■ 第7節 J1の第7節。1試合消化が少ないにもかかわらず、勝ち点「12」で4位につける名古屋グランパス。2節の川崎フロンターレ戦に2対3で敗れたが、3節の磐田、5節の神戸、6節の京都にいずれも2対0で勝利し、リーグ戦は3連勝中。全て完封勝利と守備が安定してきた。
対するはアルビレックス新潟。水曜日に行われたナビスコカップのセレッソ大阪戦で1対0の勝利をつかみ、今シーズン、初勝利を挙げたものの、リーグ戦は18チーム中で唯一の未勝利。6試合を終えて3敗3分けで最下位の18位と苦しい状況にある。
ホームの名古屋は<4-1-2-3>。GK楢崎。DF田中隼、増川、闘莉王、三都主。MF吉村、小川、ブルザノビッチ。FW金崎、ケネディ、マギヌン。FW玉田、MF中村は怪我のため欠場。MFブルザノビッチはここまで3ゴールを挙げている。古巣対決となったDF千代反田はベンチスタート。
対するアウェーの新潟は<4-2-2-2>。GK東口。DF西、千葉、永田、酒井。MF本間、小林、マルシオ・リシャルデス、チョ・ヨンチョル。FW矢野、ミシェウ。DF内田が欠場のためコンサドーレ札幌からレンタル中のDF西が右サイドバックに入る。スタメン起用が予想されたMF三門もベンチスタートでMF小林慶がスタメン。FWミシェウがフォワードの位置に入る。
■ 1対1のドロー試合はホームの名古屋が押し気味で進める。右サイドのFW金崎のドリブルでの仕掛けから多くのセットプレーのチャンスを獲得する。しかしながら、FWマギヌンの蹴ったボールが中央の選手には合わず。高さでは劣勢の新潟の守備陣も踏ん張って前半は0対0で終了する。
後半も名古屋が試合の主導権を握りながらも攻めきれない展開が続く。新潟はFW矢野を中心にカウンターで攻め込むシーンを作るが、こちらも精度を欠いてチャンスに結びつけることが出来ない。スコアレスドローの可能性も膨らんできた後半38分に名古屋が左コーナーキックを獲得。MFマギヌンの蹴ったボールをDF闘莉王を合わせて先制する。DF闘莉王は2試合連続ゴール。
これで逃げ切りたかった名古屋だったが、後半44分にMFマルシオ・リシャルデス→FWファグネル→FW大島とダイレクトでパスがつながって中央からFW大島がシュート。これが決まって1対1の同点に追い付く。FW大島は今シーズンの初ゴール。
結局、試合終了間際に新潟が追い付いて1対1。引き分けに終わった。
■ 追いつかれてドロー3試合連続で2対0の完封勝利中の名古屋だったが、追いつかれてドロー。4連勝を逃した。後半38分にコーナーキックからDF闘莉王のヘディングシュートで1点を先制し、逃げ切りたかったところだったが、FWファグネルとFW大島という新潟の途中出場コンビに中央を崩されて失点。悔やまれるドローとなった。
思うような試合運びが出来なかった名古屋は、後半にDF阿部、FW杉本、MFダニルソンの3人を投入したが、いずれも機能せず。新潟は途中出場のFWファグネルとFW大島のコンビがドローに貢献したが、それとは対照的だった。特にFW杉本の出来が非常に悪く、クロスの精度が低かった。
有り余る戦力を持つ名古屋は、ようやく主力クラスとスタメンクラスとベンチメンバーの棲み分けが終わった段階である。スタメンから外れた選手はベンチスタートとなり、試合途中から出場してくることが多いが、実力的には問題ない選手であっても、試合途中から起用してすんなりと試合に溶け込めるタイプとそうでないタイプがいて、MFダニルソンあたりは、途中から守備固めのような役割でピッチに送り込んだとしてもあまり効果的とはいえない。
■ 単調な攻撃名古屋は怪我でコンディションの良くないFW玉田が欠場。FWマギヌンを左ウイングに入れて、MFブルザノビッチ、MF小川、MF吉村のトリオで中盤を組んだが、スムーズな攻撃は出来ず。「FW金崎が右サイドから突破してファーサイドで待つFWケネディにクロスを送るが、FW金崎の右足のクロスは低くてFWケネディまで届かず。DFがクリアする or 相手の足に当たってコーナーキックで終了」というおなじみのシーンが続いた。
今シーズン、DF闘莉王も加わって、セットプレーからのゴールも増えているので、昨シーズンまでと比べるとセットプレーでの期待感は増しているが、この日は、ほとんどセットプレーを生かせないまま。結局、DF闘莉王の先制ゴールもコーナーキックから生まれたが、中央に合うシーンも少なかった。
何だかんだで、FW玉田が欠けると攻撃に変化とスピードが生まれなくて停滞するのはこれまでと同じであり、新潟のGK東口とDF千葉の二人がハイパフォーマンスを見せて中央を固めると、攻め手が無くなってしまった。
ここまで順調に結果を残して、暫定では2位となっているが、思ったほどのチーム力が発揮出来ていないのは事実。序盤は、磐田、神戸、京都、新潟とあまり調子の出ていないチームとの対戦が続いていたが、今後、広島、浦和、鹿島という昨シーズンの上位チームと対戦する。ここで真価が問われる。
■ 追いついてドロー後半37分に先制ゴールを奪われた新潟だったが、FW大島のゴールで追い付いてドロー。勝ち点「1」を奪った。
リーグ戦では初勝利の遠い新潟にとって、一刻も早く、リーグ戦での勝利が欲しいところであり、引き分けでは満足出来ない部分もあるが、戦力的には新潟を上回っている名古屋とのアウェーゲームということを考えるた場合、ドローでもOKと考えた方がいいと言えるだろう。こういう地味に稼いだ勝ち点「1」がリーグ戦の終盤に効いてくる可能性はある。
これまで、新潟というチームには、FWエジミウソン、FWアレッサンドロ、FWペドロ・ジュニオールとシーズンで15点から20点を期待出来るブラジル人ストライカーがいて、その脇を固める日本人選手が堅実な仕事をこなすことでJ1でも生き延びてきたが、今シーズンは頼りになるストライカーが不在。序盤は苦しんでいる。
■ 奮闘する東口順昭名古屋が奪ったコーナーキックは前後半合わせて15本。前半からセットプレーでゴールを脅かされた新潟だったが、GK東口が奮闘。名古屋にはFWケネディ、DF増川、DF闘莉王という抜群の高さを誇るターゲット役の選手が揃っていて、高さ勝負では明らかに名古屋に分があったが、事ごとくGK東口が防いでしまった。
184cmということでGKとしては大きくはない選手だが、制空権を握っていて、相手のセットプレーのキックの精度不足にも助けられたが、ハイボールをキャッチして相手の攻撃を防ぐシーンも目立った。
2節のGK黒川が負傷し、いきなりのデビューとなったが、ここまでは非常に安定したパフォーマンスを見せている。GK北野が大宮に移籍した影響はそれほど感じさせない。
■ 噛み合わない攻撃陣名古屋と同様に新潟の攻撃も単調だった。ナビスコカップのC大阪戦で決勝ゴールを決めたFWミシェウをスタメンで起用し、FW矢野との2トップに近い形で抜擢したが、FWミシェウも持ち味を発揮することは出来なかった。
FWミシェウのキープ力と意外性のあるパスは千葉時代にも威力を発揮したことはあったが、フィジカル的な弱さと得点能力の不足により高い評価は得られなかった。
新潟ではMFマルシオ・リシャルデスという大黒柱がいるが、FWミシェウとMFマルシオ・リシャルデスのプレーエリアは重なるので、FWミシェウが入った場合、MFマルシオ・リシャルデスが消えてしまうことが多く、ブラジル人コンビの相乗効果が生まれていない状況に変わりはない。
■ サイドバックに入った西大伍新潟は右サイドバックのDF内田が欠場のため、コンサドーレ札幌から加入したDF西がスタメン出場。3試合目の出場であるがスタメンで出るのは初めてということで緊張もあったのか、前半は散々な出来。特に守備に入ったときのGK東口との連携が最悪で、バックパスの処理ミスが3度ほどあり、ブレーキとなった。ただ、後半は吹っ切れたのか、積極的に前に出て相手のサイドを押し込めることに成功。90分間のトータルで見ると及第点の出来だった。
ユーティリティー性が持ち味で、この日はサイドバックでプレーしたが、本来は中盤の選手であり、札幌では攻撃的なポジションでプレーした方がいいプレーを見せることが多かった。新潟ではサブの域を出ていないが、MF本間、MF小林慶、MF三門とボランチ陣のパフォーマンスが十分ではなく、サイドハーフのMFチョ・ヨンチョル、MF河原らも思うような結果を残せていない。そんな中で、周囲の人のためにプレーすることが出来るMF西を中盤で起用するのも打開策の1つといえる。
■ 黒崎新監督のスタイルとは?新潟はシーズン前にGK北野、DF千代反田、MF松下というセンターラインの選手が抜けて、さらには4年間の間、安定した成績を残した鈴木監督も退任。オフの補強も最低限にとどまったこともあってシーズン前の評価は低いものであったが、これまでのところは前評判通りに低迷している形になっている。
今シーズン、ドーハ戦士であり鹿島アントラーズでフォワードとして活躍した黒崎監督が就任。どのようにチームが生まれ変わるのか注目されていたが、ここまでのところ、予想以上に変化が見られず、前任者とほとんど同じような戦いぶりに見える。
ポジティブに考えるのならば、主力の選手が数名抜けたにもかかわらず、GK東口、DF千葉、MFチョ・ヨンチョルといった選手をレギュラーに抜擢し、チームのクオリティーをそれなりに維持させていることを評価できる。これだけ主力が抜けた状態で、新しいサッカーにチャレンジしようとしていたならば、状況はもっと苦しいものになっていただろうことは容易に想像できるからである。
新監督という立場になると、過剰に自分のカラーを出したくなるものであり、チャレンジして失敗するケースも多い。となると、ある程度の成果を得た鈴木監督のサッカーを踏襲し、後任にコーチだった黒崎監督を選択することで継続性を図った新潟フロントの考え方は理解できる。
ただ、現状、黒崎カラーがほとんど出ておらず、また同時に結果も出ていないとなると、保守的になり過ぎずもっとチャレンジしてもいいのではないかという感じもする。この辛抱強さが黒崎監督の指導者としてのカラーでありスタイルなのかもしれないが、チームとしての停滞感は漂う。
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