■ 第17節J1はちょうど半分の第17節。京都サンガとアルビレックス新潟が対戦。最下位の京都サンガは第5節のセレッソ大阪戦から12試合勝利なしと泥沼状態。対するアルビレックス新潟は10試合無敗が続いている。好照的のチームの対戦となった。
ホームの京都は<4-3-3>。GK水谷。DF増嶋、カク・テヒ、水本、中村太。MF角田、中山、加藤。FWディエゴ、宮吉、ドゥトラ。DF渡邉大、FW柳沢はベンチスタート。FW宮吉がスタメン出場。
対する新潟は<4-2-3-1>。GK黒河。DF西、千葉、永田、酒井。MF小林慶、本間、マルシオ・リシャルデス、ミシェウ、チョ・ヨンチョル。FW矢野。MF三門がベンチスタート。
■ 新潟が勝利試合は序盤からアウェーの新潟ペースで進む。
うまくビルドアップが出来ない京都に対して新潟はスムーズな連携で攻撃を行う。前半15分を過ぎると、ほとんど京都が攻められなくなって、京都にとっては「危険な時間帯」だった前半28分に新潟は左サイドからMFチョ・ヨンチョルが裏に抜け出すと、得意のエリアから右足でシュート。これが決まって新潟が先制する。FWチョ・ヨンチョルはリーグ戦6ゴール目。前半は1対0の新潟リードで終了。
後半はビハインドの京都が攻め込む。後半9分に新潟のMFミシェウが一発退場となって相手が10人になると、さらに勢いを増していく。しかし1点リードで余裕のある新潟の守備を崩しきれない。
逆に後半33分に新潟がコーナーキックを獲得すると、MFマルシオ・リシャルデスが二アサイドに蹴った高精度のボールを京都DFがクリアしきれずにオウンゴール。2対0とリードを広げる。終盤になると、京都はDF森下を投入してDFカク・テヒを前線に上げるが、効果は発揮せず。
結局、2対0で新潟が勝利。京都は17節を終えて勝ち点「10」で折り返すことになった。
■ 曹永哲のブレーク新潟はこれでリーグ戦は11試合無敗。7勝4分けで暫定4位にまで浮上した。シーズン前にMF松下、DF千代反田、GK北野とセンターラインの数名が抜けて戦力ダウンが心配されたが、予想を上回る快進撃を見せている。
中心はやはりMFマルシオ・リシャルデスで大事な場面でチームを救うゴールを挙げ続けているが、MFチョ・ヨンチョルがブレークしているのも大きい。1トップを務めることの多い日本代表のFW矢野はまだ2ゴールのみであるが、左サイドのMFチョ・ヨンチョルは6ゴールを挙げていて、チームの得点源の1つとなった。
もともと能力の高い選手ではあったが、日本にやってきてからはイマ1つ才能を発揮できずにレギュラーを確保するには至っていなかったが、ここに来てのブレーク。即戦力のブラジル人を連れてくるのも補強の1つの方法ではあるが、若くて才能のありそうな選手を加入させてチームの中で育てていくというのも非常に大切である。
今年も、FW宮市、FW永井、MF柴崎、MF小島といった高校3年生や大学4年生の選手がJリーグクラブの中で大争奪戦になっているが、彼らが入団する先はJリーグの中でもビッグクラブと言われるチームがほとんどであり、その他大勢のクラブが彼らを獲得できるチャンスはゼロに近い。その一方で、同じような力をもっているはずの韓国のアンダー世代を獲得することは、その他大勢のクラブでもそれほど難しいことではない。大分がFWチェ・ジョンハンを獲得したり、鳥栖がMFキム・ミヌを獲得したりと、その例は少なくない。
FWチョ・ヨンチョルのブレークというのは、韓国代表にとっても大きなことであるが、資金力に限度のある多くのJリーグクラブにとってもいいモデルケースとなる。
■ 運動量の差試合を振り返ってみると、「新潟の前線の選手」と「京都の前線の選手」の運動量の差が目に付いた。
新潟は全ての選手がハードワークを見せたのに対して、京都はハードワークしていた選手を探す方が難しいくらいの状況。「ホームゲーム」であり、「相手は後半早々に10人になった」というきわめて有利な状況だったにもかかわらずアドバンテージは全く生かせなかった。事態は深刻である。
もちろん、個々の選手の「意識の差」も大きい。京都の前線のFWドゥトラやFWディエゴにほとんど「守備の意識」がなくて、新潟のDFラインはプレッシャーの少ない状況でプレーできた。一方で、新潟の前線の選手は激しく動いて相手の最終ラインにプレッシャーをかけ続けた。ビルドアップ能力に関して、新潟の選手に負けていないはずの京都の最終ラインのメンバーであるが、プレッシャーに屈して効果的なボール回しは出来なかった。
■ 信頼感の欠如京都の運動量が乏かった理由として、「信頼関係の欠如」というのも考えられる。新潟はMFマルシオ・リシャルデスに限らず、中盤の選手がいい形でボールを持つと、周囲の選手が連動して局面を打開しようと試みるが、(これは、13試合勝利が無いという状況を考えると仕方が無いのかもしれないが、)京都では皆無であった。
日本代表のラモス氏は、以前、「信頼感」に関して、下のようなコメントを残している。
「サッカーにおけるチャンスとピンチはコインの裏表だ。「必ずここに来る」と思って走りこんだ場所にボールが来なかった場合、チャンスは一瞬にしてピンチに転じる。それだけに、チャンスを生かすには勇気が求められるし、背中合わせのリスクも抱えることになる。でも、ときにはリスクを冒さなければ、ゴールという「リターン」も得られないのが、サッカーだ。そして、チームの信頼感が、リスク管理の役目も果たす。真の意味でのチームワークとは、この信頼感のことだと思う。そして信頼感こそが、チームとして100パーセントの力を発揮してサッカーをすること、そして個々の能力を最大限に引き出すことにもつながるとワタシは思う。」
→ ラモス瑠偉と日の丸への思い
プロサッカー選手であれば、走ろうと思えば90分間走り続けることは可能だろうが、単に「走れ」といわれても簡単に従うことは出来ない。暑さ等のフィジカル的な要因で「走れない」のであればコンディションの回復次第で改善される可能性はあるが、京都の現状は、「走ろうにも走れない」状況のように感じてしまう。これを改善するのは相当の経験を積んだ監督でも難しいだろう。
■ 3試合目これで秋田監督は、0対4、0対3、0対2の3連敗でのスタートとなった。1点ずつ失点数が減っているというのが数少ないポジティブな要素であるが、得意といわれる真夏のホームゲーム2試合があったにもかかわらずこの成績。次節のC大阪戦もホームゲームとなるが、もしこの試合でも無得点で敗れるようなことがあれば、秋田監督の交代というのも検討せざる得ない。
京都にはメンバーはそろっている。加藤監督の下で働いていた秋田新監督なので、大胆なチェンジを行うのは難しいのかもしれないが、一度、チームをリセットするくらいでないとこの状況から抜け出せないだろう。まだリーグ戦の半分が終わっただけとはいえ、かなり厳しい状況といえる。
■ レフェリーの評価この試合は奥谷氏が笛を吹いたが、やや安定感を欠くジャッジだった。特にMFミシェウが退場してからのレフェリングはかなり新潟の不利のジャッジが続いて、公平性を欠くものであったといわざる得ない。
南アフリカ大会で西村レフェリーが高い評価を受けたことからも分かるように、日本のレフェリーの技術はかなり高いレベルにあるが、(トップレフェリーはともかくとして)もう少し下に位置するレフェリーの中には、同じようなミスを繰り返す人も少なくない。改善を期待したい。
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