■ 残留争い4勝10敗9分けで16位。降格圏内に突入したFC東京。9試合連続で勝利なしで、ついに城福監督を解任して大熊氏が監督に復帰した。大熊監督は東京ガス時代を含めると7シーズン監督を務めていて、1999年にJ2で2位になってJ1昇格を成し遂げると、2000年は7位、2001年は8位と好成績を残した。対する大宮アルディージャは6勝11敗6分け。降格圏は抜け出したが16位のFC東京との差は「3」のみ。この試合でFC東京が勝利すれば両チームの順位は逆転する。
ホームのFC東京は<4-2-2-2>。GK権田。DF椋原、今野、キム・ヨングン、中村北。MF森重、徳永、石川、リカルジーニョ。FW平山、大黒。3試合連続でスタメン落ちしていたFW平山がスタメン復帰。MF梶山、MF羽生らが怪我で欠場。
対するアウェーの大宮は<4-2-2-2>。GK北野。DF村上、福田、坪内、鈴木規。MF李浩、青木、藤本、金久保。FWラファエル、李天秀。MF金澤が出場停止で元韓国代表のMF李浩がスタメン出場。DF鈴木規は古巣との対決。DFマトはベンチスタートでDF福田が2試合連続スタメン。
■ 大宮が勝利城福監督から大熊監督に代わってどういうサッカーになるのか注目されたFC東京。予想通りに長身のFW平山を先発で起用してきた。「シンプルにFW平山の高さを使って攻める」という意識が高くなったが、前半はそのシンプルなサッカーがうまく機能した。前半のロスタイムにはFW平山のポストから右DF椋原がアーリークロスを入れて最後はMFリカルジーニョが決定的なシュートを放つが、ゴール寸前で大宮DFがクリア。前半はFC東京が押しながらも0対0で終了。
後半も同様の展開が続いたが、FC東京は少しオーバーペースだったのか、徐々に足が止まり始める。後半17分に大宮はMF藤本に代えてFW石原を投入。すると、勢いは大宮に移ってアウェーチームがチャンスを作り始める。
まず後半23分に右サイドからのクロスに対してFWラファエルが素晴らしいボレーシュートを放ち「ゴール」かと思われたが、なぜかノーゴールの判定。しかし、この判定に気落ちしなかった大宮は、後半28分にFWラファエルが右サイドからクロスを上げると、ファーサイドのMF金久保がヘディングシュート。これが決まって大宮が先制する。
その後、FC東京はFW前田俊らを投入するが不発。結局、大宮が1対0で勝利。残留に向けて大きな勝利を手に入れた。一方のFC東京は痛い敗戦で10戦勝利なし。16位のままで残り10試合となった。
■ 幻のゴールシーン直前にFWラファエルのファインゴールが認められないという不運があった大宮であるが、(ペットボトルを蹴りあげて抗議していた)FWラファエルを除く選手たちは冷静で、その5分後に正真正銘の決勝ゴールを奪った。
このFWラファエルの「ゴール取り消しのシーン」は、南アフリカ大会のイングランド-ドイツ戦のMFランパードの幻のゴールシーンとよく似ていて、クロスバーの上に当たって跳ね返ったボールが、ゴールラインの内側に落ちてからGKがキャッチしたのか、ライン上だったのかが焦点となった。肉眼で見ると微妙であったが、リプレーで見ると明らかにゴールだった。
このゴールは美しい形のゴールであり、猛烈に抗議したFWラファエルの気持ちはよく分かるが、今後、問題になりそうなシーンだったが、この不利な判定に対しても精神的に切れなかった大宮のタフさも光ったといえる。決勝ゴールのMF金久保は意外にもJリーグ初ゴール。ヘディングでのゴールとなったが、相手の右DF椋原に競り勝って決めたファインゴールだった。
■ 大きな勝ち点「3」中断明けは、勝ったり・負けたりを繰り返しており、13試合で5勝5敗3分け。清水にホームで3対0で勝ったかと思うと、アウェーで鹿島に0対3で敗れたりと、波の激しい大宮であるが、ともかく勝ち点を積み上げてきて、16位のFC東京との差は「6」に広がった。
相変わらずFWラファエルの出来にかかる部分は大きいが、FW李天秀、MF李浩という韓国代表でワールドカップを経験した実力者も加わってきて、戦力はアップしている。また彼らが本領発揮とはいかないが、鈴木監督のもと、徐々にチームとしても良くなってきている。
■ 大熊サッカーの復活一方のFC東京は久々に大熊監督が復帰。「リスクレスなサッカー」が持ち味の大熊監督は、今回、どんなサッカーを見せるのかと思われたが、シンプルで悪くないサッカーだった。特に前半は大宮を圧倒し、難しいサッカーに挑戦してどツボにはまっていた晩年の城福監督時代よりも、内容的にはよくなっていて今後への期待を抱かせた。ただ、だからこそ、勝ち点「3」を取ってチームの雰囲気を変えたかった試合だった。24節では残留争いをするライバルチームが軒並み、勝ち点を積み上げたので、さらに状況は苦しくなった。
9試合勝利がないという悪い流れが断ち切れないのか、FW平山、FW大黒、MFリカルジーニョ、MF石川の4人にはそれぞれ何度かビッグ・チャンスがあって、「どれかが決まっていれば・・・」と悔やまれる展開となった。メンバー表を見ると残留争いをしているライバルチームよりも戦力値は上のはずであるが、やはり決めるべきところで決められるストライカーがいないと残留争いから抜け出せない。FW大黒にしても、FW平山にしても、MF石川にしても、試合を決定付けられる能力はあるはずであるが・・・。
■ ブレーキになったリカルジーニョいいのか、悪いのかの評価が難しいのがMFリカルジーニョ。この試合は左サイドMFでプレー。フリーになる機会も多く、左サイドからのクロスや、中に切れ込んでのシュート等、たくさんのチャンスに絡んだ。ただ、その反面、たくさんのチャンスもつぶしていて、MFリカルジーニョのプレーがもう少し精度が高ければ、押し気味の前半にもっといいチャンスが作れたはず。これでリーグ戦19試合でノーゴール。助っ人としては物足りない状況に変わりはない。
ただ、さらに評価を難しくするのが、MFリカルジーニョがベンチに下がって以降は、チャンスすら作れなくなったことであり、後半22分にMFWリカルジーニョに代えてFW重松を投入したが、FW重松はほとんどの時間で消えていて、思ったような活躍はできず。MFリカルジーニョに頼らざる得ないくらいの苦しい状況といえる。
■ スタメン抜擢の平山相太ザッケローニ監督も視察に訪れた試合でFW平山は先発出場。2003年、2005年と2大会連続でワールドユースに出場したときの日本代表の監督だった大熊氏が監督に就任し、予想通りFW平山を軸に据えてきた。その前半は非常にいいプレーを見せて、「ザックにいいアピールできたか?」と思ったが、後半は大失速。FW平山だけの責任ではないが、競り合いに勝てなくなって起点になることも出来なくなった。
ザッケローニ監督のサッカーに限らず、長身のストライカーはどのチームにも必要であり、FW平山にも代表入りの期待がかかるが、今シーズンのプレーはアベレージ以下であり、今の段階では代表候補に入ってくるもの難しいだろう。シュート力もあって、たくみなボールコントロールでシュートチャンスを作ることは出来るか、なかなかそのシュートが決まらずに苦戦することが多い。シュートに至るまでの形は持っているだけに、「ゴール」という成功体験を重ねて発展していってほしいところであるが、なかなか難しい。
城福監督は解任になったが、FW平山の良さを知っているという意味で大熊監督というのはやりやすい監督であり、自身の特徴を生かしたチームを作ってもらえそうな雰囲気はあるが、だからこそ、なおさらこの状況で結果を残していかないと、未来につながっていない。J1は残り10試合であるが、チームにとっても、FW平山にとっても、正念場といえる。
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