哀愁のメロウ・サイケデリアを帯びたギターと歌、そしてその響き――ホセ・ゴンザレス新作を24bit / 96kHzで国内独占配信開始
まずはその哀愁を帯びたシルキーな歌声と、ギターで爪弾かれる旋律。彼の説明を読むのに、それを聴いてからだとしても遅くはないだろう。
スウェーデンの港湾都市、ヨーテボリ出身のシンガー、ホセ・ゴンザレスの新作が届いた。シンプルな、歌声とアコースティック・ギターという表現ながら、その世界観は唯一無二のものだ。いわゆるヨーロッパ的なネオアコやアメリカのフォークやブルースとも違った(が、それらの要素も含んでいる)、時に南米やラテン音楽の影響も感じさせる。そして、このたびリリースされたサード・アルバム『Vestiges & Claws』も、まさに彼のそうした音楽性が反映されたものだろう。
OTOTOYでは、本作を24bit / 96kHzのハイレゾ音質で、国内独占で配信を開始する。そのギター・プレイの指の動きすら見えてしまいそうな、さらにはその歌声の細やかな表現すら再現してしまいそうなハイレゾ音源で、本作の美しさをより深く楽しむべきだ。
José González / Vestiges & Claws(24bit/96kHz)
【配信形態】(各税込)
ALAC / FLAC / WAV / AAC(24bit/96kHz) : 単曲 250円 / まとめ購入 2,571円
【Track List】
01. With the ink of a ghost
02. Let it carry you
03. Stories we build, stories we tell
04. The forest
05. Leaf off / The cave
06. Every age
07. What will
08. Vissel
09. Afterglow
10. Open book
サイケデリアを響かせたその音楽性は、さらにディープにさまざまなものを迎えいれている
北欧からの…… といっても彼の音楽をそうした地域性と結びつけるほどばからしいことはないのではないだろうか。アルゼンチン人の両親を持ちながら、スウェーデンの港町に生まれたホセ・ゴンザレスは、少年時代からビートルズを聴きこみ、ボサ・ノヴァやフラメンコをお手本にギターを習得した。
キャリアの本格的なスタートは、2003年。デビュー・アルバム『Veneer』はスウェーデンで大ヒットを飛ばしたのち、なぜか、ルーク・スレイターやムーディーマン、セオ・パリッシュなどをリリースしていたテクノ / ハウスの名門たる〈Peacefrog〉からのワールドワイド・デビューを飾り、世界でも大きくブレイクした。続く2007年のセカンド・アルバム『In Our Nature』では、マッシヴ・アタックのカヴァー「Teardrop」収録でも話題となった。
その後はわりと長い間、客演も含めてリリースの頻度は少なかったのだが、2013年ベン・スティラー主演映画『LIFE!』(1947年の映画『虹を掴む男』のカヴァー)に主題歌「Step Out」を提供した。件の楽曲は、彼らしからぬ、ダイナミックなコーラスが壮大なスケールの楽曲となって、少々ファンを驚かせたかもしれない。
とはいえ、2014年には、1980年代初頭のNYにおいて、アンダーグラウンド・ディスコと現代音楽を行き来したチェリスト、そしてシンガーでもあるアーティスト、アーサー・ラッセルのトリビュート盤『Red Hot + Arthur Russell』に参加。「This Is how We Walk On The Moon」(『Another Thought』収録)をカヴァー。チェロとミニマルなコンガが淡々とバックを務めるオリジナルを、フラメンコ・ギターと抑制されたホーン・セクションによる、南米の香り漂うディープ・ハウス的なアレンジで哀愁の歌声を響かせ、その変わらぬ音楽性のさらなる進化を見せつけている。
そして本作である。ハンド・クラップやパーカッションなどシンプル、または少々のエフェクトなどが追加されているが、声とギターというその表現の中心は動かず、さらなる深みを見せている。特に印象的なのは、ここ数年大きな注目を集めているデザート・ブルース=サハラ砂漠周辺、マリなどのアーティストたちによるブルースの影響ではないだろうか。3曲目「Stories we build, stories we tell」や9曲目「Afterglow」などのギター・フレーズにそうした感覚を感じることができる。とはいえ、そこにはフラメンコ・ギターなども入り混じり、独自のモザイク模様でホセ・ゴンザレスのサウンドを構成している。そう、ギターと歌という至極シンプルな音楽性ながら、彼のサウンドを聴いているとアメリカのジョン・フェイヒー、UKのベン・ワット、さらにはウルグアイのエドゥアルド・マテオまで、さまざまな世界中のサウンドに頭のなかのイメージはつながっていく。特にハイレゾで聴けば、それらが溶け込んだ、メロウなサイケデリアがすっと身体中を心地よく包んでくれる感覚だ。
本人曰く「シュギー・オーティスとサイモン&ガーファンクルの間」と呼ぶ、そのサウンドは確かに、南米やサハラ砂漠を跨いで、ローファイなブルースとフォーク・ソングの間を行き来している。独特のサイケデリアを響かせたその音楽性は、さらにディープにさまざまなものを迎えいれていると言えるだろう。(text by 河村祐介)
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PROFILE
ホセ・ゴンザレス
1978年、スウェーデンのイェーテボリ生まれ。両親はアルゼンチン人。2004年、デビュー・アルバム『ヴェニア』が北欧で大ヒットとなる。プレスやラジオ局からの大絶賛、素晴らしいライヴを重ねてベースが出来上がったところで、2005年にSONYBRAVIAのCMにデビュー・アルバム収録曲「Heartbeats」が起用されたことがきっかけで、彼の音楽はヨーロッパのみならず全世界に飛び火した。シンプルながら美しいサウンド、基本的にアコースティック・ギターとヴォーカルというスタイルながらグルーヴ感のある演奏、そしてその低く豊かなヴォーカルに世界中が夢中になった。2007年3月に初の単独来日公演を実施し、同年サマーソニックでも出演を果たした。2007年9月、セカンド・アルバム『イン・アワー・ネイチャー』をリリース。前作をよりスタイリッシュに発展させたアルバムとなった。またマッシヴ・アタックの「Teardrop」のカヴァーも収録。2013年、ベン・スティラー主演映画『LIFE!』(原題 : The Secret Life Of Walter Mitty)に主題歌「Step Out」を提供した。2014年、エイズで1992年に亡くなったアーサー・ラッセルのトリビュート・アルバム『Master Mix : Red Hot+Arthur Russell』に「This Is How We Walk On The Moon」を提供。2015年2月、8年振り3枚目のアルバム『ヴェスティジズ&クローズ』をリリース。また彼は、スウェーデンのバンド、ジュニップ(Juip)のメンバーでもある。