高橋健太郎のOTO-TOY-LAB──ハイレゾ/PCオーディオ研究室【第21回】ワンランク上のディスクトップ環境を──DAC&ヘッドフォン・アンプ、iFi audio NEO iDSD
ディスクトップ・オーディオが熱い昨今、ミドルクラスの注目機は?
昨年の暮れに本連載で提案した「59,800円ではじめる高音質デスクトップ・オーディオ・セット」は、予想を越える反響を呼んだ。1月末までの限定販売ということで、OTOTOYでの販売は先に終了したが、こうした提案をしたのは初めてだったので、刺激的な経験になった。もちろん、一般のショップではiFi audioのZEN DACもADAMのAUDIO T5Vも販売中なので、興味のある方は今からでも記事をチェックしてみて欲しい。
『OTOTO-TOY-LAB──ハイレゾ/PCオーディオ研究室【第19回】お手頃価格で高音質、iFi audio ZEN DACで手軽にハイレゾ環境』はコチラ
https://ototoy.jp/feature/2020102801
「高音質デスクトップ・オーディオ・セット」の提案が好評だった背景には、コロナ禍で在宅時間が増えた人達が多かったこともありそうだ。それはオーディオ機器のセールス全般に追い風になっているとも聞く。そういうムードに触れると、僕個人も何か買いたくなってくる。iFi audioのZEN DACやADAMのAUDIO T5Vはコスト・パフォーマンスの高いエントリー・クラスの製品だが、僕のデスクトップには物足りない。ミドル・クラスの製品で、何か面白いものはないだろうか?と思っていたら、前回記事の掲載中にiFi audioがまた新製品を出した。NEO iDSDというDACプリアンプだ。価格は10万円を少し超えるくらい。これはちょっと試してみたいということで、早速、販売元から借りてみた。
プロ用機材と列べて使用可能なNEO iDSDのバランス出力
iFi audioの製品で僕がずっと使い続けているのはmicro iDSDというポータブルDACだ。初代のシルヴァー、二世代目のブラックと使い続けていて、最近はプライヴェート・スタジオに置いてあることが多かった。スタジオのPro Toolsなどで作業している時は、機材ラックに埋め込まれたApogeeやLavryといったメーカーのマルチ・チャンネルのAD/DAコンバーターを使用している。だが、そうした作業の合間にちょっとPC内のオーディオ・ファイルを聴いてみたくなることがある。スタジオのデジタル機材はすべてAntelopeのワード・クロック・ジェネレーターに繫がっているから、ApogeeやLavryでは違うサンプルレートの音源を気軽に聴くことはできない。ApogeeのAD/DAコンバーターはUSB接続もできるが、USB DACとして使うには、一度、Pro Toolsのセッションを閉じて、セッティングしなおさなければいけない。
そういう手間をかけたくないので、一台、PC内のオーディオ・ファイルを聴くための独立したUSB DACが欲しかった。コンパクトでデスクの片隅に置いておけるmicro iDSDはそれに好適だったのだ。音質的にも過不足なかった。マスタリングの最終作業で、全曲を並べて、曲間を決める時などは、あえて民生機であるmicro iDSDでモニターするのが好ましく思えていた。
ただ、micro iDSDをスタジオのサブDACとして使うのには、一点、問題があった。民生機なので、-10dbのRCA出力しかない。レコーディング・スタジオのプロ用機材は+4dbのバランス接続が標準だ。だから、micro iDSDの音を聴く時には変換ケーブルを使わなければいけないし、出力が低い分、モニター・コントローラーのヴォリュームを上げなければいけない。この点を解消したくて、バランス出力のあるUSB DACで適当な製品があれば試してみたいとは、かねてから思っていた。
先に試用したZEN DACはエントリー・モデルながら、4.4mmのバランス出力を備えていた。だから、モニター・コントローラーにバランス入力できる。カタログ・スペックを見ると、micro iDSDのRCA端子は固定の場合の出力が2Vだったが、ZEN DACの4.4mmのバランス端子の固定出力は4.2V。出力も2倍以上だ。ただ、4.4mmのバランス端子から普通のキャノン・プラグへの変換に専用ケーブルが必要になる。スタジオで使うにはあまりスマートではない。
その点、NEO iDSDはキャノン・アウトが備わっている。その固定出力は4.4V で、ZEN DACの4.4mmのバランス端子よりもさらに高い。可変出力の場合は最大7.7Vとあるので、最大出力を+18dbuに設定してあるスタジオ機器と遜色ないヴォリュームが得られるだろう。そこでまずは、NEO iDSDをプライヴェート・スタジオで、micro iDSDの代わりに使ってみるところから、テストを始めることにした。