OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.115
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
ジャングル狂想曲
ここ数年、海外のダンスモノのシングルに関しては、もはやジャングル~ドラムンベースはリヴァイヴァルというよりもフロアの既定路線としてかっちりと新譜、旧譜のリマスター共にガンガン・リリースされるようになっていますね(もちろんシーンはずっと愛好家たちに支えられて存在していたわけですが)。最近では『Who Say Reload』という、当時のアンセムたちの誕生秘話のオーラル・ヒストリー本もイギリスでは刊行されました。
ジャングルはロンドンのレイヴ~クラブのアンダーグラウンド・シーンにおいて、1992年代頃に成立し、そこから一気に広がりと音楽的成熟を見せ、1995~1997年あたりをひとつのピークに当時メジャー・レーベルからも主要アーティストたちが続々と作品をリリース、マーキュリー・プライズを獲得するなどUKを中心としたポップ・ミュージック・シーンを席巻しました。またロックなど他のジャンルのシンガーやバンドなどがリミキサーとしてそれらのアーティストを起用、またそれだけに留まらず、例えばデヴィッド・ボウイ『Earthling』のように、自身のオリジナル音源にも取り入れるアーティストも出てくるほどに。
さて、ちょうどそこからだいたい25年ということもあり、もちろん冒頭に書いたように再評価の波もあり、いくつかリイシューやデラックス・エディションがリリースされています。
今回はそのあたりを中心に音源をセレクトしました。シーンの立役者、ゴールディーの『Timeless』。こちらは25周年記念盤としてリマスター&当時の貴重なリミックス、もしくは最新リミックスなどを収録してリリースされました。少し前にリリースされた彼のアンダーグラウンドなシングルを中心に編まれたアンソロジーからジャングル黎明期の作品と聴きくらべるとわずか数年で一気に音楽的に進化したことがわかるでしょう。当時交際していたと噂されるビョークのリミックスもあります。
さらに当時は、同じくシーンの立役者たる4ヒーローやグルーヴライダー、さらにはブリストル・ジャングルの雄、ロニ・サイズ(レプラゼント、1997年にマーキュリー・プライズ獲得)など、アーティストが次々とメジャー・レーベルからリリースしています。またさらに先鋭的なサウンドを目指したフォーテックなども当時メジャーからアルバムをリリースしていました。
また当時の空気感という意味では、もともとネオアコの代表的アーティストでもあるトレイシー・ソーンとベン・ワットのEverything But the Girlが、いわゆるアートコアと呼ばれるようなアンビエント・タッチのジャングルなど、エレクトロニック・ミュージックを大体的に取り入れた名盤『Walking Wounded』をリリースしたのもこの時期です。
そういえばこちらはアンダーグラウドな動きですが、さらにアグレッシヴにジャングルを奇怪なサウンドへとオルタナティヴにリビルドし、当時"ドリンベース"と呼ばれる流れを作ったのはエイフェックス・ツイン一派でした。そんなスタイルのオリジネイターのひとり、スクエアプッシャーの1stも再発されますね。