6つのショートストーリーです。
1. 愛媛サポーター2008年12月6日。大阪の長居スタジアムで行われた最終節は、セレッソ大阪一筋のMF森島寛晃の引退試合となった。
試合終了後、約1時間をかけて「モリシの引退セレモニー」が行われたが、ホームのセレッソサポーターはもちろん、アウェーチームの愛媛FCのサポーターも、ほとんどがスタジアムに残ってセレモニーを見届けた。そして、愛媛サポーターからも去り行く戦士に暖かいエールが送られた。
ここ数年のうちに、全国各地で、いくつもの新しいJリーグクラブが誕生している。まだまだ規模は小さく、発展途上であるが、スタジアムで遭遇する彼らのマナーの良さにはいつも新鮮な感覚を覚える。
2. 世界でいちばん、幸せなスタジアムJリーグには、「世界で一番、幸せなスタジアムをつくろうよ!」というスローガンがある。
このスローガンは、数年前から、継続してJリーグ開催日のスタジアムで繰り返しアナウンスされているので、知らない人はいないだろう。
ただ、残念ながら、ここ数年、Jリーグでは、スタジアム内でいくつかの「事件」が起こっている。幸いにして、まだ、自身はスタジアム内で危険を感じたことはないが、観戦歴の乏しい一般層がそういったニュースを聞くたびに、余計な警戒心を抱いてしまうことは確実である。
不思議なのは、そういった「事件」が起きるのは、Jリーグの中でも「ビッグクラブ」と言われるクラブがかかわるケースがほとんどである、という事実である。歴史の浅いクラブが歴史のあるクラブに学ぶことは多いが、歴史のあるクラブが歴史の浅いクラブに学ぶことも少なくない。
3. 日産スタジアムのオーロラビジョンアクセスは良好だが、日本最大級の陸上競技場を兼ねるため、スタンドとピッチが遠いことで有名な日産スタジアム。観戦者に優しくないスタジアムという評価もある。
ただ、日産スタジアムでは1つ、面白い試みがされている。(もしかしたら、日産スタジアム以外でも同じことがされている所があるかもしれないが、体験したのはここだけである。)
不定期ではあるが、「オフサイド」のシーンでレフェリーのホイッスルが鳴った瞬間、オーロラビジョンに、「ただ今の判定はオフサイドです。」という表示がされことがある。ありそうでない親切な心使いである。
スタジアム内で観戦するとき、「誰にイエローカードが提示されたのか?」とか、「ロスタイムはあとどのくらい残っているのか?」といった基本的な情報が得にくいことが多い。他のスタジアムでも、こういった「小さな親切」が広がれば、観戦者には優しくなる。
4. 神戸讃歌プロサッカークラブのヴィッセル神戸が誕生したのが1995年1月1日のこと。Jリーグへの昇格を目指して期待に満ちたシーズンのスタートを切るはずだったその日が1995年1月17日。マグニチュード7.3の大地震が起こった日である。
あれから14年が過ぎたが、関西地方の人達が「あの日」を忘れることはない。
試合前に、ヴィッセル神戸のサポーターが歌う「神戸賛歌」は、神戸市民でなくとも、グッとくるものがある。
俺たちのこの街に お前が生まれたあの日
どんなことがあっても忘れはしない
共に傷つき 共に立ち上がり
これからもずっと歩んでゆこう
美しき港町 俺たちは守りたい
命ある限り 神戸を愛したい5. 招待客の是非スタジアムを満員に埋めるために「無料チケット」でサポーターを動員するケースは少なくない。
チケット収入はクラブの大切な財源であるが、飲食費やグッズ購入費を考えると、プラスに働く可能性も高く、サッカー観戦歴の乏しいサポーターをスタジアム内に呼び込んで、新規サポーターを獲得しようとする考え方は悪くない。
ただ、残念ながら、招待客の何割かは観戦マナーが非常に悪く、スタジアムの雰囲気を壊してしまっているのが現状である。新規サポーターを取り込もうとして、コアサポーターを取り逃がしてしまったならば、本末転倒である。
6. サポーターが生みだすものどのスタジアムでも、ゴール裏の盛り上がりには圧倒される。そのクラブのために命を懸けてサポートすることを誓った人々がそこには集まる。
一方で、メインスタンドやバックスタンドに陣取るサポーターの様相は一様ではない。年齢層も幅広くて、各スタジアムで大きく特徴が出る。
あるスタジアムでは、観衆のほとんどが1つのボールに集中して、ボールの行方を凝視する。一方で、試合中、スタンドがずっとソワソワした感じであり、ゴール前にボールが渡ったときだけボールに集中する観衆が大多数というスタジアムも少なくはない。
スタジアムの空気を作るのは間違いなくサポーターの役割である。前者のスタジアムには、それだけで上質な空気が流れる。
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