夏の夕暮れどきを彩る、郷愁のバレアリック・チューン――Language、ニュー・シングルをハイレゾ独占先行配信
真夏の真昼の狂おしいまでの喧噪、そしてその熱狂をどこか懐かしむような夕暮れ時のメランコリックなチルアウト。ふたつの時、それぞれを楽しむ、それぞれの音楽というものがある。そう、夏には、ふたつの音楽の楽しみがある。Languageの新作『Nagi』は、まさしく今夏、後者のフィーリングにすばらしく機能すること、それは間違いないだろう。美しきチルアウトなメランコリック・ポップとでも言おうか、まさに夏の夕暮れときを彩る、サウダージな作品だ。
3ヶ月連続の通称”RGBシリーズ“シングルに続いて、矢継ぎ早にリリースを続けるLanguage。まさにリリース・ラッシュな彼らだが、ここにきて、早くもシングル『Nagi』をリリースする。メランコリックな空気感が広がっていく、郷愁のバレアリック・ポストロック・チューン。OTOTOYでは、本作のハイレゾ・ヴァージョンを独占先行配信。今夏必携のサウンドは、いまここでしか買えない。
Language / Nagi(24bit/48kHz)
【配信フォーマット / 価格】
wav / alac / flac : 単曲240円 まとめ購入499円
【Track List】
01. Nagi
02. Free
INTERVIEW : Language
テクノやハウスといったエレクトロニック・ミュージックの要素と、ポストロック的なバンド・サウンドを結び合わせた、ある種の上質なポップ・ミュージックを生み出しているユニット、Language。ローファイ的な電子音とバンド・サウンドの、バレアリック・ムードを押し進めた昨年のアルバム『magure』に続いて、今夏、前述のように3枚の「エレクトロ・ポップ」をフィーチャーしたコンセプチャルなシングル・シリーズ“RGB”をリリースしたばかりだが、早くもニュー・シングル『Nagi』をリリースする。
本作「Nagi」は、“RGB”よりも『magure』の路線を継承したもので、ポストロック的なバンド・サウンドの要素が強いものだ。そして特筆すべきは、珍しくそのヴォーカルをYosuke Kakegawaが務めている。伸びやかな、KAORIのヴァーカルと違ったその抑制の効いた歌声は、メランコリックな楽曲とともにサウダージな質感を増している。その空気感は、”喧噪の夏”が一歩退く、夕暮れ時が似合う、そんな感覚のものだ。
さて、本作、そしてここ最近のリリース・ラッシュに関して、メンバーたち――国内外でDJ、プロデューサー、シンガーなどで、それぞれ活躍している、DJ SynthesizerことYosuke KakegawaとNaoyuki Honzawa、KAORIに話を訊いた。
インタビュー&文 : 河村祐介
——Languageは、昨年のアルバム『magure』以降約1年ほどで、リミックス盤、そしてRGB3部作シリーズと本作、じつはすごいリリース・ラッシュというイメージがあるんですが。
Yosuke Kakegawa(以下、Kakegawa) : それはたぶん(制作とリリースの)“時差”が関係してるんだと思います。というのも、実際には2年ぐらい前から、Language自体、多作なサイクルになっている気がするんですが、去年出たアルバム『magure』が全曲映像付きだったことで、曲を作ってからリリースするまでに1年近くの時間を使ったんです。そういったところで『magure』をリリースするころにはすでに次に発表したい作品のイメージができあがっていました。その後のリリースは今のところ全作デジタルのみなので、比較的速いペースで出すことができた、というかんじです。
——デジタルでシングルを連続してリリースするおもしろさに目覚めたとかはありますか?
Naoyuki Honzawa(以下、Honzawa) : そうですね。アルバムだとどうしても作品の全体像を意識したり、曲想の配分を考えたりしますけど、シングルはその点シンプルで自由度が高いので。しかもデジタル・リリースだと、曲が完成したらたいして時間を置かずに発表できるのが魅力です。「こんな曲作ったんですけどどうですか?」みたいな感じで。
——では、そろそろ本題の『Nagi』について。本作『Nagi』の曲はどちらかと言うと、ランゲージのポストロック・サイドが大きく表に出ている作品の気がしますがいかがでしょうか?
Honzawa : そう思います。ドラムもライヴ・メンバーの小林くんに声をかけて生を録音しました。
——わりとパワフルでエネルギッシュだった『magure』に比べて、夏の終わりというか郷愁がすごいですよね? これはなにかあったんですか?
Kakegawa : なにもないです (笑)。でも、作ったのわりと最近だし、たしかに夏は反映されてます。ただ、イケイケの夏よりもメランコリックな“夏”や“悲しき熱帯”のほうに惹かれる性分なんだと思います。前回やそれ以前のいくつかの曲にもその傾向はありますね。
——「Nagi」というのは具体的にどんなイメージがあって作ったのでしょうか?
Kakegawa : 無風状態の凪のことです。時間が止まってしまったようなスタティックな風景、という視覚的なイメージが以前から頭の中にあって。この曲の歌詞を書いてるときに、ふと、数年前に知った杉本博司さんの「海景」という写真のシリーズを思い出したんです。世界中のいろいろな場所の海と空を写したその一連の作品は、被写体が海と空だけなので、どこそこの風景っていう場所性が無意味になっていて、しかも海と空という何十億年も前からあり続けた風景が今もまだ眼前にあるっていう時間感覚の無風状態が写ってる。その写真を観たときにぐっときた体験がよみがえり……みたいないきさつになります、大まじめに言うと (笑)。
——この曲のヴォーカルってKAORIさん? ではないですよね……。
KAORI : ギターの人(Kakegawa)です (笑)。当初はわたしが歌う予定だったんですが、いろいろ試した結果、こうなりました。デモの段階で入ってた彼の仮ボーカルが、わたしも含めて、みんなのイメージに近かったので。
——「Free」に関しては、どんなテーマの曲なのでしょうか?
Honzawa : 曲に関しては、フル・ヴォーカルのいわゆる歌ものではなくて、余白の多い、ゆったりとしたタイム感とKAORIちゃんのミニマムで伸びやかな歌の取り合わせを生かしたいという。
KAORI : 歌詞は、単調でストイックなイメージの曲調に対してメロウなものを載せたいと思いました。夏の世界に浮かされた様な雰囲気が出せたらいいなと思って書いたんですが、結果的にはLanguageではあまりやらないラヴ・ソング的な内容になりました。
——ジャケットのイメージに関して、コンセプトがあればお教えください。
KAORI : 味わい深い風景画を描くイラストレーター、出雲あす香さん(メガナイ)にタイトルを告げて、海と空の絵を描いてくださいってお願いしました。想像以上に凪いでて、いいかんじだと思います。
——RGBのシングル・シリーズに関しても良い機会なので質問させて下さい。ああしたエレクトロ・ポップ的なアプローチにしようと思ったのはなぜですか?
Honzawa : ギター・サウンドやインディー・ロック的なトーンが前景に出た『magure』の反動っていう面もあると思いますけど、去年の後半ぐらいからアナログ・シンセやリズムマシンの音色が、何度目かのブームになってたんです、メンバー内で。それで、次はひさしぶりにシンセ中心でいこうということになりました。ただ、今回はあくまで“バンド”としてのシンセ・サウンドというテーマを設定したんです。それが“テクノ”や“エレクトロニカ”ではなくて、“エレクトロ・ポップ”や“シンセ・ポップ”が出来上がっていった理由だと思います。そのへんの感覚は新鮮でした。
——RGBと3枚のリリース・シリーズにしたのはなぜでしょうか?
Languageが今年4月〜6月の3ヶ月に渡ってRed, Green, Blueの3タイトルをリリースした、RGB3部作
〈エレクトロ・ポップなシングル3部作〉
ここ最近のテクノ・ハウス・シーンでの、ロウ・ハウス・ブームやインダストリアルやクラウト・ロック・リヴァイヴァルとも共通の感覚がありそうな、Languageの”電子音楽”3部作。クラフトワーキッシュなエレクトロ「Red」、ニューウェイヴ的な質感も取り入れた「Green」、さらにはシューゲイズ・エレクトロ・ポップとも言えそうな「Blue」の3作。
Kakegawa : まず、シンセをフィーチャーした曲をいくつか発表したい、ということで5~6曲ぐらいがちょうどよかろうと。そうすると、ヴォリューム的にはミニ・アルバムでもよかったわけですけど、一時期にまとめて全曲をつくるより、2曲入りのシングルを少し間隔をあけながらつくって3作出す。シリーズ的なやり方の方がおもしろいと思ったんです。冒頭で触れた「時差」の話にもつながりますけど、その方がリアルタイム感ありますから。
——やはりRGBの3枚で電子音楽を追求したから、今回ロック的なアプローチになったのでしょうか?
Kakegawa : そうですね、反動の反動かもしれません (笑)。シンセ中心の曲、6曲やったんで気がすんだのはたしかです。
——『magure』の次作にあたるアルバムの予定はメンバー間でなんとなく話したりとかはしてますか?
Kakegawa : いえ、予定はまだなにも。このところ、ちょっと突っ走ってた感があるんで、少し休みたいです (笑)。もし次にアルバムを制作するとしたら、バンド風にセッションで曲つくってみたらどうなるんだろう? みたいな漠然とした興味はあります。時間がたつと、またコロッと気が変わってしまうかも知れないけど (笑)。
Languageの過去作はこちら
PROFILE
Language
KAORI : Vocal
Yosuke Kakegawa : Guitar / Computer
Naoyuki Honzawa : Bass / Computer
2009年8月上旬、アルバム『Slower Than Summer』を発表。その自由で解放的な音楽性が話題となり、DJ、イベントオーガナイザー、アーティストなどの音楽関係者たちから積極的な支持を得る。同月下旬、WIRE09に出演。色彩豊かなサウンド・スケープと高揚感あふれるライヴ・パフォーマンスでオーディエンスを沸かせた。その後もコンスタントにライヴ活動を続け、江ノ島”TheLive”、葉山”Café de ROPE La mer”、逗子「音霊2010」、DOMMUNE、京都Blue Eyesをはじめとした多様なクラブ / ライヴ・イベントに出演してきた。2011年3月、2作目のアルバム『Northern Lights』をリリースし、ジャンルにとらわれない奔放な音楽性をさらに印象付ける。エレクトロニック、ポストロック、グローファイの要素が溶け合う現在のランゲージ・サウンドは、かつてのバレアリックの流儀のような、音楽に対する彼らの開かれた姿勢を反映している。