国内外で作品を発表し続けている電子音楽家、梅沢英樹のプロジェクト、Pawnが2年ぶりに6枚目のアルバムをPROGRESSIVE FOrMからリリース。本作は前作『Tone Sketch』の素材をベースに再構築した作品となっている。Dumb Type高谷史郎のプロジェクト・メンバーとして活動する原摩利彦や、2013年度の日本音楽コンクール1位を獲得した網守将平、lycoriscoris、Seiji Takahashiといった電子音楽家や、ヴォーカリストとしてCokiyu、Moskitoo、fraqsea(Shelling)、柳本奈都子(rimacona)という注目の女性アーティスト。海外からはIan Hawgood、K-conjogが参加しており、さらに世界的に活躍するVegpher、Avec Avec、Quarta 330、Simon Scottもリミキサーとして参加している。マスタリングはVirgin Babylon Records所属のアーティスト柏大輔が担当しており、アートワークは斉藤和義や、group_inouなどのミュージック・ビデオを手掛ける画家 / イラストレーターのオオクボリュウが担当している。OTOTOYでは、24bit / 48kHzの高音質WAV音源での配信。ぜひこの機会に、高音質で本作を体感していただきたい。
Pawn / Hideki Umezawa 『Portrait Re:Sketch』
【配信価格】
アルバム購入 WAV(24bit / 48kHz) : 1,800円 / mp3 : 1,500円
単曲購入 WAV(24bit / 48kHz) : 200円 / mp3 : 150円
【Track List】
1. Koen Park
2. Re:Grid Structure
3. Meteorite Shards feat. Cokiyu
4. Prepared Garden with Marihiko Hara & Shohei Amimori
5. Our Trails with lycoriscoris
6. Tone & Color feat. Natsuko Yanagimoto
7. Dotted Distance
8. QopqoP
9. Discolored Photograph (Reconstructed by Seiji Takahashi)
10. Re:Thinking About Robin
11. Star Shards (Quarta 330 Remix)
12. Tone Sketch (Vegpher Remix)
13. Tone & Color (Avec Avec Remix)
14. Star Shards (Simon Scott Remix)
音楽を媒介にして拡大していくネットワーク
本作は、梅沢英樹のプロジェクトというよりも、本人の音楽を媒介にして拡大していくネットワーク、それ自体を描いたある種の地図のような作品だ。コラボやリミックスなど本人の音源が内蔵されているので当たり前だが、もちろんコンピとは全く違った絶妙なバランス感で、彼の作品としても成り立っている。絶妙な塩梅だと言えるだろう。その塩梅こそ、外部との接続によって、むしろより明確に描くことができた、タイトル通りの彼のポートレイトなのだ。
『Tone Sketch』を素材に、総勢15名のアーティストたちが参加している。楽曲的には、前作でヴォーカルを披露した4人の歌姫――Cokiyu、Moskitoo、fraqsea(Shelling)、柳本奈都子(rimacona)とともに、ポップなアプローチをしているものから、電子音楽の実験の大海原へと果敢に飛び込むエッジーな楽曲まで多彩な響きに満ちている。前者を前述のようなヴォーカル曲たちとすれば、後者で最も注目と言えるのがやはり、原摩利彦、網守将平の共作曲と言えるだろう。原は、坂本龍一とのインスタレーション・コラボなども行うDumb Type高谷史郎のプロジェクト・メンバー。そして、現代 / 電子音楽家のホープとして日本音楽コンクール1位など、いまもっとも注目されているアーティストのひとり、網守将平。この2人とのコラボは、ドローン・アンビエント的な前半から、弦楽器とグリッジ・ノイズがヒリヒリと交差する、まさにスリリングな内容だ。またリミックスには、Maltine Recordsからのリリースなどでも知られるAvec Avecや、ポスト・ダブステップの総本山〈Hyperdub〉からもリリースするQuarta330など、チップ・チューン ~ ベース・ミュージック的なアプローチ、そしてレーベル・メイトでもあるVeghper、そしてUKからはドローン・アンビエントの名手、Simon Scottも参加している。(text by 河村祐介)
RECOMMEND
Vegpher / PLUS
本作にも参加しているVegpher。ファースト・アルバム『Play』におけるダブステップや、テクノ / ハウス、ミニマル・ダブといったテイストを継承し、静と動、無機と有機という背反するコンテキストをまとめあげた世界観が、このアルバムでは雄弁に表現されている。まさに、ベッドルームとダンスフロアを繋ぐ、新たなアイデンティティーを高らかに宣言した作品。
Jemapur / Slide
日本が誇る電子音楽家Jemapurの新作『Slide』。制作に2年を費やした渾身の一作。ドローンから始まりドローンに終わる今作は、冷ややかで鋭い上物に攻撃的なノイズとビートが絡み合い、Jemapur独自の音世界を構築する非常に緊張感の高い作品に仕上がっている。最近では、yukiとのエレクトロニカ・ユニット、Young Juvenile Youthとしての活動も現場で大きな話題を呼ぶJemapurの今後の動向からは目が離せない。
AZZURRO / 4
ヒップホップをベースとするビート・メイクと確かなエンジニアリングで日本のビート・シーンに確かな足跡を残してきたAZZURRO(アズーロ)。本作はソロ・アルバムとしては『The B-Side』(2009年)以来となる。盟友Shigeru TanabuとのユニットAZZXSSSではUKベース・ミュージックへ傾倒したAZZURROだが、『4』の制作にあたっては、ルーツ・ダブのアンビエンスを意識したという。重なった音を間引き、「間」を際立たせるプロダクションにより、多彩なヴァリエーションのビートを生み出すことに成功している。
PROFILE
Pawn / Hideki Umezawa
1986年生まれ、梅沢英樹によるプロジェクト。2007年より活動を開始、現在までにSymbolic Interaction、Dynamophoneといったレーベルから作品をリリース、またファッション・ブランドへの楽曲提供など活動は多岐にわたる。近作として3つのアルバム『Tone Sketch』『Glimmer of Sunlight』『Suido-Kan』がある。そして2013年12月、6枚目となる最新アルバム『Portrait Re:Sketch』をPROGRESSIVE FOrMよりリリースする。
>>>hideki-umezawa SoundCloud