■ FIFAのスキャンダルここ最近、FIFAの汚職事件が話題になっており、「選挙に当選したばかりのブラッダー会長が辞任表明をした。」というニュースも入ってきた。FIFAにまつわるスキャンダルはこれまでも定期的にメディアを騒がせてきたが、日本サッカー界もFIFAに振り回されていろいろと苦労してきた歴史がある。一番は2002年のW杯が韓国との共同開催になったことで、FIFA内部の権力闘争に巻き込まれた最たる例と言える。
早いもので日韓W杯から13年が経過した。ということは、今、20歳くらいの人は日韓W杯のときは小学校の低学年。成人している人の中にも「日韓W杯のことはよく覚えていない。」という人が増えて来たと考えられる。もちろん、まだまだ日韓W杯をリアルタイムで経験した人はたくさんいるが、13年も経過すると、すでに2002年の日韓W杯も歴史の一部になっていると言える。月日が経つのは非常に早いものである。
それにしても、日韓W杯のときの日本国内の盛り上がりは凄まじいものがあった。日本戦とは全く関係のない試合でもゴールデンタイムに生中継されて視聴率が30%を超えた試合も少なくなかった。そして、貴公子と呼ばれたイングランド代表のMFベッカムについては「知らない人はいない。」というほどの人気ぶりで、ヘアースタイルの「ソフトモヒカン」を真似た人が続出した。MFベッカムは社会現象になった。
■ 最大のトピックスは誤審騒動その他では「カメルーン代表チームがなかなか来日しない。」という変な形で大分県の中津江村が有名になったり、フーリガンに日本中がおびえたり、トルコ代表のFWイルハン・マンスズがルックス面で注目を集めたり。W杯フィーバーが起こったが、日韓W杯というと、やはり、韓国代表の試合に関係する誤審騒動である。「相次いだ韓国戦の誤審騒動が日韓W杯の最大のトピックス」と言っても過言ではないだろう。
今回、FIFAのスキャンダルが報じられて、再度、日韓W杯での誤審問題もクローズアップされている。特に当時から問題視された決勝トーナメントの1回戦の韓国 vs イタリア、準々決勝の韓国 vs スペインの2試合に関しては、「実は買収されていたのではないか?」とも報じられているが、GLの最終節の韓国 vs ポルトガルもすっきりしない試合だった。(※ ポルトガルに2人の退場者が出る荒れた試合になった。)
当時、日本国内でも韓国戦に関係する誤審騒動は大きな話題になったが、韓国に対する感情はW杯を共同開催することが決まってから、かなりいい方向に改善されていた。「日本代表だけでなく韓国代表も応援しよう。」と考えていた人は多かったと思うが、やはり、これだけ疑惑のジャッジが続くと醒めてしまう。日韓W杯がきっかけで韓国のことを好ましく思わなくなった人は日本全国にたくさんいると思われる。
TVを含めた大手メディアは誤審騒動にだんまり。「ベスト8(4)に進んだ韓国は凄い。」、「日本代表は負けてしまったので、これからは韓国代表を応援しよう。」とキャンペーンを張ったこともマイナスに作用した。相次ぐ疑惑のジャッジに対して、専門家として言うべきことを言えずに韓国を持ち上げる側に回ったサッカー解説者ならびにサッカーライターの何人かがサッカーファンの信頼を失ったのもこの大会だった。
イタリア戦とスペイン戦で誤審騒動が起きたことも日本国内で騒動に火が付いた要因の1つと言える。FWラウール、FWデル・ピエロ、FWトッティなどは日本のサッカーファンにも大人気で、コアなファンが多かった。大会前には数えきれないほどワールドサッカーダイジェストなどで取り上げられており、彼らの日韓W杯に賭ける思いをよく知っていた人は多かった。それ故、理不尽な結果に怒り心頭となった。
■ 決定的な証拠は出てこないが・・・。「実際のところどうだったのか?」、「審判団は買収されていたのか?」ははっきりしない。仮に金銭的なやり取りが行われていたとしても、何かしらの証拠を残しているとは考えにくい。「証拠はあるのか?」と言われるとどうしようもない。これまでに何度も日韓W杯の誤審騒動がクローズアップされているが、決定的な証拠は出てこなくて、その都度、「噂レベルで幕が引かれている。」というのは承知の事実である。
今回、FIFAのブラッダー会長が唐突に辞任することになった。FIFAの内部には「反・ブラッダー」という人もたくさんいると思うので、こういう人たちがブラッダー会長の過去の悪事を暴いて、関連する日韓W杯の誤審騒動に進展がみられることを期待している人は世界中にたくさんいると思うが、そうは言っても、暴露合戦に発展することも考えにくい。今後、決定的な証拠が出てくる可能性は極めて低いと思う。
「うやむやなままとなる可能性が大」と言えるが、間違いなく言えることが2つある。1つはこれだけ片方のチームに有利なジャッジが続くことは常識ではあり得ないということである。もちろん、微妙な判定というのはサッカーの試合には付き物である。ポルトガル戦の一発レッドの判定やイタリア戦の前半のPKの判定は正当なジャッジで、イタリア戦とスペイン戦の延長戦のオフサイドの判定はミスジャッジの範疇だと思う。
しかしながら、韓国代表の選手のいくつかのラフプレーがおとがめなしに終わったこととスペイン戦で2つのゴールが取り消しになったシーンは「誤審」というのは憚れるレベルで、イタリア戦のFWトッティのシミュレーション&退場も本当に手心を加える意思が無かったのかというと「No」と言えるのではないか。この3試合において際どいシーンのほとんどが韓国有利のジャッジになったことは偶然とは思えない。
(※ 「誤審」という表現が使われることが多いが、日韓W杯の韓国戦のケースで「誤審」と表現するのはあまり適切ではないと思う。「正確にジャッジしようと思ったが見逃してしまった。」あるいは「正確にジャッジしようと思ったが間違ってしまった。」というのが本来の意味での誤審である。)
■ 称賛されなかった2002年の韓国代表もう1つ言えるのは、日韓W杯で韓国代表は「アジア勢初のベスト4入り」という快挙を成し遂げたにも関わらず、その成績に見合った称賛を浴びることが出来なかったことである。同じようにベスト4に入ったトルコ代表に対しては世界中のサッカーファンから称賛の声が届いた。ベスト16止まりだった日本代表に対しても、健闘を称える声が世界中から寄せられたが、韓国代表の好成績を称える声は本当に少なかった。
これは非常に寂しいことである。このときの韓国代表は各ポジションにタレントが揃っており、長年、「韓国サッカー界の顔」として活躍してきた経験豊富な選手たち(DF洪明甫、FW黄善洪、MF柳想鐵など)と若手選手(MF朴智星、DF宋鐘國、FW安貞桓)が見事に噛み合った好チームだった。従来から定評のあった「パワー」と「スピード」に加えて「組織力」がミックスされたバランスの取れたチームだった。
仮に(もちろん、フェアな試合をした上で、)決勝トーナメントの1回戦でイタリア代表に敗れてベスト16で終わっていたら、韓国代表のダイナミックなサッカーは世界中のサッカーファンから称賛されただろう。それほど2002年の韓国代表チームは魅力的な選手が多くて魅力的なチームだったが、当時から誰もそういう視点で話はしなくて、イタリア戦やスペイン戦の疑惑のジャッジばかりがクローズアップされる。
結果は韓国は4位で、日本はベスト16。韓国国民の自尊心は保たれたのかもしれないが、(噂される買収のようなものがあったとしても、無かったとしても、)自国開催のW杯で世界中のサッカーファンから真っ当な評価を受けることができなかった韓国代表の選手は気の毒で、彼らもある意味では被害者である。日韓W杯というのは「多くの人を不幸せな気持ちにさせる残念な大会になってしまった。」と言わざる得ない。
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