13年の待ち時間も吹っ飛ばす、エイフェックスの新作をハイレゾで! 鬼才を知るための3つの“すごい”
『Drukqs』以来13年ぶりとなるエイフェックス・ツインの新作、『Syro(サイロ)』。さまざまな憶測が憶測を生んだリリース発表から1ヶ月、ついに本当にリリースされました。OTOTOYでは、本作をハイレゾ(24bit/44kHz)で配信開始! 13年ぶりながら、その音はエイフェックス・ツイン以外ではありえない、まさに彼のサウンドが展開されております。しかも、これまでのその音楽性をぐっと凝縮させながらも、ポップに展開、といった感覚の作品で、「名前は知ってるけど…」というリスナーも含めて、全方位の音楽ファンにぜひとも聴いてほしい内容に。これまでの作品史上、最も聴きやすいのでは! といった感覚。ともかく、狂った小人の如く暴れ、そして遊び回るビート、メランコリックで牧歌的な“ザ・エイフェックス”なメロディを紡ぐシンセ、その裏で鳴る電子音の重なりまで聴くことのできるハイレゾ版をぜひお楽しみください。
そんなこんなで、たぶんファンはみんな買う感じの作品に仕上がってる気がします。なので、ここでは、「話題になってるけど、エイフェックス・ツインって誰?」という人から、なんとなく知っているけど、もうどこがすごいのか人に聞けない「知ったかぶり」、そしておさらい派までさらっとその魅力を3つのポイントに凝縮してお伝えしましょう! 「そんなの知ってるぜ」という方は試聴&購入へ!
Aphex Twin / Syro(24bit/44.1kHz)
【配信フォーマット / 価格】
ALAC / FLAC / WAV(24bit/44.1kHz) : 単曲288円(税込) / まとめ購入2,571円(税込)
【Track List】
01. minipops 67 [120.2][source field mix]
02. XMAS_EVET10 [120][thanaton3 mix]
03. produk 29 [101]
04. 4 bit 9d api+e+6 [126.26]
05. 180db_ [130]
06. CIRCLONT6A [141.98][syrobonkus mix]
07. fz pseudotimestretch+e+3 [138.85]
08. CIRCLONT14 [152.97][shrymoming mix]
09. syro u473t8+e [141.98][piezoluminescence mix]
10. PAPAT4 [155][pineal mix]
11. s950tx16wasr10 [163.97][earth portal mix]
12. aisatsana [102]
13. MARCHROMT30A edit 2b 96 [104.98]
『Syro』が聴きたくなる、「ここがすごいぞエイフェックス・ツイン」3つのポイント
いくらカリスマと言ったって、「U2って誰?」ならぬ「エイフェックス・ツインって誰?」なんて、そんな声が聞こえてきそうな年月ですよね。13年って! とはいえ、エイフェックス・ファン、特に13年よりも前から聴いているファンは、間違いなく買ってくれる作品に仕上がってきましたので心配ないとして……。ということで、試聴してください(リチャードが裏切らないなんて!)。な、の、で、OTOTOYはいまこのタイミングでエイフェックスに出会ってしまった方たちのために記事を作りました。新作『Syro』が聴きたくなる、エイフェックスの3つのポイントでご紹介。これで知ったかぶりから抜け出せる(はず!)。ということで、OTOTOYで好評連載中の、月一のクラブ・ミュージック・セレクト専科な連載の出張版で、編集部の例のふたりがお届けいたしましょう!
その1.まずは新作も含めて音が“すごい”
浜 : 河村さん、いきなりこの見出しって卑怯じゃないんすか?
河村 : いいんだよ。だって他の2つのポイントも、言ってみれば「結局、音がすごい」の一言で片付けられるじゃん。あのメディア・コントロールの仕方も、結局みんな彼のサウンドに魅了されているから“釣り”に乗ってしまうわけで。それに『Syro』はこれまでの彼の音楽の魅力が凝縮された作品って感覚もあるし。
浜 : そして今回もポップで聴きやすい作品ですよね。
河村 : そうそう。たぶん、難しい批評もおもしろいと思うけど、とかくこの人の場合はことさら難しくとらえられてる気もするから、まずは「音がすごい」で良いかなと。だって、今回のアルバムもそうじゃん。ところで、自分で能動的に音楽を聴きだして、リアルタイムでエイフェックス・ツインのアルバムがリリースされるのに立ち会ったのって初?
浜 : そうですね。河村さんは?
河村 : たぶん、1995年のサードの『...I Care Because You Do』かな。『Syro』に話を戻すと、わりと主旋律的な部分とドラムとの部分ばかりを普段追いかけてしまうんだけど、ハイレゾで聴くと、実はそのうしろで何気ないけど、他を引き立てるフレーズが小気味良く鳴ってたりっていうのがわかる。
浜 : 公開されているリストを見ると、結構アナログ機材など、かなりいろいろ使ってるみたいですね。
河村 : エイフェックスなのでいろいろ過信していると後でバカを見そうなのでアレだけど。でも、とにかく新作はこれまで以上にポップだし、メランコリックだし、適度にやんちゃだしでエイフェックスのこれまでの作品を踏襲した作品って感じ。1曲目のこのビートの感覚と、絶妙にメランコリックなシンセ、展開の洒落た感覚、まさにどっからとってもエイフェックス・ツインの音じゃん。
浜 : たしかに、リード・トラックとして「minipops 67 [120.2][source field mix]」が先行公開されたときに「ああ、どっから聴いてもエイフェックス・ツインの音だ。」って思いましたもん。
河村 : 「Windowlicker」めいたエレクトロ・ファンクが中心とも思うんだけど、あそこまでリズムがエディットされてなくて、わりとストレートでシンプル。初期の作品が好きな古参のファンの評価が高そうだよね。踏み込んで言えば、彼の1990年代のサウンドを凝縮して、アップデートした作品って感じが強い。あ、ただし、セカンドの『Selected Ambient Works Volume II 』を除くって感じかな。
浜 : 前に、試聴用のストリームがきたときに、河村さん、『Polygon Window』と『Richard D James Album』合わせた感じって言ってましたね。
河村 : うん、わりと今回は彼らしいメランコリックなメロディ感覚にすごく初期あたりの感性を感じた。それが、『Polygon Window』っぽいって言った理由。これは、ストリーミングと比べちゃいけないけど、ハイレゾ版を聴いてその音の趣向性とかが細かくわかって、わりとファーストの『Selected Ambient Works 85-92』みたいな、ひさびさにピュアにテクノに寄った作品かもなぁとも。でも、サウンドとしては『Richard D James Album』のちょっとイージー・リスニングめいた感覚もあるし。言えるのは、少々暗めの『Drukqs』とはちょっと方向性が違うかな。アレは、ちょうどエレクトロニカ・ブーム絶頂のときだったから良かったけど、いま13年ぶりのタイミングとかだったら、正直受けていたかわからないなって作品だったし。
浜 : 唯一、ラスト・トラックの「aisatsana [102]」が『Drukqs』のピアノ・シリーズのそれと感覚的に近いかなと思ったんですけど。この曲のピアノもそうですけど、小さい声で鳥の声が入ってたりするので、ハイレゾで聴いてほしいな~。でも、やはり、この感覚にくらべるとアルバム全体はポップですね。しかも、リズムの感覚も軽いというか。10曲目の「PAPAT4 [155][pineal mix]」、11曲目の「s950tx16wasr10 [163.97][earth portal mix]」は、ドリルンベースですね。
河村 : でも、やんちゃだけど「Come To Daddy」みたいな悪夢感は今回ないよね。どっちかと言うとやっぱり『Richard D James Album』のファニーな感じ。「PAPAT4 [155][pineal mix]」は初期のジャングル愛すら感じるな。
浜 : 全体として、わりと陽気でポップ。
河村 : 本当にポップな作品だよね。2曲目の「XMAS_EVET10 [120][thanaton3 mix]」4曲目の「4 bit 9d api+e+6 [126.26]」なんかは初期の、例えばファースト・アルバムのピュアなテクノ系サウンドに対するオマージュみたいな部分もすごく感じるんだよね。むしろ、この手の曲は作らないだろうと諦めてた俺としては非常にうれしいんだよね。
浜 : あとはブレイクビーツですよね。わりとストレートなブレイクビーツが今回のリズムの特徴のひとつかなと思います。具体的に言えば「minipops 67 [120.2][source field mix]」もそうですし、6曲目「produk 29 [101]」も。これ、ダウンテンポの感覚や最近のトリップホップ的な感覚もありますね。
河村 : ただひとつケチつけるとすると、エイフェックスらしいおもしろいリズムで満載の作品なんだけど、そのベースがブレイクビーツ、ジャングル、テクノっていうわりと1990年代のフォーマットなところなんだよな。
浜 : ああ〜たしかに。
河村 : その部分で、まぁ、いまやリズムなんてジュークからシャンガーン・エレクトロとかいろいろあって、もちろんそれらを安易に取り込むことのかっこ悪さもあるけど、そのあたりがなにも含まれていないというのは、ちょっと寂しいかな。うがった見方をすると「もしかしたら、当時作った曲?」なんて…。でも、どうなんだろうね。本人はJUNOとかで音源買ってるらしいですけど。あといまだにロンドンとかで、変名でそうっとDJしてるみたいだよ。
浜 : へぇ、聴いてみたいな。
河村 : あなたの街にもエイフェックス、来てるかもしれませんよ!
その2.メディアとの掛け合いが“すごい”
河村 : まずは『Come To Daddy』の映像でも見ながらぜひ。
浜 : ああ、おばあちゃんかわいそう…。そして怖い、あんな顔の子どもにおっかけまわされたら。
河村 : これは確かまだDVDすらあんまりなくて、VHSでビデオ・シングルみたいな形で売ってたんだよね。いまYouTubeで、強烈なビデオ作ってバズらせるのと共通する部分があるような。それでいて、ちゃんと楽曲含めて、単なるPVじゃないっていう。かっこいいんじゃなくて、プレゼンする部分が“気持ち悪い”っていう感覚。
浜 : クリス・カニンガムは気持ち悪いMVシリーズの先駆けですよね。その後、ビョークとかも手がけてますね。
河村 : いまこの手のことやったら、もっと流行りそうだよね。今回もやるかなと思ったけど。このPVの感覚って、メディア対応みたいなところとつながっていくよね。まぁ、ともかくみんな彼の「釣り」には嬉々としてみんな乗っちゃう感じが微笑ましくもある。
浜 : で、今回もやってくれましたね! 東京でも突然、緑色のステッカーがライヴ・ハウスに現れたり、ロンドンでは気球が飛んだり、妙なサイトが立ち上がったり。
河村 : そうそう。俺、今年の夏のコウスティック・ウィンドウの幻の作品、クラウド・ファンディングも実は…… と思ってるんだけど。
浜 : 妖しいですね~。
河村 : もう、最強にそっけない不親切極まりない答えのインタヴューやったり、「戦車買った」とか奇人変人っぷりアピール凄まじいよね。でも、変に「天才」って言われるのが我慢できなくて、その雰囲気がおもしろくて「遊んでやろう!」って感じだと思うけど。でも、日本だとそっちの天才部分が異常にクローズ・アップされているような。
浜 : 前に出したリミックス集なんて「お金のためにやりました」みたいなタイトルですよね(『26 Mixes For Cash』)。
河村 : 実際、1990年代の頭とかは、ダンス・リミックスのブームみたいなのがあって、誰彼かまわず、有名なアーティストにリミックス頼むなんてのがあったから「どうせ俺の音楽も理解してないくせに、売れてるからって!」的な酷いリミックスをよくやってた(笑)。元の音まったく使ってない作品だったりしたけど。そのあたり、彼がレイヴ・カルチャーに近いところにいる人間だっていうのと関係あるような気がするな。
浜 : どのあたりですか?
河村 : 今回のアーティスト写真もそうだけど、自分の顔を出すことに対して、いわゆるアーティストの偶像みたいな部分を徹底的に破壊するっていうかさ。とにかくメディアがさらっと使っちゃうようなアーティスト・イメージに対して徹底的に拒否するというか。もともとレイヴって、そのレコードさえあれば誰がかけても音楽が成立するっていう意味で、匿名性があってもOKなジャンルで、ロックのスター制度みたいなところとは遠い部分があったから。その先に彼の感覚はあると思うんだよね。アーティスト写真みたいな部分を逆にどんどんパロディにしてしまおうっていうのは、遊びきってるよね。まぁ、間違いなくSNSにナルシスティックな自撮り写真は載せないタイプ(笑)。載せたとしたら、本気でそういうことしてるやつをギャグの対象にしたってことで。
浜 : その自分の肖像で遊ぶって、サードの『...I Care Because You Do』とか、4枚目『RIchard D James Album』で如実になっていって、「Come To Daddy」ときて「Window Licker」で完成する感じですね。
河村 : あれはすごいですね。ギャングスタ・ラップとマイケル・ジャクソン。
浜 : てか、この気持ち悪い感じのMVのパターン、完全にFKAツイッグスのアルカ&ジェシー・カンダとかに、受け継がれているよね。あとはポスト・インターネット系と呼ばれるような映像のほとんどとかも。
河村 : ってかギャグ大王だからね。名曲「Milkman」の歌詞なんて童謡っぽいなと思ったら「牛乳屋さんのおかみさんのおっぱい飲みたいな~」だぜ。
浜 : どこか憎めない感じですよね。
河村 : 暴力的な音も、どこか子どもっぽいというか。とにかく話題以上に音楽に魅力がありすぎるから、それが逆に神秘的に写ってしまうというのはあるよね。
浜 : そうですね。変名がいっぱいあったり、実は大量に作品を出しているとかもなんとなく。
河村 : 実はこの13年の間、なにも出してなかったわけじゃなくて、新作か掘り出しものか定かではないけどAFX名義で11枚のアナログ・シリーズ『Analord』とそれがまとめられた2006年の『Chosen Lords』を出してるし、Tuss(彼の地元では「勃起」の方言らしい)名義で〈Replex〉から出してたりとかね。これも匿名性みたいな部分で、いろんな名義で遊んでたっていうのがあるんだろうけど。
浜 : 本当、そこが逆に神秘的になりますよね。「あれは本当?」って。インターネット時代ですらあの騒ぎですからね! どれもこれもとにかく彼の作品が聴きたくて、みんな探しまわって、嗅ぎ回ってるわけですからね。だからどんどん話が大きくなるみたいな。
河村 : なにせDiscogsに「これはエイフェックスではありません」なんてページがあるくらいだからね!
その3.音楽業界への「音」の影響力が“すごい”
河村 : で、最近思ったんだが、1990年代の主要なテクノ・スタイルでミニマル・テクノ以外のスタイルは、ほとんどこの人が関わっている気がする。もろもろ細かく説明すると若い人にうるさいって言われるから、大雑把に説明するけど。
浜 : してください!
河村 : デビューというか、1992年の初シングルに収録されて、後に大ヒットとなった「Didgeridoo」って曲があるんだけど、ダークなサウンドとBPMの速いエネルギッシュのスタイルで、ハッピーなハードコア・サウンドが主流だった当時としても画期的なトラックでヒットした。でも実は1990年に作った曲だったっていうのが、その後にライヴ・ヴァージョンが収録された『Classics』って編集盤で発覚して、みんなびっくりしたんだよ。
浜 : はあ、なんでそれがびっくりなんですか?
河村 : レイヴから生まれたBPMの速いハードコア・テクノが1991年に流行ってたんだけど、それに先駆けた楽曲だったって話で。まぁ、この人のことだから若干眉唾だけど、まぁ、とにかくすごい楽曲だよね。
浜 : いま聴いても充分かっこいいですよ。『Ambient Works Works 85-92』も同じ時期ですよね。一転するにも程がありますね。この幅の広さは、やっぱり才能ですね。
河村 : そう、まだテクノと言えばダンス・ミュージックが主流で、若干アンビエント・ハウスがあったぐらいの時期に“リスニングとしてもいける”テクノを提示してしまったと。もちろん、一部のデトロイト・テクノとか、アンビエント・ハウスとかそれに類するものが楽曲単位ではあったけど、アルバム1枚でそういうテクノの聴き方を発見させてしまった。そのぐらいの衝撃を持って受け止められたと。
浜 : インテリジェンス・テクノ!
河村 : そう、その後、〈WARP〉が提唱した“Artificial Intelligence”も同じ時期で、じわりじわりとフロアのみじゃないテクノっていうのが出てきた。で、その後、〈WARP〉に移籍すると。この作品が無ければ、恐らくいまの日本も含めて、エレクトロニカなんてなかったんじゃないかな。とにかく、この盤は言うのが恥ずかしくなるほどの名盤中の名盤。『Syro』がはじめての人は、まずはコレを次に聴いてほしいな。
浜 : でもファーストって地味な作品っすよね。
河村 : えええええ、過去の作品で1枚選べってなったらオレ、これを選ぶよ絶対…… 浜恐るべしだよ、背筋凍るよ。全国のテクノおじさん / おばさん(どちらでもない方も)をお前は敵に回したな。
浜 : いや、だってセカンドの方が分かりやすいじゃないですか!(『Selected Ambient Works Volume II 』 )。
河村 : それはないと思うんだけど…… オレなんて、中学生でファースト買って「すごい、こんな音楽があるんだ」と思ってセカンド買ったら「どよーん」で「うわ、わかんない、だまされた!」って思ったよ、いまは愛聴盤だけどさ。さすが、浜くんは松本のミスター・アヴァンギャルドだからな。
浜 : (無視して)セカンドは〈WARP〉からですよね。
河村 : そう、移籍して、それまでは〈R&S〉。ファーストとセカンドの間、1993年に契約の関係でポリンゴン・ウィンドウって名義で〈WARP〉からリリースしている、これも名盤。で、ファーストと地続きではあるんだけど、1994年のアンビエント・テクノの極北みたいなセカンド・アルバムが出て、他にもグローバル・コミニケーションの『76:14』も出たりで“アンビエント・サマー”って言われるアンビエント・テクノのブームを牽引しちゃったりするわけですよ。
浜 : あとはドリルンベースとかブレイクコアもそうですよね。その名の通りな高速に暴れ回るドラムンベースっぽい音楽も、彼の1995年の「Hangable Auto Bulb」が最初だったとか。これはあとから10年後に『Hangable Auto Bulb』として出る程。とにかくレアだけど影響力があった。ドリルンベースはブレイクコアの親元みたいなもんですからね。
河村 : そうそう、リスニング~アンビエント・テクノ、あとはハチャメチャで暴力的なサウンドとか、とにかく自由な電子音楽のスタイルは、もちろん2000年代にアレを生むわけです。
浜 : エレクトロニカ!
河村 : ご名答です。あとは彼が運営しているレーベルもすごいんだ。μ-Ziqとかルーク・ヴァイバート、そしてスクエアプッシャーは、彼が自分のレーベル〈Rephlex〉で売り出したのが最初だからね。それ考えると、人の才能見抜くのもうまい。
浜 : リスニング・テクノ、アンビエント・テクノ、エレクトロニカ、ドリルンベースとかブレイクコア。
河村 : そうそう、あとはテクノ・シーンに1990年代末にモンド、イージー・リスニング・ブームもあったんだけど、そういうのも実は『リチャー・D・ジェームス』あたりで噛んでる。
浜 : 2000年代は?
河村 : ほとんど、動いてないからね。でも、〈Rephlex〉ではいち早く、2004年にダブステップを紹介してるしね。実質ダブステップのコンピなんだけど、まだ情報がないせいか、『Grime』ってタイトルのコンピなんだけど。
浜 : え、そうなんですか! めちゃ速ですね。
河村 : あ、でも冒頭でミニマル・テクノって書いたけどポリゴン・ウィンドウ名義の「Quoth」って曲、ほぼハード・ミニマル・テクノだよな。しかも1993年…… やっぱり、ハード・ミニマル・テクノも……。さまざまな可能性を提示することで、その道を作り、そして2000年代は、作品をほぼ出さずともその影響力だけで13年その名前が消えずに残ったと。
浜 : 日本でも、とにかくその影響力はすごいですよね。DE DE MOUSEさんとかも多分、すごく影響は大きいし。あとはいまの〈WARP〉のスタイル、例えばワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの作品なんかも、ここまでポップに、アヴァンギャルドに電子音楽を聴くっていうことがあってはじめてですよね。
河村 : いまだにその影響力はすごすぎて、後続のアーティストたちが、彼が1990年代に作り出したスタイルを再生産しているっていう感覚だよね。そんなアーティストの新作、しかもかなりの傑作がリリースされたのだから、まぁ、「いま聴かないでなにを聴く?」って感じです!
Aphex Twin / Syro(24bit/44.1kHz)
【配信フォーマット / 価格】
ALAC / FLAC / WAV(24bit/44.1kHz) : 単曲288円(税込) / まとめ購入2,571円(税込)
【Track List】
01. minipops 67 [120.2][source field mix]
02. XMAS_EVET10 [120][thanaton3 mix]
03. produk 29 [101]
04. 4 bit 9d api+e+6 [126.26]
05. 180db_ [130]
06. CIRCLONT6A [141.98][syrobonkus mix]
07. fz pseudotimestretch+e+3 [138.85]
08. CIRCLONT14 [152.97][shrymoming mix]
09. syro u473t8+e [141.98][piezoluminescence mix]
10. PAPAT4 [155][pineal mix]
11. s950tx16wasr10 [163.97][earth portal mix]
12. aisatsana [102]
13. MARCHROMT30A edit 2b 96 [104.98]