OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.137
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
『レイヴ・カルチャー』を読んで
先日、〈ele-king〉からマシュー・コリン『レイヴ・カルチャー──エクスタシー文化とアシッド・ハウスの物語』(原題は『Altered State: The Story of Ecstasy Culture and Acid House』)が訳出されました。自分が最も好きな音楽ジャンル(テクノやハウス、ベース・ミュージック)の一番そのカルチャーの根幹となる出来事を追った、いわゆるクラシカルな本で、まさに待望の訳出ということでむさぼるように読み進めました。
コロナ禍でライヴハウスよりも違法のレイヴが……という若い世代が垣間見れるようになったいまの日本でどう読まれるのかというのもちょっと気になるところでもあります。
いわゆるUKの1980年代後半に起きた、アシッド・ハウスとドラッグ(エクスタシー)のカクテルによる、ダンス・カルチャーの爆発的な隆盛、そして初期のレイヴとその崩壊を経ての、ダンス・サウンドが細分化していく、1990年代中頃までを、音楽はもちろん、その周辺に、大きく影響を与えた政治社会状況から、ストリートのカルチャーなども含めて概説した本という感じでしょうか。 爆発的な広がりを見せる享楽的な前半もいいのですが、どこか散り散りになっていく後半。当たり前のように世代的にも地理的にも、その断片を知ることでその音楽に勝手に熱狂して、いまにいたるという人間なんですが、が、なんというか後半の感じ、そこから生まれた音楽にむしろものすごい思い入れがあるんだなと確認する読書体験でもありました。なんというかダークなムードとエモーショナルなメランコリーはそこからかというか。そんななかで先日リリースされた『Screamadelica』の一連のリイシュー企画でリリースされた故アンディ・ウェザオールの「Shine Like Stars」のリミックスを聴きながらいろいろと思ったこともあったりと。ということでいわゆる直接的なレイヴ・ヒットではなく、なんとなく、そんな「レイヴ以降」を思い浮かべる10曲をOTOTOY配信中のなかから選んでみました。
あ、そして来週『レイヴ・カルチャー──エクスタシー文化とアシッド・ハウスの物語』に関しては、細々と続けているOTOTOYの書評連載『オトトイ読んだ』でもかなりおもしろい書評が出ますので、乞うご期待ということで。