■ 第40節J2の第40節。18勝18敗3分けで勝ち点「57」のコンサドーレ札幌(8位)と、24勝8敗7分けで勝ち点「79」のヴィッセル神戸が札幌ドームで対戦した。13:00キックオフの試合で3位の京都が首位のG大阪にホームで0対2で敗れたため、神戸は「2位以内」が確定して、1年でのJ1復帰が決定した。しかしながら、この時点で首位のG大阪との差が「4」となったので、J2制覇のためには、絶対に勝ち点「3」が必要な試合となる。
ホームの札幌は「4-2-3-1」。GK杉山。DF日高、奈良、チョ・ソンジン、上原。MF深井、河合、レ・コン・ビン、宮澤、荒野。FW前田俊。リーグ3位タイの15ゴールを挙げているFW内村が出場停止のため、FW前田俊が1トップに上がって、トップ下にMF宮澤が入って、ボランチはユース出身でルーキーのMF深井が起用された。「94ジャパン」の主力だったMF深井は今シーズン17回目のスタメンとなる。MFレ・コン・ビンは3試合ぶりのスタメンとなった。
対するアウェーの神戸は「4-2-2-2」。GK徳重。DF奥井、北本、河本、相馬。MF橋本英、エステバン、小川、マジーニョ。FW森岡、ポポ。リオ世代のDF岩波は怪我のため欠場で、DF北本とDF河本のCBコンビとなった。FWポポとMF小川はともに15ゴールを挙げていて、得点ランキングの3位タイに付けている。8ゴールを挙げている元日本代表のFW田代はベンチスタートとなった。背番号「10」のFW森岡は6試合連続スタメンとなった。
■ 1対0で札幌が逃げ切る試合の序盤はイーブンの展開だったが、前半20分あたりを過ぎるとホームの札幌が優勢となる。FW前田俊とMF宮澤のところで起点を作って、厚みのある攻撃を見せるようになる。すると、前半36分にボランチのMF河合がミドルシュートを放つと、ペナルティエリア内でDF北本のハンドがあったとして札幌にPKが与えられる。これをベトナム代表のMFレ・コン・ビンが決めて札幌が先制する。MFレ・コン・ビンは今シーズン2ゴール目となった。
1対0で迎えた後半は勝たないとJ2制覇が苦しくなる神戸が攻撃する時間が長くなる。後半17分にはMF杉浦とMF松村を投入して、流れを引き寄せようとするが、直後のプレーでMF松村が負傷してプレー続行が不可能となるアクシデントが発生する。代わってFW田代が投入されてロングボールが増えてくるが、DF奈良とDFチョ・ソンジンを中心に札幌の守備陣も落ち着いて対応して神戸にチャンスを作らせない。
札幌は後半29分に197センチのFWフェホを投入。FWフェホが持ち味であるスピードを生かしたプレーでカウンターを中心に何度もチャンスを作って「あわや」というシーンを作る。結局、2点目のゴールは生まれなくて、最後の最後で神戸が大チャンスを作ったが、何とか札幌のキーパーのGK杉山が防いで同点とはならず。試合は1対0で札幌が逃げ切ってプレーオフ争いに踏みとどまる貴重な勝ち点「3」を獲得した。一方の神戸は2試合勝ちなしとなった。
■ ジャッジに泣かされた神戸この試合が始まる前に行われた京都 vs G大阪の上位対決で3位の京都が敗れたため、試合前の時点で神戸の「J1復帰」が確定した。神戸としては「J1昇格」を気持ちよく祝うためにも、アウェーで勝ち点「3」の欲しい試合だったが、札幌の出来が良かったので劣勢となった。札幌のシュートは20本で、神戸のシュートは10本だったが、この数字というのは、この試合でどちらが優勢だったかを、正確に示している数字と言えるだろう。
神戸にとってアンラッキーだったのは、PKを取られたシーンである。ペナルティエリア内の攻防でハンドを取るのか、取らないのかというのは、揉めやすい要素の1つで、Jリーグの試合だけでなく、海外リーグの試合を観ていても、基準というのははっきりしない。「故意でなかったら手に当たっても取らない。」というケースが多いが、このシーンに関しては、DF北本は胸あるいは膝の上あたりでブロックしているように見えるので、ミスジャッジだったように感じられる。
一方、終了間際のMFエステバンの退場については、イライラが募って札幌のFWフェホを突き飛ばす形になったので、「2枚目のイエローカードで退場」という判断は間違いではないと思うが、FWフェホのアクションは大袈裟だった。突き飛ばされているのは明らかであるが、顔を押さえて倒れ込むほどのチャージを受けているわけではない。当然、最初の突き飛ばす行為が良くないのは間違いないが、FWフェホの大袈裟な倒れ方も褒められたものではない。
こういった審判を欺こうとするような行為に関しては、厳しい視線を浴びせられるべきだと思う。当然、選手は慎まなければならないし、神戸のサポーターや中立のサポーターはもちろんのこと、札幌のサポーターも、「何をしているのか?」、「そういうのは止めよう。」という雰囲気を作りださないとダメだと思う。新外国人のFWフェホは途中出場でいいプレーを見せていたので、オーバーアクションについては、非常に残念に感じた。
■ 神戸の昇格が決定!!!これで首位のG大阪との差が「4」になったので、「J2制覇」というのはほぼ無理と言わざるえないが、とにかく、1年でJ1に復帰できたのは良かった。FW大久保、MF野沢、DF伊野波、DF高木和といった代表経験のある選手がチームを離れて、若手が頑張らなければならないチーム構成になったが、DF岩波、MF小川、DF奥井の3人はシーズンを通して力を示して、秋以降、スタメンに定着したFW森岡は終盤のラストスパートの原動力となった。
攻守の軸となる選手が変更になったので、チームが出来上がるまでに時間がかかるかと思われたが、最初から安定して勝ち点を積み上げていったので、比較的、余裕を持った状態でJ1昇格を決めることができた。「世代交代を推し進めながら、結果も残す。」という理想に近い形でJ2生活を終えることができそうなので、「J2降格」というのはいいことではないが、J2での1年間を有効に活用できて、未来につながるシーズンになったことは間違いない。
■ 「数年に1人」のボランチ一方の札幌は、39節が千葉(H)、40節が神戸(H)ということで、強豪とのホーム2連戦だったが、ともに1対0で勝利した。試合前の時点では6位の徳島と7位の松本山雅との差は「3」だったが、徳島は2対0で勝利して、松本山雅は2対3で敗れたので、6位の徳島との差「3」をキープして、さらには、得失点差の関係で松本山雅を抜いて「7位」に浮上した。残り2試合となったが、得失点差では札幌が徳島や松本山雅を大きく上回っているので、逆転プレーオフも見えてきた。
リーグ3位タイとなる15ゴールを挙げているエースのFW内村が出場停止ということで、踏ん張りどころだったが、代役と言えるFW前田俊、MF宮澤、MF深井の3人が奮闘した。FW前田俊は1トップの位置に入ったが、確実なキープとアイディアのあるパスで攻撃をリードして、トップ下に上がったMF宮澤も182センチの高さを生かすシーンが多くて、FW内村とFW前田俊の1トップ+トップ下では出来ないプレーでチームに貢献した。
ボランチのMF深井も非常に良かった。後半20分あたりでガス欠気味になって、急激に動きが落ちてしまったので、後半29分でベンチに下がったが、攻守両面で能力の高さを発揮した。6試合ぶりのスタメンということを考慮しても、最後までスタミナが持たなかったことは課題と言えるが、18歳でこれだけ出来るボランチはなかなかいない。「94ジャパン」のときも、大きな存在感を発揮していたが、楽しみな逸材である。
年代別代表の常連だったが、高校3年生のときは、怪我で苦しんだ。なかなか試合に出場できなくて、プロ1年目はその延長線上でリハビリが中心になるかと思われたが、19試合に出場しているので、まずまずと言える。MF上里とダブルボランチを組むケースが多かったが、MF上里と組む時はディフェンシブな仕事の割合が高くなって、あまり存在感を発揮できない試合の方が多かったが、MF河合とのコンビになると、攻撃的な良さも出しやすくなる。
177センチということで、ボランチとしては標準的なサイズと言えるが、ボールを奪い取る力があって、しかも、正確なつなぎも期待できる。ロンドン世代は、最終的にはMF扇原とMF山口螢のC大阪コンビでおさまったが、U-19やU-21のときはなかなか固定できなくて、ウイークポイントと言われた。ここ最近、「ボランチの逸材」というのは意外と出てきておらず、ボランチとしては「数年に1人」と評価できるクラスの選手だと思うので、彼にかかる期待は大きい。
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