OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.19
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
ドン・パ・ドンドン・パ! ドンスタッペ! エレクトロ!
エレクトロ……と言うと、でっかくエレクトロニック・ダンス・ミュージックを指すこともありますが、ここではエレクトロ・ヒップホップ、エレクトロ・ファンクなどと言われる、いわゆるサンプリング / ブレイクビーツ以前に存在したTR-808などのドラムマシンを主体としたヒップホップ、またはそこから同時代に生まれ・もしくは派生した同様のドラムサウンドを搭載したサウンドを。
クラフトワークの、あのスクエアなエレクトロニック・ビートにファンクを感じたアフリカ・バンバータはそのビートをアーサー・ベーカーとともに打ち込み直し、ラップとともに「Planet Rock」を発表、これが大きなヒットとなり、初期のヒップホップはエレクトロ・ビート一色となります。1980年代末にサンプリング・ビートが席巻すると、ヒップホップ内では一端姿を消します。が、マイアミでは凶暴なベースを伴ってマイアミ・ベースとして転成し継承されます。ヒップホップ内で一端姿を消したとはいえ、現在のクランクやトラップ以降の、サンプリングを廃したドラム・サウンド+ベースなサウンドを聴くとエレクトロの遺伝子は間違いなく生き残っておりますよね。
さて、1980年代に話を戻すと「Planet Rock」とほぼ同時期にホアン・アトキンスがサイボトロンというグループで同様のエレクトロ・ビートをフューチャリスティックなコンセプトとともに発表(後にミッシー・エリオットも引用)。これがデトロイト・テクノの誕生を促します。ここからは1990年代にドレクシアという異才が誕生し、彼らの残したロウなエレクトロは現在のダンス・ミュージック・シーンにも脈々と系譜が続いております(イギリスやオランダなど)。
またエレクトロの原産地とも言えるドイツは、ドイツ版のニューウェイヴ=ノイエ・ドイチェ・ヴェレからウェストバムのようなレイヴ世代のテクノまで地続きにエレクトロ・ビートが継承されていきます(ここにはある意味で石野卓球も近い感覚がありますね)。また1990年代には局地的に日本でもエレクトロ・リヴァイヴァルがあり、スチャダラパーやライムスターもそういった趣向のリミックスを発表したり、極めつけはエレクトロ偏愛な『ILL-CENTRIK FUNK Vol. 1』なるコンピも出ましたというお話。