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【J1】クラブ別の補強ポイントについて考える。(2017年夏の移籍市場) (大宮アルディージャ編) | | |　

大宮アルディージャ

大宮は昇格初年度の2016年に5位と躍進した。15勝8敗11分けの好成績を残してクラブ史上最高のシーズンを過ごした。昨オフはMF家長(川崎F)とMF泉澤(G大阪)が流出したが、FW大前(清水)やMF茨田(柏)やMF長谷川アーリアジャスール(湘南)などを獲得。MF家長とMF泉澤以外ではDF横山知(札幌)が抜けた程度。「MF家長の穴はMF大前で埋まるだろう。」というのが一般的な見方だったがまさかの展開になっている。

開幕から8試合勝ちなしと大きく出遅れた。8節のG大阪戦(A)こそ0対6の大敗だったが大半の試合は後半途中までは拮抗した展開だった。「大宮が勝利していても不思議はない。」という試合がいくつかあったがそういう試合をことごとく取り逃がして袋小路にハマっていった。9節の「埼玉ダービー」で初勝利を挙げたが、結局、渋谷監督は13節の柏戦(A)で2対4で敗れた後に解任。伊藤彰監督に託すことになった。

14試合を終えた時点で8得点/27失点というのは信じ難い数字である。得点数はリーグ最少で、失点数はリーグワースト2位。得失点差「-19」もリーグワースト2位となる。攻守に問題を抱えているが得点力不足は深刻なレベルである。ここまでのチーム内得点王はFW江坂で2ゴールのみ。2ゴールを以上を記録しているのはFW江坂のみ。期待のMF大前は9試合で1ゴールのみ。期待度が高かったので批判の声は大きい。

1試合平均のシュート数は7.14本でリーグワースト2位。1試合平均の被シュート数は11.43本でリーグ最多。1試合平均の枠内シュート数はリーグ16位。セットプレーから奪った得点数は「3」でワースト2位タイ。セットプレーからの失点数は「10」でワースト2位。アウェイ戦では0勝6敗1分けで未勝利のまま。先制ゴールを奪った試合の数はリーグワーストの3試合。ネガティブな印象を残すスタッツはたくさんある。

中でも一番気になるのは「後半45分間の戦いぶりのまずさ」である。表1の通り、前半は14試合で2得点/7失点。そこまで酷い数字ではないが、後半は14試合で6得点/20失点。失点数がリーグ最多となる。さらに細かく見ていくと後半15分以降の失点数が「15」でリーグワースト2位。総失点の55.6%が後半15分以降になる。すでに述べたように「大宮が勝利していても不思議はない。」という試合はいくつもあった。

5月31日(水)に行われたルヴァン杯の7節の磐田戦(A)から伊藤彰監督が指揮を執っており、J1のリーグ戦では14節の鳥栖戦(H)が初陣となった。後半27分にFW江坂が同点ゴールを決めて1対1のドローだったが内容的にはまずまずだった。伊藤彰監督は「攻撃的なサッカーをする。」と明言しているが、チャンスシーンのときのゴール前の人数はかなり増えている。ここまではポジティブな印象を残している。

鳥栖戦(H)ではMF長谷川アーリアジャスールをアンカーの位置に置く「4-1-2-3」を採用した。渋谷監督は「4-2-2-2」を採用することが多かったがテクニックのある選手が多いので三角形を作りやすくてボールが回りやすくなる「4-1-2-3」は今の大宮に合ったシステムと言える。GK松井やDF高山和やMF清水慎などがスタメンに抜擢されたが大宮ユース出身でフィード力のある20才のCBのDF高山和は面白い選手と言える。

表1. 前半の得点/失点、後半の得点/失点

チーム	前半			後半
チーム	得失点差	得点	失点	得失点差	得点	失点
セレッソ大阪	1	5	4	13	20	7
ＦＣ東京	-1	5	6	9	16	7
ガンバ大阪	5	8	3	9	18	9
浦和レッズ	10	15	5	7	18	11
柏レイソル	3	9	6	6	13	7
横浜Ｆ・マリノス	2	7	5	2	10	8
ベガルタ仙台	-8	2	10	1	15	14
鹿島アントラーズ	1	9	8	1	8	7
ヴィッセル神戸	2	8	6	1	9	8
川崎フロンターレ	5	7	2	1	12	11
サンフレッチェ広島	-10	3	13	0	9	9
ジュビロ磐田	4	8	4	-1	8	9
清水エスパルス	-2	3	5	-4	14	18
サガン鳥栖	4	10	6	-5	6	11
ヴァンフォーレ甲府	-1	4	5	-6	6	12
コンサドーレ札幌	-2	7	9	-7	5	12
アルビレックス新潟	-8	4	12	-13	6	19
大宮アルディージャ	-5	2	7	-14	6	20

過去を振り返ってみるとシーズンの前半戦は苦戦を強いられることが多かった。夏以降に盛り返してギリギリで「J1残留」を決めるケースが多いので『残留のスペシャリスト』とも呼ばれているが、夏以降に盛り返すことが多かった最大の理由としては「豊富な資金力を生かして夏の移籍市場で有力選手をゲットする機会が多かった点」が挙げられる。降格圏に位置するので今夏は積極的な動きを見せることが予想される。

監督が交代したばかりなので不確定要素は多いが、兎にも角にもストライカーが必要である。FWムルジャは7試合でノーゴール、FWネイツ・ペチュニクも6試合でノーゴールと貢献できていない。この2人が本来の実力を発揮してくれると「ストライカーの補強は必要ない。」と言えるが低調なパフォーマンスに終始しており、良くなる兆しはあまり感じられない。大宮も「軸になれるCF」を必要としているチームである。

中盤はまずまず駒が揃っており、パスサッカーに対応できる選手はたくさんいる。MF家長とMF泉澤が抜けて「ドリブラーがいなくなったこと。」が大宮の低迷の要因の1つに挙げられることが多いが、昨オフに群馬から加入したMF瀬川祐はスピードがあってテクニックもある。突破力のある選手なので彼に期待をかけるのも1つの手であるが、難しいのであれば「即戦力クラスのドリブラー」の獲得に動きたい。

一方、守備的なポジションで弱点になっているのはキーパーである。今シーズンもGK塩田とGK加藤の2人が正キーパーを争ってきたがともに十分なプレーが出来ずにいる。伊藤彰監督の初陣となった14節の鳥栖戦(H)は第3キーパーと見られていたGK松井を先発で起用して来たが、経験豊富なキーパーが移籍市場に流れてくるのであればアタックしたい。そうでない場合は他のポジションの補強に資金を回したい。

結局、大宮は今夏の移籍市場で「もっとも激しい動きを見せるのではないか？」と考えられるので要注目チームに挙げられる。今夏の補強の良し悪しがクラブの命運を大きく左右することになるだろう。難しいシチュエーションになっているが、冷静に考えると15位の札幌との差は「4」のみ。当面のターゲットとなる清水・甲府・札幌の3チームの勝ち点はここに来て伸び悩んでいる。十分に巻き返しは可能と言える。