OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.54
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
追悼:アンドリュー・ウェザオール
去る2月17日、アンドリュー・ウェザオールが亡くなった。自分にとって、時代を経ても好きなアーティストのトップのひとりと言ってもいい。特にある種の音楽的な価値観の下地が作られた思春期から20代前半に聴き込んだ、キース・テニスウッドとのトゥー・ローン・スウォーズメン名義の作品にはことさら思い入れがある。ベストは、ディープ・ハウスとエレクトロ、そしてアブストラクト・ヒップホップなどが入り交じった〈Emissions Audio Out〉時代の音源で、なにか1枚と言われれば『Stockwell Steppas』だ(OTOTOYにはない)。もちろんそれ以前のセイバーズ時代のトランス~ダブも、〈Warp〉時代のエレクトロ~サイケデリックなガレージ・ロック路線、ジ・アスフォデルス、ここ最近のソロ名義の作品も好きだ。数年前にリリースされた、旧友のニナ・ウォルッシュとのサイケデリックなビザール・エレクトロなThe Woodleigh Research Facilityの作品もぜひともチェックしてもらいたい逸品(これもOTOTOYにはない)。ここに集めた10曲、全てが代表曲ではないけれどとても良い曲ばかりだ。どこかメランコリックな雰囲気を漂わせながらサイケデリックでダビー、という、彼の美学の一端(もちろん他の側面もあるけどね)が垣間見えるはずだ。ダニエル・エイヴリーのような新鋭のフックアップや大量のアンダーグラウンドなダンス・アクトへのリミックス仕事、そしてその怪紳士とでも言うべき風貌からしても、どこかUKアンダーグラウンドのDJカルチャーの守護者といった感じであった。訃報の際、一部のメディアを除いて日本のその追悼文ではプライマル・スクリームの“Loaded”のことばかりを書き立てられていた。もちろんすごい曲なんだけど、彼のアーティストとしてのキャリアはその後も約30年に渡って続いたわけだが、ほとんど無視。どうなのよそれ。ロックだけが世の中を変えたわけじゃないのだよ。ディープ・ハウスやダブ、エレクトロにだって人の価値観を180度変えてしまうことだってあるんですよ。という感じで選びました。合掌。