■ インド戦広州アジア大会の決勝トーナメントの初戦。グループAで中国、マレーシア、キルギスを相手に3連勝。グループ首位で決勝トーナメントに進出したU-21日本代表がベスト8をかけてインドと対戦した。
日本は<4-2-3-1>。GK安藤。DF實藤、鈴木、薗田、比嘉。MF山口、山村、水沼、東、山崎。FW永井。すでに首位通過が決定していた第3戦のキルギス戦ではメンバーを少し入れ替えた日本だったが、この日は第2戦のマレーシア戦と同じイレブンが先発。キルギス戦で2ゴールを挙げたMF登里はベンチスタートとなった。
■ インドを圧倒 前半から攻め込んだ日本は前半17分にC大阪のMF山口の絶妙のスルーパスから福岡大学のFW永井がGKと1対1になってから落ち着いて決めて先制する。FW永井は今大会は3ゴール目。さらに前半28分にスローインの流れからMF水沼がシュートを放つと、ゴール前にいたMF山崎がうまくコースをかえてネットを揺らす。MF山崎は今大会2点目。前半終了間際にも日本が左サイドからDF比嘉が右サイド奥にサイドチェンジ。大分のMF東がうまく折り返すとゴール前でフリーのMF山村が頭で合わせて3点目を奪う。前半は日本が3対0でリードして折り返す。
後半も日本ペース。後半6分にMF東のスルーパスから再び、FW永井が決めて4点目を挙げると、後半17分にはMF水沼がミドルシュートを決める。FW永井は今大会4ゴール目。MF水沼は初ゴール。結局、5対0で日本が圧勝し、ベスト8に進出が決定。19日にタイとトルクメニスタンの勝者と準決勝進出で対戦することになった。
■ ベスト8決定自力の差を見せつけた日本が5対0とインドを圧倒した。前半から落ち着いたサッカーでチャンスを作ると、前半17分にFW永井が先制ゴール。この1点で楽になった日本は、その後、流れるようなパスサッカーを展開し、インドに付け入る隙を与えなかった。後半にはFW永井、MF東を温存する余裕の采配で、見事にベスト8を決めた。
今大会は「23歳以下+オーバーエイジ3人」というのが規定であり、韓国のように海外組を招集しているチームもあれば、日本のようにロンドン五輪を見据えて「21歳以下」のメンバーだけで大会に臨んでいるチームもある。規定は大会によって変わるので比較は難しいが、過去、日本はアジア大会では苦戦する傾向が強く、FW平山相太、MF本田圭佑らを擁した前回大会は北朝鮮に敗れてグループリーグ敗退。
グループリーグを通過できるのは首位チームのみという厳しい条件ではあったが、3試合ともに内容は良くなかった。したがって、このくらいの年代の選手にとっては、「他国との年齢差」は大きいように感じたが、今大会はあまりそういった不利は感じさせない。もちろん、今大会は、相手に恵まれていう感もあるが、ここまでの4試合で13得点0失点というのは立派であり、次の相手がタイ or トルクメニスタンということを考えると、ベスト4、さらにはメダルも見えてきた。
■ 輝いた山口蛍インドのディフェンスに難があったことは事実であるが、それにしてもこの試合の日本のゴールシーンは「美しいもの」が多かった。キーになったのはボランチのMF山口蛍。初戦の中国戦では無難なプレーに終始して、「このレベルでは厳しいか?」と思われたが、第2戦のマレーシア戦の後半にヘディングシュートを決めてからは、自信をつけたのか、一気にプレーが良くなった。
マレーシア戦で得た自信はこの試合にもプラスの影響を与えていて、1点目の先制アシストを含めて、特に前半は素晴らしい出来で、惜しいシュートやラストパスでチームをけん引した。ボランチの相方はMF山村であるが、彼は「守備力」が売りの選手であり、ゲームを作る仕事はMF山口に任されているが、この日は判断も良くてミスもほとんどなくて、勝負のパスも多くて、申し分のない出来だった。所属のC大阪ではベンチ入りも厳しい状況であるが、この大会で得た自信をチームに持ち込むことが出来たら、C大阪の中盤は強力になるだろう。
■ 永井が2ゴールエースストライカーのFW永井はこの日も2ゴールの活躍。爆発的なスピードを生かすシーンは少なかったが、確実にシュートチャンスにネットを揺らした。これまで日本にも「スピードのあるフォワード」はいたが、「スピードのあるストライカー」というのはほとんどいなかった。さすがにJ1クラブで争奪戦になっているのが理解できる働きである。
また、2列目のMF山崎、MF東、MF水沼の3人もゴールとアシストで得点に絡む動きを見せた。左サイドのMF山崎はビッグチャンスを外すシーンもあったが、貴重な2点目のゴールをマーク。フィジカルも強くて、相手に当たられても落ち着いてボールをキープできる。このチームはサイドバックが攻撃にかかわってくる回数は少なめなので、サイドハーフに求められることは多いが、大会を通していいプレーを見せている。
栃木SCのMF水沼も2つのゴールに絡んだ。もともと運動量とキックの精度に定評があるが、「個で打開する力」はそれほどではないので、行き詰るシーンも多かったが、豪快なミドルシュート初ゴールをマーク。これで吹っ切れたら、日本の攻撃はさらによくなるだろう。
■ 安定するセンターライン相手とのレベル差もあるが、4試合連続無失点というのは高く評価できる。今大会の日本はベストメンバーとは程遠いが、センターバックだけは別であり、新潟のDF鈴木と川崎FのDF薗田はフルメンバーでも選考に絡んでくる可能性がある。今大会のプレーで一段と評価を高めたといえる。
新潟のDF鈴木はフィジカルも強いが、フィードも安定している。新潟ではDF永田、DF千葉という両センターバックの影に隠れていて、なかなかチャンスが回ってこないが、順調に力を蓄えてきたようで落ち着いてプレーしている。川崎FのDF薗田は関塚監督も良く知っている選手で、DF鈴木と比べると危ないシーンもあるが、エネルギッシュなプレーを見せる。
センターバックというと、岡田ジャパンに選ばれた経験のある湘南のDF村松、ユーティリティーな広島のDF横竹がいるが、絶対的な存在はおらず、悩みの種となっているポジションである。このコンビが経験を積むことができたというだけでも、今大会の大きな収穫といえる。
■ 香川は必要か?今大会には南アフリカ大会バックアップメンバーだったFW永井とMF山村が好プレーを見せているが、ドルトムントのMF香川もこの世代であり、招集される可能性はある。2011年5月に二次予選、9月に最終予選が行われる予定になっているが、欧州では五輪サッカーを重要視しない国やクラブが多くて、招集するのは簡単ではない。もし、オフに移籍をするとしたらなおさらである。
過去でいうとアトランタ五輪のMF前園、シドニー五輪のMF中田英が同じような立場で、A代表で中心になっていて、五輪代表の活動とバッティングしたときにどちらを優先するかでもめたことがあった。個人的には、MF香川は飛び級で2008年の北京五輪に出場しており、五輪代表は卒業しても問題ないと思われるが、果たしてどうなるだろうか。
MF香川が加われば戦力アップするのは間違いないところであり、日本サッカー協会としても五輪代表チームの注目度を高めるためには是非とも招集したいと考えるだろうが、五輪代表の活動に参加すると、オフが少なくなってしまって十分な休暇が取れない可能性や、リーグ戦を欠場しなければならなくなる可能性もある。その一方で、シドニー五輪代表チームにMF中田英が入って、周りに刺激を与えてチームをワンランク上に押し上げたという例もある。いろいろなものを天秤にかけて最善の道を探ってほしい。
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