■ 極端な結果になっている理由は?これほど極端な結果になっている理由はいくつか考えられる。先に挙げた「引き分けでもOK」という上位チームの微妙な心理状態が仇となっている点、下位チームは勝たなければならないのでリスク覚悟で思い切ったサッカーが可能となる点、3位のチームは「プレーオフに出場できた。」というよりは「あと少しのところで自動昇格を逃した。」というマイナスの心理に陥りやすい点などが挙げられる。
3年連続で番狂わせが起こって、しかも、そのうちの2度は一番下の6位のチームがJ1昇格を果たした。さらに言うと、2012年の大分、2013年の徳島はともに昇格後、J1の舞台では大苦戦して、ダントツの最下位で1年限りでJ2降格となった。「プレーオフの制度はこのままでいいのか?」、「リーグ戦で6位のチームがJ1に昇格できるシステムは問題ないのか?」という声が出てくるのは自然なことである。
まず、最初に個人的な意見を述べると、「このままで問題ない。」と思う。プロ野球のCSが行われているときも、「リーグ優勝したチームが勝ち上がって日本シリーズに出場すべき。」という意見を頻繁に耳にするが、20年以上に渡ってNBAの試合を頻繁に観ていることもあって、「レギュラーシーズンとプレーオフは別物だ。」という感覚は染みついている。それもあって、こういう意見にはあまり賛同できない。
開幕前から「3位から6位に入った4チームでプレーオフを行う。」ということはルールとして定められており、上位チームにはかなりのアドバンテージが与えられている。「引き分けだと敗退」というのはサッカーでは相当なハンディキャップなので、こういったハンディを乗り越えて「J1昇格」を勝ち取ったチームは正当に評価されるべきであり、「3位のチームが昇格できないことに違和感がある。」とは全く思わない。
■ プレーオフを勝ち上がったチームがJ1で苦戦しているが・・・。もちろん、「リーグ戦で4位や5位や6位になった実力的に劣るチームが短期決戦のプレーオフを制してJ1に昇格しているので、J1で苦戦を強いられている。」という見方は一面では正しいと思う。「リーグ戦を軽視している。」という意見もあるとは思うが、プレーオフ制度が導入される前の「J2で1位から3位になったチームがJ1に自動昇格できた時代」も、3位でJ1に昇格したチームは軒並みJ1で苦戦している。
結局、プレーオフを制して昇格を決めたチームにしろ、リーグ戦で3位になって自動昇格を勝ち取ったチームにしろ、「昇格組の中で一番下の順位だったチーム」がJ1に上がって苦戦するのはごく当たり前のことである。2011年は3位で自動昇格を果たした福岡がJ1で大苦戦して17位で降格となった。そして、翌2012年も3位で自動昇格した札幌がJ1の舞台では大苦戦して18位で降格となった。
そして、そもそも、「J2で3位になったチーム」と「4位になったチーム」と「5位になったチーム」と「6位になったチーム」の実力差はごくわずかである。今シーズンは千葉が3位で、磐田が4位で、北九州が5位で、山形が6位で、大分が7位だったが、この5チームは最終節まで順位が決まらなかった。本当に紙一重の差で、3位でプレーオフに進んだチームがJ1昇格を達成した場合もJ1で苦戦するのは必至である。
■ プレーオフを導入して一番良かったことは?2012年からJ2ではプレーオフ制度が導入されている。良かった点としては、「プレーオフの3試合に大きな注目が集まって、たくさんのお客さんと注目が集まる優良コンテンツの1つになった点」も挙げられるが、一番は「J2の消化試合の数が激減したこと」である。多くのチームがリーグ戦の終盤まで「プレーオフ出場」という目標を持ったままで戦うことができるようになった点が一番のプラス要素である。
下の表2は3位の千葉から19位の愛媛FCまでの17チームの「3位以内の可能性が消滅した節」と「6位以内の可能性が消滅した節」を表したものである。例えば、19位の愛媛FCは35節終了時点まで(数字上は)「3位以内の可能性を残していたが、36節が終了した段階でその可能性はなくなった。そして、38節を終えた段階では「6位以内」の可能性があったが、39節を終えた段階でその可能性はなくなった。
結局、順位的にはJ2の中でワースト4位となる19位の愛媛FCでさえ、38節を終えた段階では「プレーオフ出場」の可能性を残していた。仮にプレーオフ制度がなかったとしたら、36節を終えた段階で「J1昇格」の希望が無くなっていたので、ラストの6試合が消化試合になるところだったが、プレーオフ制度が導入されたことで37節・38節・39節の3試合は希望を持った状態で試合当日を迎えることができた。
表2. 各チームの「3位以内」と「6位以内」の可能性が消滅した節
| | 3位以内 | 6位以内 |
3 | ジェフ千葉 | --- | --- |
4 | ジュビロ磐田 | 42 | --- |
5 | ギラヴァンツ北九州 | 42 | --- |
6 | モンテディオ山形 | 42 | --- |
7 | 大分トリニータ | 42 | 42 |
8 | ファジアーノ岡山 | 39 | 41 |
9 | 京都サンガF.C. | 39 | 41 |
10 | コンサドーレ札幌 | 40 | 41 |
11 | 横浜FC | 38 | 40 |
12 | 栃木SC | 37 | 39 |
13 | ロアッソ熊本 | 36 | 39 |
14 | V・ファーレン長崎 | 38 | 40 |
15 | 水戸ホーリーホック | 36 | 39 |
16 | アビスパ福岡 | 38 | 39 |
17 | FC岐阜 | 37 | 39 |
18 | ザスパクサツ群馬 | 36 | 38 |
19 | 愛媛FC | 36 | 39 |
■ プレーオフ出場は下位クラブの手ごろな目標普段、ほとんどJ2リーグに注目していない人は、「プレーオフを行って注目を集めること。」がプレーオフ導入の大きな理由だと考えていると思う。それもあって、『興行優先ではないか?』という視点でプレーオフ制度に対して否定的な考えを持ってしまうのは仕方がないと思うが、「プレーオフの本戦にたくさんのお客さんと注目が集まる。」というのはどちらかというとプレーオフ導入の副産物である。
プレーオフ制度が導入されるまではJ2の下位クラブは目標を見つけにくかった。当然、J1経験があって、J2の中で戦力的に上の方だと思われるクラブは「J1昇格」を明確な目標に掲げることができるが、J2の下位クラブにとっては「3位以内に入って自動昇格を果たす。」というのは現実的な目標にはならなくて、自分たちのクラブの総合力に見合った「手ごろな目標」を見つけるのが難しかった。
もちろん、「10位以内」であったり、「クラブ史上最高順位」であったり、「数年先のJ1昇格」といった目標を掲げるチームはあったが、2012年にプレーオフ制度が導入されたことで、こういったクラブのちょうどいい目標ができた。(ちなみに、今シーズンは松本山雅・水戸・熊本・愛媛FC・富山の5チームが「6位以内(プレーオフ出場)」を目標に掲げている。松本山雅の反町監督は謙虚な目標を掲げているが・・・。)
■ レギュレーションについて改良の余地はあるが・・・。なので、「プレーオフはやめるべき。」と主張しようとする場合は、プレーオフ廃止によってJ2の消化試合が再び激増すること、そして、J2の下位クラブにとっての「ちょうどいい目標」がなくなってしまうことの2つのデメリットをカバーできるだけの何かしらの有益なアイディアを出すことが求められるが、すぐには思い浮かばない。よく言われる「J1・J2入替戦の復活」というのは代替のアイディアには全くなり得ない。
ということもあって、現行のレギュレーションで(基本的には)問題はないと思うが、「これが完璧な方法なのか?」というとそこまでは言い切れない。議論の余地があると思うのは「プレーオフの決勝戦の舞台が中立地と言いながら、関東圏(国立競技場と味の素スタジアム)で行っているのは関東圏のクラブには有利で、地方のクラブにとっては不利なので、フェアとは言えないのではないか?」という点である。
また、「スタジアム確保」の問題が生じるので、簡単にはいかないと思うが、これだけ番狂わせが多いので、「もっとリーグ戦の上位チームを優遇すべき。」という流れから、「プレーオフの決勝戦は中立地ではなくて、3位チームのホームスタジアムで開催する。」というのも1つのアイディアと言えるが、あまりにも優遇すぎると面白くなくなる。個人的には今のレギュレーションはなかなか絶妙だと思うが・・・。
★ 現在の投票数 → 45票
→ 投票したい選手を選択してから左下の「投票」をクリックしてください。
→ 管理人の意見は「(投票 by じじ)」で確認してください。
→ 「コメント」のところは何も書かなくてもOKです。(投票可能です。)
→ 記事内容に関係のないコメント(政治的な内容も含む。)はご遠慮ください。関連エントリー 2008/07/23
秋-春制にはNO!!!(その1) 2008/07/25
秋-春制にはNO!!!(その2) 2012/11/21
プレーオフの決勝はどこで開催するのがベストか? 2013/09/15
サポーターは、なぜ、2ステージ制に反対するのか? 2013/09/19
J2の抱える問題点 ~ベンチ枠を上限まで使わないこと~ 2013/09/20
寂しい!?Jリーグの試合中継の少なさ 2013/09/26
サッカー漫画 「GIANT KILLING」が面白い!!! 2014/05/18
【J2限定】 日本代表チーム23名を考える。 (2014年版) (前編) 2014/05/19
【J2限定】 日本代表チーム23名を考える。 (2014年版) (後編)
- 関連記事
-