■ プレシーズンマッチドイツのブンデスリーガは開幕まであと2週間。イングランドのプレミアリーグは開幕まであと1週間。欧州サッカーリーグの開幕が近付いてきている。J1のセレッソ大阪からドイツのボルシア・ドルトムントに移籍したMF香川真司がマンチェスター・シティとのプレシーズンマッチに先発出場した。
ドルトムントは<4-2-3-1>の布陣。背番号23のMF香川はトップ下でスタメン。パラグアイ代表のFWバリオスが1トップでスタメン出場。
■ 香川が勝ち越しゴール 試合は開始9分にドルトムントが右サイドから攻撃を仕掛ける。DFオボモエラのパスに反応したMF香川がゴール前に突進。トップスピードでペナルティエリアに侵入したMF香川に対してマンチェスター・シティのMFバリーがファールで止めてPKを献上。FWバリオスが決めてドルトムントが先制する。
その直後、マンチェスター・シティは中央でボールを持ったMFヤヤ・トゥーレが鋭いパスで右サイドに展開。スピードに乗った状態でボールを受けたMFショーン・ライト・フィリップスが中央にグラウンダーのクロスを送ると、FWジョーが決めて1対1の同点となる。前半は1対1のままで終了。
後半5分にドルトムントが左サイドから展開。ゴール前の混戦を抜け出したMF香川がフリーになると左足で落ち着いて決めてゴールゲット。これで親善試合は2試合連続ゴール。ドルトムントが2対1と勝ち越しに成功する。
ドルトムントは後半35分にも右サイドを崩して途中出場のFWレアンドルスキが決めて3対1とリードを広げる。結局、MF香川が2ゴールに絡む活躍を見せてドルトムントが勝利を飾った。
■ 開幕スタメンに大きく前進トップ下で出場したMF香川は1点目のPKゲットと2点目の勝ち越しゴールという2つの大仕事。90分間フル出場を果たして開幕スタメンに大きく前進した。初めての海外リーグで、しかもドルトムントというビッグクラブでのプレーということで、最初のうちは苦労するのかと思われたが、違和感なくチームの中心となってプレーしていて、開幕からチャンスが回ってくるのは間違いない。
もう少し「お客さん」状態なのかと思っていたが、始まってみるとフィールドの真ん中にいて、いろいろとチームメイトにも要求をしていて、これまでのキャンプ中に十分にアピールが出来て溶け込めているということを印象付けた。
■ トップ下でのプレーMF香川は、もともとはボランチの選手で、セレッソ大阪時代はほとんどが左サイドでのプレーであった。十八番は左サイドから中に切れ込んでフィニッシュに絡むプレーであったが、不慣れなはずの<4-2-3-1>のトップ下のポジションも予想以上にフィットしていた。1点目につながったPKをゲットしたプレー以後は、程よくボールも回ってきて、FWバリオスとの連携も悪くはなかった。
十分にアピール出来た試合であったが、欲を言うと後半途中に右サイドに移ってからはインパクトのあるプレーが出来なくなってしまったことがマイナス評価となる。右サイドに回っても良く動いてボールを受けようとはしていたが、(交代選手が多くなってアピールしたい選手たちがやや自己中心的なプレーに走ってしまったという面もあるが、)1つ・2つくらいは右サイドでも仕事をして、「サイドもこなすことが出来る」ということを示しておきたかったところである。
■ フィジカルとキレJリーグのラストゲームは5月15日のヴィッセル神戸戦。その後は、ワールドカップのバックアップメンバーとして南アフリカに滞在し、あまりオフは無かったはずであるが、コンディションは良好でプレーにキレがあった。
今シーズンは初めてJ1でプレー。11試合で7ゴールと十分すぎるくらいの結果を残していたが、本来のキレはあまり見られずに、やや強引なドリブルやパスが目立ったが、この日は落ち着いてプレー出来ていて、判断も的確だった。もともとクレバーな選手なので、その辺りは十分に心得ているようで、C大阪時代よりも味方を使おうとする意識は高かった。
また、海外リーグに移籍した選手の場合、1つの壁になるのは「フィジカルの差」であるが、172cmのMF香川の場合も、まともにフィジカルで勝負すると相手に負けてしまう。しかし、これはドイツリーグでも、J1リーグでも、J2リーグでも同じであって、日本でもフィジカル的に見劣りする中でプレーし続けてきて、結果も残してきた。そういう意味ではよく心配される「フィジカル差」というのも「フィジカル」を武器に戦ってきた選手よりも少ないかもしれない。
■ 際立った落ち着きドイツの名門のドルトムントのホームスタジアムのヴェストファーレンは世界屈指のスタジアムといわれる。ドイツワールドカップで日本がブラジルと対戦したのがこのスタジアムで、この試合が現役ラストマッチとなった中田英寿が試合終了後にピッチに倒れ込んで動けなくなったシーンが印象的であるが、そのスタジアムの最初の試合でポジティブな印象を与えることが出来た。これは非常に大きい。
最初の5分ほどはマンチェスター・シティのプレッシャーも激しく、全くボールに触れることが出来なかったので少し心配したが、本人は特に慌てていなかったようで焦った感じは見えず。その後に巡って来た最初のチャンスでドリブルからPKをゲット。素晴らしいボールコントロールでボールを前に運んで相手のファールを誘った。これはトップスピードになった時でも失われない技術の高さが光った素晴らしいプレーだった。
また、チームの2点目のゴールはMF香川の得意の形であり、「ゴール前の混戦の中でも決して技術が落ちないこと」と、「ゴール前でビッグチャンスになってもパニックにならない」という良さが十分に発揮出来た名刺代わりのプレーであった。右利きの選手であるが、左右両足で同じようにシュートにまで持っていく事が出来る点。これも大きな武器である。
■ 活躍のカギは?申し分のないホームデビューを飾ったMF香川であるが、継続して活躍が出来るかどうかはコンディションを維持することは大前提であるが、いかにして前を向いてプレー出来る回数を増やすかだろう。
「シンジがいい形でボールを持てればビッグチャンスにつながる」ということはある程度はチームメイトも理解したはずであるが、この日はチームに加入してあまり時間が経っていないということもあって本当に欲しいタイミングでパスが回って来ないシーンもあった。
この試合の前半に、中央のFWバリオスがいいタイミングでダイレクトパスをくれるシーンがあって、シュートまで持ち込むことが出来たという場面があったが、早く味方の信頼をつかんで「自分がもらいたいタイミング」でパスをもらえるようになってもらいたいところである。
■ 「使われる側」C大阪ではチームの最大の得点源であり中心であったため、完全に周りを「使う側」の選手であったが、デビューした頃から見ている印象では、この選手は「使われる側」になった方が、より自分の持ち味を発揮出来るのではないかと思う。
C大阪時代にコンビを組んでいたMF乾との関係では、MF香川が「使う側」でMF乾が「使われる側」という関係で2人が成り立っていたが、これも、実は逆の立場だった方がもっと力を発揮出来たのではないかという思いもある。
よって、ドルトムントというタレントが揃っているチームの中に入って、どういうプレーを見せるのかというのは、一番、注目したいところである。
■ 期待したいこと そろそろ開幕が近付いてきたが、ドルトムントはブンデスリーガの中でも強豪チームの1つであり、多くの試合で相手よりも有利に試合を進めることが出来るはずである。
もちろん、その中レギュラーを守り通すのは簡単ではないだろうが、もし、このトップ下のポジションでプレーし続けることが出来たら、年間で10ゴール程度は十分に期待出来るだろう。それだけのポテンシャルを持っている選手であり、適応能力もあるはずである。
そして、もし仮にミッドフィールダーのポジションで年間で二桁のゴールを挙げることが出来たら、ドイツ中にかなりのインパクトを与えることが出来るだろう。あと2週間。期待は高まる。
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