■ インドネシア代表のスターJ1に続いてJ2もいよいよ2月19日(土)に開幕したがJ2関係の開幕直前の大きな話題というと東京Vに加入したインドネシア代表のDFアルハンになる。「昨年の8月より獲得に向けた検討・交渉をしておりましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で現地に赴いての交渉や来日しての練習参加などが出来ず。ようやく加入内定の運びとなりました。」とクラブは公式サイトに記述している。電撃獲得というわけではなさそう。
2001年12月21日生まれなので若い選手になるが2021年にインドネシア代表に召集されており、U-19やU-23インドネシア代表でも活躍している。動画を見る限りでは「攻撃型の左SB」である。東京Vは34試合に出場するなど主力級の活躍を見せていたDF福村(→FC琉球)との契約を更新せず。かなり不思議な契約満了だったが「水面下で同ポジションのDFアルハンの獲得に動いていたのであれば納得」と言える。
12試合の出場にとどまったDF安在(→沖縄SV)も契約満了になったので左SBはかなり手薄である。本職と言えるのは加入して2年目となるDF山口竜くらい。CBのDF平、右SBのDF奈良輪やDF深澤、大卒ルーキーのDF加藤蓮(明治大)などは左SBでもプレーできるが層の厚いポジションとは言えず。オミクロン株の影響で制限されていた外国人の入国もそろそろ解除される見込みなのでDFアルハンにかかる期待は大きい。
■ 史上2人目のインドネシア出身のJリーガー若くて将来を嘱望されている左SBなので「インドネシア国民の期待は高い。」と言われているがJリーグのクラブに所属した経験のあるインドネシア国籍の選手は2014年にJ2の札幌でプレーしたMFステファノのみ。「史上2人目のインドネシア出身のJリーガー」となるがMFステファノはオランダ育ち。エールディビジのユトレヒトなどでプレーした経験のある選手なので今回のDFアルハンとは大きく事情が異なる。
インドネシアの人口は2.74億人。 国別では中国とインドとアメリカに次いで4番目となる。1.27億人の日本は11番目となるが日本の約2.15倍となる。MFチャナティップやDFティーラトンなど活躍が目立つタイは6,963万人。タイの4倍近くの人口になる。MFチャナティップの活躍は札幌にかなりの経済効果をもたらしたが約4倍の人口を抱えるインドネシアもJリーグの各クラブにとっては魅力的な市場と言える。
DFアルハンを獲得した効果はすでに生まれており、東京VのInstagramのフォロワー数は激増しているという。自身の公式Instagramは298万人のフォロワー数を誇るが彼の加入によって東京Vの公式Instagramのフォロワー数は約10倍になったようだ。「加入のリリースには約6万件のコメントが寄せられている。」とも報道されているので物凄いことになっている。Twitterのリプライも外国語(何語?)ばかりである。
■ インドネシアもサッカー人気は高い。言うまでもなく、インドネシアもサッカー人気は高い。母国の若手スターのJリーグ進出でフィーバーが巻き起こっているが日本でも1998年~2003年あたりの時期にMF中田英やMF中村俊やMF小野伸やMF稲本やFW高原などが海外に進出したときは大きな話題になった。日本国内の過熱ぶりや彼らを取材する報道陣の多さもたびたび話題になったが「当時の日本と同じような現象が起こっている。」と考えられる。
微笑ましい話と言えるがJリーグがさらに発展するためには東南アジアを中心とした新たな市場を開拓するのが手っ取り早い。「アジアのスターがたくさん集まるリーグになること」というのはJリーグの1つの大きな目標であり、札幌在籍時にMFチャナティップで大成功した野々村新チェアマンはその方面でのプランも描いていると思うがDFアルハンが活躍してくれると生まれるプラスの効果は莫大と思われる。
東京Vで活躍することを期待したいが似たような境遇で日本に進出した選手の成功率がそこまで高くないのも事実である。日本ならびにJリーグはいろいろな意味で特殊なのでFWグエン・コンフォン(元・水戸)など活躍できずに退団した選手はたくさんいる。むしろ、MFチャナティップとDFティーラトンが相当に特殊である。「カンボジアの英雄」と言われたFWワタナカもJ3の藤枝MYFCで1試合の出場のみだった。
■ 母国のファンをうまく取り込みたい。札幌や横浜FMや川崎Fや広島や清水であればそれなりの額の年俸を支払うことが出来るが東京Vや水戸や藤枝MYFCとなるとかなり難しい。「年俸が大きく下がること」を覚悟した上でJリーグに進出しないといけないが慣れるまでに時間がかかる状況であるにもかかわらず、助っ人として即戦力になることが期待される。当然、出番がほぼ得られないとなると本国の代表チームの活動にもマイナスの影響が及んでくる。
「成功するまでは母国に戻らない。」という覚悟も必要になるが本国ではスーパースターなので彼らが抜けると自国リーグの地位や人気が低下する。母国のスター選手を獲得する場合はいろいろと難しい問題が絡んでくるが今回のケースでは「十分な出場機会が得られなかった場合」や「ほとんど出場機会が得られなかった場合」は東京Vに本国のサポーターからの批判が集まることになる。これもハードな話である。
この点も「欧州に進出した日本人の期待の若手が移籍先で冷遇されたときの日本のサッカーファンの反応」と同じである。公式Twitterなどに突撃する日本のサッカーファンも少なくないことを考えると万国共通。早速、FC東京の公式SNSに突撃しているインドネシアの人を馬鹿にしている人は多いが過激な人の言動はどこも変わらない。リターンは大きいが「ハイリスク・ハイリターンな補強」であることは間違いない。
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