白昼夢のトロピカル・ミニマル・グルーヴ──D.A.N.の新作『TEMPEST』を巡って
1stアルバム・リリースからわずか1年、あれよあれよという間に、フジロック・フェスなど各種フェスに出演、さらにはリキッドルーム・ワンマンのチケットは即完……そんなバンドへと成長したD.A.N.。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの彼らから、まとまった作品としては1年ぶりとなるミニ・アルバム『TEMPEST』が届いた。すでに昨年末のデジタル・リリース & MVの公開でヒット、さらにはライヴでは定番となっている「SSWB」に加えて、こちらもすでにライヴで披露されている「Shadows」、「Tempest」といった新録曲が収録。今回ミックスを手がけているAOKI takamasaとFumitake Tamura(BUN) のユニット、Neutralの再構築による「Tempest」エデット・ヴァージョンも。またハイレゾ版デジタル・パッケージには、すでに完売となっている12インチ・シングルに収録されていたAOKI takamasaの「SSWB」リミックスがボーナス・トラックとして収録されている。さて本作から、半野喜弘、Jazztronik、大橋トリオなどを手掛ける早乙女正雄、ミックスエンジニアに日本を代表する電子音楽家、AOKI takamasaを迎えた新体制で制作された新曲はいかに? 早速3人に話をきいた。
歌詞カードPDF & デジタル・オンリーのボーナス・トラックとしてAOKI Takamasaの「SSWB」リミックスも収録!
D.A.N. / TEMPEST(24bit/48kHz)
【Track List】
01. SSWB
02. Shadows
03. Tempest
04. Tempest (Neutral edit)
05. SSWB (AOKI takamasa Remix)
【配信形態 / 価格】
24bit/48kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 260円(税込) / アルバムまとめ購入 1,200円(税込)
INTERVIEW : D.A.N.
未リリースながら、昨年秋頃にはすでに彼らのライヴ・アンセムとも言える楽曲になっていた「SSWB」。夏の日の甘いジレンマを、スティールパンのメロウな響き、そしてメランコリックなメロディとともに追憶する──このディープ・ハウス・グルーヴを援用した楽曲は、すでに前述のように彼らの代表曲とも言える楽曲となっている。そして新ミニ・アルバム『TEMPEST』には、この「SSWB」を含む2曲の新録が収録されている。シンプルで力強いベースラインにメロディが浮遊する「Shadows」。そして表題曲は「SSWB」以降とも言える楽曲で、10分を超える大作となった。楽曲前半を貫く、ヒプノティックなアフロビート・ライクなリディム・デリヴァーは、その歌詞とともに、どこか南米あたりの寂れた流刑地を描き出す。そんなサイケデリックなヴィジョンが、抑制されたトロピカル・グルーヴから、そしてメロディから、白昼夢のように浮かび上がる。それはモーリッツ・フォン・オズワルドやマーク・エルネストが近年追求する電化されたアフロビートへの、日本のポップ・ミュージックからの回答とも言えそうなサウンドだ。後半は、ビートダウンしたドラム&ベースとともに、いつのまにかトロピカルな瞑想からコズミックなヴィジョンへとゆっくりと上昇していく。そこに弛緩した10分はない。さらに表現力をましたバンドの「いま」を端的に示す楽曲だ。1stアルバム・リリース後も、さらなる進化を続ける彼らに話を訊いた。
インタヴュー & 文 : 河村祐介
写真 : 作永裕範
ぬるいことをしてられないなって
──1stアルバムのリリースから、この1年で環境がガラッと変わったと思うんだけど。端的に言えばフジや各種フェスに出て、ワンマンはリキッド即完というバンドになったじゃないですか。どうでしょう、手ごたえ等々。バンドとして。
川上 : 手ごたえはあるんですけど、同時によりよいライヴをしないといけないというか。ぬるいことをしてられないなっていう責任感のほうが最近は強くなってきていますね。
──なるほど。じゃあなんかすごい簡単な言い方で恐縮だけど、プロ意識が強くなったというか。
川上 : はい。以前からずっと意識はしてましたけど、より、今この現状を目の当たりにして、目の当たりにしてというか実感してみたいな。例えば、Suchmosとか、在日ファンクとかと一緒にツアー回らせてもらったときに、もうライヴのレベルとかが全然違うなって思って。負けないようにこれくらい頑張っていかないとなって。
市川 : この1年間結構いろんな上の人たちと一緒にやらせてもらう機会とか多くて。そのたびにそういうことを思うようになって。
──要はワンランク上の動員とかキャリアをもっているアーティストとの共演が多くなって、その部分で学ぶものがあったと。
川上 : そうですね。
市川 : 長く、10年、20年とやってる人と一緒にやったりして、やっぱ自分たちとの違い、いま自分たちに足りてないものは何かとか考えるようになって。
川上 : アルバムを出したことで、それ以降、呼んでもらえるレベルになれたというのはありますけどね
櫻木 : なんか、意識はより高くなっていって、もちろん責任感はあるんですけど。それと同時に音楽的な面では、どんどん深みに入っていけるような感じというか、その深みに入っていくという挑戦ができているという感覚もありますね。それでいて、お客さんも、リキッドルームとか来てくれたりとか。それはうれしいなって感じです。いいバランスでやれてるなって。
──では、本題の新作の話に。その今言った手ごたえであるとか、より強くなったプロ意識みたいなところ、言ってみれば自分たちの音楽がある程度支持されているということが本人たちにも理解できているという状況があると思います。そして転じて、新作『Tempest』は、その状況から一歩踏み込んだ作品の作り方ができたのかなと。3〜5分のいわゆるポップ・ソングの尺ではなくて、10分以上の曲をやるというところが端的ですけど。これまでの手応えがあって、とにかくそこから自分たちが自信をもって作ったものというか。
櫻木 : そうですね。
──言ったら、リスクもあるわけじゃない。普通にインディ・ロック・バンドを聴いている人からしたら、楽曲が長いというだけで「ちょっとわかりにくいことをやってるな」と思われる可能性もあるわけじゃない。
川上 : 自分たちがかっこいいって思えたら、間違いないって思ってやってるんで。自分たちがかっこいいと思えるところまで持っていくのがすごい今回は大変でした。納得するまで詰めるのが、ギリギリまで大変で。
市川 : 妥協……時間とかも制約が色々あったりして、このまま自分たちでこれだって思えてないのに、このままやるのかなっていう方が怖い。そっちの方が不安というか、リスクというか。
──納得のできないものを世の中に出すほうが、自分たち的にはつらいと?
市川 : そうですね。
──でもその中の一片として「SSWB」は出ていて、OTOTOYもすごく売れて、MVとかも話題になって、アナログも出て。まさに受け入れられたという。
櫻木 : 反響はありがたいですね。物凄い派手だったりとか、物凄いキャッチーでわかりやすいというわけではないじゃないですか。いや、うれしいです。
川上 : 僕たちがおいしいと思うところを同じく美味しくいただいてもらえたら。うれしいです。
──これまでの作品との大きな違いは、レコーディング、ミックスが葛西敏彦さんというところから変わって、楽器のレコーディングは早乙女正雄さん、AOKI Takamasaさんのミックス、さらには砂原良徳さんのマスタリング(シングル「SSWB」リリース時、今回の『TEMPEST』は木村健太郎がマスタリング)で進んだと思うんですけど。
櫻木 : その1stアルバムを作って以降、音響的な部分で、目の前で音が鳴ってるような立体感のある音像をやりたいなって思ったんです。僕は、そんなことに気づかされたのがAOKIさんの音源だったりして。それで、AOKIさんにミックスを頼みたいなって思って。丁度1stアルバムを出す前ぐらいに初めてAOKIさんと僕は会ったんですけど「なんか、ミックスやらしてえな」って言われて。「それだったら是非」みたいな感じで話が進んで。
川上 : 1stアルバムは、あれはあれでよかったんですけど。僕はドラムが一番気になってて。空間を広げようとすると、レイヤーするしかないっていう感じだったんで。もっと空間的に広げたいなと。
櫻木 : 1stアルバムは、ミックスする人がレコーディングもしていて。おそらくレイヤーする前提で録り音をしてたというか。
──ある種、すでに設計図ができていて、レコーディングをするという作業だった?
櫻木 : そう、頭の中に設計図があってという感覚でやってくれてて。でも今回は僕らが設計図を持って、それをやれた方が自分たちの求めたサウンドにはなるよねっていうことになって。そこをAOKIさんがくみ取ってくれて。
──いきなりレコーディングのコンセプトが違ったということか……。
川上 : 今回はレコーディングも、ミキシングも、マスタリングも、全部分けてやって。それが一番いいなって思って。
市川 : レコーディングしてくれた早乙女さんも、レンジが超広いというか。超録り音がよかくて、びっくりしました。レコーディングし終わってすぐに聴いたときの音の良さにちょっと引くぐらい。
櫻木 : 早乙女さんってバックグラウンドが70年代のソウルだったり、黒人音楽らしくて、やっぱりそういう図太い音を知ってる感じ。自分の印象としてはドラムの録り音がとにかく良かったよね。タムとかがめっちゃ立体的に鳴る。流れるように。
川上 : びっくりしたのは、ちゃんとプレイしてるようなら、リアルにドラムを叩いてる位置に聞こえるっていうのは凄いなって思いました。
──楽曲のアレンジもレコーディングに影響された部分ってのはある? こうやって録れてるんだったら、こういうアプローチでいきたいみたいな。
櫻木 : そうです、そうです。素材がものすごいいい音で録れているから、余計な音を足さなくていいので、それが結果的にどんどんミニマルになっていったというか。
市川 : 結構プリプロの時点では入れようと思ってた音を、レコーディング終わって、ポスプロの時に抜いたりとか。ベースも1stだと結構、重ねまくってたんですよ。その曲自体にはそういった音で録ったベースが必要な音だったってのもあるのですけど。質感とかを作るために、オクターブ高いので全く同じものを弾いて、録ってみたりとかして。でも今回はそういうのが無くても。
──ほぼ一発録りみたいな。
櫻木 : そう。
──実は録り方としてはバンド・サウンドというか、バンドの一発録りに近いというか。
市川 : めっちゃバンドですね
櫻木 : そう。AOKIさんが、逆にエレクトロの人が、そういうすごい生々しいバンドらしさを持った音にしてくれて。僕らはその逆でエレクトロのほうに行きたいみたいな部分がちょっとあったりするから。面白い光り方をしたというか。でも本当に、肝はシンプルなバンド・サウンドだと思う。そのなかでおもしろいことをやりたいという感じのアプローチなのかもしれない。
──ほぼ、楽器のところはいじらずっていう。
川上 : 素材そのまま、それを一回やりたかったんですね。
櫻木 : すごいプレーンな状態で。
楽器を演奏することの楽しさみたいなのが出てる
──今回わりとドラムの音が印象的で、特に「Tempest」のドラム。パチッとしたアタック感というよりも、割と流れとかが意識されてるのかなと思ってて。叩き方が変わったのかなと思ったんだけど、それよりも意外ともしかしたら音の録りの部分が大きいかもなんすね。
川上 : そうですね。レコーディング当日まで完璧にはドラムパターンができてなかったんですよ。前夜に、次の日の朝録るためのやつを作るみたいな感じでやってて。で、次の日の午前中に仁也とふたりですごいやってたんですけど、その時間がすごい修行みたいな感じで……細かいところをずっと2人でやってて。その時間で、無駄のないフレーズができたというか、なんでしょうね、変な感覚でした。
──なんかあれのドラムは今までと感覚がすごい違ってて。まあ後半のリズムが変わってブレイクビーツぽくなるのは逆に、凄いいつものファンキーな感じが出ててるんだけど、前半は何というか、幽霊が叩いているというか。
川上 : トニー・アレンとかのアフロビートの感覚とかを、自分なりに落とし込もうとした結果ですかね。
櫻木 : めっちゃかっこいいよね。
──あのドラム感は、さらに言えばなんかちょっとダンスホール・レゲエに聞こえたこともあったりして、すごい面白いなって思ってて。モーリッツとトニー・アレンがやってたのが好きって言ってたから、アフロビートというのはあったけど、なんかスティールパンのせいかトロピカルなダンスホールっぽさもあったりして、アフロビートとダンスホール・レゲエの感覚が変にマッチしてて「この人たちは何をやっているんだろうな」と。
櫻木 : うれしいわ。
川上 : ミニマルな中に不規則性みたいなものもを入れたくて。ちゃんと自分でそれは意識してて。でも、それぞれが絡みあっているみたいなのものを目指して。僕が先に録るんですけど、で、そのあとに仁也が細かいところを、さらに自分がドラムをの細かいところをやって。まあレコーディングだからできるんですけど、塗り替えていって。変な感じに仕上がって。
──あの「Tempest」のアレンジって言うのは、結構時間かかった?
櫻木 : そう。実は今回は1stよりも一曲にかける時間が物凄い長くなってて。その、行程的にはプリプロがあって。で家に持ち帰って。レコーディング挟んで、ポスプロまでうちでやって、AOKIさんに持ってくみたいな。
──本当、今回は楽器なんだよね。
櫻木 : そう。楽器を演奏することの楽しさみたいなのが出てる気がする。
──ライヴの経験とかが大きかったりする? 去年、それなりの数をそれなりの人たちの前でこなしたんだと思うんだけど。
櫻木 : ああ、それはあると思う。
──「SSWB」に話はもどるけど、ずっとライブでやってた曲じゃないですか。多分、1stのリリパのワンマンの頃にはもうやってたじゃないですか。
市川 : ワンマンぐらいからすね。1stの後にできた曲で。
──ちょうど一年くらい前に、手をつけた曲ってことなのかな。もっとも楽曲の録音はまた置いといて。
川上 : うーん「Shadows」も、「Shadows」があったんじゃない? 先に。
櫻木 : あったね。
──ちなみに、さっきのトニー・アレンじゃないけど、「SSWB」を作るときに、こういう曲にしたいみたいに思ってた曲ってある?
川上 : あれじゃない? クラウドフェイス。
櫻木 : 河村さんが教えてくれた、クラウドフェイスとか。
──あーうれしい。でもあれってピュア・テクノというか、かなりシンプルなテクノの曲だよね。
櫻木 : そうですね。
市川 : ベースラインがああいう感じということです。ああいうシーケンスっぽい。ひたすら弾いてて、出てきたやつです。
──「SSWB」はディープ・ハウスっぽいグルーヴがあるよね。そこかな、シンセベースのループの、平坦だけどグルーヴがあるっていう。それをベースで再現しているっていうか
市川 : そうそう。
川上 : ドラムはそれでドライブするような、もう、かっこいいやつ。
櫻木 : そう、でも「SSWB」が僕らにとって結構大きかった気がする。曲として。
──あれは、俺も初めて聴いた時、すごいなと思って。すぐにレーベルのスタッフの人に早く出した方がいいってワンマンの後に言った覚えが(笑)。
櫻木 : お客さんの低域のグルーヴをキープっていうか。キーワードがあれですけど、そのキーワードが成立してて、かつ、ちゃんと歌ものとして成り立つっていう。
いいリズム、ベースがあれば。それと歌だけで
──そうだよね、「Tempest」もそうだけど、やっぱりそこがD.A.N.なんじゃないかと。あのトラックで、ポップミュージックとしてしっかりと到達できる展開とメロディ、アレンジがある曲というか。その辺は意識はする? 「ちゃんとできるだけ多くの人に聞いてもらえるメロディ」とか。
櫻木 : うーん、多分僕が思いつく歌のメロディが結構ポップなんです。無意識に。結局今回作業してて思ったけど、いいリズムがいいメロディに相互作用してると思ってて。こう、現代のポップミュージックだと色々着色されすぎるところがあるけど、割とその、いいリズム、ベースがあれば。それと歌だけで成り立つんじゃないかと。
市川 : 歌は、本当いいですからね。結構歌から作ることも多かったりんで。
──大悟くんが作ったメロディとかそういう歌から、肉づけしていくという?
市川 : セッションでやってメロディが出てきたりとか、大悟が家で録ったデモ歌とかがあって、それをもとにみんなで演奏したときに歌に影響されてリズムが出てきたりとか。だから相互作用ですね。やっぱりちゃんと歌ものとして成り立つ、というのはそこが大きいです。そこは分離しないっていう。
──「Shadows」に関しては、なんか結構ベースが軸になっているのかなと思っているんだけど。
川上 : 割と古株ですね、この曲。
──楽曲のレパートリーとしてはあって、それをちゃんとアレンジをしっかりしたっていうタイプの楽曲?
川上 : やってなかった感じです」
櫻木 : うん。なんか、結構もともとは、やっぱりその、トリップホップの感じからインスパイアされて歌とかメロディとか出てきたけど。
市川 : それからリズム&サウンドみたいなのがちょっと醸し出せたらいいなっていうのがあって。ベースとかは「こういうのどう?」みたいなのが結構あって。
川上 : 僕はトリップホップですかね。最終的に。
──割とちょっとブレイクビーツっぽいドラムと、っていう。
川上 : そう、ドラムははじめにあったときとほぼ変わってないですね。最後の展開以外は。
──最後のAOKIさんとFumitake Tamura(BUN)さんの「Neutral edit」は、おまかせで素材を渡してって感じ?
櫻木 : そう。というかすでに頼む前から素材で遊んでいて、勝手に(笑)。ドラムのループでずっと8小節くらいで色々音足していってとか。スタジオに行くと「あー今遊んでんねん」って。もちろんミックスの他にもなんかやってほしいなとは思ってたんで、最終的にはエディットをちゃんとお願いして。サブベースだったりとはAOKIさんらしいし。エレクトロニクスの要素がふんだんに出てて。自分たちのオリジナルから、AOKIさんのエディットの流れもスムーズに聴けるのはやっぱりAOKIさんすげえなと。
──「Tempest」はもとからオリジナルのなかで、途中でリズムが変わるじゃない? それでこのエデット・ヴァージョン聴くと、ひとつの素材で3バースある曲って感じでなんかずっと聴いているとどハマりしてわけわかんなくなる(笑)。
櫻木: たしかに(笑)。
──1stアルバムって、この作品を前にしていま聞くと結構ファンキーな感じがする。ベースとかも、ドラムとか、音そのもののアプローチも違ってて。それが今作に入ると、いわゆるミニマル・ミュージック的というか、さっきのアフロビートも含めてなんだけど、ヒプノティックというかそういう感覚の感想を抱くような音になったなと思って。
櫻木 : うれしい。
──それはやっぱりさっき言ったドラムの録り方とベースの録り方が結構影響を与えているんだなと今話していて伝わってきた感じはあって。あとは本人たちの今の志向性っていうところはもちろんだけど。
川上 : その「Tempest」とかは、モーリッツもそうだし、ペトレ(インスピレスク)とかの影響が大きい。
──あのぬめっとしたミニマル感。
川上 : ぐつぐつ、こうゆっくり煮えてくる感じの。
市川 : 亜熱帯っていうかね
川上 : テンポもちょっと遅めで、でも遅すぎない、みたいな。
──なるほど。でもすごいよくわかると思うんですけど。アンビックとか、ああいう感じの。
櫻木 : そうですね。
本当に、いい線、かなり良くできたと思います
──『Tempest』ってタイトルをつけたのは、何故ですか。
櫻木 : あの、凄いバカっぽいことを言うと、なんかこう、強そうだったんで。「テンペストどうすか」みたいな感じで言ったら「あーいいんじゃないって」。
川上 : Sで全部並べようっていうのもあって。「SSWB」と「Shadows」だったから。
市川 : 最初「Spectre」とか。
櫻木 : で、なんか色々掘ってったら「Tempest」になって、シェイクスピアにいって、じゃあ、難破船の感じだってなってって。そういうイメージで書いてみようかな、と。
──歌詞もそう?
櫻木 : 流されてる。島流し…流刑地みたいな。
川上 : 歌詞ができて、曲がまとまるって感じなんでいつも。楽しみですねいつも。
──大悟くんのメロディがあって、二人の楽器の演奏があって、録りがあって、最後に戻ってきて歌詞で締まるってのが割とD.A.N.の今の制作スタイル?
櫻木 : そうですね。本当、僕は最初の始点と終点だけ。あとはもう、この3人でやればいい感じになるから「勝手にやって」みたいな。勝手にというか「これ、いいね」って見てる感じです。
──逆に割と今回、マイナー調な曲が多いじゃない。「POOL」みたいな曲ってもう今はなんとなく出てこない感じ?そういうことではない?
櫻木 : その時のグルーヴ次第かな。
――最後に野望とかってあります?
櫻木 : 野望……そうですね。なんか、僕がちょっと思ってるのは、自分じゃないボーカリストとか、誰かラップができる人を呼んだりだとか、そういう僕がちょっと一歩引いてプロデュース的な感じで成り立つみたいなことをちょっとやってみたいですね。それはマッシヴ・アタックとかの影響がものすごい」
川上 : あとはイギリス、ね。
櫻木 : イギリス……そう海外で、ライヴ出来るように。
川上 : 確実に、広げていきたいですね。
櫻木 : なんか海外っぽいサウンドを作ることって、案外簡単だと思うんですよね。それにとどまらず、海外でも鳴ってない音を作って、自分たちがちゃんと驚けるっていうレベルまでいかないと、向こうに行っても全然、多分、流されてしまうと思う。
川上 : オリジナリティのある自分たちを持ってる人しか残っていけないと思うし。
櫻木 : というところに関しては、僕は今回の作品で結構第一歩踏み出せたかなと思ってて。どんどん深めたい。表題の「Tempest」っていう曲もう本当に、いい線、かなり良くできたと思います。
連載『D.A.N.の新譜放談』
D.A.N.の3人による新譜を聴きながらあーだ、こーだ言う不定期連載(近日復活!)
第4回はこちら
第3回はこちら
第2回はこちら
第1回はこちら
TOUR INFORMATION
D.A.N. ONEMAN TOUR
“TEMPEST”
2017年5月11日(木)大阪SHANGRI-LA
2017年5月12日(金)名古屋CLUB QUATTRO
2017年5月14日(日)東京LIQUIDROOM
PROFILE
D.A.N. profile
2014年8月に、櫻木大悟(Gt,Vo,Syn)、市川仁也(Ba)、川上輝(Dr)の3人で活動開始。様々なアーティストの音楽に対する姿勢や洗練さ れたサウンドを吸収しようと邁進し、 いつの時代でも聴ける、ジャパニーズ・ミニマル・メロウをクラブサウンドで追求したニュージェネレーション。2014年9月に自主制作の音源である、CDと手製のZINEを組み合わせた『D.A.N. ZINE』を発売し100枚限定で既に完売。2015年7月にデビューe.p『EP』を7月8日にリリースし、7月にはFUJI ROCK FESTIVAL ‘15《Rookie A Go Go》に出演。 9月30日に配信限定で新曲『POOL』を発表。2016年4月20日には待望の1sアルバム『D.A.N.』をリリースし、CDショップ大賞2017ノミネート作品に選出される。7月には2年連続でFUJI ROCK FESTIVAL’16の出演を果たす。
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