DJ KRUSHがビートで描き出す、そのコスモロジー、インスト新作をハイレゾ配信
日本語ラップをフィーチャリングした『軌跡』のリリースから待たずして、ここにDJ KRUSHのニュー・アルバム『Cosmic Yard』が届いた。今回は打って変わって、その真骨頂とも言えるインスト・ビート・アルバムとなった。1996年のコラボ・アルバム『記憶』以来の共演となるジャズ・トランペッター、近藤等則、またこちらも2004年の『寂』以来となる尺八奏者、森田柊山。さらにはギターリスト、渥美幸裕、そしてマッドリブやJ・ディラ、エイフェックス・ツインといったアーティストの楽曲を、自らの演奏の多重録音でビート・ミュージック・カヴァーする動画がいちやく話題となり、世界的なアーティストとしたオランダのBinkbeatsといったアーティストたちをフィーチャーしている。OTOTOYでは本作をハイレゾ配信するとともに、インタヴューをお届けする。
DJ KRUSH / Cosmic Yard(24bit/44.1kHz)
【Track List】
01. REGULUS
02. STELLAR WIND
03. DIVINE PROTECTION feat. 渥美幸裕
04. ASTERISM (Interlude)
05. EMISSION NEBULA
06. DUST TRAIL
07. LAW OF HARMONY feat. 近藤等則 & 森田柊山
08. BOW SHOCK (Interlude)
09. LA LUNA ROUGE feat. Binkbeats
10. IGNITION
11. HABITABLE ZONE (Chapter 1)
12. SPORADIC METEOR feat. 近藤等則
【配信形態 / 価格】
24bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC
AAC
単曲 350円(税込) / アルバムまとめ購入 2,500円(税込)
INTERVIEW : DJ KRUSH
はやくも届けられたDJ KRUSHのアルバム。『Cosmic Yard』と名付けられた、そのアルバムはDJ KRUSHのサウンドの哲学が凝縮されたビートが渦巻いている。漆黒の宇宙の闇をズタズタに切り刻むダーティーなスネアが物語を紡いでいく。荒々しいブレイクビーツ・サウンド、そして一分の隙を見せずに突き進むグルーヴが、そのコスモロジーの発露として立ち現れる。
インタヴュー&文 : 河村祐介
写真 : 沼田学
文字起こし : 井上裕樹
インストもラップ・アルバムも「DJ KRUSHの作品」
──感覚的にはかなりの矢継ぎ早な新作ですけど、ご自身の制作意欲という部分がまずはあると思いますけど、そこに加えて、やはり自身の事務所のレーベルでやることのフットワークの軽さみたいなことは影響あると思いますか?
うん。でも、その身軽さはあるんだけど、逆に自由が効くからこそズルズルって伸びちゃったりもするんだ。実はこの『Cosmic Yard』は、2017年中に出す予定だったんだよね。でも間に合わなくなってしまって。あとフットワークは軽くなったけど、そのかわりに音楽業界もかなり変化してきたので、いろんな苦労もあるかなと。
──日本語ラップをフィーチャーした『軌跡』の反響みたいなことは本作に影響を与えてますか?
ただ言えるのは、そこに違いはないというか、インストもラップ・アルバムも、どちらの方向性の作品も自分は「DJ KRUSHの作品」だと思っているからね。でも、ひとつあるとすれば、『軌跡』というアルバムは、ヒップホップがすごい好きでそのルーツに帰って何10年ぶりに作った作品。そこに若いMCを招き入れてね。そこで得たものもいっぱいあるし、「これでよかった」と思える部分もあった。それでいて「あえて自分が今何が作れるのかな」というところで「やっぱりインストを」みたいなところで今回は作ったんだけど。
──インストということで言えば、ある意味で前作に当たるのが『Butterfly Effect』。そのサウンドが、わりと質感的にクリーンな感覚があって、対して本作はダーティーで歪んだスネアがガシガシ鳴るビートものという感じですね。
『軌跡』でもそういった音にいったじゃないですか。そこに繋がる部分はあるんだけど、今回はたしかにかなり音の感覚としては粗い感じですね。いまはぱっと他のヒップホップを聴いてみると打ち込みできれいな音だったりというのが多い。で、僕らが育ったのはやっぱり1990年代のヒップホップだったから、こういう粗い音にプラスしていま風なミックスというところが、このアルバムで目指した感覚かな。
──いまでもクラッシュさんはサンプリング主体に音を作ってるんですか? それこそ元のサンプル・ループを抜いてきて、そこから構築するというか。最終的に元のサンプルを差し替えて、できあがったものに元のサンプリングが入っていないにしても。
そうですね。弾きもあるし、サンプリングももちろん使ってます。でも、わかんないようにすごいブツブツに切っちゃったりとか、ピッチを思いっきり下げちゃったりとかして、質感を変えたりする努力はしてる。基本的にサンプリングで僕は育ったから、そこはやっぱり大事にしたいよね。もちろん許可の問題とか色々あるけど。でもとにかく制作のスタイルは基本的に変わってないですね。
──あの歪んだスネアっていうのはこう作り方には決まったメソッドがあるんでしょうね。
うん。ある程度は、どこどこに1回通して、このプラグインを使ってみてとかいう工夫は今まで散々してきたので方法論みたいなものはあるね。でも今回そういう音にするというのは、あえてそうしたみたいなところはあるかな。
──なるほど。今回はこの音を「選んだ」という。
そう、選んだ。
『軌跡』が終わって、できるモノできるモノが自分で納得できない
──アルバム全体としてサウンド・コンセプトみたいなのはあったんですか。
『軌跡』もそうだけど、なんかけっこうイメージ的に「地球の上」だったんだよね。まぁ、なんか世の中のこともあるし、ちょっと宇宙的な視線で見てみようかなと思って。『ブレードランナー』の2作目も公開されたし、イメージ的にはあの近未来的なアジアンテイストが入ってて、荒れてて。すごいクールなんだけど、ちょっとちっちゃいギザギザがあったりして、みたいなのを表現したかった。地球は我々が住んでいて気が付かないけどすごくちっちゃい、それに対して他の星はもう、とんでもない大きさがあって。そういうのを見たり知ったりして、作っていったかな。ちょっと地球から離れたかったという感じかな。
──わりとサウンド的に尺八やギタリストの方にしても「和」な感じはありますよね。その辺りは意識されて?
そうですね。今回はそういうちょっとアジアンテイストを入れて作っていこうかなと思いましたね。近藤(等則)さんは、「地球を吹く」って言って、自分でセッティングしてエフェクターかけて、山のてっぺんとか、世界中を回って吹いてる。自然対自然に音という部分で共振させてるんですよね。その活動にすごく共感を受けて、久しぶりに何か一緒にできたらなあと思って。
──近藤さんの共演は『記憶』以来ですね。
うん、やっぱりコンセプトをちゃんと考えた上でやろうと。近藤さんがやってることをその、地球との共振みたいな、それを絵面で見たときに凄く共感したので。近藤さんの佇まいとかもすごく良かったので、あの雰囲気を自分のアルバムにパッケージングしたら今回のコンセプトに合うというところで近藤さんをお誘いしたらOKを出してくれて。
──交流はずっとあるって感じですか。
いや、連絡は取ってなかったですね。たまにツアーで行く先々でお互いの話を聞いたりとかはあって。フランスとかオランダとかで、「あそこで吹いてたよ」とか。
──制作は夏ぐらいから?
そうですね。作りはじめはそのぐらい。でも、煮詰まっちゃってちょっと作れなくなった時期があって。そこからリリースが遅れて、みんなに迷惑をかけてしまって…… そこから、またエンジンをかけなおして作っていった感じかな。
──というと年末からギリギリまでやっていたという感じですかね?
そう、すごいギリギリでしたね。
──煮詰まったのはなにかあったんですか。
『軌跡』が終わって、できるモノできるモノが自分で納得できないというか。自分を超えるのってすごく大変で。
──究極は、いちばんそこが大変そうですね。
そう、いちばん大変なとこにぶつかってしまって。アルバムを作るときは毎回そうなんだけどね。それが今回は長かったというか。(制作に)ハマるときはハマってバーッて進むんだけど。それがなんかハマりきらなかった。もしかしたら『軌跡』が終わってすぐはじめたから、ある程度「こういう音はやりたいな」と思ってたけど、やっぱりそこには無理があったのかなっていう。
──進んだきっかけというのは?
もう、とことん作るしかなかったですね。向き合ってみて、ダメならダメだし、それをやるしかないですもんね。頭で考えたって、音そのものは作れないですからね。音楽はトライ&エラーの連続。表現者、芸術はいつでもそうだけどね。
──なるほど。各ゲストさんに関して、さきほど近藤さんに関してはお話でましたけど、ちょっと他の方のこともお聞きしたいんですけど。まずギターリストの渥美幸裕さんはどうして起用されたんでしょうか。
今回のアルバムで、アコースティックのギターを入れたいなと思ってて。で、あるとき和歌山のイベントで渥美さんと偶然一緒になって。そのとき、はじめて演奏をみたんですけどアコースティック・ギターですごい和的なものを弾く人で、いい意味で変わった人という印象で。日本の伝統音楽を大事にしていて、そういう面でも「これはこの人とやるしかない」と思って。和歌山のクラブだったんだけど、そのとき同じステージでセッションを初めてやって。そのときはラップでチプルソくんも入ってきて、3人でフリーでセッション。そのときのセッションも結構良かったので、「ぜひお願いします」って誘って、今回やってもらうことに。
──さらに『寂』以来、尺八の森田さんがまた参加してますよね。
近藤さんの世界と、森田さんの、周りがどう変化しても揺るぎない伝統的な感じをぶつけたかった。だから今回は近藤さんと、ふたりでひとつの曲に参加してもらった。あのトラックがいちばん大変だったかな。森田さんは、クラスとしてはお師匠さんだから、「どこにこう入れて、どこにこうやって」とかやらないですね。もうデモを渡して、頭から吹いてもらって。それで森田さんは自分でちゃんとドラマを作っていっちゃうんですね。でも、それを僕が編集してズタズタにするわけですよ。あのテイストが消えない程度に、さらに後ろには近藤さんもいるし、その組み合わせが凄く難しかったですね。
──ふたりの両巨頭をKRUSHさんの感性で構築してという。
巨頭のふたりの演奏をどう配置していくか、どう構成していくかというのが難しかったかな。ある程度イメージがぼくの中であったので。そこにどうはめていくかっていう。「素材」って行ったら失礼ですけど、物凄く最高級の素材ですから。そのピッカピカの素材に負けないくらいに自分の色を出して、なおかつもっとピッカピカにしないといけないので。そこはすごく神経を使いました。ただ、森田さんは先生とはいえすごくざっくばらんな人で「KRUSHだったら好きなようにいじっていいよ」と、すでに『寂』で1回やらせてもらってるから。その辺は信頼してくれているみたいで、安心しました。本当に大ラフなデモを渡して、キーの確認をしてもらって、「こんな感じです、でもあとで全部変えます」って言って、「ああ、わかった」と。
KRUSHのベールでかぶせちゃわないと意味がない
──そしてオランダのビートメーカーの、Binkbeats。
はい。
──彼はどのようにコラボすることになったんですか?
彼は実際に演奏するほうのひと。ぜんぶ自分で作っていくんだけど、ビデオで彼が演奏しているところを観たらすごいんだよね。それをみたとき結構衝撃的で。そこからできあがってくる曲もセンスが良くて。いままでも、DJとは散々曲を作ってきたけど、Binkbeatsみたいなタイプの人とはやったことがなかったんだよね。だから、その映像を観てすごい興味が湧いて。それから会ってオファーしたら、OKが出て。これはスタジオに一緒に入ったわけではなく、メールでデータをやりとりして作った曲。最初にこちらが「こんなビートなんだけど、どう?」みたいな感じで送ったら、結構いろんな音を載せてきてくれて、それを何度かやり取りしてという感じですね。
──ゲストに関してですけど、例えばラフを作っていて「あの人にやってもらいたい」みたいに浮かぶんですか、それとも「この人と今回はやりたい!」というのがあったんでしょうか?
両方ありますね。途中で思い浮かぶ人もいるし、最初っからこの人とやりたいという人もいる。だから今回、リクエストを出したんだけどスケジュールが合わなかったりとかで、実現できなかった人が大勢います。やっぱり作っていく中で「このトラック彼に吹いてもらいたいとか、彼にスクラッチを入れてもらったらいいのかな」ということはありますね。
──ゲストの方たちのテイストとしては、Binkbeats以外はわりと「和」の雰囲気というところで統一感ありますよね。ひとつは冒頭で仰ってた近未来のアジア・テイストみたいなところもあると思うんですけど、この「和」のフィーリングというのは、特に海外とかでのKRUSHさんのイメージみたいなところで、求められている感じは常にしているのかなと。
そもそもあまり聴いたことがない音だろうし、あとはこの国の音楽をクラブの大音量でかけたいっていうのがあって。でも今こういう時代だから海外の人も聴く機会はあるんだろうけどね。なんか、僕らの音楽だし、取っ掛かりとしてはすごくいいのかなって。でも、制作時は、ゲストに演奏してもらって、ただOK出して、「吹きました!」みたいなのじゃつまらないので。そこでもうひとつ自分の手を入れて、KRUSHのベールでかぶせちゃわないと意味がないと思う。KRUSHワールドになんとか、グイーッと引っ張り込む。こうしたサウンドを海外の人に聴かせて、しかも彼らがそれを爆音で聴いたときに、どんな映像を頭の中に思い浮かべるのかなっていうのが、物凄く興味ありますね。
──あと印象的だったのが「IGNITION」ってブレイクビーツの、あの感じは、KRUSHさんのDJの感覚そのままというか。2枚使い的なビート感というか。
ゴリゴリの。やっぱりいま、ヒップホップも進化してさ、色んなタイプがあるじゃないですか。いまブレイクビーツだけというのも結構少なくて、808だらけで。それも好きですけど、やっぱりこういう音が僕の十八番ですからね。敢えてオールドスクール・タッチの曲というか。
──今回はラフでダーティ、みたいなのがサウンドコンセプト的にはあったみたいですね。
宇宙って言うと「フワーン」って、どうしてもキレイ系に行っちゃいそうなんで、そこは敢えて質感的にはザラザラにしないといけないなと。やっぱりほら、「ブレードランナー」的にしないと。
──当たり前の話ですけど、「KRUSHの音」というとこういったビート感とやっぱりグルーヴみたいなところに集約されると思うんですけど。ビートメイクというと、MPC的なパッドで作るというのがスタンダードになっていると思うんですけど、KRUSHさんはどうなんですか?
実はMPC的なパッドを使ったのは最近で。もともと、サンプラーはSP-1200で、そこにMIDIキーボードの鍵盤でドラムを打ち込んで入れてましたから。僕はMPC派じゃなかったんですよね。『Butterfly Effect』で、はじめてMPCを買って作ってという。
──え、そうなんですね。
あそこで初めてパッドいじったんです。もちろんAKAIのサンプラーも使ってたけど、AKAIだけどラック式のサンプラーを使っていて。もともとはそこにキーボードとシーケンサー。だから、パッドで打つんじゃなくて、キーボードでドラムを打つ。打ったものを微妙にずらしたりとかして作ってたんですけど。いまもたまにキーボードでドラムを打ってますね。いまはAKAIの小さいコントローラーを使ってるんですけど、それにはパッドもついてて、それで打ったりとかもしています。でも結局は、DAW上でいじって直してますね。ハットをわざと後ろにしたりとか。
──コンマ何秒の違いでグルーヴを出すためにってことですよね。
はい。
「サンプリングなし」コンセプト決めて作って見ても面白いかも
──昔からのブレイクビーツ的な作り方といまの出音を融合された音作りというのが基本のスタンスだと思うんですが、前回のインタヴューでも少しお聴きしましたけど、低音の出音がかなり変化してきていると言われてますけど、KRUSHさんのなかで今回の作品は例えば低音のミックスなんかはどうなんでしょうか。
低音はすごく難しいですよね。昔は家のスタジオで作ってミックスするじゃないですか、それからクラブにもっていって流して、その環境で聴いてみたりとかしてたんですけど。でもその作り方はいまはできないので、家のスタジオで作ってても限度がありますからね。低音はミックスという部分ですごい難しい。でも、自分の作品はダブステップみたいなブリブリの低音では今回ないし、本当に低音は課題ですね
──KRUSHさんでもそこは課題なんですね。ちなみにですけど、全く違うものを作ってみようとかは思わないんですか? 例えばテクノを作ってみるとか。DJプレイを考えるとそういうセットもあるので、そこはありなのかなと思ったんですが。
実はいつもそういうことをやってみたいなとは思ってるんですよね。ドラムンベースとか、ダブステップとか作ってみたいなって。実は何曲か作ったやつがあるんですよ。ただアルバムのコンセプトにハマらなかったとか、あまりにも音質が違いすぎたりとか。もっといえば全部、808のドラムで作ったものとかもある。
──おお。今回の「ザ・KRUSH」という音はもちろんなんですけど、KRUSHさんのフィルターを通したそういう音も、それはそれで聴いてみたいですね。
そういうのはそういうものでコンセプトを決めて作って見ても面白いかもしれない。「サンプリングなし」とか。
──それはむちゃくちゃ聴いてみたいですね。
売れないだろうけど(笑)。
──いやいや。例えばコンセプチュアルな別名義でも、でたら凄く話題になると思いますよ。
おもしろいよね。四つ打ちとか結構かっこいいのありますからね。
──テクノやダブステップとかもプレイされる、いまのDJスタイルの感覚を考えると、全然あってしかるべきなんだろうなと思って。いまでもとにかくビート作るのは楽しいですか。
今回は悩んだほうが結構多かったけど……でも、こうやって終わってみてまた課題ができたので。それは自分にとっては大切なものなので。そこはそこでまた自分と向かい合って作っていこうかなって感じですね。でも、時代に寄って、ディラっぽいのとか、みんな似たり寄ったりになったりするけど。最終的にはやっぱ自分の個性が残るのかなって。ただ時代に噛み合わなくなるときもあるのかもしれないですけど。
──でも、KRUSHさんの音はずっとアップデートされてきた「DJ KRUSHの音」として作品を出し続けられていると思うので。
もう、俺にはこれしかできないので。いろいろな国々を回ってDJやって、髪の毛の色が違う人たち、肌の色が違う人たちに、いろいろな人たちに自分の音をぶつけてきて。またそれを返してもらってということ。そして曲を作って、自分の世界観を作っていく、さらにそれを世界中の人たちに聴いてもらう。「KRUSHの音を聴いて、なにかはじめる切っ掛けになったよ」とか「音作りはじめたよ!」とか、言ってくれる人がいて。なんか、そうやって言ってくれる人がいる以上、ずっとできればやっていきたいなと思いますね。
──最後に蛇足なんですが、いまだにKRUSHさんは中古とかオークションでVESTAXのDJミキサー、PMC-20SLを集め続けているという話を聞くのですが。
ここのところ買い集めるのはちょっと落ち着いちゃったけど、いまのところ12台くらいあるのかな。押入れにダーっと入ってる。
──ジャンク品でも、使えるパーツだけ取ったりとかもされているんですよね。
あのVESTAXのミキサーにはサンプリングするためのパッドがあって。そのパッドの部分はもうVESTAXがなくなっちゃったからスペアもないじゃないですか。だからプラスチック成型で作れる工場を知り合いに頼んで作ってもらったりとか。
──まじですか。
うん。あと元VESTAXのエンジニアさんで修理できる人がいて、そこに修理を頼んだりとか。大変ですよね。
──やっぱり、あのミキサーとSL-1200じゃないと出せない音があると。
そうですね、まあタンテはもうパイオニアさんのでも全然大丈夫だけど。ミキサーはアレじゃないと、自分のスタイルはもう作れないですね。
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DJ KRUSH / 軌跡(24bit/48kHz)
ソロ活動25周年にリリース、ラッパーたちをフィーチャリングして制作されたDJ KRUSH初の“日本語ラップ・アルバム”。
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DJ KRUSH / Butterfly Effect
『寂』から約11年ぶりとなった2015年のオリジナル・アルバム。デヴァイン・スタイラーから新垣隆、tha BOSS(Tha Blue herb)らが参加。
SILENT POETS / dawn
ある意味でDJ KRUSHと同じく1990年代のトリップ・ホップ〜ダウンテンポを象徴するサウンドを表現していたサイレン・ポエツ。こちらもひさびさにリリースされたアルバム。
近藤等則 / Toshinori Kondo plays Standards〜あなたは恋を知らない(24bit/192kHz)
6年ぶりの新作は、エレクトロニック・トランペットによる、キャリア初の全曲スタンダード集。
PROFILE
DJ KRUSH
1962年東京生まれ、サウンドクリエーター/DJ。選曲・ミキシングに於いて抜群のセンスを持ち、サウンドプロダクションに於ける才能が、海外のクラブ・シーンでも高く評価されている。 1980年代初頭に公開された映画『ワイルド・スタイル』に衝撃を受け、ヒップホップに足を踏み入れる。1987年にKRUSH POSSEを結成。日本を代表する実力派ヒップホップ・チームとして、様々なメディアで活躍。
1992年の解散後はソロ活動を精力的に行い、日本で初めてターンテーブルを楽器として操るDJとして注目を浴びる。1994年に1stアルバム『KRUSH』をリリース。その後も、日本,ヨーロッパ,アメリカを中心に世界各地で多数の作品を発表。ソロ作品はいずれも国内外の様々なチャートの上位にランクインし、6thアルバム『漸-ZEN-』は、"インディーズのグラミー賞"といわれるアメリカのAFIMアワードにおいて特に芸術性の高い作品に贈られる"ベスト エレクトロニカ アルバム 2001"最優秀賞を獲得。2004年にリリースした8thアルバム「寂」では、CMJ(全米カレッジラジオ)RPMチャート(エレクトロニック系)で3週連続一位を獲得。2006年には自身による初のセルフリミックスベストアルバム「STEPPING STONES」〈lyricism〉と〈soundscapes〉を2枚同時リリースし、各方面から高い評価が寄せられている。また2007年には、これまでの12年間の足跡を記録したドキュメンタリーDVD BOX 「吹毛常磨」(すいもうつねにます)もリリースしている。
プロデューサー、リミキサー、DJとして国際的な活動を展開しながら、映画、ドラマ、CM音楽制作など幅広く活躍。これまでに、グラミー・アーティストであるブラック・ソート(THE ROOTS)のソロ・アルバムへの楽曲提供、同じく、ハービー・ハンコックや k.d.ラング といった グラミー・アーティストの楽曲リミックス など、ジャンルを越えた様々なアーティストらとのコラボレートを重ね、また2009年には、ロシア全土で公開となったアニメ映画『FIRST SQUAD』の音楽全般を担当。同年のモスクワ映画祭に出展され、見事にコメルサント(Kommersant)新聞賞を受賞した。
また、その他の活動として、1998年よりDJ HIDE, DJ SAKを率いて、プロデューサー・ユニット〈流-RYU-〉を結成。アフリカン・パーカッショニストとのコラボレーションなど、斬新な活動を展開。2000 年末からは、21世紀に向けて発足した〈JAG PROJECT〉に参加し、2005年に同プロジェクト主宰でリリースされたコンピレーションアルバム「AFRICAN JAG vol.1」にも楽曲提供を行う。そして2009年からは、ビル・ラズウェルが主宰するプロジェクト〈METHOD OF DEFIANCE〉に参加、バニー・ウォーレルや近藤等則らと共にメンバーの一員としてモントルー・ジャズ・フェスティバルへの出演等を経て、2010年には同プロジェクト名義のアルバム「Incunabula」にも参加。尚、同作品にはあのハービー・ハンコックも参加者として名を連ねている。
2011年、自身の本格的なソロ活動20周年を迎え、東京での20周年キックオフイベント(7時間ロングセットを披露)を皮切りに、10カ月に渡るマンスリー・シングルのリリースや、世界16カ国での20周年ワールドツアーの敢行など、各所で話題を呼び、世界を舞台に多角的且つ精力的な動きは、いまだ止まるところを見せない。
現在までに全50カ国、313都市、延べ500万人以上のオーディエンスを魅了。地域を越えて、多岐に渡り高い評価を得続けるインターナショナル・アーティストとして、今も尚、しっかりと独自の軌跡を残し続けている。