■ 杭州緑城の監督に就任前日本代表監督の岡田武史監督が、中国のスーパーリーグの杭州緑城の監督に就任し、新しいスタートを切った。2010年の南アフリカW杯が終了した後、充電期間に入っていて、昨オフは、「浦和レッズの監督に就任するのでは?」という話も出ていたが、合意には至らず、誰も予想しなかった中国行きを決断して、周囲を驚かせた。
杭州緑城というと、2011年のACLで名古屋と同じグループに入っていて、H&Aで戦っている。試合は、それぞれのホームチームが勝利して1勝1敗に終わったが、グループリーグの初戦で名古屋に2対0で快勝した試合は、インパクト十分だった。このときの名古屋は、MFダニルソンが不在ということもあって、チームが固まっておらず、パフォーマンスが低かったが、名古屋にほとんどチャンスを作らせなかった。
しかも、中国のクラブというとラフなチームがほとんどで、特に中国での試合となると、粗っぽいサッカーで日本のクラブに対抗しようとするが、杭州緑城はフェアな戦いを選択して勝利をおさめたので、日本のサッカーファンにも、ポジティブな印象を残した。
■ 杭州緑城とは?中国のスーパーリーグは、1994年にスタートしており、2012年は16チームでリーグ戦を行う予定になっている。ACLが始まってから、毎年、中国のクラブと日本のクラブが対戦するようになったので、北京国安、上海申花、山東魯能といったメジャークラブは、日本でも知名度を上げてきているが、杭州緑城は、それほど名の知れたクラブではないように思う。調べてみると、スーパーリーグに昇格したのは2007年で、クラブが発足したもの1998年なので、歴史のあるクラブではないようだ。
スーパーリーグでの成績を見ると、2007年が11位、2008年が9位、2009年が15位、2010年が4位、2011年が8位ということで、ACLの出場権を獲得した2010年の「4位」が最高で、それ以外のシーズンは「中位以下」に終わっているので、強豪チームとはいえない。ただ、岡田監督も語っていたように、施設の充実は素晴らしく、クラブの持つ無限の可能性に岡田監督も魅力を感じたという。
残念ながら、今年のACLには出場できないので、公式戦で日本のクラブと戦う機会はない。したがって、岡田監督が、杭州緑城でどういうサッカーをするのか、把握するのは難しいが、2011年の8位という位置から、チームをどこまで浮上させることができるかは要注目である。岡田監督というと、現実的なサッカーを選択することで知られているが、監督に就任してまもなくの頃は、理想論に突っ走る傾向があるので、新t年地でどういうチームを作るのか。今シーズンは、Cリーグの動向も、日本のメディアでしばしば取り上げられることだろう。
■ 岡田武史氏で日中の交流はスタートするか?(1)今回の件で、岡田監督は、「アジアのライバル国が強くなると、日本サッカーにもプラスの効果をもたらすと思う。」という趣旨の発言をしているが、確かに、そのとおりである。
日本と韓国は、「近くて遠い国」と言われて久しいが、それでも選手間の交流は活発である。現状は、韓国から日本にやって来る選手がほとんどで、蔚山現代に移籍したMF家長のようなケースはレア中のレアであるが、韓国U-23代表にJリーガーが8名(=DFキム・ヨングォン、DFチャン・ヒョンス、MFキム・ボギョン、MFチョン・ウヨン、MFペク・ソンドン、MFハン・グギョン、MF曹永哲、MF金民友)も選出されていることからも分かるとおり、韓国の若い世代は、Jリーグというステージを魅力的に感じているようである。
2009年からアジア枠が導入されたことも追い風になった。近年は、J1に限らず、J2の中位以下のクラブにも、韓国の若年層の代表クラスが移籍してくることも珍しくない。日本人選手がKリーグに移籍したケースは、数えるほどなので、一方通行のような形になっているが、日本のクラブは、若くて優秀なタレントを安い値段で獲得できるというメリットがあるし、韓国サッカーの立場で考えても、人材が国外に流出しているというデメリットはあるが、選手育成に日本のクラブが大きな貢献を果たしており、Kリーグを経験せず、日本のクラブで育った選手がフル代表や五輪代表に選出されるようになってきた。
Jリーグの創生期に、FW盧廷潤がサンフレッチェ広島を選択したときは、裏切り者と言われたが、彼が日本で成功をおさめて、その後、高正云(C大阪)、洪明甫(平塚)、黄善洪(C大阪)、柳想鐵(横浜FM)というトッププレーヤーが続き、MF朴智星が京都サンガで成功してPSVへの移籍を果たしたことで、完全にルートができた。ただ、中国に関しては、ACLや東アジア選手権などの国際試合で対戦することはあるが、選手の交流がほとんど無くて、現状は「皆無」といっても、言いすぎではない。
■ 岡田武史氏で日中の交流はスタートするか?(2)中国人Jリーガーと聞いて、多くの人が連想するのは、1992年と1993年にガンバ大阪でプレーした元中国代表のDF賈秀全だろう。ヴェルディ川崎のMFラモス瑠偉と乱闘になったシーンが有名であるが、DF賈秀全が日本で成功できなかったことの影響は大きく、それ以後は、留学生を経てコンサドーレ札幌に入団し、2005年にJ2デビューを果たしたMF徐暁飛くらいである。FW盧廷潤のケースとは対照的に、中国人プレーヤーは、DF賈秀全の失敗によって、道が閉ざされてしまった。
もちろん、スーパーリーグの場合、年俸も高くて、待遇も悪くないという話なので、中国人プレーヤーがJーグに進出する理由は、韓国人プレーヤーよりも少ない、という実情もあるが、中国のサッカー界が、なかなか発展しきれない要因として、Jリーグとの交流をほとんど持てていないということも、挙げられるのではないか?と思う。施設面では、日中で大きな差はないどころか、中国のクラブの方が優れているようだが、全体のレベルとしてはJリーグの方が上であり、国内でプレーしているよりはタフな環境で、選手のレベルアップに貢献できる環境といえるが、Jリーグのクラブが中国人プレーヤーを獲得しようとする動きも、中国人プレーヤーが日本のクラブへの移籍を希望するという話も、ほとんど出てこない。
この状況は、改めて考えてみると、中国サッカーだけでなく、日本サッカーにとっても、もったいない話である。これだけ近くに大きな国があって、経済面での交流は爆発的に増えてきているが、サッカーに関しては、道が閉ざされたままで、20年近くの時間が進んでしまった。ただ、岡田監督の杭州緑城への就任によって、日本人の中国リーグへの関心も高まるだろうし、中国の人たちのJリーグや日本サッカーへの関心も高まってくるだろう。今後、日中の関わり合いが増えていけば、日本にも、中国にも、メリットは大きいと思われるので、岡田監督の中国行きがムーブメントのきっかけになってくれれば・・・と思う。
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