■ 2008年以来のダービー久々に実現した東京ダービー。東京ヴェルディが2008年にJ2に降格したため、2009年、2010年と、2シーズンにわたって東京ダービーは開催されなかったが、FC東京がJ2に降格したため、東京ダービーも復活した。みにのくダービー、静岡ダービー、大阪ダービー、四国ダービー、九州ダービー、温泉ダービーなどなど、日本には、いくつものダービーマッチがあるが、ホームスタジアムを同じとするダービーは東京ダービーだけである。
ホームゲーム扱いとなる東京Vは<4-2-3-1>。GK土肥。DF福田、土屋、深津、森。MF佐伯、小林、井上、河野、菊岡。FW平繁。徳島ヴォルティスから加入のFW平繁がスタメン出場で、FW平本はベンチスタート。川崎Fから移籍のDF森は左サイドバックでスタメン。FWマラニョンはベンチ外。GK土肥は古巣との対決となる。
対するアウェー扱いのFC東京は<4-2-2-2>。GK権田。DF椋原、今野、森重、阿部。MF徳永、梶山、鈴木達、羽生。FWロベルト・セザー、高松。MF谷澤はベンチスタート。MF米本、FW平山は長期離脱中。MF石川もベンチ外。FWペドロ・ジュニオールはベンチスタートとなった。
■ 0対0のドロー試合の序盤はFC東京ペースで進むが、前半20分あたりを過ぎると、ホームの東京Vがペースを握り始める。トップ下のMF河野が精力的な動きを見せてチャンスを演出していく。FC東京は、DF今野とDF森重の間のスペースを埋められずに、たびたび中央を割られてチャンスを作られる。
0対0で迎えた後半も、同様に東京Vペースで試合は進んでいく。すると後半9分に、ドリブル突破でゴールに迫ったFWロベルト・セザーがペナルティエリア付近でファールを受けて倒されたように見えたが、シミュレーションという判定。FWロベルト・セザーは2枚目のイエローカードを受けて退場となる。
これで東京Vが数的優位に立ったが、ここから運動量が低下し、逆に、10人のFC東京がリズムをつかんでいく。最終ラインのDF森重が積極的に上がっていってチャンスに絡む。しかし、なかなか決定機までは作れず。ロスタイムには東京VのGK土肥が負傷するアクシデントが発生。すでに交代カードを使いきっていたため、途中出場のFW平本がゴールを守るという非常事態になるが、FC東京はシュートまで持っていけず。結局、試合は0対0のスコアレスドローに終わった。
■ スタートダッシュ失敗2008年のダービーは、プロになって1年目のDF長友佑都と、東京VのFWフッキのマッチアップして話題となった。今年の1月にインテルに移籍したDF長友と、ポルトで大活躍中でブラジル代表にも選ばれているFWフッキの対決はDF長友が勝利し、この試合で、自信をつけて日本代表や五輪代表で活躍するようになったことはよく知られているが、そのシーズン以来のダービーは、結局、0対0のドロー。双方にとって、痛いドローとなった。
3連敗スタートとなった東京Vは、宿敵を下して流れを変えたかったが、最後のところで精度を欠いてゴールは奪えず。昨シーズンも開幕3連敗スタートで、4試合目に引き分けで勝ち点「1」を得たが、今シーズンも、全く同じ展開となった。
昨シーズンは、その後、持ち直して、最終的には5位となったが、やはり、開幕ダッシュに失敗したことは最後まで響いてしまった。今年は、同じ失敗を繰り返したくなかったが、同じように開幕ダッシュには失敗してしまった。
■ MF河野を生かせず東京Vはトップ下に入ったMF河野はコンディションもよさそうでキレもあって、精力的に動いてボールに絡んだが、MF河野以外にゴールに迫っていく選手がおらず、攻撃がMF河野のところに集中してしまった。そのため、FC東京としては守りやすくなってしまった。MF河野も、さすがに後半になると動きが落ちてしまって、最後は足が攣って動けなくなった。
相手が10人になってからは、MF飯尾、FW市川を投入したが、この二人が試合に入りきれなかったことも響いた。FC東京は、MF谷澤とFWペドロ・ジュニオールという途中出場の選手が流れを変える働きを見せたが、東京Vの交代選手は、今一つで、終盤に圧力を加えられない要因となった。
守備はDF土屋を中心に悪くないだけに、もう少し、攻撃面で脅威を与えられる選手が出てこないと、今後、巻き返すことは難しくなる。怪我をしているFWマラニョンが戻ってくれば「得点源」になれる可能性はあるが、攻撃的MFで起用されるMF飯尾、MF菊岡、MF井上の奮起は不可欠である。
■ MF小林祐希はミスが目立つプラチナ世代のゲームメーカーで、ユース出身で1年目にしてスタメンの座をつかんだレフティのMF小林祐希は、持ち味を出し切れなかった。東京VはMF佐伯とMF小林でダブルボランチを組んでいるので、MF小林がボールを触ってリズムを作りたかったが、前線の選手と合わずにミスになるシーンが多かった。
東京VはMF柴崎が川崎Fに移籍して、ゲームを作る選手がいなくなっており、その穴をMF小林が埋めることを期待されているが、この試合では高い能力を見せつけることはできなかった。将来性を高く評価されている選手なので、次戦に期待したいところである。
■ ベテランのDF土屋は奮闘守備陣では、DF土屋の奮闘は目立った。スピード勝負になっても、高さ勝負になっても、安定感抜群で、36歳とは思えないほどの若々しいプレーでチームを引っ張った。まだ、コンディションは万全ではないというが、ベテランは、まだまだ健在であることをダービーでも示した。
対して、左サイドバックのDF森は持ち味を出し切れなかった。川崎F時代は右サイドでのプレーが多かったので、違和感もあったのかもしれないが、持ち前のスピードを生かしたオーバーラップや思い切りのいいシュートは無くて、サイド攻撃で厚みを加えられなかった。右サイドのDF福田もあまり攻撃に参加できていなかったので、東京Vは、サイドバックを生かし切れなかったのも、無得点に終わった要因の1つである。
■ 3試合連続で無得点一方のFC東京は2試合連続でスコアレスドロー。8節のジェフ千葉戦も合わせると3試合連続で無得点。開幕戦も1対0の勝利だったので、4試合を終えて1得点のみと「得点力不足」が深刻になっている。チャンスがありながらも決めきれていないというよりは、決定的なチャンス自体が少ないので、より深刻である。
この試合は、前半から東京Vペースで進み、後半9分にFWロベルト・セザーが退場になって10人になったので、勝ち点「1」が取れただけでも良しとしなければならないが、11人のときも光が見えないままであり、誰をフォワードの軸にするのか、どうやって攻めるのかは、見えてこない。
FW平山が戻ってくるのは相当に先のことなので、FW高松を軸にするのか、FWロベルト・セザーを軸にするのか、FWペドロ・ジュニオールを軸にするのかとなるが、それぞれに一長一短があって、心中するのは危険である。大熊監督も頭が痛いことだろう。
■ 冴えないMF梶山陽平中盤も同様で、MF米本を欠いており、MF徳永とMF梶山のダブルボランチで、MF羽生とMF鈴木達を攻撃的MFで起用したが、いずれも、決定的な仕事はできなかった。深刻なのはMF梶山で、イージーミスも多く、散々な出来であった。ジェフ千葉戦はトップ下でプレーし、コンサドーレ札幌戦はボランチでプレーしたが、パフォーマンスは上がってこない。
MF梶山はJ2は初体験で、J1とは勝手が違うのかもしれないが、J1で通算182試合に出場しており、経験は豊富な選手である。格の違いを見せてほしいところであるが、期待に応えられていない。大熊監督の起用法を見ると、中盤はMF梶山を中心として考えているようで、90分間プレーしたが、このままでは厳しいだろう。
■ 何を優先するか?2008年にJ2を制したサンフレッチェ広島、2009年にJ2で2位になったセレッソ大阪、2010年にJ2を制した柏レイソルあたりは、J1に上がってもそのまま通用するようなサッカーを見せてJ1昇格を果たした。
巨大戦力のFC東京も、同様に、1年目のJ1で上位に食い込めるように、J2でいい準備をしたかったが、開幕4試合で1勝1敗2分けという成績では、高望みするのも難しくなる。現状では、可能性を感じさせるのは、MF谷澤、FW鈴木達、DF阿部が攻撃に絡んだときくらいで、攻撃では、彼らに期待するしかない。
ダントツの優勝候補と言われたことによるプレッシャーもあって、さらに、FW平山、MF米本の長期離脱という予定外の事態が重なったとはいえ、ここまでは、結果も、内容も非常にさびしいものである。独走されると、それはそれで、J2の盛り上がりという観点ではマイナスとなるが、あまりにも低迷するようだと、それはそれで、J2全体を考えてもマイナスとなる。奮起を期待したいところである。
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