■ 第18節 ウインターブレークに入っていたドイツのブンデスリーガが再開。アジアカップの日本代表に招集されているヴォルフスブルクのMF長谷部、シャルケのDF内田、ドルトムントのMF香川は欠場しているが、フライブルクのFW矢野はアジアカップメンバー23人から漏れたため、チームに帯同しており、再開初戦のザンクトパウリ戦でベンチ入りメンバーに入った。
ホームのザンクトパウリは5勝10敗2分け。対するアウェーのフライブルクは9勝7敗1分け。FW矢野はベンチスタートでフライブルクはFWシセの1トップ。FWシセは前半戦の17試合で13ゴールをマークしており、得点ランキング2位と好調。ヴォルフスブルクがマンチェスター・シティに移籍したボスニア・ヘルツェゴビナ代表のFWジェコの代役として獲得を希望していたという報道もされている。
■ 2対2のドロー試合は前半9分にフライブルクが微妙なハンドの判定からPKを獲得。しかし、FWシセが失敗して先制ならず。対するザンクトパウリは前半13分に左サイドからクロスを上げると、FWエベルスがヘディングで決めて先制する。FWエベルスは今シーズン3ゴール目。前半は1対0でザンクトパウリがリードして終了する。
後半開始からフライブルクはFW矢野貴章を投入し2トップに変更。すると、流れが良くなったフライブルクは後半16分にDFムイジャの右サイドからのクロスをFW矢野が相手ディフェンダーに競り勝って右サイドのFWシセに頭で折り返すとFWシセがダイレクトでボレー。これが決まってフライブルクが同点に追いつく。FW矢野はブンデスリーガで初アシストを記録。
追いつかれたザンクトパウリは後半23分に左サイドからのクロスを途中出場のFWアサモアが頭で決めて2対1と勝ち越しに成功する。ドイツ代表初の黒人選手として知られるFWアサモアは今シーズン3ゴール目。しかし、後半30分にフライブルクはGKのロングキックからFW矢野が相手と競り合うと、誰も触れることなくボールは裏のスペース流れて、そのボールをFWシセが落ち着いて決めて2対2の同点に追いつく。FWシセは2ゴール。
結局、後半開始から登場したFW矢野が2つのゴールに絡む活躍で2対2でドロー。フライブルクは6位、ザンクトパウリは15位となった。
■ フライブルクが追い付く前半早々のPKを失敗し、2度、ザンクトパウリにリードを奪われたフライブルクだったが、エースFWシセの2ゴールで追いついてドローに持ち込んだ。これでFWシセはフランクフルト所属でギリシャ代表のFWゲカスを抜いて得点ランキングでトップに浮上した。
前半はFWシセの1トップの布陣だったため、FWシセをサポートする選手がおらずFWシセが前線で孤立してしまったが、後半開始からFW矢野を投入して2トップにしたことが成功し、FW矢野のプレーがきっかけで2ゴールが生まれた。これでフライブルクは9勝7敗2分けで勝ち点「29」。2位のハノーファーとの差は「5」、3位のマインツと4位のレバークーゼンとの差は「4」となって、ヨーロッパカップへの出場権を狙える好位置につけている。
■ 矢野貴章が初アシスト後半から登場したFW矢野は2ゴールに絡む活躍を見せた。FWシセの1点目のゴールは右からのクロスに対して相手DFと競り合って、きれいなボールをFWシセに落としてゴール。2点目はGKのロングキックに対してうまくDFと競り合ってボールを触らせずに流れたボールを再び、FWシセがゴール。ともにハイボールに対していい競り方をして、結果、2つのゴールをお膳立てした。
FW矢野は185㎝ということでブンデスリーガのセンターバックと比べると身長では劣るが、「動きの量の多さ」と「スピード」がある。単純に空中戦で競り合うだけではなかなか勝てないが、動き回って自分のタイミングで競ることが出来ると、空中戦でも勝機が出てくる。再開後の初戦でアシストという結果が出たということは大きいだろう。
■ ここまでの成績W杯後に新潟からフライブルクに移籍したFW矢野はここまでの18試合のうち9試合に出場。そのうちスタメンは2試合で合計263分に出場。ゴールはなくて、アシストは1つ。FWシセという絶対的なエースストライカーがおり、1トップの布陣になることもあるので、チャンスはなかなか回ってこない。
ただ、ここに来てエースのFWシセが故障し、さらにFWライジンガーも離脱中。ということで、これからの数試合は、FW矢野がスタメンで起用される可能性が高くなってきた。FWシセを生かすアシスト役としてこの試合は結果を残したが、FWシセがいないときにどんなプレーが出来るか。ザンクトパウリ戦でも何度かゴール前でチャンスはあったので、まず1つゴールを決めて落ち着きたいところである。このチャンスに決められるかどうかで、今後、ブンデスリーガで生き残れるのかが決まってくるだろう。
■ ザンクトパウリというクラブこの日の対戦相手のザンクトパウリはドイツでも屈指の人気クラブと言われる。ハンブルクがホームタウンで、FW高原も所属したハンブルガーSVは同じ町のクラブである。しかし、FWファン・ニステルローイら世界レベルのタレントを擁するライバルクラブとの力の差は明らかであり、典型的なエレベータークラブであるが、地元の人からは熱狂的なサポートを受けている。
日本では「エレベータークラブ」というとマイナスのイメージが強く、1部に上がったり、2部に落ちたりということを繰り返していると、ライトなサポーターに見放されてしまって観客動員やスポンサー集めに苦労するケースが多いが、ザンクトパウリに限らず、欧州には2部に落ちてもそれほどのダメージを受けずに、身の丈に合ったクラブ経営を続けていけるクラブは少なくない。
日本では、J2に降格することは「この世の終わり」のようなイメージがあって、過去、J2降格を避けるためになりふり構わずに資金をつぎ込んで、結果として資金難に陥ってしまったクラブもある。しかし、「3/18」の確率でJ2に降格してしまう訳で、チーム力が全38クラブの中で下の方に位置する昇格クラブが無理に無理を重ねて残留しようとしても、後々、マイナスになってしまうことは多い。クラブ経営は来年以降も続いていくわけであり、長期的な視野でクラブを運営していくことが求められるが、まだまだ難しいのが現状。ザンクトパウリの強みは下部リーグに落ちても決してサポーターに見放されることがないということであり、中規模クラスのスタジアムの雰囲気は「さすがにヨーロッパ」というムードの中で試合が行われる。
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