ポスト・サブカル焼け跡派のパースペクティヴ──パンス(TVOD)インタヴュー:『年表・サブカルチャーと社会の50年 1968-2020〈完全版〉』
オトトイ読んだ Vol.4
オトトイ読んだ Vol.4
取材 : 河村祐介
今回のお題
『年表・サブカルチャーと社会の50年 1968-2020〈完全版』
パンス(TVOD) : 著
百万年書房 : 刊
百万年書房販売ページ
※限定300部、売り切れ次第販売終了
OTOTOYがビビッときた本、マンガを紹介する「オトトイ読んだ」。音楽関係の書籍はもちろん、それをとりまく時事ネタなノンフィクションやアート本などなど、音楽関連のもの、さまざまなトピックの書籍を紹介していきます。
今回はちょいと趣向を変えまして、なんと、年表……しかも超巨大なB1ポスター(天地1030ミリ×左右728ミリ)サイズ、さらにそれが4枚分にわたって繰り広げられる年表、その名も『年表・サブカルチャーと社会の50年 1968-2020〈完全版』。
こちらは、約1年前に刊行されたTVOD著『ポスト・サブカル焼け跡派』のスピンアウトといいますか、TVODのパンスによる、巻末に掲載されていた「年表・サブカルチャーと社会の50年」を大幅に加筆、ボリュームアップした拡大版ではありますが、その拡大のしかたたるや……。
書籍本編では、1970年代をスタートに2010年代までのポップ・カルチャー、主にミュージシャンたちを媒介にして、社会とサブ・カルチャーのさまざまな関係性やそのあり方をTVODのふたり(パンスとコメカ)が対談形式で論じたもの。そして今回の年表はまさにその後ろに広がる社会そのものを年表という文字で持って可視化した、そんな代物といえるのではないでしょうか。年表には政治、経済、風俗、犯罪といった社会的な事象と、音楽や漫画、文芸、批評、そしてインターネット以降ではSNSでの事件簿、といった事柄が年表として膨大に羅列されています。しかもタイトルにあるように、1968年から2020年までの約50年間、B1ポスター・サイズ4枚にわたって繰り広げられています。とんでもない、この途方もない作り出したパンスに今回はインタヴューを試みました。ちなみにこちらは限定300部だそうなので、欲しいと思ったら迷わず購入することをオススメします!
つねに傍らに年表がある人生
──まず、なぜ年表なんでしょうか、パンスさんのブログによると、かなり幼い頃から好きだったという話のようですが。
日ごろ「歴史」が好きと公言してはばからないですけども、よく考えたら「歴史」というよりも年表が好きなんですよ。小さい頃から暇さえあれば年表を読んだりしていて。よく一般的に「歴史好き」というと、幕末とか戦国時代とか特定の時代にフォーカスして、その中で活躍した人物=ヒーローが好きとか、あとはもっと戦争だったらミリタリー的なガジェットが好きだったりとか……僕はほとんどそういうものにはピンとこなくて、とにかくデータが好きなんですね。「誰が何をやった」という物語というよりは、歴史上起こったことをひたすらデータとして頭に入れていくのが気持ちよくてしょうがない、というのが小さい頃からずっと続いているんです。
──でも林家ペーさんの誕生日みたいに、網羅的に覚えているといるわけでもないですよね、どちらかというと思考の糧として年表があるという感じですよね。
そうですね。文章をを書くときは、まず最初に年表を見て、アイデアの源みたいにはなっています。
──自分用の年表を作り始めたのはいつごろなんですか?
メモみたいなものは、ずっと小学校の頃から作っていて。「この頃こんなことがあった」みたいな、でもそこから思春期にCDとか買い始めるようになって、作品のリリース年代なんかを大学ノートにメモったりして徐々に自分の年表を作っていきました。
──子どもの頃からの筋金入りの年表好きだというのはよくわかりました。ぽっと出での年表好きじゃないという(笑)。
そうですね(笑)。いわゆる「絵本」ではなく「図鑑」がひたすら好きなお子さんっていらっしゃるじゃないですか? それと同じような感じですね。僕はそれが「年表」だったという。
──いわゆる絵本的な物語とか、具体的なモノや生物を網羅している図鑑でもなく、社会を構成するデータみたいなものに惹きつけられたという。
そうなんです、データがすごい好きなんです。ちっちゃい頃の写真とかみると、年表や地図をみている姿しか出てこなくて(笑)。常に傍らに年表がある。
──筋金入りですね(笑)。じゃあずっと書きためてきたものを、むしろ小出しにという感じなんでしょうね。昔はノート、今はどうやって作っているんですか?
いまは、googleドキュメントに入れてます。今回出した年表ももともとはGoogleドキュメントに入れていたデータをもとに作りました。延々と何年何月何日、何が起こったのかというテキストが入っていますね。なのでデータ的には、今回出したものよりも、さらにもっとでかい年表もあったりするんですけど(笑)。
──そのタイトルというかテーマ、今回はサブカルと社会というところで志向を持って取捨選択しているという。
そうですね。結構絞っていますね。タイトル通りのテーマで、今回は日本のことに特化しているんです。さすがに海外のリリースとか入れちゃうと大変なことになっちゃうので。
この年表でなにを見出したいかというと、日本の“ポスト戦後社会”なんですね。それがどのように形成され、いまどうなっているのか、ひと目でわかるようにしたいんです。学校で日本史を習っても割と戦後ぐらいまでで、その後はものすごい駆け足で、昭和があって、平成になって、今があります、みたいな感じで終わるじゃないですか。
──パンスさんとたしか4歳ぐらい違いますけど、1990年代後半に義務教育を受けた僕らの世代だと駆け足で最後、プラザ合意があってバブルがあってはじけましたで終わる感じ(笑)。
そう、まさしく(笑)。おそらく今だと10年前の出来事として、東日本大震災とかで終わるんだろうなという。だけどここでは、その駆け足のところを無茶苦茶細かくやってみたということです。
──応、柱としては、社会的事件というのがまずあって、そこに音楽や映画、文学、あとは批評や思想的な日付が入ってくる。具体的にはリリース日や話題になったというところで。
そうですね。