D.A.N.の新譜放談【特別番外編】──マウント・キンビー新作を聴く!
ということで、ひさびさ登場「D.A.N.の新譜放談」、今回は少々趣向を変えまして「特別番外編」と題し、マウント・キンビー新作『Love What Survives』にフォーカスしたいと思います。こちらは4年ぶりにリリースされた新作。この新作を提げて10月の頭には、D.A.N.も出演の朝霧JAM、そして東京、大阪での単独来日公演(まだ間に合う!)も控えている彼ら。音楽性に、彼らに大きな影響をうけたというD.A.N.の3人に迫ってもらいました。D.A.N.といえば、年末に向けたワンマン・ツアーも。こちらいまや完売必至。一般発売は9月23日(土)となりますので、お忘れなく (詳しくは記事後半の告知にて)! それではレッツラ行って見ましょう!
取材 : 河村祐介
Mount Kimbie / Love What Survives(24bit/44.1kHz)
【Track List】
01. Four Years and One Day
02. Blue Train Lines (feat. King Krule)
03. Audition
04. Marilyn (feat. Micachu)
05. SP12 Beat
06. You Look Certain (I’m Not So Sure) (feat. Andrea Balency)
07. Poison
08. We Go Home Together (feat. James Blake)
09. Delta
10. T.A.M.E.D
11. How We Got By (feat. James Blake)
12. SP12 Beat (Part 2)
【配信形態 / 価格】
WAV、ALAC、FLAC(24bit/44.1kHz ) / AAC
単曲 288円(税込) / アルバムまとめ購入 2,571円(税込)
マウント・キンビー『Love What Survives』に関する特集ページはこちら
D.A.N.に訊く、マウント・キンビー、そのサウンドの魅力
──みんなずっとのマウント・キンビー作品はきいてる感じですか?
櫻木 : 好きっすね。
川上 : 代わりがいない存在って感じだよね。ドラムの質感とかシンセとか、全体的にサウンドが独自。
市川 : あとメロディもだよね。ポップなのにちょっとおもしろくて、それでいて変というか。エモーショナルに行き過ぎない平熱な感じで。マウント・キンビーみたいな、ポップだけど、平熱を保ってる感じをD.A.N.も最初はかなり参考にしたところはあるかな。
──D.A.N.の結成は、前作『Cold Spring Fault Less Youth』が出たあとだと思うんだけど、参考とか目標にしていたっていうのはあるんですか?
櫻木 : うん。かなり影響を受けていると言っていいと思う。全体的に想像力で曲を作っている感じは印象としてあって──すごいユニークだし、アイディアがすごくて「ええ、そうくる?」っていう感じがすごくて。合理的な思考だけでは生み出せないような、本当にインスピレーションを大切にして作ってるような感じがして。作ってる身としてはそういうところに、はっとして。そういうところがいつも、好きですね。
川上 : 1曲目もはじめの音から「こういうビートが出てくるのか、こうきたか」って、いきなり思うしね。
櫻木 : ユーモアと皮肉があるというか。あとはすごい人間らしさがあって。その部分での温かさとか、冷たさみたいな部分もあって。
市川 : たまに「これはふざけてんじゃないか」って思うところもあって、そういう音色を入れてきたりする感じが今回の作品にある(笑)。
櫻木 : そう、たまに「こんなバカさ加減でいくの?」みたいなところがあって、特にこの新しいアルバムはそういうところが多くて、そこかがおもしろい。前作はかなり緻密なことをやっていた印象があるから。
──ちゃんと正統派でできるのわかっている上でね。
櫻木 : できるのはわかっているんだけど「あえて今回はバカに走った」みたいな(笑)。でもバンドとしてガタイはすごくがっしりした。それでガンガン突き進んで行くっていうパワフルさ増したというのが新しいアルバムの第一弾の印象ですね。
川上 : バスドラで埋めて行く感じのビートが多いっすよね。そのビート感の印象が強いっすね。いいっすよね。
市川 : 音でいうと、ヴィンテージのリズムマシンとかシンセとか使ってるって資料に書いてありますけど。ローファイな感じ、クラウトロックとか、ニューウェイヴみたいな感覚がかなりあって。まずはその荒さがサウンドの印象としてあって。そこの部分でちょっとノスタルジックな感じもあって、ちょっとつかみ所がないんだけど、ビートがガンガンくるっていう。
川上 : 3曲めのベースの音色とか最高だよね。
市川 : あれは真骨頂っていう感じ。
(新作は)楽しくふざけている感じがなんかあって
──気になった曲とかあったりしますか?
川上 : 3曲目「Audition」とか5曲目「SP12 Beat」?
櫻木 : 個人的には3曲目の「Audition」から4曲目の「Marilyn (feat. Micachu)」の、ちょっと「古代」っぽい感じが。
市川 : 遺跡感?
櫻木 : 気持ち良さがね、「ファ~」って感じっていうか…… なんていえばいいんだ(笑)。聴いてくれっていう感じなんですけど。
川上 : 1曲目とか2曲目の「あ、新しい」っていうところから、3曲目で「お、いままでのいい感じ」みたいになってて。
市川 : あと10曲目「T.A.M.E.D」もすごい好きで。
櫻木 : あ、この曲、ドムがヴォーカルですよね。ドムのヴォーカルがすごい好きで。
市川 : いいよね。
櫻木 : 今回シンガーに関してはすごいいろんな人をフィーチャリングしてるんだけど、やっぱりマウント・キンビーの作品だとこの人のヴォーカル好きだなってなる。というか、落ち着く。
市川 : 途中からの女性の声は?
櫻木 : これが新しいサポート・メンバーのアンドレア・バレンシーでしょ? ライヴの動画とかみるともう大活躍って感じだよね。ライヴ映像好きでよくみてるんですけど。
──よくライヴ映像とかは見て研究してた?
櫻木 : しますします。ドミニクとかすごいうろちょろするんですよね、ステージの上で。「どんな感じ?」って他のメンバーのところにいったりして。「つまみこのぐらい」って言って戻ってくるみたいな。ジェイムズ・ブレイクの参加してる曲も、楽しくふざけている感じがなんかあって(笑)。すごいよかったですよ。でも歌詞を読んでたらすごい感動的だし、ぐっときちゃうっていう。
──古くからの、手の内わかっている者同士が楽しみながら作っているていう。
櫻木 : そういう空気感が録音できるっていうのはものすごいスキルが高いことだと思うので。
川上 : なんかアコギ叩いたような音も入ってるよね。
市川 : ヴォーカルの入れどころとかも「T.A.M.E.D」とか、すごいなと思って。
櫻木 : あれだけ緻密な音楽を作ってきたふたりが、コレをやるっていうか、本気でふざけている感じがあってそこはすごい無茶苦茶かっこいいと思って。
川上 : それでいてちゃんと新しい音をやってて。
櫻木 : マウント・キンビーの作品って、わりとはじめて聴くときは「ん?」ってつかめないところがあったりするんですけど、何度も聴いていくうちに馴染んでいくっていう感じがあって。そこから最終的には「無茶苦茶いいんだよな」ってなっていく感じなんですよね。今回もこの音とそういう感覚を育んでいきたいと思います(笑)。
──エレクトロニクスとバンド、そのどっちに完全によることもないっていう部分ではわりとD.A.N.とも近い部分はありますよね。
櫻木 : そういう部分では無茶苦茶似ていると思う。
市川 : なんだろうな、この絶妙なポップさがありながら、この感じ。
(ここで3曲目の「Audition」から4曲目の「Marilyn (feat. Micachu)」のイントロがかかる)
櫻木 : そうこの抜け感だよね。「おい、しっかりしろよ」って言いたくなるような。
──ベースとかはどうですか? もともと彼らはポスト・ダブステップからの人って感じなんで、ベースの表現に関しては特徴的なところもあると思うんですけど。
市川 : ベースはすごいかも。ある意味で憧れというか。前の作品とかは結構参考にしたりしてましたよ。これも人間味というか、キャラクターが出ていると思うんですよ。これを同じように他の人がやろうとするとできない感じだと思う。超技巧派みたいに決してうまくはないですし。ギターも弾くし、ベースも弾くしで。そのルーズさと、思いついたまんま弾いている感じがすごいなと思って。
川上 : ドラムもベースもすごいセンスでやっている感はあるかも。
市川 : ビートに対してベースラインが絡み合うように作ってあるとかじゃなくて、どっちかというと、歌とか他のメロディラインに寄ったベースラインという感じで。フレーズというか歌っている感じに近いのかな。
──鼻歌感?
市川 : そうなんですよ。鼻歌感覚で弾いている感じで、それはプレイヤーにはなかなかできない感じだと思う。
──新作のライヴの影響とかは、例えばはじめに大悟くんが言っていた「骨格がしっかりしている」とかそのあたりかなと思うんだけど。
川上 : 本当によく成り立っているというか。
櫻木 : おそらく、前まではライヴもふたりだけとかわりとケースバイケースだと思うんですけど、いまはもうライヴもふくめてサポートとかときっちりバンドでやっているという感じが強く感じる。
市川 : あとはビートの感じがこれまでとやっぱり変わったかなって思いますね。印象としては。
──クラウトロック的かなと、ライナーでは書いたんだけど。初期にあったR&B~ダウンテンポっぽい要素はほぼ皆無というか。
櫻木 : そうですね。
川上 : あと西海岸っぽい感じあるかも。ラフな感じとか。
MVしかり、サウンドがイメージと直結しているんですよね
──なるほど。前回のライヴ、この前の来日のときは観てないですよね。
櫻木 : 前にやったの、リキッドルームでしたっけ?
──4年前ですね。
櫻木 : ギリギリ行こうと思えばいけたんだろうけど、まだちゃんと知らなかったんだと思う。
──でも、その後、彼らの音楽と向き合ってからはD.A.N.の地図にはマウント・キンビーの存在ってわりと大きく存在感あるって感じですよね?
櫻木 : そうですね。世代的にはそれを聴いてやりはじめるようなストライクな世代というか。
川上 : エッセンスも取り入れていると思う。バンド・サウンドがありながら、エレクトロニックな要素もあっててで。
──朝霧のフェスでは、D.A.N.も出て、生で念願かなってライヴも観れる感じだよね。
櫻木 : そうっすね。
──今回は、ここまでのキャリアの部分で、ライヴの場慣れがすごそうだからライヴは良さそう。
櫻木 : なんかすごい野外の会場でやってるみたいな動画みたな…… モデラットと一緒にすごいでかい会場でやってる映像ありますよね。野音の5倍くらいありそうなところで。あと最近インスタとかみるとモジュラー・シンセとかもすごい使ってますよね。「これ、どこで使ってるんだろう」とか思いながら、モジュラーをモジュラーっぽく使ってないというか(笑)。
川上 : あとアートワークもすばらしいと思う。写真の感じと、今回の曲の感じとすごい合っている。
櫻木 : こういう写真の粒子の荒さとかローファイな感じは、この音のまんまって感じだよね。
──たしかに。
櫻木 : だから、そういうイメージでそもそも音を作ってるんじゃないかなって思いますね。MVしかり、サウンドがイメージと直結しているんですよね。
市川 : あの切り貼りの感じすごいよね。「デルタ」のMVとか。
──そう考えると、前作の緻密なサウンドの感じは、あの幾何学的なデザインの感じと合っているよね。
櫻木 : そうそう、あのデザインされたサウンドの緻密な感じと近いと思う。たしかに前作は音のデザインていうか、音響、音の鳴っている場所もこだわっている感じがしたから。でも、ちょっと緻密な感じでやるのは疲れちゃったんじゃないですかね(笑)。
──そいうえばいまふたりは、カイがロス、ドムがロンドンに住んでいて。
市川 : それはおもしろいっすね。それぞれの土地からの影響はありそう。
──さっき一瞬、輝くんが言ってた西海岸っぽいっていうのもあながちね。
川上 : そうっすね。
市川 : 天気いいところと、天気悪いところで作ったっていう(笑)。
──そういう意味ではライヴを生で観るのが楽しみなアルバムなのかなとか。
市川 : 今作はちょっとポップなのかな。
櫻木 : 人懐っこさがあると思う(笑)。
市川 : そのいい意味でのバカさ加減の抜け具合とかがいい感じだと思う。
──D.A.N.はオーガとのジョイント・ツアー、そして朝霧があってワンマンとかもですよね。
櫻木 : 今回のツアーはわりといけなかったところを行くと、そういう感じですね。
これまでのD.A.N.の新譜放談
『D.A.N.の新譜放談』第4回はこちら
『D.A.N.の新譜放談』第3回はこちら
『D.A.N.の新譜放談』第2回はこちら
『D.A.N.の新譜放談』第1回はこちら
MOUNT KIMBIE 来日情報
大阪 / 東京単独来日公演
LIVE : MOUNT KIMBIE
guest : yahyel
大阪公演
2017年10月6日(金) @Fanj Twice
OPEN 18:00 / START 19:00
前売TICKET¥6,000 (税込・1ドリンク別途)
※未就学児童入場不可
INFO: SMASH WEST 06-6535-5569
東京公演
WWW & WWW X Anniversaries
2017年10月9日(月)@WWW X
OPEN 18:00 / START 19:00
前売TICKET¥6,000(税込・1ドリンク別途)
※未就学児童入場不可
主催:シブヤテレビジョン
INFO: BEATINK 03-5768-1277
チケット詳細はこちらのページへ
http://www.beatink.com/Events/Mount-Kimbie-x-yahyel/
D.A.N.も出演、朝霧JAMにも出演
-It's a beautiful day- Camp in 朝霧 JAM 2017
2017年10月7日(土)、8日(日)@富士山麓 朝霧アリーナ・ふもとっぱら
出演 : 2017年10月7日(土) : BELLE AND SEBASTIAN / CARL CRAIG / BICEP(LIVE SET) / D.A.N. / EGO-WRAPPIN' / GARLAND JEFFREYS / LOGIC SYSTEM / MARTHA HIGH with オーサカ=モノレール / MOUNT KIMBIE / SAICOBAB / WILKO JOHNSON
出演 : 2017年10月8日(日) : Suchmos / THEO PARRISH / CHON / DJみそしるとMCごはんのケロポン定食 / jizue / LORD ECHO(LIVE BAND SET) / NONAME / 思い出野郎Aチーム / ペトロールズ / ROTH BART BARON / TXARANGO / UA / Yogee New Waves^ ^ チケット詳細はフェス公式ページへ
http://asagirijam.jp/
D.A.N.ワンマン・ツアー情報
11月から年末にかけての待望の7公演、ワンマン・ツアーがスタート。一般発売は 9月23日(土)より!
D.A.N. Oneman Tour “4231”
2017年11月17日(金)@仙台 Darwin
open18:30 / start19:00
2017年11月19日(日)@京都 MUSE
open17:30 / start18:00
2017年12月1日(金)@静岡 FORCE open18:30 / start19:00
2017年12月8日(金)@福岡 Beatstation
open18:30 / start19:00
2017年12月9日(土)@岡山 YEBISU YA PRO
open18:30 / start19:00
2017年12月14日(木)@札幌 KRAPS HALL
open19:00 / start19:30
2017年12月22日(金)@東京 LIQUIDROOM
open18:00 / start19:00
一般発売日 9月23日(土)
チケット料金 adv ¥3,500 / door ¥4,000
D.A.N.各音源も絶賛配信中
すでにロングセラーな『Tempest』ハイレゾ配信中
D.A.N. / TEMPEST(24bit/48kHz)
【Track List】
01. SSWB
02. Shadows
03. Tempest
04. Tempest (Neutral edit)
05. SSWB (AOKI takamasa Remix)
歌詞カードPDF & デジタル・オンリーのボーナス・トラックとしてAOKI Takamasaの「SSWB」リミックスも収録
【配信形態 / 価格】
24bit/48kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 260円(税込) / アルバムまとめ購入 1,200円(税込)
2016年クラシックな1stをハイレゾ配信中
D.A.N. / D.A.N.
【Track List】
01. Zidane
02. Ghana
03. Native Dancer
04. Dive
05. Time Machine
06. Navy
07. Curtain
08. Pool
【配信形態 / 価格】
[左]24bit/88.2kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 251円(税込) / アルバム 1,800円(税込)
[右]16bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 200円(税込) / アルバム 1,500円(税込)
アルバムまとめ購入で歌詞ブックレットPDFが付属
PROFILE
D.A.N. profile
2014年8月に、櫻木大悟(Gt,Vo,Syn)、市川仁也(Ba)、川上輝(Dr)の3人で活動開始。様々なアーティストの音楽に対する姿勢や洗練さ れたサウンドを吸収しようと邁進し、 いつの時代でも聴ける、ジャパニーズ・ミニマル・メロウをクラブサウンドで追求したニュージェネレーション。2014年9月に自主制作の音源である、CDと手製のZINEを組み合わせた『D.A.N. ZINE』を発売し100枚限定で既に完売。2015年7月にデビューe.p『EP』を7月8日にリリースし、7月にはFUJI ROCK FESTIVAL ‘15《Rookie A Go Go》に出演。 9月30日に配信限定で新曲『POOL』を発表。2016年4月20日には待望の1sアルバム『D.A.N.』をリリースし、CDショップ大賞2017ノミネート作品に選出される。7月には2年連続でFUJI ROCK FESTIVAL’16の出演を果たす。
D.A.N. Official Site
Mount Kimbie
ドミニク・メイカーとカイ・カンポスによるマウント・キンビー。かつてジェイムス・ブレイクもライヴ・メンバーとして在籍し“ポスト・ダブステップ”という言葉が広く認知され、ひとつの分岐点を迎えたエレクトロニック・ミュージック・シーンにおいて、中心的な役割を果たしてきた。コーンウォールで育ったカンポス。ブライトンで育ったメイカー。2人はロンドンのサウスバンク大学在学中に学生寮で出会い、当時熱中し始めていたエレクトロニック・ミュージック──とりわけ新興のダブステップ・サウンド──を通じて絆を深めていった。シーンに登場した2009年以来、マウント・キンビーは幾度も予想を裏切りながら、ベッドルーム・スタジオのプロデューサーから、近年最も完成されたエレクトロニック・アルバムのひとつを世に問うたクリエイターへと変貌、ポスト・ダブステップの最右翼として成長を遂げた。先に発表された 新曲にはジェイムス・ブレイクがヴォーカルで参加、ポスト・ダブステップの地平を押し広げた両雄の共演、3rdアルバムによって、マウント・キンビーはさらなる飛躍を遂げた。