■ 第26節J2の第26節。8勝8敗5分けで勝ち点「29」の東京ヴェルディが、ホームでロアッソ熊本と対戦。熊本は7勝6敗8分けで東京Vと同じ勝ち点「29」を挙げている。
ホームの東京Vは「4-2-2-2」。GK柴崎。DF森、土屋、高橋、中谷。MF佐伯、小林、河野、井上平。FWマラニョン、阿部。中国リーグでプレーしていた元日本代表のFW巻がベンチ入り。DF高橋はU-22日本代表に選出されている。
対するアウェーの熊本は「4-4-2」。GK南。DF市村、チョ・ソンジン、菅沼、原田。MFエジミウソン、吉井、根占、武富。FW長沢、齊藤。ブラジル人のMFファビオはベンチスタート。中京大出身でルーキーのFW齊藤は2度目の先発。FW長沢はリーグ戦で7ゴールを挙げている。
■ ヴェルディ快勝試合の序盤はアウェーの熊本がペースを握る。積極的にDFラインの裏にボールを送って、チャンスを作る。前半10分には、左SBのDF原田のフィードから、トップ下のMF武富がDFラインの裏に抜けて左足でシュートを放つが、バランスを崩してシュートはヒットせず。先制のチャンスを逃してしまう。
すると、その直後に東京Vが先制に成功する。熊本の右SBのDF市村の横パスが少しずれてDF菅沼がコントロールできなかったところをFWマラニョンが奪うと、ドリブルからGK南もかわしてゴールに流し込む。FWマラニョンはリーグ戦4ゴール目。
さらに前半37分にも、東京Vのロングボールを熊本のDFラインがクリアしきれず、DF菅沼がヘディングで横に運ぼうとしたボールをFWマラニョンがカットして、ペナルティエリア内に侵入。加速するところでDF菅沼に倒されたという判定でFWマラニョンがPK獲得。FWマラニョンが自ら決めて2対0とリードを広げる。さらに、このプレーでDF菅沼がレッドカードを受けて退場。熊本は10人となる。
さらに、前半終了間際にも、最終ラインに下がってボールを回していたMFエジミウソンの横パスを、またしてもFWマラニョンがカットしてカウンター。FWマラニョンはためてからラストパスを送ると、走り込んできたMF小林が決めて3点目を挙げる。ユース出身で1年目のMF小林はJリーグ初ゴール。前半は3対0で東京Vがリードして折り返す。
後半17分に、熊本は途中出場のFWソン・イニョンのゴールで1点を返すが、東京Vは後半33分にも左サイドを突破したFW阿部のクロスをMF河野が決めて4点目。4対1とリードを広げて試合を決定付ける。その後、熊本はMF根占のゴールで1点を返すが、東京Vも途中出場のDF市川が決めてダメ押し。結局、5対2というスコアで東京Vが圧勝。順位を8位に上げてきた。一方の熊本は、ここまで6試合を戦って5勝1敗と相性の良かった東京Vに大敗し、13位に転落した。
■ ヴェルディは8位浮上これで東京Vは8位に浮上。6月から7月にかけて5連勝したときは、一気に昇格レースに加わってくるかと思われたが、その後は伸び悩んで「1勝3敗2分け」と勝ち点を伸ばすことができなかった。したがって、上位チームとの差がまた広がりつつあったが、前節・今節と上位陣が総崩れに近い状態になったので、再び、チャンスが出てきた。
J2は22試合を消化しており、残りは16試合。今節終了時点で3位の栃木SCとの差は「9」なので、十分に逆転の可能性のある数字である。もちろん、大型連勝が必要となるが、東京Vは22試合で43ゴールを挙げており、J2の中ではダントツの得点力を誇っているチームなので、大型連勝するというのも非現実的な話ではない。
大事なのは、次のジェフ千葉戦である。アウェーゲームとなるが、この試合で勝ち点「3」を獲れると、ムードも高まってきて、「逆転昇格」も見えてくる。千葉も、ここ最近結果が出ておらず、死に物狂いで戦ってくるはずで、東京Vとしては、うまくかわして主導権を握りたい。
■ FWマラニョンが2ゴール東京Vは、なかなかゴールが生まれていなかったFWマラニョンが2ゴールを挙げたというのは大きい。
甲府から移籍してきたFWマラニョンはエース候補として期待されていたが、怪我もあってここまでは14試合で3ゴールのみ。イージーシュートを外すシーンも多く、全く期待に応えられていなかったが、前半の3ゴールはすべて自分で相手からボールを奪って決めたゴールで、守備でも貢献した。
東京Vは、今シーズン、FW阿部拓馬が大ブレークしており、17試合で10ゴールを挙げているが、FW阿部に加えてFWマラニョンもコンスタントにゴール出来るようになると面白くなる。
■ 五輪代表のDF高橋は不本意な出来初めてロンドン五輪代表チームに選ばれたDF高橋は、やや精彩を欠いた。東京Vは、得失点差を稼ぐために、相手が10人となった後半は無失点で終わりたかったが、集中が切れて2失点。失点シーン以外でも、DF高橋はロングボールの目測を誤ってピンチを招くシーンもあって、やや不安定だった。
当然、U-22日本代表ではCBとして期待されるが、CBの選手でJリーグでレギュラーを獲得しているのは数えるほどである。リーグ戦でDF土屋とコンビを組んで実践経験を積んできているので、五輪代表でも、DF鈴木やDF濱田に割って入ることが期待される。守備だけでなく、テクニックもあって、パスも出せるので、面白い存在である。
■ 巻誠一郎 デビュー注目のFW巻は、後半42分に登場。ロスタイムを含めて約7分間プレーした。FW巻は、昨夏、千葉を退団した後、ロシアでプレーし、さらに中国でもプレーしたが、思うような成果は上げられず、先日より東京Vの練習に参加し、本契約を勝ち取ったが、東京Vには、FW巻のようなターゲットタイプのFWはいないので、戦力としても期待される。
Jリーグへの復帰戦が出身地のロアッソ熊本で、次の試合が、かつてのホームのフクアリでのジェフ千葉戦というのも、面白いところであるが、今後、膠着した試合で途中投入されることが多くなると思われるが、こういう難しい試合で仕事ができるかどうか。まだ、31歳なので、老け込むような年ではないので、巻き返しを期待したいところである。
■ ロアッソ またしても大敗一方の熊本は、先日も国立でFC東京に0対5で敗れたが、またも、同じ国立の舞台で大敗を喫した。不運だったのは2失点目のプレーで、ボールを奪われたDF菅沼がFWマラニョンにショルダーでぶつかっていったところをファールを取られて、PKと一発レッドとなったが、レッドに値するプレーだったとは思えず、PKという判定も正しかったかというと、やや疑問である。
したがって、不運もあったが、1失点目、2失点目、3失点目はいずれも、最終ラインのパスミスから失点を喫しており、イージーなミスが多すぎた。ここ最近、あまり上手く攻撃が出来ていないので、つなぐ意識を高めるようなトレーニングがされていたのではないか?と想像できるが、それにしても、不用意にパスをつなぎすぎて失点を喫した。
「堅守」と言われていた熊本だったが、ここ6試合で17失点。FC東京戦で0対5で敗れた後、明らかにチームは自信を失っていて、完全に歯車が狂ってきている。熊本のスタイルは、「少ないゴールを守って逃げ切る」というものであるが、これだけ、失点が多くなると、集中も切れて、モチベーションを保つのも難しくなる。
■ 光明はFW田中達也2対5という大敗になったが、途中出場で韓国人のFWソン・イニョンが初ゴールをマークし、さらに、途中出場のFW田中達也も切れ味鋭いドリブルを披露して、ポテンシャルの高さを見せた。
浦和レッズで元日本代表のFW田中達也とは漢字も同じで「同姓同名」となるが、プレースタイルもよく似ていて、体格も良く似ている。積極的にドリブルで仕掛けられるところも魅力で、「スピード」も「キレ」もあるので、今後、楽しみな存在といえる。
そのFW田中達也の経歴を見ると、アビスパ福岡のU-15出身で、東福岡高校に進学し、現在、九州産業大在学中の1年生である。大学の1年生からJリーグの特別指定選手になって、Jリーグでの出場を果たすというのも珍しいが、デビュー戦でこれだけ自分のプレーを出せるというのは、かなり凄いことである。
熊本はFW巻にもオファーを出していたと報道されているが、熊本には191㎝のFW長沢と、190㎝のMFファビオがいて、新外国人のFWソン・イニョンも185㎝と高さがある。「観客動員力」や「知名度」は抜群なので、その他のことを期待するならば、是非とも欲しい選手であるが、戦力としてどうしても必要な選手かというと疑問である。いずれは、地元の熊本でプレーするのかと思うが、今回は、縁が無かったといえる。
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