■ 三重からJリーグを目指すクラブFC鈴鹿ランポーレは、「レフティモンスター」と呼ばれた元日本代表の小倉隆史の出身地である三重県の鈴鹿市をホームタウンとして活動している。セレッソ大阪所属でロンドン五輪代表のMF山口螢の出身地である三重県の名張市に2006年に誕生した新興クラブで、現在は東海社会人サッカーリーグに所属している。近い将来のJリーグ昇格を目指しているクラブの1つである。
2009年に名張市から鈴鹿市にホームタウンを移転しているが、「ランポーレ」という聞きなれない言葉は、小説家・推理作家の江戸川乱歩に由来するという。2013年の時点で、三重県にJリーグクラブは存在しないので、「三重県初のJリーグクラブ」になることが期待されているクラブの1つであるが、このたび、ちょっとした騒動を起こしている。
5月3日に四日市大学と練習試合が行ったが、その試合後に髙木成太理事長兼監督がサポーターを集めて、「日を追うごとに(三重県選手権の)敗戦の責任を感じてる。だけど、あんたらに批判されるような采配はしてない。正直あんたらに挨拶もしたくないし、顔も見たくない。」と発言したと言う。普通ではないことが起こったのは、間違いないところである。
■ 理事長兼監督の言動もちろん、当事者ではないので、細かい事情は分からない。もっと言うと、選手も、監督も、サポーターも、クラブ関係者も、何が原因で、こういうことになったのか、はっきりとは分かっていないのではないか?と思う。監督にも言い分があって、サポーターにも言い分があって、クラブに言い分があって、「どちらかが全面的に悪いわけではない。」と感じる。
非常にデリケートな話であるが、髙木成太理事長兼監督の言動は正しいとは言えない。相当にフラストレーションがたまっていたと想像できるが、熱心なサポーターを前にこういうことを言うのは、百害あって一利なしで、何もプラスにはならない。この件でクラブから離れてしまうサポーターがいても不思議はないので、致命的な失言になりかねない。
ただ、サポーターに非が無いかというと、そういうことも考えにくい。もちろん、非が無いサポーターが大多数だと思うが、理事長兼監督にここまで言わせてしまうのは相当なことである。理事長兼監督はJ2の横浜FCなどで活躍した経験のある元Jリーガーで、サポーターのありがたみも知っていると思うので、何か引き金になるようなことがあったと考えるのが自然である。
■ サポーターと監督・選手・フロント今回の件は、理事長兼監督が野次にキレて、カッとなって暴言を吐いてしまったというわけではなくて、そういうことを言うつもりでサポーターを集めているので、問題の根深さを感じるが、J1あるいはJ2の試合も、観客の心ない野次が原因で選手がエキサイトすることが稀にある。特に負け試合の後は、選手も、サポーターもイライラしているので、騒動が起こりやすい。
もちろん、「オールOK」で、「クラブのやり方・方針には全て賛同します。」という姿勢では、サポーターとしてあまり価値は無い。必要とあらば、自分の気持ちであったり、自分たちの気持ちを表すこともサポーターには求められているが、相手も人間なので、「言い過ぎ・やり過ぎ」は避けなければならない。憂さ晴らしに選手やクラブを罵倒するようでは、もはやサポーターとは言えない。
こういう騒動が起こるたびにいつも違和感を感じるのは、サポーターが選手や監督やフロントに文句を言うのは当たり前になっている一方で、その逆は、一斉、認められていないことである。試合中のレフェリーと選手の関係に似たところもあるが、選手や監督やフロント(あるいはレフェリー)が一言でもいい返すと、大きな騒動になってしまう。フェアな関係とはいい難い。
だから、「選手や監督やフロントに反論する権利を与えるべき。」というわけではないが、反論して来ない人・反論できない人に向かって、延々と文句を言っている姿はかっこいいものではない。「お金を払ってチケットを買っているので、サポーターには、選手を批判する権利がある。」と主張する人もいる。間違いではないが、野次によって、周囲にいる観客を不快にする権利はチケット代には含まれていない。
今回、鈴鹿ランポーレのサポーターが理事長兼監督に向かってそのような発言をしたのかどうかは定かではないが、大きなクラブではないので、内部で揉めていては、Jリーグは見えてこない。小さなクラブになればなるほど、サポーターと選手や監督やフロントとの距離が近くなって、そこは小さなクラブのいいところだと思うが、今回に限っては、マイナスの方向に働いてしまったようだ。
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