OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.1
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
ダブ・ゼム・クレイジー
プレイリスト、といっても試聴45秒x10曲、つまるところ450秒ということで10分にも満たない時間ですがしばしお付き合いを。
今回はレゲエのサブジャンルとして生まれた、ダブ。1970年代初頭、ジャマイカはキングストンのゲットーで、ミュージシャンではなく電気屋兼ミキシング・エンジニアのオズボーン・ルードック――のちにキング・タビ―と呼ばれる男――のスタジオで生み出されました。その生まれはコチラの記事に譲るとしまして、このジャンル、音符ではなくレコーディング方法に規定されるっていうのが肝なんですよね。演奏それ自体というよりも、ある種のレコーディング技術がそのサウンドを形作るという。
で、だからこそ、いろんなところに入り込んで音を変えちゃって、それにしちゃう。ミームっていうんですかね、いろんな音楽に入り込んで、その音響をしれっとダブにしちゃうっつうね。さらっとスパイス程度に入ってるものから、こうなんつうか間借りの居候がいつのまにか表札掲げちゃう感じのやつとかもありますね。ロック、テクノ、アンビエントなどなど、あとはポストロックもある意味でその初期はダブ的だったりすると思いますよ。UKガラージが先祖返りして、そのミームをきっちり表に出したらダブステップ生んじゃったりとか、そういうことがもう誕生からこの35年間ぐらいのなかでおこっとリます。
今回のリストはそんな感じで、そんな35年を点と点を結んだ感じで、最後にはそのミームの発生源たる「ルーツ」に戻る感じになっております。まぁ、なんていうかもはやジャンルっつうより「ああ、あの音」ていう、なんていうか音楽に宿っちゃて、ある種の「勘」がピンと反応する霊性っていうんですか? そういう感じ。だから「ルーツ」と遠く離れた、知らぬ存ぜずを決め込むサウンドに「勘」が反応しちゃったりするんですよ。ただの間違ったバランスのレコーディングだったり、別の効果を狙ったエフェクトだったりで「ダブ? 知らねえよ」と。そう勝手に「勘」を引き当てちゃって、「これもダブ、あれもダブ、たぶんダブ」って問わず語りの明け暮れですよ。まったくもうという感じですが、まぁ、私、がっちり基本と伝統を押さえたルーツも好きですが、そういうのも好きなんです(今回はわりとあんまり寄り道してません)。(続く、かも)