■ J1の第5節J1の第5節。2勝1敗1分けで勝ち点「7」。7位とまずまずの位置にいる湘南ベルマーレがホームのShonan BMWスタジアム平塚でFC東京と対戦した。FC東京は2勝2分けで勝ち点「8」。得点「5」で失点「2」というところも仙台とは全く同じで、2位タイと好位置に付けている。開幕戦はG大阪を相手に2対2のドローだったが、2節の横浜FM戦(H)以降は3試合連続完封中。GK権田を中心とした堅い守備が光っている。
ホームの湘南は「3-4-2-1」。GK秋元。DF遠藤航、アンドレ・バイヤ、三竿雄。MF菊地俊、永木、藤田征、菊池大、大槻、高山。FWアリソン。2節の鹿島戦(A)で決勝ゴールを決めた19歳のFWアリソンが2試合連続で1トップの位置でスタメン起用された。シャドーの位置は古巣対決となるMF大竹などはベンチスタートで、大卒4年目のMF大槻が起用された。五輪代表のDF遠藤航はここまでPKで2ゴールを挙げている。
対するアウェイのFC東京は「4-3-1-2」。GK権田。DF徳永、カニーニ、森重、太田宏。MF梶山、羽生、米本、河野。FW石川直、武藤嘉。4節の甲府戦(H)で決勝ゴールを決めた元日本代表のFW石川直はこの日も2トップの一角でスタメン起用となった。甲府戦(H)の後半に怪我をして途中交代となったFW武藤嘉はここまでの4試合で3ゴールを挙げている。FW前田遼はこの日もベンチスタートとなった。
■ 1対0でアウェイのFC東京が勝利「FC東京の堅い守備を湘南が崩せるのか?」が最大の焦点だったが、前半からほぼ互角の攻防が繰り広げられる。湘南はバイタルエリアに何度か鋭いパスが通ってここからチャンスを作って、FC東京はエースのFW武藤嘉のスピードとテクニックを最大限に生かした攻撃でチャンスを作っていく。スタジアムはほぼ満員でかなりヒートアップしていたが、選手たちもヒートアップして険悪な雰囲気になる場面もあった。
0対0で迎えた後半9分にFC東京は波状攻撃から最後はFW武藤嘉がヘディングでゴールを狙う。後ろに湘南の選手が2人残っていたので、オフサイドポジションではなかったと思われるが、オフサイドの判定でゴールは認められず。FC東京にとっては不運な判定だったが、後半19分にFW武藤嘉のサイドチェンジから左サイドを崩すと、日本代表のDF太田宏のクロスをニアでFW武藤嘉が合わせてFC東京が先制する。
湘南は長身フォワードのFWブルーノ・セザルらを投入。終盤にはDF遠藤航をシャドーの位置に上げるなど得点への執念を見せたが、決定機を作ることはできず。結局、後半19分のFW武藤嘉のゴールが決勝点となって1対0でアウェイのFC東京が勝利した。これでFC東京は4試合連続完封となった。一方の湘南は2勝2敗1分けとイーブンの成績に戻った。湘南は次節もホームゲームで今度はG大阪と対戦する。
■ 堅い守備が光るFC東京は4試合連続完封特徴を持った両チームの対戦はなかなか見ごたえのある試合になったが、結局のところ、FC東京の堅い守備を湘南がこじ開けることはできなかった。決して湘南の出来が悪かったわけではないが、FC東京の選手は集中力が高くて、湘南ボールになった後の切り替えの早さは見事だった。湘南の最大のウリである「人数を掛けたカウンター」を繰り出すシーンはほぼ無かったと言える。
FC東京は開幕戦でG大阪に2失点を喫したが、その後は無失点が続いている。攻撃に関してはやや物足りなさもあるが、守備力はJ1の中では屈指と言える。MF高橋秀という日本代表クラスのボランチを試合の終盤に投入するクローザー役で起用できるのも大きな強みで、「セットプレーやカウンターからゴールを奪って終盤にMF高橋秀を投入してシステムを変えて逃げ切る」というのが勝ちパターンになっている。
MF梶山をアンカーの位置に置いてその前にMF羽生とMF米本が並ぶ形が基本形となるが、この試合でもMF羽生とMF米本の貢献度の高さが目立った。「トリプルボランチ気味の布陣」というのは日本では珍しいので、このシステムに慣れている選手は少ない。「攻守のバランスを取るのは非常に難しい。」と言えるが、MF羽生とMF米本の2人は難しいポジションであるにもかかわらず、うまくこなしていると言える。
■ 欧州移籍も噂される武藤嘉紀FC東京にとっても簡単ではない展開だったが、決勝ゴールを決めてヒーローになったのは日本代表のFW武藤嘉だった。この日は日本代表のハリルホジッチ新監督がスタジアムに視察に来ていたが、その目の前で結果を出した。先日、「プレミアリーグのチェルシーがFW武藤嘉に興味を示している。」と報じられて話題になったので、注目度はいつも以上に高かったが、役者が期待通りに結果を残したと言える。
「スター性が高い。」というのはFW武藤嘉の一番の魅力だと思う。昨シーズンはJ1で13ゴールを挙げて得点ランキングは4位タイだったので、当然のことながら、ゴールという形で数字もしっかりと残しているが、FW宇佐美との対決で話題になった開幕戦のG大阪戦(A)のアディショナルタイムで決めた起死回生の同点ゴールに象徴されるように「いいところでゴールを決める選手」という印象は強い。
これでJ1では5試合で4ゴールとなった。同級生で日本代表でもポジションを争うことになる(と思われる)G大阪のFW宇佐美は5試合で6ゴールを挙げているので、ゴール数ではFW宇佐美には及ばないが、FW武藤嘉も立派な数字を残している。昨シーズンの終盤はやや低調で、途中出場が続いたアジアカップも本調子とは言えない出来だったが、今シーズンは開幕からハイレベルなプレーを続けている。
チェルシー以外にも「セリエAのインテルが興味を示している。」という報道もある。強豪のチェルシーやインテルがどこまで本気なのか?は分からないが、「今夏」というのは欧州移籍のタイミングとしては悪くないと思う。攻撃に関してはFW武藤嘉への依存度が高いので、シーズン途中で移籍となると「FC東京は大ダメージ」と言えるが、すでに欧州リーグでも活躍できるレベルに到達しているように思える。
■ ハリルホジッチ監督は誰に注目したのか?一方の湘南はここまでアウェイ戦で2勝を挙げている。2節で鹿島に2対1で勝利して、4節は山形に2対1で勝利している。ホームでは0勝1敗1分けなので、FC東京のような守備の堅いチームをホームで打ち破ることが出来ると大きな自信になったと思うが、ゴールは遠かった。先のとおりで、湘南の出来もそれほど悪くなかったが、FC東京の守備ブロックを崩すところまでいかなかった。悔しい敗戦と言える。
すでに触れたように日本代表のハリルホジッチ監督が視察に訪れた御前試合だったが、「湘南の誰かに興味を持っているのではないか?」と思う。FC東京の試合は一度視察しており、日本代表に選んでいる選手が4人もいる。知っている選手は多い。「たくさんの選手を実際に見てみたい。」とハリルホジッチ監督は何度か語っているので、(どちらかというと)ホームの湘南の選手が目当てだったのではないかと思う。
湘南の縦に速いサッカーはハリルジャパンが目指すサッカーと似ている部分もあるので、湘南で活躍している選手は代表チームに呼ばれてもアジャストしやすい。何人かの名前が候補として挙げられるが、1人はボランチのMF永木である。この日も攻守両面でかなり質の高いプレーを見せたので、まずまずのアピールはできたと思う。運動量が多くて積極的に攻撃に関与できる選手なので、選出されても不思議はない。
左ストッパーで起用されているDF三竿雄も面白いと思う。湘南は「3-4-2-1」を採用しているのでCBでプレーする機会がほとんどであるが、左SBでも問題なくプレーできる。ここまでの5試合は目立ったプレーはできておらず、「(現段階では)強くは推しにくい。」と言えるが、高精度の左足を持っていて、運動量が豊富で、かつ、クレバーさも兼ね備えている。左SBとして十分に代表クラスの選手だと言える。
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