仮面とベースと、その先のSBTRKT――連載 : More Beats + Pieces Vol.4
と、言うことで早くも第4回目の『More Beats + Peacs』。こちら、OTOTOYにて配信されているクラブ系の洋楽を中心に、いま、なにがそちら方面で流行っているのかがわかる10枚+αを紹介しつつ、毎月これを読むとなんとなくその手の流れがわかってしまうというようなコーナー! 編集部のボンクラ・メガネ2人、河村祐介(太くて古いの)と浜公氣(細くて新しいの)が雑談形式でお届けします。今月は新作をリリースするSBTRKTをフィーチャーしつつ、10枚をお届け! そして連載4回目にしてプレゼントのお知らせが!! SBTRKTの新作『Wonder Where We Land (Deluxe Version)』をご購入いただいたかたに、抽選で2名様に〈Young Turks〉のロゴTシャツをプレゼント!!! これを着れば、気分はSBTRKT、FKA twigsとレーベル・メイト!? 詳しくは下枠をご覧ください。
〈Young Turks〉Tシャツ・プレゼント・コーナー
9月24日(水)0時から10月2日(木)23時59分の間、SBTRKT『Wonder Where We Land (Deluxe Version)』をご購入いただいたかたに、抽選で〈Young Turks〉ロゴTシャツをプレゼント!
プレゼント商品 :
〈Young Turks〉ロゴTシャツ(ホワイトSサイズ)1枚
〈Young Turks〉ロゴTシャツ(ブラックMサイズ)1枚
応募方法 :
題名に、「〈Young Turks〉Tシャツ・プレゼント係」、本文にお名前(フリガナ) 、ご住所、ご希望の賞品を明記の上、[email protected]までメールにてご応募ください。
応募締切 : 2014年10月2日(木)
注意事項 :
※SBTRKT『Wonder Where We Land (Deluxe Version)』をご購入いただいたかたのみ対象となります。
※各商品、どちらかのみのご応募となります。
※当選者の発表は賞品の発送をもってかえさせていただきます。
※発送は日本国内に限らせていただきます。
SBTRKT / Wonder Where We Land (Deluxe Version)
【配信フォーマット / 価格】
ALAC / FLAC / WAV / mp3 : 単曲 205円 / まとめ購入 1,851円
【Track List】
01. Day 1 / 02. Wonder Where We Land (feat. Sampha) / 03. Lantern / 04. Higher (feat. Raury) / 05. Day 5 / 06. Look Away (feat. Caroline Polachek / 07. Osea (feat. Koreless) / 08. Temporary View (feat. Sampha) / 09. NEW DORP. NEW YORK (feat. Ezra Koenig) / 10. Everybody Knows / 11. Problem (Solved) (feat. Jessie Ware) / 12. If It Happens (feat. Sampha) / 13. Gon Stay (feat. Sampha) / 14. The Light (feat. Denai Moore) / 15. Voices In My Head (feat. A$AP Ferg)
01. Forgotten (feat. Raury) / 02. Paper Cuts / 03. War Drums (feat. Warpaint) / 04. Spaced Out (feat. Boogie) / 05. Maybe (feat. Andrew Ashong and Sampha) / 06. Decemberist / 07. Tamagochi (Bonus Track) / 08. Told You (Bonus Track)
河村 : まず今月の連載の頭は、ついこの前出たばかりのSBTRKTの新譜を迫ってみましょう! で、まずはとりあえず、ヴァンパイア・ウィークエンドのエズラ・クーニグをフィーチャリングしたリード・トラック(なのか?)を聴いてみましょう!
浜 : エズラのヴォーカルもわりとミニマルでおもしろいっすね。トラックはテクノが入ったベース・ミュージックっていう感じですね。かなりクールです。
河村 : ちょっとヴォーカルの感じとか初期のハウスみたいだよね。オフィシャル・インタヴューによれば「音楽がすごく酷いからクラブを出ようと思った瞬間に聞こえてきた曲がいいか悪いかは分からないけど、どことなくクラシックでクールな要素があるから足がとまっちゃったっていうような曲にしたいね」って、「ね」って全然わかんねーよ(笑)。ちなみに、これはセカンド・アルバムになるんだけど、その特徴をずばり言うと?
浜 : そうっすね。まずはやっぱりゲストですね。仮面被ってるのに友だちが多いんですね。大きいところでは、さきほどのヴァンパイア・ウィークエンドのエズラ・クーニグから、ここ数年のヒップホップ・シーンの台風の目、エイサップ・モブのエイサップ・ファーグまでって、節操ないといえば節操ないですけど、すごいですよね。
河村 : まぁね、レーベルからもらったオフィシャル・インタヴューによれば、わりとファーストは、彼の相棒でもあるヴォーカリスト&キーボーディストでもあるサンファとジェシー・ウェアとのコラボ以外はコツコツと作ったみたいだから、その揺り戻しだろうね。今回はそれに釣られてか、前作のダンサブルなアルバムっていうよりも、リスニング向きのアルバムって感覚があるかな。
浜 : 今回はエイソップ・ファーグにウォーペイントとのコラボなんて、わりと目玉ですよね。片方ずつだけでもSBTRKTとコラボするってインパクトはそれなりにすごいのに。
河:だね。有名どころだけじゃなくて、わりと若手も参加していて、ロウリーってラッパーなんてネットで見つけた17歳みたいだぞ!
浜 : え! そうなんですか。ただし、今回はわりとベース・ミュージック! って感じじゃなくて、リスニングって感じですよね。それこそ、最近トリップ・ホップ・リヴァイヴァル的感覚のダウンテンポの曲が結構多いですよね。あとはいわゆる、ポスト・ダブステップ的なR&Bですね。言ってしまえば、エズラ以外のヴォーカリスト参加の曲はほぼダウンテンポですね。
河:そうそう、そうなんだよ。「Lantern」とかのインスト曲はわりとファーストの意匠を次いでるんだけど、他は、ダウンテンポでわりと曲調もメランコリック。今回、ちょっとそのあたりも含めて、ベース・ミュージックとR&Bみたいな角度でSBTRKTを紹介したいな。そこに彼のポップ・フィールドでも栄える音楽性があると思うから。
浜 : SBTRKTってポスト・ダブステップのなかでも、わりとアルバム・サイズで売れた人って感じで、ファーストの『SBTRKT』はかなりヒットしましたね。
河村 : 2011年のリリースで、ジェイムズ・ブレイクと一緒にポップ・フィールドに出ていった象徴的なアーティストって感じだよね。音楽性も、R&Bとベース・ミュージックという意味では方向性は一緒だし。とはいえ、どちらもほぼ同じ時期にリキッドルームでライヴをみたけど、ジェイムズは歌と展開で引きこむタイプ、SBTRKTはもっとパーカッシヴにノセていくタイプって感じだったよ。
浜 : え! 生で、しかもフェスとかじゃなくて! ズルい。でもそれは見た目も込みでなんとなくわかるような気がします。そうなると結構意外な変化じゃないですか? 今回の作品。
河村 : でも、今回はセカンドだから幅を出したかったんじゃないかな。ファーストは、まぁ、すごく簡単に言えばベース・ミュージックのハウス化をポップに回していった感じだよね。すごーく簡単に言えば、マーティンなんかがやってたことをすごくポップに展開したよね。いわゆるR&Bとか、UKらしいクラブ・ジャズなんかを足して。
浜 : ああ、ハウス、四つ打ちってことですね。
河村 : 簡単に言うとね。わりと重めだった、いわゆるハーフステップって言われているようなリズムよりも、その先祖だったUKガラージとか2ステップのハウスっぽいリズムに先祖帰りしたと。でも、これはいろんなルーツがあって一概には言えないけど、ひとつはUKファンキーっていう、まさにUKガラージの流れを組む、わりとUKのイケイケな音楽が2000年代後半に勃興したこと。あとはブリアルのセカンドかな。とくに後者はポスト・ダブステップのスタート地点とか言われている。
浜 : たしかにブリアル、いま聴くとR&Bっぽいですよね。さすがだなぁ。
河村 : でも、クラブ・ミュージックって、わりとロックよりも現場の空気感とか、リリースされているシングルの流れに影響されるっていう特徴があるから、UKファンキーの流れみたいなものも絶対あると思う。わかりやすくて「ポスト・ダブステップの流れを確定したブリアル」とか、俺もよく使っちゃうけど、そこはロックのジャーナリズムみたいなところと実は違うところなんだけど…… ブツブツ。
浜 : 河村さん、先行きましょう。とにかく、UKファンキーも大事ですよ!
河村 : そうそう。まぁ、例えばUKファンキーを先に進めてた人だと、クーリー・Gとか、あと同じく〈Hyperdub〉にはDVAっていう人とかもいる。とくにファーストを好きな人はこのあたりぜひ聴いてほしいな。
浜 : ポップですね。いわゆる最近のインディR&Bとも全然違う、もっとブラック・ミュージックっぽいノリですね。でもうしろのトラックの感覚とかって最近のインディR&Bにも近い感覚があるっていうか。もっとアタック弱めですけど。あ、あとはディスクロージャーですね。
河村 : そうそう、あのノリの元祖の部分ってSBTRKTとかそのうしろに広がっているUKファンキー、UKガラージ復権派にあると思うな。
浜 : でも、このあたりのポスト・ジェイムズ・ブレイク~SBTRKT系のR&Bってすごい量ありますよね。例えば今度来日するナイトスラッグスとか、BOK BOKなんかはそうですよね。あとは、このあたりはSeihoとか、日本のエレクトロ~ベース系にも取り入れられている感じはありますよね。
河村 : そうそう。あとはさっき出たような〈Hyperdub〉がこの前まとめた、R&Bコンピはその流れのアンダーグラウンド版をとらえたものだと思うよ。っていうかこのコンピを聴くと、わりとポップ・フィールドの裏で12インチとかのレベルで起っていることがなんとなく分かって良いですよ。あとは、うまく言えないけど、こうしたR&B的な感覚がジュークの受け皿になった部分っていうのは少なからずあると思うよ。
浜 : なるほど。たしかに、ジュークはシカゴ・ハウス最先端だとすると、その先にはディスコ、R&Bっていう脈々と続くものもあるし、そこにトラップとかUSの感覚も混ざって、さらに…… っていう。
河村 : あとは大雑把なところで、SBTRKTの音を聴いてて思うのは、やっぱりUKのダウンテンポ系音楽の復権があるよね。トリップホップ・リヴァイヴァル、これはUSインディR&Bの盛り上がりと、ベース・ミュージック以降のR&Bと両方が引き金になっていると思うけど。ハイプかもと思いきや、同時にアンダーグラウンド・ベース・カルチャーのドン、マーラ / デジタル・ミスティックスがA/T/O/Sみたいなモロにそういう音を出したのも、思えば今年でしょう。
浜 : そうですね。そういえばアレはモロにポーティスヘッドとかあの感じでしたね。そのあたりを感じ取って、SBTRKTのこの音、策士ですね。
河村 : まぁね、よくよく考えたら、この人、〈Young Turks〉ですから。
浜 : あ、また今月も出て来ちゃいますが、FKAツイッグスとレーベル・メイトっていうか先輩か!
河村 : そうそう。わりとFKAツイッグスは、アルバム自体はコンサバティヴな内容だったけど、それ故に、その感覚はなんとなく、今回のSBTRKTの、ベース・ミュージック&インディR&B以降のダウンテンポ系のポップスって感じですかね。
怪奇! ヴィロボス&ローダーバウワーの変態卿によるリミックス
ということで、こちらからはいつもの対談スタイルでお届けいたします。今月は変態ミニマルから、アフリカの奇人、そしてブリストル・ヒップホップの帝王まで、かなりおもしろいの入っております。
浜 : これは衝撃的でしたね。ナイトメアズ・オン・ワックスのリカルド・ヴィラロボスとマックス・ローダバウワーのリミックス。2曲とも絶妙に別のベクトル向いてるし、まったくの別もので最高でした。“リミックス”というか、新たな創作というか(笑)。
河村 : まぁ、原曲の素材使ってる別の曲って感じだね(笑)。原曲はベスト盤に入ってるんでぜひ。ナイトメアズと言えば、チルアウト・ブレイクビーツつうかトリップホップのオリジネイターの一人だけど、原曲は1990年かな、初期のブリープ・ハウス時代の楽曲だね。さっきも言ったけどパーカッションとかの素材がなんとなく聴こえるだけで、彼らは完全に別の曲にしちゃってるけど。
浜 : “Dub”っていう、彼らっぽいヒプノティックでダビーなミニマルのリミックスも良いですけど、2曲目の“Electric Jazz Version”もすごいですね。
河村 : 彼らがやった〈ECM〉レーベルのリコンストラクト・アルバムみたいだよね。てか両方とも18分と16分ってあるんだけど“Dub”は、わりとミニマルなんだけど、“Electric Jazz Version”は薄目で映画みてるような物語が絶妙にあるんだよなぁ。この人たち、昔から思うんだけどなに考えて作ってるのか謎だよね。素朴なラヴ・ソングを歌うフォーク・ミュージシャンと同じとは思えないよね。
浜 : た、たしかに。でも、とにかく「やばいもの見ちゃったな」って感じの音ですね。
河村 : やばいもの見ちゃったその2ってことで、〈WARP〉つながりでノジンジャ。前はPVカットっていう謎の仕様だったけど、今回は正規のシングル。強烈だよね、FUNKOTとか好きな人は反応できる音だと思うけど、トロピカル・ゲットー・ベース!
浜 : シャンガーン・エレクトロきますかね?
河村 : このひとつの事象っていうよりも、アフロ・ポップ全体って感じで日本では盛り上がりつつあるよね、それこそ、この前、ディスクガイド本が出たけど。シャンガーン・エレクトロは南アの、シャンガーン族の民俗音楽を土台にした、いわばゲットー・ベースなんだけど。最近、これに関わらず、ディープ・ハウス・シーンも盛り上がっててヨーロッパでも評価されたり、ダンス・カルチャーが結構おもしろそうだよね、
浜 : それにしてもこのPVは何度見ても…。
河村 : 俺もこのぐらい踊りたい。
浜 : 膝いきますよ! 確実に!
河村 : 次はDJハーヴィーの新プロジェクト、ワイルデスト・ドリーム。
浜 : ってか、結構普通にガレージ・サイケ・ロックですよね。音質もちゃんとほこりっぽいから、レア・グルーヴ聴いてるみたいな感覚になってきますよね(笑)。
河村 : そうだね。1980年代末~1990年代でセカンド・サマー・オブ・ラヴからイギリスのディープ・ハウス・シーンの土台を作って、2000年代中ごろのそれを下敷きにしたニュー・ディスコで再評価。わりとカリスマ的な人気を得たDJっていう。アメリカに渡って、ビザだかの関係で海外に出れなかったんだけど、ここ数年でやっと日本なんかにも来れるようになって、最近は毎年来日してるね。
浜 : で、そんな人が、この音ってなんかすごいですね。
河村 : なんでもミックスしちゃうすばらしいDJですから。サイケデリック地獄巡りは特異技です。Locussolusっていう名義ではわりとDJプレイとも近い、ハウスっぽい作品をリリースしていて、今回はブルージーなガレージ・ロック。イギリス人からみた、西海岸の憧れみたいなのがひとつ起点になっているみたいだけど。
浜 : なるほど、それはいい話。DJとしてはいろいろプレイする方ですしね。
河村 : そうだね。前にもマップ・オブ・アフリカってもうちょっとサイケ寄りのロック・バンドをやってたけど、これはもっとさらにブルース寄りというか、ロックだよね。ヴィンテージなガレージ・バンドみたいな。
やっぱりキテる? トリップホップ!
浜 : 大御所系ではトリッキーも新作を出しましたね。
河村 : そうだね……。
浜 : なんかへこんでますね。
河村 : いや、結構良い作品なのにOTOTOYであんまり動いてなくてさ… 彼はマッシヴ・アタックの前身でもあるワイルド・バンチにもいたブリストル・シーンのラッパー / プロデューサーで、一時期はビョークともデキてたりしたんだけど。
浜 : マジっすか! ビョークと付き合うとか、大変そう…。とはいえ音は、暗くて重いですね。しかもゴシック感あって、クール。
河村 : そうそう、ちょっとゴシック入ったこの手のサウンドっていう意味では、トリップホップの始祖のひとりだよね。最近はジャズとか、もうちょっとロックっぽい作品とか出してたんだけど、またダウンテンポに戻ってきたっていう感じ。今回は彼のルーツにわりと正面からいった作品。アクトレスとかFKAツイッグスとか、その手の音楽性にわりと近い感覚もあると思う。
浜 : ブリストル・サウンドのレゲエとヒップホップという意味では今回ラヴァーズ・ロック・レゲエのジャネット・ケイの「Silly Games」のカヴァー、あとはロンドン・ポッセのカヴァーもやってますね。UKヒップホップの元祖的な。
河村 : 作品としては結構ナイスなんだけどね。どうなんだろう、いまの感じとやっぱりずれてるのかな。でもザ・バグの新作を聴いているとあながちずれてないと思うんだけど。
浜 : こちらはもうちょっとラガ寄りっていうか、インダストリアルよりですね。
河村 : いやカッコいいですよ、バグ先生は。まさに、インダストリアル・ラガ・ダンスホール! ザ・バグもトリッキーと同じぐらいキャリアのある、ケヴィン・マーティンっていうアーティストの最近のメイン・プロジェクトで、まさにこんなインダスリアル・ラガもあれば、もうちょっとノイズ寄りのことをやってりなど、いろいろやってる。
浜 : まさにレフトフィールドな存在ですね。
河村 : でも、これこそ、トリッキーと並べて聴くことでわかる、イギリスの音楽っていう感じがするなぁ。ミクスチャーなんだけど、その下地にレゲエというかベース・ミュージックがある。あとはダンスホール・レゲエのレフト・フィールドな側面を拡大解釈するっていうところでは、日本のPART2STYLEとかOUTLOOK FES周辺のベース・ミュージックの流れと近い。これもすさまじく良いアルバムだけど、なかなか。ヒップホップなんかが好き人がベース・ミュージックの入門として聴いたりとか、あとはハードコア的な感性もあるから間口は実は広い!
浜 : ベース系と言えばラスティの新作がありましたね。ビッカビかのシンセでかっこいいっすね。今日聴いてきた作品のなかで一番“今っぽさ”があると思います。音像の派手さも込みで。
河村 : 若者の音楽ですよね……(遠い目)。それにしても元気がよい! 彼らの良いところは元気が良いことだよ! 浜君。
浜 : いきなりそのテンション、どうしたんですか… でもたしかにEDMなんかにも通じるようなシンセのバキバキ感とせわしない展開はすごいですね。EDM系のポップとか、エレクトロ好きな人もいけそうですね。しかも、これが〈WARP〉がリリースっていうのがまたすごい。
河村 : 中田ヤスタカ系なんて言うと浅はかかもしれないけど、そのぐらい広い間口もってるよね。イケイケだけど、いわゆるEDMとも違ったバランス感があって、グライムの進化系だと思うんだよな。背景的にもJOKERと一緒に楽曲出したりしてて。そのあたりの根本の出自とこの音っていう飛躍みたいなのを考えると〈WARP〉の姿勢とも近いのかなと。
浜 : これはハイレゾでリリースされてますが、この手のシンセ系は、PCMのハイレゾと相性は良さそうですね。レンジと力強さが増す感じが気持ちいいっす。
これが楽しめればいまのテクノが楽しめる(ハズ!)
河村 : お次はシミアン・モバイル・ディスコの新作。2人組で、片方のジェイムス・フォードはプロデューサーとしても活躍、クラクソンズのデビューやアークティック・モンキーズのプロデュースなんかをしてたユニットで、結構2000年代末のエレクトロ・ロックの大爆発のときに、メジャーなテクノ系のダンス・アクトとして脚光を浴びて、そのまましっかり定着したというイメージ。
浜;でも。このアルバムはコンセプチャルなアルバムみたいですね。音数が少ないのも、コンピューターやラックは一切使わず、1台のシンセと1台のシーケンサーのみを使用したパフォーマンスを行い、そのライヴ音源をミックスして編集した作品みたいっすね。
河村 : そうそう。それってまさに今流行のロウ・ハウスの流れを吸収したとも言えるよね。いわゆるDAWのプラグインとかソフトウェア・シンセで構築するんじゃなくて、アナログ・シンセとかヴィンテージ~ガジェット系の楽器なんかでライヴっぽく作るのがすごく流行ってるから、その時流にのったとも言えるよね。
浜 : そうですね。わりと音色的にもミニマルというよりも、オールドスクールなテクノとかハウスですよね。
河村 : そうだね。あとは最近の流行のアヴァン系の電子音楽系のサウンドとか、ちょっとインダストリアなニューウェイヴっぽいエレクトロとか、すごく「いま」のテクノを感じ作品。それぞれが、すごくマニアックな感じじゃなくて、見本市的な感じで入ってて、すごくバランスの良いアルバムだと思うよ。逆に言えば。このアルバムがOKならわりと、いまのテクノのわりと深いところまでいけるって感じ。そして次に紹介するのは、まさにそうしたいまのテクノの流れ、硬派なミニマル・テクノが結構コレは良いかなと。
浜 : あ、レーベルはアクトレスのところ。
河村 : ディープなテクノのライン。これも音的にはロウ・ハウスっぽいザラついた感じとかインダストリアルな感じもあるし、シミアンで入ってコレでズッパまるっていうのはいまのテクノのラインでいけば結構良い感じで楽しめる気がする。
浜 : でもアクトレスだけあって、それだけじゃない。ちょっとデトロイト・テクノっぽい幽玄な感じもありますね。
河村 : そうだね。わりとOTOTOYは、いわゆるテクノものってそこまで多くないけど、なんとなくこの2枚でいまのシーンの雰囲気はわりと掴めるかもとも思った。ちょっとインダストリアルで、わりと実験的な音が流行っているという意味で。
浜 : あ、これ紹介させてください。ジャズ系のピアニストで。
河村 : で、ポスト・グラスパー系ですね。例のムック本も2冊目出たりで並々ならぬ勢いを感じるね。
浜 : 「Jazz The New Chapter」ですね。これ、グラスパー直系の甘いコード進行を全面に押し出しながらも、リズムにクセがなくて比較的ストレートなので、すごく聴きやすいんですよね。より多くの層にウケそうな気がします。しかも、ガチガチな80年代風フュージョン・サウンドな曲もあれば、土臭いアフロ・グルーヴもあって、その振れ幅もグッドです。
河村 : このあたりはぜひともハイレゾで聴きたいな~。生楽器もふんだん使われてたり、音の間とか。
浜 : 絶対、ハイレゾ向きですね。あ、そういえばこの辺の親玉、フライング・ロータスの新譜も出ますね。しかもハイレゾで配信らしいじゃないですか!
河村 : ふふふ、楽しみですな。
最強のレーベルの最強25周年コンピ!
河村 : 最後は〈XL〉のコンピだぁ。〈XL〉と言えば、UKのレイヴ・カルチャーと一緒にはじまったレーベルで、初期はプロディジーとともに大きくなったんだけど。
浜 : でも、いまは全く違いますよね。ヴァンパイア・ウィークエンドとかザ・ホラーズとかロックの重要レーベルって感じすらあります。あとはアデルもそうか、言ってみればポップ・ミュージック全般って感じですね。
河村 : そうだね。でも、それって2000年代に入ってからで、ホワイト・ストライプスあたりのリリースが大きいんじゃないかな。やっぱり1990年代のUKってなんだかんだ言ってダンス・カルチャーが勢いを持っていて、2000年代になるとまたロックがっていう感じもあるよね。でも、2000年代に入ってからもベースメント・ジャックス、グライムのディジー・ラスカル、M.I.A.とかダンス
浜 : サブ・レーベルの〈Young Turks〉もそんな感覚ですよね。いわゆるDJツール的な楽曲でもないけど、そこに入っていけて、それでいてポップ・ミュージックとして成立するっていう。
河村 : そうだね。あとロック・バンドといっても、どこかしら中庸というかヴァンパイア・ウィークエンドとかフレンドリー・ファイアーズとかダンス的な要素とかあると思うし、ホラーズにしてもウェザオールがプロデュースだったり、いわゆるロックンロールじゃないというか。最近は、この前亡くなったボビー・ウーマックとかギル・スコットヘロンとか渋いのもやってたりしたね。ということで、そんなレーベルの25周年記念コンピ。それこそレイヴ~ジャングル、ハウス、上記のバンドなんかも入ってて、ともかくこの25年、特にここ15年ぐらいのエッジーなアーティスト勢揃いって感じ。
浜 : めちゃお買い得ですよね。実は、僕コレでThe Horrorsはじめて聴きましたけど、これから旧譜とか集めようと思ってますよ。
河村 : あ、ここでいきなりですが、エイフェックス・ツインの『Syro』もよろすく!