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【J1】蛇足感のあるFWピーター・ウタカ(FC東京)の獲得ではあるが・・・。 | | |　

■　全く予想が出来ない展開

2010年・2011年・2012年にナイジェリア代表に召集された経験のあるFWピーター・ウタカは2015年に清水に加入すると28試合で9ゴールを挙げる活躍を見せたがチームはJ2降格となった。2016年は広島に期限付き移籍したが33試合で19ゴール8アシスト。FWレアンドロ(神戸)と並んでJ1の得点王に輝いた。アフリカ出身の選手としては1997年のFWエムボマ(G大阪)以来で史上2人目となるJリーグの得点王だった。

シーズン序盤にFW佐藤寿が怪我をして戦線を離脱した時期に1トップのポジションを確保。絶対的な攻撃の中心となった。特に1stステージは17試合で13ゴールと素晴らしい成績を残した。逆に2ndステージは16試合で6ゴールと平凡。シーズン後半のイメージが悪かったことも絡んでJリーグのベストイレブンに選出されず。得点王に輝いた選手がベストイレブンに選ばれなかったのは1994年のFWオッツェ(市原)以来となる。

2016年の日刊スポーツの選手名鑑を見ると推定年俸は1億円なので高額年俸である。J1の得点王に輝いたことで市場価値はさらに高まったが、この点が災いしたのか、なかなか2017年の所属先が決まらなかった。「清水に戻るという選択肢」と「そのまま広島に残るという選択肢」と「それ以外」という3つが考えられたが、結局、「広島に完全移籍した上でFC東京に期限付き移籍する。」という結末になった。

33歳という年齢を考えると移籍金自体はそこまで高額ではないと考えられるが、それでも「広島が完全移籍で買い取ったこと」は結構な驚きだった。そして、約1年間、FC東京に貸し出すというのもかなりの驚きである。当然、広島との試合には出場できない契約になっているがFC東京も広島もどちらも上位候補と言われている。タイトルを狙う広島がライバルクラブに貸し出すというのは予想の出来ない展開だった。

■　賛否両論あるFWピーター・ウタカの貢献度

FWピーター・ウタカは評価の分かれるタイプの選手である。当然、J1で得点王に輝いたほどの選手なので攻撃に関してスペシャルな能力を持っている選手であることは疑いようがない。得点力が高いだけでなく2016年に広島で8アシスト(=サッカーダイジェスト調べ)を記録したことからも分かる通り、味方選手を使う能力も高い。ただし、基本的には王様タイプの選手なので守備面での貢献はあまり期待できない。

運動量の少なさを指摘されるケースは多い。表1は2016年の90分あたりの走行距離のワースト30を示している。GK・SB・CB・WBの選手は除外しているが、8.740キロ/90分というのはJ1の中では最低の数字になる。9キロに満たなかったのはFWピーター・ウタカ(広島)とFWジェイ(磐田)のみ。「あまり動かない選手」というイメージが定着しているが、運動量が少ない選手であることは数字を見ても明らかである。

表1. 90分あたりの走行距離のワースト30 (2016年シーズン)

【J1】 2016年シーズンの90分あたりの走行距離のワースト30 (GK・SB・CB・WBは除く。)
ポジション	名前	所属	試合数	出場時間(分)	走行距離(km)/90分	スプリント回数/90分
1	ピーター　ウタカ	広島	33	2,630	8.740	16.494
2	ジェイ	磐田	22	1,765	8.986	11.677
3	レアンドロ	神戸	31	2,711	9.012	17.263
4	アダイウトン	磐田	34	2,852	9.018	18.934
5	エル・カビル	鳥栖	5	254	9.665	21.614
6	ウェリントン	福岡	29	2,085	9.677	19.468
7	大久保　嘉人	川崎F	33	2,849	9.711	15.068
8	ニウトン	神戸	13	1,114	9.752	5.978
9	ラファエル　シルバ	新潟	23	1,688	9.789	19.674
10	森﨑　和幸	広島	24	1,921	9.792	5.528
11	山崎　亮平	新潟	28	1,925	9.860	20.618
12	ムリキ	FC東京	19	1,308	9.906	19.060
13	永井　謙佑	名古屋	31	2,696	9.919	29.944
14	遠藤　康	鹿島	26	1,891	9.935	18.086
15	ダヴィ	甲府	10	635	10.016	13.606
16	アデミウソン	G大阪	29	1,942	10.030	13.115
17	新井　涼平	甲府	20	1,761	10.031	10.528
18	シモビッチ	名古屋	29	2,278	10.076	9.363
19	ウイルソン	仙台	23	1,469	10.138	17.767
20	ハモン　ロペス	仙台	32	2,418	10.146	23.002
21	家長　昭博	大宮	26	2,313	10.152	19.533
22	泉澤　仁	大宮	30	2,022	10.160	19.496
23	カイケ	横浜FM	23	1,369	10.171	19.525
24	中村　憲剛	川崎F	31	2,785	10.227	7.077
25	宇佐美　貴史	G大阪	17	1,370	10.228	20.168
26	ニウソン	甲府	6	398	10.283	19.673
27	渡邉　千真	神戸	33	2,938	10.289	17.522
28	マルキーニョス　パラナ	甲府	12	960	10.292	6.938
29	ディエゴ　オリヴェイラ	柏	30	2,482	10.328	18.602
30	ダニルソン	福岡	17	1,325	10.335	10.528

■　賛否両論あるFWピーター・ウタカの補強

今オフのFC東京は日本代表クラスのGK林彰洋、DF太田宏、MF高萩、MF永井謙、FW大久保を獲得するなど大型補強を行った。ボランチのMF高萩が「大型補強のラストピース」と言われていたが、3月に入ってからJ1の得点王であるFWピーター・ウタカの加入が決定した。「彼が本当の意味でのラストピース」と言えるが、スター軍団の中でFWピーター・ウタカが輝くことが出来るのか？は興味深いところである。

3月1日(水)に正式にFWピーター・ウタカの加入が発表されたがこの補強に関しても賛否両論ある。今シーズンのFC東京は「4-2-3-1」を採用しているが、当然のことながら、FW大久保をスタメンから外すことはできないので、FWピーター・ウタカをスタメンで起用するのであればFW大久保とFWピーター・ウタカの2トップにするか、1トップ+トップ下でどちらかの選手を下がり目の位置(=トップ下)に置くことになる。

2013年～2015年まで3年連続でJ1の得点王に輝いたFW大久保と2016年のJ1の得点王に輝いたFWピーター・ウタカのコンビが魅力的であることは間違いない。どちらの選手も点を取るだけでなく味方を使うプレーも上手。相乗効果が生まれる期待もあるが、表1のとおり、FWピーター・ウタカはもちろんのこと、FW大久保も運動量の少ないタイプの選手である。持ち味を消し合う可能性も否定はできない。

昨シーズンの途中にFC東京の監督に就任した篠田監督はロンドン五輪の本大会で10番を背負ったMF東慶悟を重宝しており、彼をトップ下で起用するケースが多い。篠田監督になってからFC東京は持ち直したがMF東慶悟の攻守にわたる貢献度は非常に高い。鹿島との開幕戦でもトップ下で起用されるなど現体制のキーパーソンになっているので「MF東慶悟 out→FWピーター・ウタカ in」というのは考えにくい。

王様タイプのFWピーター・ウタカをここからチームの中心として組み入れて機能させるのは難しい作業である。また、年俸も高額と考えられる。「リスキーな補強」であり、「蛇足感のある補強」とも言えるが、「広島の顔だったFW佐藤寿からポジションを奪った選手」ということもあって攻撃能力や貢献度が過小評価されているところもある。途中出場でジョーカー的に使えるのであれば大きな戦力になる可能性は高い。