■ 第30節 残留を目指すホームのモンテディオ山形と、ACL出場を目指すセレッソ大阪の対戦。山形は10勝14敗5分けで勝ち点「35」。残留の目安は勝ち点「37以上」とされているので、勝てば残留のノルマに到達する。対するC大阪は13勝7敗9分け。29節はホームで清水に1対0で勝利。FW小松のJリーグ初ゴールで1対0で勝利を飾った。
山形は<4-1-2-3>。GK清水。DF小林、石井、前田、石川。MF佐藤、下村、増田。FW北村、長谷川、宮沢。リーグ戦で7ゴールを挙げているFW田代はベンチスタート。DF前田、MF下村は古巣との対決。MF秋葉がベンチ入り。
対するC大阪は<4-2-3-1>。GKキム・ジンヒョン。DF酒本、、茂庭、上本、丸橋。MFアマラウ、羽田、乾、家長、清武。FWアドリアーノ。全試合スタメン中のDF高橋が出場停止のためDF酒本が初スタメン。MFマルチネスが怪我で欠場し、MF羽田がスタメン。ユース出身の1年目で期待の19歳のMF扇原が初ベンチ入り。
■ 3対3のドロー試合の序盤はC大阪ペースで進むが、前半25分に山形はGK清水のロングキックからチャンスを作る。C大阪のDF陣がクリアできずに少し譲り合う形になったところをFW北村が見逃さずにシュート。これが決まって山形が先制する。FW北村はリーグ戦5ゴール目。しかし、C大阪は前半40分に右CKから同点に追いつく。DF酒本のキックを中央でMF家長が頭で合わせる。MF家長のリーグ戦3ゴール目で追いついて1対1で前半を終える。
後半もアウェーのC大阪ペースで進むが、後半21分に再び山形がロングキックでチャンスを作ると、FW長谷川がボールコントロールからシュート。2対1と勝ち越す。FW長谷川は今シーズン初ゴール。さらに、後半36分にも途中出場のFW田代のゴールで3対1とリードを広げる。
あきらめないC大阪は後半45分にMF清武のミドルシュートで1点差に迫ると、後半48分にFW小松のパスからFWアドリアーノが抜け出して左足でゴール。土壇場で3対3に追いつく。FWアドリアーノは9ゴール目。結局、試合は3対3のドローに終わった。
■ 試合終了間際に追いつく29試合で26失点のC大阪と、粘り強い守備で勝ち点を積み上げてきた山形の試合は予想外の3対3というスコアで終了した。シュート数はC大阪の17本に対して山形は5本だけ。支配率もC大阪の60%に対して山形は40%。試合を支配していたのはC大阪だったが、山形の最初の3本のシュートがすべてゴールとなる事態で、2点ビハインドの展開となったが、終了間際に2点を入れてドロー。川崎Fが敗れたため4位に浮上した。
C大阪の持ち味のスピードを出させないため、出来るだけアップテンポな展開にならないようにじっくりと戦っていた山形であるが、2対3と1点差に迫られてからは、余裕がなくなってしまった。粘り強く戦ってリードを守って勝利するというのは山形の得意の形であるが、平常心で最後まで戦えなかった。
■ 初スタメンの酒本C大阪は右サイドバックのDF高橋が出場停止のため、DF酒本が初スタメン。いいところも悪いところも出た彼らいいプレーだったといえる。
良かった点は縦への突破の意識。DF高橋と比べるともっともアピールできる点であり、DF酒本とはJ2時代に何度も対戦していて、元C大阪の小林監督が指揮するチームということで、DF酒本の特徴は知り尽くしている。よってDF酒本にとってはやりにくい相手であるかと思われたが、思いのほか、突破が効果的だった。
悪かった点はやはり守備面。1失点目のFW北村のゴールシーンは、もし、DF高橋ならばしっかりと絞ってクリアできていたことだろう。DF高橋はもともとは攻撃的な選手であるが、ハイボールを跳ね返す能力が高く、左サイドからのクロスへの対応は見事なものがあるが、失点シーンではDF酒本の対応が中途半端で、DF茂庭と譲り合う形となった。
■ 途中出場の永井龍 C大阪は後半25分にMF乾とMF羽田を下げて、FW小松とFW永井を投入。MF家長をボランチに下げて、前線を3トップ気味にするというなりふり構わない策に出て、後半36分にダメ押しゴールを奪われたが、1点差に迫ったのち、FW小松とFWアドリアーノのコンビで同点弾を奪った。これまでであれば、FWアドリアーノと3シャドーの誰かを下げるのが一般的だったが、意外な交代だったが、結果的には成功したといえる。
ということで20分のプレー機会を得たU-19日本代表のFW永井はゴールに絡むことは出来なかったが、29節の清水戦と同様に積極的な仕掛けで試合に入っていった。ベンチにはベテランのFW播戸も控えていたが、ここ最近はFW永井の方が優先度が高くなっていて、これで3試合目の途中出場となった。
U-19日本代表としてアジアユースでも2ゴールを挙げているが、持ち味は泥臭さであり、ストライカーらしい選手であるが、スピードもあって、将来を期待されている選手である。クルピ監督はMF黒木やDF丸橋の例を見ればわかるように、高卒1年目で様子見をして、2年目に戦力化して積極的に試合に起用するケースが多いが、FW永井あるいは同期で初ベンチ入りを果たしたMF扇原も来シーズンが2年目となる。共に、U-19日本代表で中心として期待されていた選手なので、順調に伸びていってほしいところである。
■ 長谷川悠が初ゴール 2点差を守れなかった山形だが、FW長谷川に今シーズン初ゴールが生まれたのが大きな収穫。限りなくハンドに近いトラップだったが、シュート自体は落ち着いていた。おそらく、自分でもハンドを取られると思ったであろうプレーだったので、シュートのときに力が抜けていいコースに蹴ることが出来たのではないだろうか。
昨シーズンは10ゴールを挙げたFW長谷川であるが、今シーズンは怪我もあってノーゴール。鹿島から加入したFW田代がこの日のゴールを含めて8ゴールと結果を残しているが、小林監督はFW長谷川をフォワードの軸に起用して、ゴールが無くても辛抱して使っていたが、ようやく実を結んだといえる。この試合はゴールシーン以外でも好プレーを見せて、DF茂庭とDF上本のセンターバックコンビを翻弄。がっちりとした体格を生かしたボールキープは見事で、しっかりと起点となった。
■ 雪国気質が生んだ実直なサッカーこれで山形の勝ち点は「36」。16位の神戸が「30」であり、まだ「残留が確実」とは言えないが、神戸の残りの対戦相手を考えると、残り4試合で勝ち点「1」を積み上げればほぼ残留できるのでは?と思われる状況になった。2年連続で残留を果たすことができれば、これは地方のスモールクラブとしては快挙である。
「雪国の人は辛抱強い。」といわれるが、小林監督率いる山形のサッカーは、まさしく「雪国の人の気質に合ったサッカー」であり、粘り強くて、辛抱強いサッカーを見せる。決して派手ではないが、まじめなサッカーである。同じようなサッカーを、都会のクラブで長期にわたって実現させるのは非常に難しい。続けていくと、選手もサポーターも、色気が出てきてしまうからである。
「雪国」は生活する上では、ハンディキャップになりうるが、「雪国」のチームだからこそのメリットをピッチ上で表現するチームが、やっと生まれてきたというのは、同じ雪国生まれとしては感慨深いものがある。
ただ、勝負はこれからでもある。2年連続で残留を成し遂げたとき、(次の目標が「残留よりも上のもの」になったとき、)クラブとサポーターの意識がバラバラになって、チーム自体もバラバラになってしまった例は、他クラブでも見られたことである。世界は限りなく上に広がっているが、上を見過ぎることもマイナスとなる。ただ、現状維持では不満を覚える人も出てくる。どうバランスを取っていくのか?残留を果たしたとき、次の挑戦が始まる。
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