◆ 何とかJ1残留を果たしたが・・・。J1に昇格して5年目となる鳥栖は「初タイトル」と「初のACL出場権獲得」を目指して新シーズンに挑んだが、J1のリーグ戦は9勝12敗12分けで勝ち点「39」と低調。シーズンの後半戦は残留争いに巻き込まれた。残留が危うくなった時期もあったが、大一番だった2ndステージの15節の松本山雅戦(A)は後半42分にMF水沼が逆転ゴールを決めて2対1で勝利。「J1残留」を果たしたが、非常に不本意なシーズンとなった。
就任1年目の森下監督は何とか「J1残留」を果たしたが、「ホームで13試合未勝利」という時期があった。これほどホームで結果を出せないとサポーターの支持は得られない。すでに「来シーズンに向けて森下監督との契約更新はしない見込み」と報じられている。後任候補としてブンデスリーガで実績を残したマガト監督に興味を示していると言われているが、「億単位のお金が必要となる。」と言われている。
ドイツでMF長谷部やDF内田篤を指導した経験があるので日本での知名度は高い。「ブンデスリーガでこれだけ実績のある監督がJリーグにやってきたらどうなるのか?」という興味はある。また、正式に監督就任が決まったとしたら良くも悪くも鳥栖に対する注目度はかなりアップするだろう。監督などスタッフにお金を費やすことは1つのやり方だと思うが、それでも年俸面などを考慮するとハイリスクである。
近年のマガト監督は思うような結果を出せておらず「時代遅れの指導者」になりつつある。「ドイツ国外の経験がほとんどない。」という点も気になる点で、選手としても監督としても大半がドイツのクラブだった。国外クラブに携わったのは2014年にプレミアリーグのフラムを率いたときくらい。こういうニュースが流れると世間一般で話題になるのでそういう意味では悪くないと思うが、実現の可能性は低いだろう。
◆ かつてないほどの厳しいオフになる可能性も・・・。J1に初昇格してからは2012年が5位で、2013年が12位で、2014年で5位で、今シーズンは11位。2012年と2014年は最後までACL出場権を争っており、「いくつかの幸運が重なったときは上位に進出できる力があるが、歯車が狂うと残留争いに巻き込まれてしまう。」というのがJ1の中での立ち位置と言える。「安定してJ1で好成績を残すこと。」が次のステップとなるが、そのレベルに達するのはなかなか大変である。
「苦しいシーズンは何とか乗り切って残留を成し遂げて、良いシーズンにタイトルやACL出場を狙う。」というのが現実的。そういう意味では歯車が噛み合ったとは言い難いシーズンで「J1残留」を果たすことが出来たのは非常に良かったと言えるが今オフは「試練のオフ」になる可能性がある。FW豊田、MF金民友、GK林彰、MF水沼、MF藤田直といった主力を引き留めることが出来るか?が大きな注目点となる。
近年のJリーグの移籍市場の傾向として『実際にJ2に降格したクラブよりも(シーズン前の期待はまずまず高かったが)残留争いに巻き込まれて何とか踏みとどまったクラブの方が草刈り場になりやすい。』という点が挙げられる。2010年はFC東京、2012年はG大阪と神戸、2014年は大宮とC大阪がJ2に降格。降格が決まったときは「主力選手が大量に流出するのでは?」と言われたが、大半の選手はチームに残った。
普通の選手は「自分たちがクラブをJ2に落としてしまった。」という罪悪感を感じる。またJ2のレベルは確実に上がってきており、MF山口蛍のようにJ2から日本代表に選ばれる選手もいる。一昔前と比べるとJ2でプレーすることに抵抗感を感じる選手は少なくなっていることも思ったよりも主力が流出しない理由と言えるが、一方でJ1に残留したクラブの主力は罪悪感を感じることはないので逆に身動きが取りやすくなる。
期待以下の成績で残留争いに巻き込まれると「ずっとこのチームで頑張ってきたけれどもそろそろ頭打ちかも。」、「新しい環境でゼロから出直すのも悪くない。」という心理になりやすい。すでに日本代表のGK林彰と東アジアカップで日本代表に初選出されたMF藤田直の2人に対しては「鹿島が狙っている。」と報じられており、監督選びがスムーズにいかないなど不手際があると厳しいオフになる可能性もある。