■ 13節終了時点で渋谷監督は解任2015年のJ2を制覇して「1年でのJ1復帰」を果たした大宮にとって2016年はクラブ史上最高のシーズンになった。J1で一桁順位になった経験が無かったチームを昇格1年目から5位に押し上げた渋谷監督の評価はうなぎ登りだったが、就任4年目となる今シーズンは13節を終えた時点で2勝10敗1分けで勝ち点「7」。最下位に沈んでいる。5月28日(日)に渋谷監督の解任ならびに伊藤彰コーチの監督昇格が発表された。
シーズン途中の監督交代はJ1では新潟に次いで2チーム目。その後、鹿島の石井監督の解任も発表されたが渋谷監督の解任については「致し方なし。」と言うしかない。解任に踏み切ってもおかしくないタイミングはこれまでにもいくつかあった。1つ目は開幕6連敗が決まった6節の神戸戦(H)の後。2つ目はアウェイでG大阪に0対6で大敗した8節の後。3つ目は残留争いのライバルになるだろう札幌に敗れた10節の後である。
今回が「4つ目のタイミング」になるので、決して早いタイミングでの解任ではない。ただ、遅すぎるというわけでもない。9節の浦和戦(H)で今シーズン初勝利を挙げると11節の仙台戦(H)は終了間際にMF大前が決勝ゴールを決めて2対1で勝利。今シーズン2勝目を挙げた。9節以降は〇(浦和)→×(札幌)→〇(仙台)→×(C大阪)。調子は上向きだったが13節で柏に敗れて2連敗。ここで解任という決断が下された。
■ 極度の得点力不足に陥る。13試合で7得点/26失点となるが、得点数はリーグワースト、失点数はリーグワースト2位となる。得点と失点の数字を見ると「2勝10敗1分けという成績になるのも致し方なし」と言える。守備陣は空中戦に強いDF河本とDF菊地将のCBコンビが大宮の最大のストロングポイントだったが今シーズンはともに怪我がち。欠場する試合が目立っている。1試合平均で2.00失点。こうなると降格圏に沈むのも当たり前と言える。
守備陣の不出来も想定外と言えるが攻撃陣はそれ以上の「想定外の不振」と言える。MF家長とMF泉澤が他クラブに移籍したがMF大前やMF瀬川祐やMF長谷川アーリアジャスールを獲得。FWムルジャ、MFネイツ・ペチュニク、MFマテウスという個人能力の高い外国人助っ人もいるので「MF家長とMF泉澤という重要な選手2人が抜けたものの、攻撃陣の層の厚さはJ1でも上位クラス」という評価が一般的だった。
13試合で7ゴールを奪っているが複数ゴールを記録している選手はゼロ。MF大前、FW江坂、MF瀬川祐、MF清水慎、MF茨田、DF河本、DF山越康が1ゴールを挙げているが、この7人がチーム内得点王になる。FWムルジャ、MFネイツ・ペチュニク、MFマテウス、MF長谷川アーリアジャスールはノーゴールのまま。攻撃的なポジションの選手の中で「それなりに自分の力を発揮できている。」と言える選手は皆無である。
■ 低迷の原因と理由は・・・。当然、選手には調子の波がある。それぞれにバイオリズムがあるのである地点を任意でピックアップすると「調子のいい選手」と「可もなく不可もなくという選手」と「調子が良くない選手」の3つに分かれるケースがほとんどであるが、今シーズンの大宮の攻撃陣はほぼ全員が「調子の良くない時期」のまま。渋谷監督はメンバーを入れ替えることで苦境から脱出しようとしたがほとんどプラスの効果を生み出さなかった。
「上位候補」と言われていた広島の低迷も予想外の出来事と言えるが、大宮の低迷も同様である。開幕前の時点から『今シーズンは昇格組の3チーム(札幌・清水・C大阪)がいずれも結構な力を持っているので残留争いは混とんとするだろう。』と言われていたが、真ん中程度の評価を受けていた大宮がこれほど苦しむとは予想できなかった。改めてJリーグならびにサッカーの怖さを痛感するシーズンになっている。
大宮の低迷の理由としては至るところで語られているとおりである。
・キープ力のあるMF家長の流出。
・ドリブルで仕掛けることが出来るMF泉澤の流出。
の2点を真っ先に挙げざる得ない。MF家長の代わりにMF大前の獲得に成功したので「MF家長の穴はある程度は埋まるだろう。」と思っていたが予想した通りに物事が進まないことは決して珍しくない。補強の目玉と言われていたのでMF大前に対する風当たりは強いが彼だけが極端にパフォーマンスが良くないというわけではない。「戦犯」を探したくなる状況に陥っているが彼だけに責任を擦り付けるのはフェアではない。
■ ちょっとした歯車の狂い新監督の下で巻き返しを図ることになるが、「シーズン序盤にいくつもあった拮抗した展開の試合で勝利を手にしていたら全然違う状況だっただろう。」と考える。例えば1節の川崎F戦(H)や2節のFC東京戦(A)は0対0のままで後半の中盤に突入している。5節の鹿島戦(A)もそういう展開だった。「どちらが勝利してもおかしくない。」という試合をことごとく競り負けて袋小路にハマっていったのが今シーズンの大宮である。
表1は今シーズンの時間帯別の得点数と失点数を示している。前半の数字は決して悪くないが、後半に失点を重ねていることが良く分かる。仮定の話になるが勝利を掴んでいても不思議はない展開だった1節や2節で初勝利を手に入れることが出来ていたら大宮の今シーズンは全然違ったものになっただろう。開幕から未勝利が続いたことや降格圏に位置することがプレッシャーになって余計に結果が出なくなっていった。
仮定の話になるが今から開幕前に戻ってシーズンを最初からやり直した場合、同じように大宮が最下位に沈む可能性はそこまで高くないと思う。ちょっとした歯車の狂いが修復困難なレベルの問題を引き起こすことは稀にある。今シーズンの大宮はまさしくそういう感じである。もちろん、原因や理由を探したらいくつかの答えは見つかるがどの答えも「ここまでの惨状を引き起こすほどの致命的なものではない。」と考える。
表1. 時間帯別の得点数と失点数 (大宮アルディージャ)
| 合計 | 前半15分まで | ~前半30分まで | ~前半45分まで | ~後半15分まで | ~後半30分まで | ~後半終了まで |
得点 | 7 | 2 | 0 | 0 | 1 | 2 | 2 |
失点 | 26 | 1 | 2 | 3 | 5 | 8 | 7 |
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