ぽえむさんが「これ、こうしたい」っていうのをものすごく申し訳無さそうに「すいません、ややこしくてすみません……」みたいな感じで大体送ってくるんだけど、大体俺も同感だった(笑)。
ぽえむ : そうですか! ホッとした(笑)。あと、なんかコレを作ってて、タイトル案みたいなのをもらって。なんか、結局使われなかったんですけど「90 is 90」みたいタイトル案があって。それを見て「あ、90年代なんだ」って。でもよく考えてみると、90年代っぽいかなっていうのは僕は思ったんですけど。
──アルバム全体として。
ぽえむ : スカムとかそういうニュアンスもあるけど、なんていうのかな。いろいろ、どれも至らないっていうか(笑)。でも、モノはあるっていう。
谷ぐち : でも、ぽえむさんの思う90年代と俺の思う90年代は違うのかもしれないけど、俺もなんかここに90年代のテイストっていうか。自分が思うのは、90年代のジャンクっていうのをちょっと意識したんですよね。でもなんか今のスカムってちょっとおもしろスカムみたいなのが多いじゃないですか。
ぽえむ : お笑いみたいな。
谷ぐち : ああいうのじゃなくて、もうわけわからない、理解不能でかっこいいぞってなるもの。
ぽえむ : 謎っていう。自分らで言うのもあれだけど。
──ギャグ的な要素じゃないっていう。
谷ぐち : そうですよね。そういうのじゃなくて。
ぽえむ : 俺らは一生懸命やってるから。かっこいいと思ってるんだから、笑ってるんじゃねえって(笑)。
谷ぐち : そうなんですよ。やっぱりそこはちょっと思ったんですよね。
ぽえむ : 谷ぐちさんがやってきたことを見てると、失礼な言い方かもしれないですけど、そういう要素っていうか。なんて言うんですかね…… ジャンクの持ってる、ギャグやってるわけじゃないけど面白いみたいなところは、そういうのがすごい好きでしたね。
谷ぐち : でもそのタイトルの話で、タイトル決めなきゃってなったときに、2マッチの1st『Bubble You』のタイトルを見なおしてみたんですよ。そしたら爆笑して。この人たち隙ねえなって。全部異常にかっこいいなって思ったんですよ。アレに倣ってるですよ。
ぽえむ : 本当ですか? うれしい(笑)。あれはね、ボツにしたのがいっぱいあって。前のアルバムの話するのもあれだけど、あのときにナンシーさんが出してきたアルバム・タイトル案で『シ・ゲ・キ』っていうのがあって。超ウケたんだけど、あまりにすごすぎて使わなかった(笑)。
──2009年にそのタイトルはやばいっすね。まだ寝かしどきっていう感じっすね。
ぽえむ : そうなんですよね。
谷ぐち : 結構いろんなものを一緒に決めなきゃいけないから面白かったですよね。タイトルとかも、お互いが結構気を使いながら。
ぽえむ : まあ、そうっすね。バンドだけだけだとけんかになりそうだけど、大人のアレが。
──2バンドとも楽しんで作ったっていう感じですかね。
谷ぐち : リミエキ側はいちいち爆笑っていう感じで(笑)。もうなんかみんな2マッチ好きだから、やっぱり刺激だったと思いますよ。すごく。『シ・ゲ・キ』ですよ、まさに。タイトルの『シ・ゲ・キ』はここに持ってきてもいいかもしれなかったすね(笑)。
ぽえむ : 他のバンドの人がどういうふうにやってるかあんまり知らないんすよ。2マッチは結構飲み会の延長だからさ(笑)。一緒にやって「こうやるんだ~」ってのもあったし、「おもしれえ」って。結構スタジオで録ったときに、途中でパートを変えたりぐちゃぐちゃにしたじゃないですか。あのときに、「あ、おんなじおんなじ」って(笑)。
谷ぐち : そうなんですよね。リミエキも真面目だけど、器用なやつひとりもいないですよ。
ぽえむ : なるほど。
谷ぐち : サックスの小森くんだけが器用になんでもできて、それがまたいい感じでこのアルバムに活きてきたけど。基本あんまり器用じゃないんで。
ぽえむ : 人間的に近い感じですよね。
谷ぐち : だからみんなで最初のスタジオ集まった時に「なんかこれいけるんじゃないかな」って(笑)。
──それで、タイトル曲ができてしまうっていう。そして、衝撃のCD。これってすごいですよねって話なんですけど…… 。
衝撃のジャケット“デザイン”
ぽえむ : 天才の真骨頂。蓋が閉まらない(笑)。今までないですよね。
谷ぐち : (阿部)周平に頼もうっていうアイデアは?
ぽえむ : あれはファックが出したのかな。
谷ぐち : やってもらうことが決まって、早速電話で話してたんですよ。周平は電話がめっちゃ長いんですよ。 1時間とか2時間とか。なんだかんだ話してて、ぼんぼんアイデアが出てくるんですよね。これの説明を一生懸命してるんですよ。俺、最初「それすげえな」って、こっちで想像してたのがあって「ああ、かっこいいな」って思ってて。写メールが送られてきたのがこれだったんですよ(笑)。それで言ってたのは、「アートっぽくならない、乱暴な、パンク・イズ・乱暴」みたいな、そういうなのにこだわってて。乱暴な感じって言ってたんですよ。「そういう意味か!」って思って。うわ、それ気づかなかった俺がバカだったって。蓋開いちゃったわ。これ、割れる可能性もありますね(笑)。
ぽえむ : それも込みで。
谷ぐち : ポスター・ジャケがでかすぎて……。
──これポスターも端っこ、こうぐちゃぐちゃになる。
谷ぐち : ポスター・ジャケ、入らなかったから、輪ゴムでとめる仕様(笑)。しかも「このゴム・バンドだな」って言って。「幅は何センチがいいと」か、これ、雑に作ってあるけどものすごく計算して作ってるんですよ。ふつう、やっぱポスター・ジャケってポスターとしては結構小さいじゃないですか。それじゃ面白くないと思って。ジャケットのポスター広げた時に「デカい! 」ってならなきゃだめだと思って。B2でやろうって話になって。紙を、普通の厚さのやつにすると、全然入らないんですよ。蓋が開きすぎる。で、このぐらいにケースが開いた状態にするにはどうしたらいいかって紙のサンプルで調べて。だからこのポスター・ジャケットってめちゃくちゃ薄いしデカいんですよ。薄くてデカく印刷できるところもあんまりないんですよ。そういう感じで探して、周平に紙のサンプルを渡して、ものすごく計算された幅なんですよ(笑)。まあ、全部違うんですけど(笑)。
ぽえむ : これはね、横からの眺めがかっこいいですよね。外車みたい。
──アメ車っていう感じで。
谷ぐち : 色もぽいっすよね。「だって、レスザンと2マッチでしょ? 別に何やってもいいでしょ」みたいな。でも、これはもう本当に大絶賛で。流石だなって。こんな発想ないもんな。絶対これは浮かばない。
ぽえむ : やらないっすよね。
谷ぐち : 浮かんだとしてもね。流通できなかったからね(笑)。俺はたぶんできるよって言ってて。レジ袋に包んだやつがいけたから絶対いけるよって言ったら、いけなかったんですよね。でも割れたりするからかな? 心ある店舗は置いてもらえるみたいで。
ぽえむ : 中古盤屋で働いてたから、こういうものが入ってくる可能性はあるんですよ。割れてたりするやつが、ゴムでとじてたりするのもまああるかもしれない。ちゃんとはまらなくて閉まらないっていうのとかはあるんだけど、新品ですからね。ヴィンテージ仕様のジーンズみたいな。
──そこまでかっこいいものなんですか?
谷ぐち : 特色で金色だから、折れちゃった感じも出てて。紙も薄いし。これ、ゴミっすよね(笑)。
──言った!
谷ぐち : ゴミでしょ、これ(笑)。これがダンボール箱に、そこらへんに置き忘れても誰かが捨てたゴミだなってなって誰も拾わないっすよ。手にも取らないと思いますよ(笑)。それも大事ですよね。取ってみて「なんだよ」ってなって聴かないなっていうのじゃなくて、誰も取りもしないっていう。拾いもしないっすよ。誰からも拾われないようなものってすごいっすよ。
ぽえむ : 100円コーナーに入ってても、このせいかもってなって手に取らないっていう(笑)。
谷ぐち : でもこれが店に並んだ時、見に行きたいっすよね。
──でも50年後ぐらいに、このゴムバンドがちゃんとこの状態のやつがすごい高くなってるかもしれない(笑)。
谷ぐち : これファースト・プレスのゴムの幅ですからね。セカンド・プレスからゴムの幅は変わりますから。ちょっと細くなります。限定40枚だ。
──ヴィンテージ!
ぽえむ : 100万超えですよ(笑)。
>>OTOTOYニュース「まじかよ、CDケースが閉まらない、え、輪ゴム?──Limited Express (has gone?)×2MUCH CREW、阿部周平デザイン・ジャケット」
PROFILE
Limited Express (has gone?)
JJ(Vo&Guitar)、YUKARI(Vo)、JUN TANIGUCHI(Bass)、YASUNORI MONDEN(Drum)、RYOTA KOMORO(Sax)
2003年、US、ジョン・ゾーンのTZADIKから1st albumをリリースし、世界15カ国以上を飛び回る。その後、高橋健太郎主催のmemory labより2nd album、best albumをリリース。WHY?、NUMBERS、そしてダムドの日本公演のサポートを行うなど、名実共に日本オルタナ・パンク・シーンを率先するバンドになるも、2006年突然の解散宣言。半年後、突然の復活宣言。ニュー・ドラマーには、JOYのTDKを迎え2枚のアルバムを制作。TDK脱退後は、ふくろ/GROUNDCOVER.等でもプレイするもんでんやすのりが、ベーシストにはLessThanTVの谷ぐち順が加入。またサポート・メンバーとしてSAXに小森良太を迎え第3期がスタート。限定7inch、Have a Nice Day!とのスプリット・アルバム、耳栓が同封されたガチャ音源、2MUCH CREWとの合体音源を発売し、満を持して5thアルバムをリリースする。
>>Limited Express (has gone?)
2MUCH CREW
ぽえむ / Yo!マイキー / FUCKMASTER FUCK / SANOXO BABIES / ナンシー・フミ
90年代半ば結成。04年より現在の、ぽえむ、YO!マイキー、FUCKMASTER FUCK、SANOXO BABIES、ナンシー・フミの5人編成となり本格始動。05年、自身のレーベルより「2MUCH CREWの11月革命&12月革命」リリース。片面に演奏、片面にメンバーによるDJ MIXからなるカセットテープ2本組と、変則的な形ながら好評を博す。05、06年、RAW LIFEに連続出演。さらに、コンピレーション・アルバム「GHETTO BEAT PUSHER'S」(g.e.t.o.) に参加し、音楽誌、サブカルチャー誌にたびたび登場するようになる。メンバーのFUCKMASTER FUCKのMIX CD「ANSWER ME!」が一部の好事家にカルトヒット。JET SETより、FUCKMASTER FUCK Tシャツが発売される。演奏スタイル、ジャンルは多岐にわたり、担当パート、使用楽器は曲ごとに変化。基本はバンド形態ながら、メンバーそれぞれのDJ活動もあり、ターンテーブル中心のライヴも。「楽器がうまくなったらパートチェンジ」という発言に見られるように、ガレージや初期エレクトロ、シカゴハウスに通ずる未完成とされるものをそのまま、放出していくRAWな感触。何かが崩壊するギリギリのところで反転させていくスリル。スカム、ローファイといった単語と共振しつつも、そこをユーモアとビートと想像力で乗り越えていく現場パワーは、極めて独自なポップ感に満ちている。2009年、ファーストソロアルバム「BUBBLE YOU」(WORD IS OUT !)リリース。同時にぽえむのミックスCD「KILL THE HIPPIES」もリリース。