■ <4-2-3-1>の流行昨シーズンの名古屋グランパスは<4-1-2-3>でリーグを制したが、このシステムは「流行」のシステムである。2010年シーズンは、清水エスパルスやモンテディオ山形も<4-1-2-3>にチャレンジした。流行のきっかけになった大きな理由は「バルセロナが採用していること」かもしれない。世界でもっとも魅力的なサッカーをしているチームが採用している「戦術」や「システム」が広まりやすいのは、いつの時代も同じである。
ということで、今シーズンは<4-1-2-3>のチームがもっと増えるかと思ったが、そうでもない。むしろ<4-2-3-1>が流行りそうな雰囲気である。まだ、プレシーズンの段階なのではっきりとは言えないが、J1では、ガンバ大阪、セレッソ大阪、浦和レッズ、清水エスパルス、アルビレックス新潟、大宮アルディージャ、柏レイソル、アビスパ福岡あたりが開幕戦からこのシステムを採用する可能性がある。
さらに、リーグ創設から<4-2-2-2>が主だった鹿島アントラーズも、<4-2-3-1>をオプションに加えている。2010年の天皇杯はFW大迫を左サイドハーフに回すこのシステムでタイトルを勝ち取ったが、新外国人のFWカルロンのコンディションによっては、こちらが主流になることも考えられる。J2でも、ジェフ千葉、東京ヴェルディ、コンサドーレ札幌が<4-2-3-1>をメインに戦うものと思われる。
■ 3バックは廃れたか?① 1998年から2002年に監督を務めたトルシエ日本代表監督は、ずっと3バックを採用していた。それに習ってJリーグのクラブも「3バックが全盛」になった時期があったが、それに対して、当時、「3バックは時代遅れであり、欧州トップモードではない。」と批判された。しかし、いつの間にか、Jリーグのクラブも4バックが主流になった。というよりも、今は、4バックのチームがほとんどである。
では、3バックはどうなったのか?が気になるので調べてみた。
サッカーダイジェストの「2010年シーズンの総集編」は、J1の全306試合で「両チームのシステム」が表示されているので、これを参考に「3バックだった試合」を書き出してみた。すると、
・サンフレッチェ (1節~34節)
・ガンバ大阪 (7節~10節)
・湘南ベルマーレ (10節、11節、23節、28節)
・京都サンガ (14節~16節、18節~20節)
・セレッソ大阪 (1節~6節)
となった。
結果として、2010年シーズンに「3バックを使ったチーム」は、サンフレッチェ広島、ガンバ大阪、湘南ベルマーレ、京都サンガ、セレッソ大阪の5クラブのみで、あとの13クラブは全試合で4バックを用いた。(※ 「サッカーダイジェストの表記が4バックになっているだけで、実際には違うシステムだった。」という可能性もあるが、サッカーダイジェストを信じると、3バックはこれだけである。)
■ 3バックは廃れたか?② ペトロビッチ監督の広島は全試合で3バックだったのは納得えあるが、他の4チームは併用である。併用と言っても、基本が4バックで3バックはオプションである。唯一、異なるのはC大阪で、序盤の6試合のみ3バックで、以後は4バックとなった。3バックから4バックに変更になった理由は「MF家長をスタメンで使うため。」であり、センターバック(DF羽田)を1枚下げてMF家長を起用することにした。
G大阪、湘南、京都の3チームが3バックを使ったのは「守備を安定させるため」である。G大阪が3バックだったのは4試合であるが、怪我人が多くて、守備が安定しなかった時期である。一方、湘南や京都はシステムをコロコロ変えており、あまりうまくいかないシーズンだったことがわかる。ちなみに、「3バック対3バック」の試合となったのは、第16節のサンフレッチェ広島と京都サンガのたった1試合のみである。J1の試合は306試合なので、そのうちの1試合だけというのは意外である。
■ 3バックにチャレンジするチーム誰が言い出したのか、「4バックは攻撃的、3バックは守備的」と言われて3バックを忌み嫌う人もいたが、実際には、4バックはバランス重視のシステムであり、必ずしも攻撃的というわけではない。「<4-2-3-1>を採用するチームと、それ以外のシステムを採用するチームが試合をすると、必ず<4-2-3-1>のチームが勝つ。」という珍説もあったが、もちろん、そんなわけはない。
4バックばかりのチームになることのメリットは、「代表監督が選手選考しやすくなる。」という点が挙げられる。3バックのチームが多くなると、純粋なサイドバックが少なくなってしまうが、元日本代表のジーコ氏はこの点で非常に苦労した。(逆に、ここ数年、ずっと3バックを採用している広島の選手は、代表で使いづらくなってしまう。特に最終ラインのDF槙野、DF森脇といった選手は、センターバックなのか、サイドバックなのか、どちらが本職なのかという疑問も生じてくる。)一方で、4バックのチームばかりになると、リーグとしての「面白み」はなくなってしまう。似たシステムのチームが対戦すると、どうしてもタレント力で優るチームが優勢になるので、番狂わせも少なくなる傾向にある。
したがって、風変わりなシステムを用いるチームがあると面白いのであるが、今シーズンで言うと、J1の中では広島、J2では、京都サンガとカターレ富山がそれに当たる。いずれも、3バックを採用しそうな雰囲気である。
京都は大木監督になって、<3-4-3>にチャレンジしている。MF秋本がアンカーなので、変則の4バックともいえるが、攻撃的な選手を並べており、大きくチームが変わりそうな感じである。また、富山は、昨シーズン途中から<3-3-3-1>というシステムに挑戦している。<3-3-3-1>というと2010年W杯でチリ代表を率いたビエルサ監督が好んで使用しているが、このシステムで成功したJリーグクラブという記憶にないくらいである。J2ではこの2チームのサッカーに注目していかないといけないだろう。
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