■ 辛うじてW杯の出場権を確保したが・・・。大混戦となったアジア最終予選のA組の最終節はイラン vs シリアは2対2のドロー。ウズベキスタン vs 韓国はスコアレスドロー。カタール vs 中国は2対1でアウェイの中国が勝利した。最終的には4勝3敗3分けで勝ち点「15」の韓国が2位でW杯の出場権を獲得。シリアは土壇場の後半48分に同点に追いついて勝ち点「1」を加えた結果、勝ち点「13」に到達。3位でオーストラリアとのプレーオフに回ることが出来た。
ホームで韓国と対戦したウズベキスタンは勝てば韓国を上回って3位以内が確定したがドローに終わったことで3位以下が確定。アンラッキーなことにシリアが勝ち点「1」を加えたことで4位に転落。W杯初出場の期待がかかったがプレーオフに進むこともできなかった。ウズベキスタンはまたしても勝負所の試合で勝てなかった。5位の中国も勝ち点「12」。2位の韓国との差は「3」。3位のシリアとの差は「1」だった。
アジア最終予選のA組の2位争いは当事者ではない人にとっては非常に面白い展開になったがW杯行きを逃す可能性があった韓国は何とか2位をキープして9大会連続10回目のW杯出場を決めたが、結局、ウズベキスタンに勝利することはできなかったので仮にシリアがアウェイでイランに勝利していたら3位でプレーオフに回るところだった。最後の最後で「犬猿の仲」と言われているイランに助けられたことになる。
■ ロンドン五輪では銅メダルを獲得したが・・・。何とかW杯出場を決めることが出来たが韓国サッカー界の未来は決して明るくない。もともと日本と同様で国内リーグよりも代表チームの人気が高い国なので「サッカー文化が成熟している国」とは言えないが今回の代表チームの不振・不調に関してサポーターは怒り心頭。今年の7月に代表監督に就任したシン・テヨン監督になってからは2試合とも0対0。W杯出場というノルマは達成したがゴールは奪えていない。
2018年のロシアW杯を目指す代表チームというのは日本や韓国に限らず大半の国はロンドン世代の選手(1989年-1992年生まれ)が中心となる。日本でいうとMF山口蛍(C大阪)、DF昌子(鹿島)、DF酒井宏(マルセイユ)、MF原口(ヘルタ)、FW大迫(ケルン)といった選手が主力として活躍しており、関塚JAPANの活動には1度も参加しなかったがMF香川(ドルトムント)も1989年生まれなので一応はロンドン世代となる。
日本はロンドン五輪で4位に入っているので世界大会の経験が豊富な選手が何人も含まれるが言うまでも韓国代表はロンドン五輪の3位決定戦で日本に勝利して銅メダルを獲得した世代が中心である。エースのFWソン・フンミンを筆頭にMFキ・ソンヨンやMFク・ジャチョルなどずっと欧州リーグでプレーしている選手が非常に多い。世界大会で結果を残した期待の大きい世代だったので失望の度合いは大きい。
■ 3つの大きな理由は・・・。期待の大きい世代が中心となる今の韓国代表が苦戦を強いられている理由としては以下の点が挙げられる。
・定まらないスタイル。
・若い頃から日本や欧州のクラブに進出する選手の増加。
・国内リーグ(Kリーグ)の衰退。
1つ目に関してはアジアレベルでは持ち前のフィジカルで圧倒的できるが世界大会になると難しい。「W杯を含めた世界大会で勝てるスタイルに取り組まなければいけない。」という危機意識からパワーやスピードに頼ったサッカーではなくてパスをつないでいくモダンなスタイルを取り入れようとしているがなかなか浸透しない。ここ最近、フル代表における日本との対戦成績が極めて悪いのもこの点が理由である。
日本代表も「対アジアのサッカー」をW杯の舞台で貫こうとしてもなかなか難しいところがある。具体的に言うとザックJAPANのときのように丁寧にパスをつなごうとするスタイルはW杯の本大会では通用しなかった。これはドイツやブラジルやスペインといった世界屈指の強豪国以外の国が持つ共通の課題と言えるが、それでも日本の場合は「アジア用のサッカー」と「世界用のサッカー」の違いはそこまで大きくない。
オーストラリアにも同じようなことが言えるが一昔前と比べると高さやスピードやパワーを強調しないサッカーになっているので日本にとってはかなり戦いやすい相手になっている。1つのことに集中してトライしようとするとこれまでは普通にできていたことが出来なくなるのがサッカーの常である。韓国代表というと「11人全員が闘志満々で戦う。」というイメージだったが、ここ最近の韓国代表はソフトで大人しい。
■ 優秀な選手を獲得できないKリーグのクラブ2つ目に関しては切実な問題になっている。日本でもFW伊藤翔(横浜FM)やFW宮市亮(ザンクトパウリ)やMF長澤(浦和)やMF渡辺凌(インゴルシュタット)などの目玉クラスが進路先としてJリーグのクラブを選択せずに、直接、欧州に渡ったことは大きな話題になった。彼らの選択はサッカー界にとっては衝撃だったが逆に言うとここ10年くらいでは彼らくらいである。ほとんど全ての選手はJリーグのクラブに入団する。
一方、韓国はKリーグを経ないでプロの道に進む選手が多くなっている。突き抜けた実力を持つ選手は最初から欧州のクラブとプロ契約を結ぶが、それ未満の年代別代表クラスの選手でも高校や大学から直接Jリーグのクラブと契約を結ぶ選手が増えている。韓国代表のGKキム・ジンヒョン(C大阪)もKリーグには進まずに大学経由でC大阪を選択したが、2009年にJリーグが「アジア枠」を導入した影響を諸に受けている。
GKキム・ジンヒョンのような「世代屈指の選手」が高いレベルでのプレーを望んで日本や欧州を選択するのはまだ分かるが、ここ最近はJ2の下位クラブでも韓国の高卒や大卒の有力選手を獲得できる状況になっている。J2の下位クラブが新卒の日本人の有力選手を獲得するのはほぼ無理であるが韓国人選手であればチャンスはある。GKパク・ソンス(愛媛FC)やDFイム・ジンウ(熊本)などが典型例と言える。
3つ目は2つ目と重なる部分が多いがこれだけ高卒や大卒の選手がKリーグを選択せずに日本や欧州に挑戦してしまう状況が長くなるとKリーグは活性化せずにレベルは下がっていく。先のとおり、2009年にJリーグがアジア枠を導入したことが1つの大きなきっかけになっており、あれから8年ほどが経過して「Kリーグのクラブが新卒の有力選手をなかなか獲得できない。」という負の影響をカバーしきれなくなってきた。
今年のACLではKリーグのクラブが1つもベスト8に進出できなかったが2013年あたりから中国のクラブが巨額のお金を投じて有力選手を獲得する時代に入っており、Jリーグも今シーズンからDAZN社と大型契約を締結したことで特にJ1の上位クラブの財政が潤う時代に突入した。今オフ、Kリーグでプレーする選手のJリーグ進出が続出すると予想されているが、韓国サッカー界はかつてないほどの危機的な状況である。
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