名盤、珍盤、ザ・オブスキュア・リイシューの世界!――謎のフレンチ日本語サイケ・ガレージ、YAMASUKIが再発
謎すぎる空耳チックな日本語、楽しきサイケ・ガレージ……これは1971年にフランスにてリリースされた、フランスのYAMASUKIなるアーティストの作品だ。ヤマスキ? 妙な臭いのプンプンするこの作品がなんとこのたび再発され、今回OTOTOYでも配信が開始される。
いわゆる普通のリイシュー=端的に言えば現在の音楽の正統なルーツたる音源の再発や音楽史に残る名盤ではなく、このYAMASUKIの様に、ジャンルや音楽史の中心から少し外れたところにありながらも、時代を超えて、いや時代を超えたからこそ楽しめるオブスキュアな音源たちは世界各所のヴァイナルの大海原に沈んでいる。そんなオブスキュアな音源たちは、好き者たちが苦労に次ぐ苦労の末に発掘し、権利者を見つけだし再発がなされている。そんなオブスキュアなリイシューの世界を、今回は、YAMASAKIの謎の解明を入り口に、ぜひともご紹介いたしたい、そんなページでございます。
そんなオブスキュアなリイシューの世界、実はOTOTOYでも結構配信されております。今回は、YAMASAKIの謎の解明を入り口に、ぜひともご紹介いたしたい、そんなページでございます。
後半では、YAMASUKI以外にも、OTOTOYで配信中のオブスキュアなリイシューものを紹介いたします。ぜひともご覧ください!
(追記) なんと、一連のYAMASUKIアニメーション・ビデオで有名な、いまや世界的な映像アーティストとしても活躍中のShiShi Yamazakiへのインタヴューを敢行。彼女が、アニメーション的表現のきっかけとなったと証言しているYAMASUKIの魅力、その表現の源泉を語っていただいております。
YAMASUKI / Le Monde Fabuleux Des YAMASUKI ~素晴らしきYAMASUKIの世界~
【配信形態】
alac / flac / wav : まとめ購入 2,916円 / 単曲購入 270円
mp3 : まとめ購入 1,200円 / 単曲購入 199円
【Track List】
01. YAMASUKI
02. AISERE I LOVE YOU
03. KONO SAMOURAI
04. YAMAMOTO KAKAPOTE
05. OKAWA
06. AIEAOA
07. ANATA BAKANA
08. SEYU SAYONARA
09. YAMA YAMA
10. FUDJI YAMA
11. YOKOMO
12. KASHI KOFIMA
13. YAMASUKI (Club Mix)
ShiShi Yamazakiに聞く、YAMASUKIの魅力
YAMASUKIの音楽に合わせて、フリフリと谷根千をプレゼンするかのように踊る、謎の女のアニメーション『YA-NE-SEN a Go Go』。そして、これまたYAMASUKIの音楽に合わせて、かわいらしさとサイケデリアの間を、メタモルフォーゼしながら踊り、泳ぎまわるブルマー・オンリーの半裸の女のアニメーションで、舌を噛みそうなタイトルの『YAMASUKI YAMAZAKI』。YAMASUKIを検索すると、この2つの秀逸な短編アニメにブチ当たるのです。
このアニメーションを制作したのは、気鋭のアーティスト、ShiShi Yamazakiである。また彼女のアニメーションには、水彩画風の手描きロトスコープ・アニメーションが駆使されている。彼女の作品はPRADAや資生堂といった世界的なブランドのプロモーションなどにも起用されるなど、いままさに注目のアーティストだ。
そんな彼女が、なぜにもYAMASUKIを、その題材として2作品も作ったのかが、もちろん気になるわけです。おそらく、そのぐらいYAMASUKIに対する愛が深いのでないか? という仮定に基づき、彼女の言葉はYAMASUKIの魅力の紹介にとてもとてもつながるのではないか……。ということでインタヴューしちゃいました。結果オーライ、やはり彼女のYAMASUKI愛は、自身のアーティスト活動のスタート地点になるほどのものでした。ということで、まずは彼女にYAMASUKIの魅力を語っていただきましょう、インタヴューをどうぞ!
——ヤマザキさんの“YAMASUKI”を使ったビデオはいまのところ2本公開されてますよね? 『YA-NE-SEN a Go Go』と『YAMASUKI YAMAZAKI』の2本。この2本だと制作はどちらが先ですか?
シシ ヤマザキ(以下、ヤマザキ) : 『YA-NE-SEN a Go Go』が先になります。私のアニメーション作品としては2作目にあたるものです。「谷中、根津、千駄木の、いわゆる”谷根千(やねせん)”の地域をテーマにアニメーションを作り始めたのですが、アニメ―ションに対する初期衝動がちょうどあった時期でもあり、「谷根千の町で、楽しそうに食べものを食べながら踊る」というテーマはおもしろいな、と思ったのがきっかけで作成が始まりました。谷根千という場所は、関東大震災でも、東京大空襲の時も焼け残った建物がたくさんあり、古き良さが色濃く残っている地域なので日本っぽい曲が合うと思って探してたらYAMASUKIに辿り着きました。
——YAMASUKIを知ったきっかけは?
ヤマザキ : 知ったきっかけは、まわりの音楽に詳しい人がたまたま教えてくれて。山下達郎さんがラジオで紹介していたのを友だちが教えてくれたんですよ。単純に日本っぽくなく、音楽としてもかっこいい部分もあって良いなと思いました。
——それにしては『YA-NE-SEN a Go Go』の動き、あれヤマザキさんですよね? かなりキレキレですよね(笑)。
ヤマザキ : あの音を聴いた時にすごく踊れる気がしたんです。「絶対動ける気がするぞ」って。フリとかを思いついたわけではないんですけど、完全にグルーヴ感を掴んだ感じ。いろいろ作り方がわからないなりに、あの曲を聴いて作り上げることができました。
——この、いまやヤマザキさんのひとつの作風として確立している、ご自身の実写動画を元に、水彩で描いてアニメにする、いわゆるロトスコープ手法はこの制作で開眼したのですか?
ヤマザキ : そうですね。この作品の前の、プラダのコンペに選ばれたマスクを題材にしたアニメでは、自分の顔は使ってなかったので、『YA-NE-SEN a Go Go』で自分の顔とか体とかふくめて使ってみたら面白いのではないかと思い、やってみたんです。結果的にその後のスタイルにつながっていきましたね。顔の要素とか、いろいろアクセントが効いてて、グラフィック的に見せて使い易いし、見せ場が作りやすいという事にも気づいていきました。
——このアニメを作るときは、わりとアドリブで踊ったりって感じですか?
ヤマザキ : その場のムードみたいなもので踊る“現場感覚”を大事にしたいと思って、いろいろ谷根千のエリアを回って、アドリブで撮りました。結果的にはその場所に行かないとわからないリアルな雰囲気が出せたと思います。
——時系列的にはその後に『YAMASUKI YAMAZAKI』を制作したと。なぜまた同じ音楽を?
ヤマザキ : YAMASUKIの曲を聴いてると、いろんなイメージが湧き出てきたので、またYAMASUKIを使おうと思いました。
——2作も作る程、YAMASUKIの音の要素で1番ひっかかったものってなんですか?
ヤマザキ : やっぱり、音楽的な魅力があるんですよね。本当に感動してしまいました。特に「OKAWA」という曲は、日本人固有の故郷感を強く感じて。言葉の意味とか合うように作ってないのに、そう感じさせるというのは、音の響きの良さっていう部分で作られてるから、本当に良い曲なんだと思っています。
——変なものというものよりも、単純に良いものとしてひっかかった、と。
ヤマザキ : 単純に良い音楽ですよね。どうしても売り出し方とかは奇抜なものになりがちですけど。なんというか、本当に音として良いんですよ。そこに感動しました。
——ここに出てくる日本語の感覚と映像に絶妙な関連性があったりしますか?
ヤマザキ : あ~、あるのかな……。
''——空耳的に聴こえているものが映像の中に入っているとか。''
ヤマザキ : YAMASUKIの音楽全体が日本語の“音としての響きの良さ”というのを本当に自覚させてくれるものだと思います。日常的に日本語を使って、意味が先に頭に入ってくるから気がつかないんですけど、思ったよりも日本語の音ってサラサラしてる響きがあるって気づかされました。
——YAMASUKIの歌詞によって、意味を取り除かれてしまったが故に、音のおもしろさに気づくと。
ヤマザキ : その音としての発音のおもしろさにすごく気づいたんですよね。上品なんだけど、可愛さもある言語。音として、そこに気づかせてもらった事は、自分の作品に影響していると思います。
——そういう意味で、好きな音で制作するというのは「YAMASUKI YAMAZAKI」がある種、ひとつの完成形というか。
ヤマザキ : この作品は特別ですね。よっぽど大事にしたい音じゃないと、その音楽の力を借りて新しいイメージを後から付け足す事はすべきじゃないなと思ってます。映像作品は、心の衝動をそのまま落とし込むのが難しいフォーマットだと思います。YAMASUKIは、それを克服するぐらいの衝動を起こさせてくれる力を持った音楽だったことがこの作品を作る原動力になっています。
YAMASUKIとは? まさかのダフト・パンクの父親が!
タモリよろしくなハナモゲラ語ライクな日本語、というよりも意味の取れない断片的な日本語の歌詞は、むしろ東アジアの国の民謡やポップ・ソングのようですらありますな。その後ろでは、うろ覚えの日本語が暴れ回り、雄叫びをあげている……これで、サウンドがどうでも良ければ、そのまま歴史の闇に葬りさられてるんでしょうけど……これがなかなかかっこいいガレージ・サイケ~ファンク。もうわけがわかりません! そもそもヤマスキってなんだよ!
本作はどんなおもしろ人間によって作られていたかと言うと……1971年に、ジャン・クジェールというベルギー人プロデューサーと、フランス人のダニエル・ヴァンガードという2人のプロデューサーによってスタートしたワンオフのプロジェクト。このダニエル、なんと、いまをときめくダフト・パンクのトーマ・バンガルテル(って日本語表記になってますが、お名前的にはヴァンガードでも)の父親なのであります。
ちなみにダニエルは、1970年代を中心に、わりと手広くプロデュース業を行っていたようで、その頃のフランスにて、どちらかと言えばラテン、ディスコ、ソウルなどのポップなブラック・ミュージックなどを手がけていた様子。対して、ジャンも1960年代からフランス、ベルギー、ドイツなどで手広くポップ・レコードを手がけていたようで、まぁ、このプロジェクト含めて”ギョーカイ“のプロデューサーといったところではないだろうか。
彼らはこのYAMASUKIに先駆けて、ロシアのコサック・ダンスを題材にした『Casatschok』なる作品を発表している。こちらはなんと数ヶ月に渡ってチャート1位を獲得しつづけたというんです。なんでしょうか、ボニーMの「怪僧ラスプーチン」的なアレでしょうね。
当時、ヒットしてしまったYAMASUKI
『Casatschok』のヒットに気をよくしたジャン&ダニエルのふたりが、ロシアの次に目をつけたのが日本。日本に関する文献を読みあさり、辞書を駆使して彼らはついにYAMASUKIを作り出す。が、どう考えてもその文献が間違ってたのか、読みが浅かったのか、日本語をテーマにした絶妙で、奇妙すぎるYamasakiの世界ができてしまったのであります。幾人かの女性コーラス隊と、空手家を呼び、それは録音されたようです。まぁ、ある種のコミック・ソングではないでしょうか。
「音の響きを重視した」という言葉通り、完全に日本語の意味から外れた言葉がそこかしこに散らばる歌、絶妙にアジアン・テイスト(中国っぽくないですか?)を取り入れたガレージ・ファンク・ロックは、またたくまにヒットしまうわけです。その数なんと、フランスで300,000枚(ジャン談)。またスペインなどにもライセンスされていた模様です。また、ダンス・チームを組織し、振り付けを作り、6ヶ月にも渡ってダンス・ショーがくり広げられたとか。いや、デタラメもここまで行くと本物というか、あ、失礼。恐らく、まだまだ情報の少ない1970年代、その語感の面白さも相まって、遠い東洋の国へは、まだまだエキゾチズムが強かったんでしょうね。
そして数十年の時を経て、変な日本語の唄は世界にこだまする
恐らく、当のフランス人も忘れた2005年に突如として再発され、日の目を見ることになるんですよ。これがイギリスのDJ、アンディー・ヴォーテルが中心となるレーベル〈Finder Keepers〉からリリースされるわけです。このレーベル、1999年に設立されて以来、まさにオブスキュア(ジャンルの境界線上にあるようなあいまいな)なジャズやファンク、フォークなどなどをリリースし、いち部のマニアックな音楽ファンからは大きな支持を得ていたレーベルだ。
トーマスのオヤジという話題も含めて、また特に日本ではその存在そのものに大きく注目が浴び、再度注目を浴びることとなりました。水彩画をモチーフにした独自のアニメで、PRADAや資生堂といった世界的なブランドを手がけるクリエイター、ししやまざき氏も、彼女の作品内でBGMとして使っております。近日、本人のインタヴューもコチラで掲載予定です。
そんなこんなで、『YAMASUKI』は世界中に突如として好き者たちのネットワークで広がったわけですが、残念ながら〈Finder Keepers〉版も廃盤に。再び、手に入りにくい状態が続いておりました。
そして2014年7月、ここにリマスタリング再発され、またまたその珍妙な響きを日本に響かせているわけです。
その音楽的なおもしろさ
日本語を母語とするものとしては、どうしてもその珍妙なる日本語を耳でおいかけて行きがちですが、やはりおもしろさは、その演奏、グルーヴにあったりするでしょう。1971年、プレ・ディスコとも言える時期のジャズ・ファンクのグルーヴが炸裂する「YAMAMOTO KAKAPOTE」、「YOKOMO」、「AIEAOA」、ブレイクビーツ的なグルーヴに溢れた「YAMA YAMA」、サイケ・ガレージ「ANATA BAKANA」、ソフトロックなサイケ感の「FUDJI YAMA」などなど、いわゆるレア・グルーヴとして聴いてもおもしろい感覚がつまっております。このあたり、生演奏の、当時のしっかりしたスタジオ・ミュージシャン故の輝きがある、と言ってもいいんではないでしょうか。
そして、この日本語です。なにか日本語でのイメージが浮かぶようで浮かばない、断片的な日本語の感覚が逆に妙なイメージを想起させて、ぐにゃりとサイケ。このあたり、“逆に”サイケ感を醸し出すとんでもない歌詞の日本歌謡曲、子ども番組用のコミック・ソングを、その演奏に着目して聴くというような和モノのDJカルチャーなどに近い感覚もありますな。
また絶妙なエキゾチズムの発露とも言える日本というよりも、中国感のあるメロディなどもまた”味”を添えてきますな。
ぜひとも奇妙なYAMASUKIの世界へ、あなたの耳で。
応用編小対談 : グッとくる、オブスキュア再発の世界へ
さて、先述のようにYAMASUKI以外にもOTOTOYではオブスキュアなリイシューの配信ももりもりと増えてきております。そこで、なにやらYAMASUKIに感動した、太いの(河村)と細い(浜)、編集部のボンクラ・メガネふたりがOTOTOYのサーバーから、YAMASUKI同様の珍盤と名盤の狭間を漂う音楽たちを紹介すべく、ごにょごにょとなにやら話しております……。
河村 : ということで、君の大好きなオブスキュア・リイシューだよ。クラブもの連載を飛び出して、ちょっと出張気味に紹介対談だよ。
浜 : YAMASUKIリリースされたなんてびっくりっす。〈Finder Keepers〉版、結構高値がついてたんで。
河村 : みたいだね。〈Finder Keepers〉の再発シリーズとかって、こういわゆる正史的にルーツものの名盤が掘り起こされきった2000年代中ごろからずんずんでてきた感があるよね。
浜 : そうですね。あとUKの〈Honest Jons〉とか、いろいろ面白いのを出してますよね。
河村 : ひとつはDJカルチャー的なレア・グルーヴの行き着く先ってのもあるとは思うけど。とはいえ、結構好き者が集まって小さなインディで数量限定とかでやってるから、火がつくと市場からすぐ消えたりするんだよね。
浜 : あとから知ったりして買いそびれた作品いっぱいあります。だからこの波が配信まで到達してくれると、良いですよね。
河村 : そうそう。まさにアーカイヴィングの最終形態っていう感じはあるしね。というこで、OTOTOYで扱ってるオブスキュアなリイシューをちらりとここで紹介。まずは〈エム・レコード〉でしょう。まさに日本版の〈Finder Keepers〉!
浜 : 最近、がっと入ってきましたね。僕のお気に入りは最近入ってきたウィリアム・イートンですね。コレ、もうアンビエント・テクノといっても過言ではない気持ち良さです。
William Eaton / 『Music by William Eaton』
河村 : 自作の弦楽器でぽろんぽろんってコレ最高だよね。本当チルアウトの極地って感じで。この蒸し暑い季節に吹くそよ風って感じで。〈エム・レコード〉のおもしろさって、一見変なことやってる変人なんだけど、こうやって音楽として聴くとストレートに良かったりするんだよね。
浜 : 本当そこですよね。
河村 : で、あとはこの『Symphony of the Birds』もまさにだな。五十年以上前、野鳥の声をテープ編集して作り上げっていうもう偏執狂が生み出しような作品なんだけど。コレがぴよぴよと良いんだよね。
Jim Fassett / 『Symphony of the Birds』
浜 : この作品面白いのが、ずっと聴いてると、鳥の声がどんどんモジュラー・シンセの音に錯覚してくるところなんですよね。電子音楽もおもしろいの出してますよね。例えばこのマクリーン夫婦、「自然環境、外的要素から得たイメージを音に彫刻するコンポーザー・デュオ」だそうです。
Barton & Priscilla McLean / 『Electronic Landscapes』
河村 : なんか、いわゆる難解な実験音楽でもないし、クラブ・カルチャー由来のアンビエント・テクノでもないしで、すごくおもしろい電子音の感覚だよね。本当に、電子音で図面化しているというか。
浜 : 自然環境を音にしてるってことで、「これは風かな」とか「いきなり曇天になったなあ」とか考えてみたり。
河村 : そうそう。なに言ってるかわからないけど、コレ聴くと本当そう思う。
Richard Lerman / 『Music of Richard Lerman, 1964-87』
浜 : あとはこのあたりの実験音楽系だと、リチャード・ラーマンとかもおもしろいですね。「デヴィッド・チュードアと意見交換して開発したという自作の圧電式ピックアップマイクを自転車のフォーク部分に装着し、主にスポークの干渉音をアンプ増幅し録音・加工したもので、結果、東南アジアのガムランに近い独特の音が発せられた」って(笑)。
河村 : これもすごいよね。わりと今のフィールド・レコーディング系のブームとかインダストリアル・リヴァイヴァルに天然に結びついちゃう感じ。エッジにいる人って、それが生まれた時代に属してない分、いきなり時を超えちゃうことあるんだよね。とくに音楽だと。
浜 : 確かにオーパーツ感ありますよね。あと〈エム・レコード〉って、ワールド・ミュージックものもおもしろいですよね。例えば、タイのアンカナーン・クンチャイ。
Angkanang Kunchai / 『Isan Lam Plearn』
河村 : これもなんか同じアジア人としてなんか郷愁を感じてしまうよね。思ったけどこのあたりの音って、西洋人と日本に住む我々だと聞こえ方違うんじゃないかと。それこそ、ベトナムの歌をコラージュしたホルガー・シューカイの「Boat woman song」とか聴くと思うよ。あとはこのインドのジャズとか。
T. K. Ramamoorthy / 『Fabulous Notes And Beats Of The Indian Carnatic - Jazz』
浜 : なんかいなたい、熱帯特有の湿気感ありますよね。これはちょっとNYとかからからは生まれない音。あとは南米ものもおもしろいっすね。これはアルゼンチン・フォルクローレのドミンゴおじさんのアンソロジー。
Domingo Cura / 『Tiempo De Percusion : An Anthology, 1971-77』
河村 : 音質もあるんだけど、コツコツ、ポコポコなるドラムと、哀愁のメロディとかもうたまらんですなぁ。もうコレはずっと聴いてられる。このレーベル、江村さんという方が、たしか大阪でひとりやってるんだけど、すごいよね。
浜 : 海外でももう定着してそうですよね。こうした再発のおもしろレーベルとして。
河村 : たぶんそうだと思う。で、南米で思い出したけど、〈エム・レコード〉とちょっと離れて、老舗〈P-VINE〉も相変わらずおもしろくて、この前、坂本慎太郎さんの記事で紹介したけど、アルゼンチンのフェルナンド・ヘルバルトのコレとか。
FERNANDO GELBARD / 『DIDI』
浜 : これは本当にいいですよね! 生暖かいムード・ミュージックみたいな感覚もあって、通常のジャズの再発の感覚ともちょっと違いますよね。ベル研究所の初期電子音楽みたいなアプローチもあったりして面白過ぎます(笑)。
Audy Kimura / 『Looking For The Good Life』
河村 : そうだね。あとはこのハワイアンAORとかも何気におもしろい。
浜 : いいですね~。日系人の人ですかね。本当に音楽の聴き方が変わるって感じですよね。
河村 : そうそう、こういう変なの聴くと逆にいわゆる典型的なジャンルに縛られた音楽とかも、外側から見えて、またおもしろがれたりとかするんだよね。
浜 : そうなんですよ。あと「コレ」と「コレ」、一緒じゃん!って全然違った文脈のものを勝手に結びつけて楽しんだりとか。
河村 : だよね。今回はオブスキュア・リイシューってことでわりと絞ったけど、時代も前後していろいろ聴いてほしいよね。
浜 : まさに!
河村 : あとはあまり細かいことは書かずにとりあえず聴いてみたらおもしろいみたいな感覚で紹介してみました。ズラーっと新譜と一緒に試聴して買えるっていうのも、配信の強みだったりするからぜひともいろいろ聴いてほしいよ。
浜 : そうです。もちろんYAMASUKIも!