■ ACLの第6節ACLの第6節。1勝1敗3分けで勝ち点「6」のベガルタ仙台がホームの仙台スタジアムで中国の江蘇舜天と対戦した。グループEは大混戦になっていて、FCソウルは勝ち点「10」で首位通過することが決まっているが、仙台とブリーラム・ユナイテッドは1勝1敗3分けで勝ち点「6」。さらに1勝3敗1分けで勝ち点「4」の江蘇舜天にも勝ち抜けのチャンスが残っている。
2位タイで並んでいる仙台とブリーラムUは同じ1勝1敗3分けで、さらには、直接対決も2試合とも1対1のドローだったので、当該チーム同士の対戦成績も全く同じである。得点数と失点数も同じなので、5節を終えた段階で「勝ち点も、勝敗も、得失点差も、総得点も全て同じ」という稀に見る大混戦になっている。対戦相手の江蘇舜天はアウェーで仙台に勝利することが、勝ち上がりの最低条件となる。
ホームの仙台は「4-2-2-2」。GK林。DF菅井、渡辺、鎌田、蜂須賀。MF富田、ジオゴ、太田吉、梁勇基。FW赤嶺、柳沢。2012年のJリーグのベストイレブンのFWウイルソンはベンチスタートで、ベテランのFW柳沢が先発出場となった。FW柳沢は国際Aマッチは58試合で17ゴールを挙げている。中盤の要のMF角田は出場停止で、移籍組のDF石川は怪我で欠場となった。
対する江蘇舜天は「4-2-3-1」。GKドン・シャオフェイ。DFチョウ・ユン、タジエフ、エレウイソン、レン・ハン。MFウー・シー、リュウ・ジエンイエ、スン・ケー、ルー・ボーフェイ、イェブティッチ。FWサリヒ。2009年から1部リーグで戦っている江蘇舜天は、10位(2009年)→11位(2010年)→4位(2011年)→2位(2012年)と着実に力を付けており、ACL初出場を果たした。
■ 1対2で逆転負け・・・試合は前半24分にホームの仙台が先制する。左サイドでボールを持ったルーキーのDF蜂須賀が右足でストレート性のクロスを入れると、相手の裏を取ったDF菅井がフリーでヘディングシュートを決めて仙台が先制する。「左SBの選手のクロスから右SBのDF菅井がゴールを決める」という得意のパターンが炸裂してホームの仙台が貴重な先制ゴールを奪った。
しかし、前半38分に江蘇舜天は波状攻撃を仕掛けて、ボランチのMFリュウ・ヤンイェがミドルシュートを放つと、このシュートが地を這うような凄まじい弾道から鮮やかにネットを揺らして江蘇舜天が1対1の同点に追い付く。仙台は前半は1対1で終了する。仙台はいい時間帯に先制ゴールを奪ったが、流れが悪くなっていたときに辛抱しきれず、追いつかれてしまった。
後半の立ち上がりは仙台が勢いよく攻めてくる。FCソウルとブリーラムの試合も1対1で進行しており、このまま2試合とも1対1で終了すると、仙台とブリーラムの反則ポイントの勝負となって、反則ポイントで有利な仙台が勝ち抜けとなったが、後半17分にオフサイドトラップのかけそこないからアルバニア人のFWサリヒに決められて2対1と江蘇舜天が逆転に成功する。
もう1つの試合もスコアが動いて2対2となったので、仙台は同点に追い付くことができれば、2位で勝ち抜けとなるが、後半42分にはFWウイルソンがレッドカードで退場となるアクシデントが発生。10人となるが、終了間際にFW赤嶺が抜け出して決定機を迎えると、左SBのDFレン・ハンが後ろから倒して一発レッドで退場。江蘇舜天も10人となって、数的同数となる。
そのファールによってゴール前の絶好の位置でFKを得るが、MF梁勇基のシュートは壁に当たってゴールならず。その後も、FW赤嶺が決定機を迎えるが、枠を捕らえることは出来ず。結局、試合は2対1で江蘇舜天が逆転勝利。もう1試合は2対2のドローだったので、タイのブリーラムが2位で突破を決めて、江蘇舜天が3位で、仙台は最下位となって決勝トーナメント進出はならなかった。
■ 立派な戦い得意の形から先制ゴールを奪った仙台だったが、逆転負けでグループリーグ敗退となった。最終的には1勝1敗4分けで勝ち点「7」のブリーラムが2位で勝ち抜けとなったが、仙台にもグループリーグを突破するチャンスはあった。どのチームも力のある相手で、簡単なグループではなかったが、あと一歩のところまで決勝トーナメント進出が迫っていたので、残念な結果となった。
2011年にACLに出場してベスト8に入ったC大阪なども同様であるが、仙台も毎年のようにJ1の上位に食い込むほど安定した力を持っているわけではないので、次にACLに出場できるチャンスがいつになるのか、全く分からない。浦和・鹿島・G大阪・名古屋といったビッグクラブは、「また、来年頑張ろう。」と気持ちを切り替えることもできるが、中規模以下のクラブになると、気持ちを切り替えるのは難しい。
ただ、最後の瞬間まで死力を尽くして戦ったことは、立派である。ACLは日本のクラブの代表なので、ACLに出場できなかった他クラブのサポーターもACLを観て、日本から出場しているクラブを応援することになるが、ACLの仙台の戦いぶりを見て、ベガルタ仙台というチームに好印象を持った人は多かったと想像できる。結果は出なかったが、日本の代表として恥ずかしくない戦いを見せてくれた。
■ イルマトフさんのレフェリングこの試合はウズベキスタン国籍のイルマトフさんが笛を吹いたが、レフェリーには味方されなかった。後半42分のFWウイルソンのレッドカードと終了間際のFW赤嶺が抜け出したシーンの2つが重大局面だったが、最初のFWウイルソンのレッドカードに関しては、やや厳しめの判定だった。相手の足に乗りかかる形になったのは間違いないが、これが「相手を踏みつけた。」と判断された可能性が高い。
途中出場のFWウイルソンはいいプレーが出来ていなかったので、精神的には不安定だったと思うが、ラフプレーをするような選手ではない。「一発レッドは厳しい。」と感じるが、こういうシーンでは「悪意がある。」とみなされて、レッドカードが提示されることは珍しくはない。個人的には「イエローカードが妥当だった。」と思うが、「誤審である。」と言い切るのも難しい。不運だったと言うしかない。
もう1つのFW赤嶺とDFレン・ハンのプレーについては、相手の選手がファールを冒しているのは間違いない。そして、「PKではないか?」という雰囲気になったが、ファールが起きたのは、明らかにペナルティエリア外だったので、フリーキックが妥当で、むしろ、仙台にPKが与えられていたら、誤審となる。このシーンに関しては、イルマトフさんの判断に間違いはなかった。
その他では、相手のカウンターを阻止しようとした前半29分のMF梁勇基のイエローカードは、「ノーファールだったのではないか?」と思うが、それ以外では、大きな問題はなかった。ホーム側に有利なジャッジが下されたときはさらりと流されて、アウェー側に有利なジャッジが下されると大きな反応が起きるので、「仙台に不利なジャッジが続いている。」という雰囲気になったが、極端な偏りはなかった。
なので、「イルマトフさんのジャッジを責めるのは適切ではない。」と思うが、試合後のインタビューで手倉森監督はレフェリーの判定に不満を漏らしていた。選手をかばおうとする気持ちも含まれていたと思うし、また、現場の人はリプレーを見ることはできないので、仕方がないところもあるが、「重大な局面でレフェリーのミスが起こった。」という試合ではなかったので、いい対応ではなかったと思う。
ACLの試合なので、日本と中国のサッカーファンだけでなく、いろいろ国の人が興味を持って試合を観ていたと思うので、手倉森監督のインタビューは残念なものだったが、ただ、ここまで熱くなるというのは、それだけACLに力を入れていた証であり、仙台のサポーターで、選手あるいは手倉森監督を責める人はいないだろう。いい経験になったと思うので、次のステージで生かしてほしいところである。
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