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【FC東京×大宮】ナオのハットトリック | | |　

■　波に乗れない

前節、アウェーとはいえガンバ大阪に2対4と大敗したFC東京。ここまで3勝5敗と思うような結果が出ていない。対する大宮アルディージャは開幕5試合で2勝3分けと好スタートを切ったものの6節から3連敗中。波に乗り切れない両チームの対戦。

ホームの東京は3トップというよりはMF石川のポジションがやや下がり目の<4-2-2-2>に近い布陣。GK権田。DF徳永、ブルーノ・クアドロス、今野、長友。MF米本、梶山、石川、羽生。FW赤嶺、カボレ。18歳の新人MF米本がプロ2試合目の先発。DFブルーノ・クアドロスが今シーズン初スタメンでDF今野とセンターバックを組む。

アウェーの大宮は<4-4-2>。GK江角。DF土岐田、マト、片岡、村山。MF新井、金澤、渡部、内田。FW藤田、石原。DF片岡をセンターバックで起用しDF富田はベンチ外。大宮ユース育ちのMF渡部大輔が初スタメン。

■　石川のハットトリック

試合はここ数試合の低調が嘘のようにFC東京がホームで攻勢を仕掛ける。

前半4分、FWカボレが落としたボールを相手DFがクリアしきれずにFW赤嶺がボールを拾ってMF石川にラストパスを送ると、MF石川が右足で決めて先制。さらに前半25分にもゴール前でフリーになったMF羽生のスルーパスをMF石川が決めて追加点。

防戦一方だった大宮は、前半36分にゴール左からフリーキックのチャンスを獲得すると、MF内田が右足で直接決めて1点差に迫る。このゴールでリズムを取り戻した大宮が盛り返して前半は終了。

しかし、後半12分にFC東京が追加点を挙げる。左サイドのスローインから一瞬のすきを突いたMF石川が右足を振りぬくと、見事にゴールネットに突き刺さってハットトリック達成。大宮はCKからDFマトのゴールで1点を返すが、追いつくことは出来ず4連敗となった。

■　今シーズン最高の内容

FC東京はMF石川が圧巻のハットトリックの活躍で3対2の乱打戦を制し4勝目。

試合内容は前半からFC東京が大きく上回っていて、大宮のディフェンスラインが整備されていない隙を突いて多くのチャンスを作った。その割にはスコアは僅差となって、最後はDFマトを中心としたパワープレーにあわやのシーンを作られたが、今シーズン最高といえる内容であった。

3トップ気味の布陣からMF石川のポジションを少し下げて2トップに近い布陣に変更。3トップの場合は右サイドに張り付いて仕事をすることの多かったMF石川が中盤に下がったことで自由に動き回ることの出来るスペースを手に入れた。1点目のゴールと3点目のゴールはともに左サイドにポジションを取っていたときに生まれたゴールであり、MF羽生やMF梶山との関係も良かった。

■　プロ初のハットトリック

MF石川のハットトリックはプロ初。今シーズンは開幕から抜群の切れ味を見せているが、これでトータル5ゴール。チームのトップスコアラーとなった。

2005年に右膝の大怪我を負ってからは、それまでに見せていた躍動感のあるプレーが少なくなっていて、日本代表からも遠ざかっていた。2003年頃のトップコンディションの時期と比べるとまだまだといえる部分もあるが、技術的な向上が見られて、トップスピードでのプレーの精度が格段に向上していて、昨シーズン後半から多くのゴールに絡んでいる。

ここ数年は、チームの中心の座をMF梶山やMF今野らに譲っていた感はあるが、もともと、FC東京というチームはMF石川のサイドアタックが最大の武器であり、MF石川がチームの中心であった時期も長かった。このハットトリックの活躍がさらなる勢いをもたらすことがあれば面白い。

■　カボレの復調

この日のFC東京はいい時に見られる傾向であるチーム全体で前に出る勢いがあった。大宮の守備陣にも大きな問題があったが、カウンターから一発で相手の裏を取って決定的なチャンスを作りかけるシーンは多かった。

明るい兆しというと、開幕から調子の上がらないFWカボレがコンディションを向上させていて、この試合でも左サイドのエリアから好調時を思わせるドリブルを何度も見せた。驚くことに、FWカボレに今シーズン、まだゴールはなく、これがチーム低迷の大きな要素になっているが、このコンディションであれば今シーズン初ゴールも近いだろう。

■　センターバックコンビ

東京はDF佐原とDF茂庭ではなく、DFブルーノ・クアドロスとDF今野をセンターバックで起用。ともにボランチで起用されることが多く、急造コンビであるといえるが、90分間、好プレーを見せた。

C大阪や札幌で十分な実績があるDFブルーノ・クアドロスだが、あまりプレースタイルを城福監督に好まれていないのか、2008年に続いてほとんど出番が無いのが現状であるが、積極的な攻め上がりと精度の高いパスは大きな武器となる可能性がある。

また、DF今野についても人に対する強さを見せて、DFブルーノ・クアドロスをうまく操縦した。DF今野の本職は言うまでもなくボランチであり、ボランチで起用し続けるのが長い目で見るとベストであるのは明らかであるが、城福監督は困った時には、DF今野を最終ラインで起用している。

城福監督の目指すサッカーの中で、MF今野のボランチとしての能力が最大限に発揮されているとは言い難い状況であり、周囲は「MF今野はボランチで起用すべき。」と感じるが、もしかしたら、中盤でプレーするMF今野に対して、城福監督は思いのほか、評価していないのかもしれない。

■　18歳の米本拓司

今野が最終ラインに下がったこともあって、18歳で伊丹高校出身のMF米本がプロ2試合目のスタメン出場。相手の大宮にも18歳のMF新井涼平がおり、18歳同士の対決となったが、チームと同様に個の戦いもMF米本が制した。

2007年のU-17FIFAワールドカップ日本代表でポジションは下がり目のボランチ。派手さはなく、玄人受けするタイプの選手であるが、18歳にしては驚くほど冷静で、基本技術もしっかりしていてミスも少ない。攻撃面でどの程度の貢献が出来るのかはまだ未知数であるが、計算の出来る戦力になりそうな感じはする。

■　崩壊したディフェンスライン

ここ数試合の低迷からの打破を目指してスタメンを大きく入れ替えた大宮であったが、この作戦は完全に失敗に終わった。DF富田とMF藤本といった中心選手をスタメンから外し、MF新井、MF渡部、DF土岐田といった経験の少ない選手を思い切って起用したが、期待通りの働きは出来なかった。

特にディフェンスラインは90分を通して不安定であり、身体能力の優れたFWカボレや抜け目ないプレーを見せるFW赤嶺を相手に、DF片岡をセンターバックで起用したのは大きな誤りであった。DFマトがいるのである程度はカバーできるという考えがあったのかもしれないが、FC東京もDFマトを避けてプレー出来ていて、DF片岡とFWカボレやFW赤嶺のマッチアップは非常にきつかった。

[FC東京 2007年-2009年]

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