”最高音響”極太ベースをハイレゾでーーHONDUB HIROAKI、ファースト・アルバムをリリース
姫路を拠点に活動をするサウンドシステム集団“最高音響”。サウンドシステムとは、ジャマイカでレゲエを育んだ移動型の巨大なPAシステム、そしてそれをオペレートするクルーを示す(ときにそこに所属するDJやMCも)。巨大な音響機器の集合体というサウンドシステムの特徴もあって、基本的にはローカルな存在であることが多いが、この最高音響は姫路に拠点を置きながら関西地区はもちろん、東京やその他のライヴ、フェスなどにも招聘されるほど全国規模で活躍している類い稀なるサウンドシステムだ。もちろん、そうした活動の源泉は、彼らの音へのこだわりへの高い評価と言えるだろう。
この最高音響がこのたび、音楽レーベル〈Saiko-Onkyo Label〉発足させた。その第一弾はHONDUB HIROAKI。そのサウンドは直球のデジタル・ニュー・ルーツ・ダブとなっている。まさにその低音はサウンドシステムとともに育まれてきたからこそ、生み出されたバランス感で存在感を示している。
今回、OTOTOYではその音源をハイレゾ、24bit音源で配信。またアルバム1曲「LION ROCK」をフリーで配信。ぜひともその低音とエコー、そしてリズムによる空気の暴力をお試しください!
>>「LION ROCK」のフリー・ダウンロードはこちら<<
HONDUB HIROAKI / DUB YOU TIGHT(24bit/48kHz)
【配信フォーマット / 価格】
WAV(ハイレゾ、24bit/48kHz) : 2,100円 (単曲は各250円)
【Track List】
01. INTRODUCTION
02. POLYUSHKA-POLYE
03. KUNTA KINTE
04. KUNTA KINTE PT.2
05. NIPPONIA
06. BLACK & WHITE feat. JAH93
07. BLACK & WHITE -BLACK EDIT-
08. GAVOTTE
09. LION ROCK
10. LION ROCK PT.2
11. YABAI ABUNAI feat. ORIGINAL KOSE
12. YABAI ABUNAI DUB
INTERVIEW : HONDUB HIROAKI
実際、ある種の“ブッキング”されるシステムとして、彼らが音を出すということのこだわりはアーティストの表現活動と同様のものとは言えるものだが。日本でも各地でリスペクトされるサウンドシステム“最高音響”。その音のこだわりが、今度はレーベル、アーティスト活動へと向けられた。
サウンドシステムに関しては、以前にはコチラで詳しく書いてるので参照を⇒『ダブ入門』
レーベル〈Saiko-Onkyo Label〉の第一弾アーティストは、彼らとも近しい、関西のダブ・アーティスト、HONDUB HIROAKI。 そのサウンドは、UKのジャー・シャカを始祖とするデジタル・ニュー・ルーツ・ダブ(註1)を、現在のベース・ミュージックの感覚でアップデートさせた感覚のもの。例えばOutlook Festivalなどに代表される現在のレゲエ系サウンド・システム・カルチャーとダブステップ由来のベース・ミュージックの交点に生まれてきているサウンドと近い感覚を持っている。
さて、彼はどんなアーティストなのか? メール・インタヴューにて接触を試みた。
インタビュー & 文 : 河村祐介
デッカい低音にやられましたね、空間ごと揺らしちゃう感じ
ーーアルバム全体、そして“Kunta Kinte”(The Revolutionaries~Mad Professorなどのダブで知られるクラシック・リディム。(とくにUKのサウンドシステム・カルチャーで人気あがある)の解釈を聴くと、とてもUKニュールーツ・レゲエのサウンドシステム・カルチャーの影響がとても大きいと思いますがいかがでしょうか?
HONDUB : そうですね、UKとかフランスなどヨーロッパのサウンドシステム・カルチャーには刺激を受けてるし、影響はされてると思います。
ーーサウンドという部分に重点を置いて、リスペクトするアーティストを上げて下さい。
HONDUB : KING ALPHA、IRATION STEPPAS、OBF SOUNDSYSTEM、KING EARTHQUAKE、MIGHTY MASSA、SAK-DUB-I、MASASHI(ROOTS FAR I)、DJ KRUSHなど。
ーーダブという音楽に出会ったきっかけはなんでしょうか? どんなところに衝撃を受けましたか?
HONDUB : 昔、大阪の〈トライアングル〉というハコでGOTH-TRADさんのライヴを初めて観たときにダブ・ミックスというものにも初めて触れました。当時は、ヒップホップのMCとしてラップしたり、トラックを作っていたので、DJ的な機材以外の”マシン”を使ったライヴがかなり新鮮だった記憶があります。「あ、今スネアにだけリバーブかけた」とか。あとはデッカい低音にやられましたね、空間ごと揺らしちゃう感じというか。
ーー逆に、ルーツでもあるヒップホップから受けた影響みたいなものは現在の音楽にも残っていると思いますか?
HONDUB : もちろん残っていると思います。曲の作り方もサンプリング使いまくるし、なによりヒップホップを作ってるときから意識的なところがあまり変わっていないです。自分にしか作れない、オリジナルでヤバい曲が作りたいなって思ってます。
ーーこうしたダブのトラックを作り始めたのはいつ頃から?
HONDUB : 2007~8年くらいだったと思います。最初はベースの効いたヒップホップみたいな、ダブみたいな感じでしたね。
ーー今回は、サウンドシステム、最高音響クルーのレーベルからですが、彼らとの出会いは? いつ、どんなところで?
HONDUB : 一番最初に「最高音響」をくらったのは、ZETTAI-MUのアニヴァーサリーに導入されてたとき。そこに遊びに行って、という感じだったと思います。それからしばらくしたら神戸に〈STUDIO BAPPLE〉という最高音響搭載のリハーサル・スタジオができて、よく遊びに行くようになりましたね。そこから自然に最高音響本拠地の姫路〈fab-space〉にもライヴや遊びに行ったりするようになって、一緒に遊ぶようになり繋がっていきました。
ーー最高音響との出会いによって、あなたの音楽は変わりましたか?
HONDUB : ガラリと変わりました。最高音響はレゲエ以外でもなんでも綺麗に鳴るから、それこそヒップホップからテクノ、昭和歌謡までとにかくいろんな音楽のすばらしさを教えてもらいました。曲作るときも「じつはベースよりキックのほうが重心が下」だとか、もう目からウロコの発見しかないですね。
ーー彼らのレーベルからアルバムをリリースすることになった経緯を教えて下さい。
HONDUB : 最高音響はつねに進化してて、ケーブル作ったり、タンテやインターフェイスの改造をしてたりもするんですが、ヒロさん(最高音響のボス:武内宏貴)が「レーベルもしたい」って言い出して。「それじゃ俺と一緒にやりませんか? 第1弾で俺のファースト出しませんか?」って話になって。そこから一緒にレーベルを始動、そしてこの『DUB YOU TIGHT』をリリースすることになりました。
ーーやはり、楽曲作りにおいて、サウンドスシステムでの鳴りみたいなところが最も重要視しているいるんでしょうか?
HONDUB : そうですね。ぜひ下から上まで鳴る環境で聴いてみてほしいですね。
ーー最高音響のシステムで、制作段階でテスト・プレイするなんてことはあったんでしょうか?
HONDUB : ミックス、マスタリングはほとんど最高音響で作業しました。いい感じになったんじゃないかなと思います。
ーー今回のアルバムでは、GREEN GREEN(註2)のKOSEさんフィーチャリングしてますが彼をフィーチャリングした理由、また歌詞などで話したところがあればお教えください。
HONDUB : KOSEさんはアーティストとして昔から好きで、リリックも飾らない感じがリアルでグッとくるというか。だから前から一緒に曲作りたいなとは思ってたんです。お互いの家が近いこともあって、去年くらいから音遊びしに行き来するようになったりして。なので曲ができたのは自然な流れだったと思います。歌詞の内容についてはお任せしました。最初にレベルミュージックが作りたいとだけ伝えたんですが、KOSEさんがほんまにいい感じにしてくれて。彼に頼んでよかったと思います。
ーーアルバム全体で伝えたいことはありましたか?
HONDUB : 俺は別にラスタじゃないし、海外じゃなく日本産、俺らにしかできないオリジナル・スタイルのステッパー(註3)、ダブというのを意識して作っています。その辺りを感じて、楽しんで頂けたら幸いです。
編集注
UKニュールーツ・レゲエ(註1)
1960年代より、ジャマイカ系移民としてロンドンでサウンドシステムを率いて活動していたアーティスト、ジャー・シャカ。彼が1980年代初頭、ジャマイカでダンスホールの台頭によって死に絶えたルーツ・レゲエを、ロンドンでプレイし続けることによって生まれたUKを中心としたルーツ・レゲエ・シーン。ジャマイカから供給されなくなったことによって、UKの周辺のアーティストたちが独自のルーツ・レゲエを作り出した。その中心はサウンドシステムのシーン。1980年代末にはデジタル・ダンスホールとは違ったアプローチで、ドラムマシン、シンセなどを使ったデジタル・ニュー・ルーツなどを作り出した。
GREEN GREEN(註2)
関西を中心に活動するラガ / ダブ / ベース・ミュージックのグループ。フロントマンにProfessor ChinnenとOriginal Koseの2MC、トラックメイカーにはEqualizer。さらにはベーシスト、bAttAがグルーヴを増強する。
ステッパー(註3)
ルーツ・レゲエ時代に作られた、軽快な走る様なリディムのことを総称して言う。特に、ジャー・シャカが好んで使ったため、その後に生まれたデジタル・ルーツ・レゲエにもステッパー・リズムをリモデルしたようなリズムも多い。またBPM的にもリズムの構造的にも、イーヴン・キックの楽曲も多いので、テクノやハウスなどとも親和性が高い。
RECOMMEND(豪)
V.A / RADIO RAGGA CHANNEL(24bit/48kHz)
大阪のReggae&BassMusicのイベント「RAGGA CHANNEL」にゆかりの深い関西、関東、函館、博多等、全国から強者アーティストが大集合! 様々なジングルを挟み、外国の垂れ流しネットラジオをイメージとして制作された今作品。異国のベース天国にほりこまれた気持ちで肩をゆらして聴いてほしいすわ。
浪花男 / なんやかんや ~e-mura (Part2Style) remix~
〈頭にあるのは… なんやかんや言うても"金"のこと~♪〉と、米国の狂気的デジタル集団=SRCの10周年を記念して制作された浪花男「なんやかんや」が、e-mura(Part2Style)によるサイバー・ソカ風味に改造されてカマゲン!!
Lee Bannon / Alternate/Endings
現代っ子ジャングルといえばコイツでしょ!! ヒップホップ畑から、こういうとんでもない若手で現れるってことはどういうことか? 各自、10年後に回答提出。
V.A / Japanese Mad Scientists
Jar-Beat Recordのdj noaの呼びかけの元、設立されたレーベル〈Bass In Dope〉からの第一弾となるコンピレーション・アルバム。日本発のミュータント・ダブがぎっちり収録された超重力作。
bim one production / Gun Shot E.P.featuring Shanti D
元Part2styleのリズムメーカーでありセレクターでもあったe-muraと1TAによる、日本から世界へレゲエ・ミュージックの進化を促すエレクトロニック・レゲエ・プロダクション"Bim One"によるお披露目第一弾となるシングルEP。カップリングの「Chicken Fight Riddim」は、ステッパーとジュークをミックスさせたようなトラックで今までのレゲエ史上聴いたことがない新しいへヴィー・ベース・バンガーとなっております。ネクスト・レベルに行くBim Oneプロダクション、要注目です!
PROFILE
HONDUB HIROAKI(ホンダブヒロアキ)
10代の頃、HIP HOPにのめり込みターンテーブルやマイク、サンプラー等に触れ始める。その後クラブ、ライヴハウスやレコード屋、仲間との情報交換で様々な音楽と出会い、気づかぬうちにベース・ミュージックに取り憑かれていく。そして2008年、ライヴ・ダブ開始。楽曲は勿論、ハイからローエンドまでもを充分に効かせた自家製オリジナル・トラック。関西を中心とした様々なアーティストの作品に、リミックスやトラック・メイク、DUBWISE等でも参加している。2013年、姫路は最高音響のレーベル部門"Saiko-Onkyo Label"を社長武内と共に立ち上げ、レーベル第一弾として自身の1stアルバム『DUB YOU TIGHT』発表が決定。
最高音響
最高音響は、姫路クラブシーンの「fab-space」オーナー武内と、木工職人の小野が作り出したサウンドシステム。2006年に自身がオーガナイズする「LION ROCK FIESTA」にて始動。日本で”音”そのもので感覚を表現すると言うジャンルがある事を発見したオリジナル音響システムだ。根っからD.I.Yな2人が 出会った奇跡が巻き起こす音響ファンタジーであり、奥深く心地よく痺れるようなシステム前の異空間をつくりあげる唯一無二のサウンドシステムなのだ。いうなれば、聞かせるために鳴らせているのではなく、感じる時にはすでにそこにあなたと共にあるのだ。既存 のスピーカーで鳴らすのは、MIXCDを使うDJみたいで、いやスーパーでバーベキューセットや寄せ鍋セットを買って来 て奉 行ぶ る感じとなんとなく似ていて恥ずかしいのだ。現在Bappleのチカラ担当も加わりさらなるパワーアップで各地の音好きを揺らし続けている。