■ 17節J2は17節。2回戦総当たりで36試合制のリーグ戦は、17節を終えた時点でワールドカップでの中断期間に入るため、今節が中断前のラストゲーム。10勝2敗3分けで勝ち点「33」を挙げている2位のヴァンフォーレ甲府と、9勝3敗3分けで勝ち点「30」で3位のジェフ千葉の直接対決。2位の甲府は、勝てば3位の千葉との差は「6」に広がって昇格レースを優位に進めることが出来るが、敗れると得失点差で逆転されてしまう。
ホームの甲府は<4-1-2-3>。GK荻。DF池端、ダニエル、津田、内山。MF保坂、養父、藤田。FW片桐、ハーフナー・マイク、パウリーニョ。FWマラニョンは怪我のため欠場中。DF秋本、DF吉田が出場停止。
対するアウェーの千葉も同じく<4-1-2-3>。GK櫛野。DF和田、福元、青木良、アレックス。MF佐藤勇、工藤、倉田。FW太田、巻、米倉。FWネットはベンチスタートでFW巻が2試合連続でスタメン出場。5試合目のスタメンで初ゴールを狙う。オーストリア代表のDFミリガンは欠場。16節の愛媛FC戦で2ゴールを挙げたMF米倉は今シーズン4ゴールを挙げている。
■ J2の大一番小瀬競技場で行われた試合としては、史上3位という16431人がつめかけたJ2の今シーズンの最初の大一番は期待通りの熱い展開となった。
前半は互角の攻防となったが、ホームの甲府が前半41分にDF内山のパスを受けたFW片桐の右足の強烈なミドルシュートで先制する。FW片桐は今シーズン3ゴール目。前半は甲府リードで終了する。さらに後半20分にも、甲府はMF藤田がチャンスメークしMF養父がミドルシュートを放つと、相手に当たってコースが変わってゴールイン。2点リードを奪う。
2点ビハインドの千葉は後半22分にMF米倉に代えてMF青木孝を投入。すると、後半25分にMF工藤のスルーパスからDFアレックス→MF倉田とつないで、MF倉田がゴール。これで1対2と迫る。さらに後半40分に右サイドからDF和田がロングスローイン。これをDF青木良が執念で頭で押し込んで2対2の同点に追い付く。
その後、甲府のGK荻がDF和田と接触して負傷退場するアクシデントが発生するが、甲府は控えGKのGK荒谷が無難にゴールを守って2対2で終了。2位甲府、3位千葉の順位は変わらずに中断期間を迎えることになった。
■ 超満員の中で・・・ 独走態勢に入っている首位の柏を追う両チームの直接対決は、超満員の中での白熱した展開となった。勝てば3位以下を引き離すことが出来る甲府と、勝てば甲府を逆転して2位に浮上することの出来る千葉。勝って中断期間を迎えたい両チームの対戦は、最後まで勝敗の行方が分からない拮抗した試合となった。
2006年、2007年と2年間、J1を経験している甲府であるが、一時、チーム存続の危機が訪れたこともある。ちょうど10年前の1999年の観客動員数は平均で1,469人であり、年間を通じても26,450人のサポーターしかいなかったチームが、10年後の2009年には平均で11,059人を集めるようになった。2部リーグのチームであること、もともと大きなスタジアムではないこと、小瀬競技場自体がサッカー専用のスタジアムではないことを考えると、驚異的な成長といえる。
大きな街のサッカークラブでもなく、立派なスタジアムを所有しているわけでもないチームの躍進は、今後、Jリーグを目指す下部リーグのチームにとっては理想の1つといえる。
■ プラン通りの戦いだったが・・・ホームの甲府は前半はやや抑え気味だったが、前半終了間際にFW片桐の珍しい右足のミドルシュートで先制し、さらに後半20分にMF養父のミドルシュートで追加点。理想的な展開で、理想的な時間帯に2つのゴールを奪って、「後は逃げ切るだけ」という展開になったが、J1昇格を至上命題に戦う千葉の気迫に押されて同点を許した。
甲府にとっては、勝ち点差「6」で中断期間に入ることが出来れば昇格に向けて最高の展開となったが、2点ビハインドを追いつかれてさらにピンチが続いただけ、ドローでも良かったと考えた方がプラスだろう。
■ 期待にこたえる養父ここ最近の12試合で9勝3分けと絶好調の甲府。その原動力となっているのが7ゴールを挙げているFWハーフナー・マイクであることは間違いないが、この日はやや不調で、千葉のDF福元とDF青木良のセンターバックコンビに抑えられてシュートゼロに終わってしまったが、その代わりにFWパウリーニョとMF養父が活躍を見せた。
京都時代の2005年にはJ2の得点王に輝いたFWパウリーニョはJ1での実績も十分なストライカーで、シーズン前に期待を受けてチームに加入したが、FWマラニョンとの共存作業があまり上手くいっておらず、やや不本意なプレーに終わることが多かったが、この日は非常にキレがあって、左足が脅威となっていた。
また、川崎Fからレンタル中のMF養父もこれまでの試合ではあまり見せられなかった前線への果敢な飛び出しでチャンスに絡んだ。追加点となった2点目のゴールは積極性が生まれたゴールであり、それ以外でも好プレーを続けた。甲府の課題は前線が強力であるが故に、しばしば中盤との距離が空いてしまって、前線の選手だけで攻撃が完結してしまう単調な攻撃になりがちなところあるが、この日はMF養父も、MF藤田も上手くフォローして攻撃に絡んだ。
■ 執念で追い付くミドルシュート2本で2点ビハインドになった千葉だったが、残り25分で追い付いてドロー。後半戦を考えると、貴重な勝ち点「1」であるといえる。大きかったのは後半28分のMF倉田のゴールシーン。MF工藤とDFアレックスのコンビで左サイドを崩して、ゴール前に待っていたMF倉田がラストパスを受けてドリブルシュート。これでムードが変わったといえる。
G大阪から移籍してきたMF倉田はこれで15試合で7ゴール目。本職のボランチではなくて攻撃的な位置に入っているが、貴重なゴールを挙げ続けていて、チーム内での存在感は増すばかりである。G大阪時代はなかなか出番に恵まれず、たまに巡って来たチャンスも消極的なプレーに終始しがちであったが、千葉に移籍してからは積極的にゴールを狙うようになって、結果も付いてきている。
J1とJ2ではレベル差はあるが、若い選手にとっては何よりも出場機会を得ることが成長のためには必要であり、結果を残していくことがさらなる成長につながっていくといういい見本である。
■ 後半戦の戦い方千葉は3位で中断期間を迎えることになった。2位甲府との差は「3」で変わらなかったが、すぐその下には、サガン鳥栖とアビスパ福岡が控えていて、熾烈な戦いが続いていくだろう。ここ最近はメンバーも固まってきて、シーズン当初よりも戦い方は安定しているが、J2で戦力のあるチームが陥りがちな「理想を追い求め過ぎないこと」が大事になってくるだろう。
J2の場合、資金力に乏しいチームが多いので、中位以下のチームはシーズン終了後に選手の大幅な入れ替えが行われるが、こういったチームや昇格クラブはシーズンが進むにつれて戦い方が安定してきて、力を付けてくる。シーズン中盤以降は、順位的に下位のチームであっても、前半戦とは全く別のチームのように変身するチームが少なくない。こういった失うものの無いチームを相手にする時は警戒が必要で、いいサッカーをしようとすると、必ず落とし穴にはまってしまう。江尻監督が理想を追い求めないことは、何よりも昇格に向けて必要になってくることである。
■ ノーゴールが続く巻誠一郎気になるのは、FW巻の状態である。今シーズンは17節を終えてまだノーゴール。4年前のドイツ大会では23人のメンバーに入って「時の人」だったFW巻も、4年が経過し、J2の中でもポジションをつかめないままでいる。
3トップなので、ターゲットタイプはFW巻か、FWネットかのどちらかがスタメンで、どちらかがベンチスタートとなるが、ここまで4ゴールのFWネットとの勝負は明らかに分が悪い。サイドに位置するのがサイドアタッカータイプではなくて、MF倉田、MF米倉、MF谷澤といったアタッカータイプであり、あまりサイドからのクロスが上がって来ないという面もあるが、シュートシーンも少なく、元気がない。
■ W杯とJ2リーグ今シーズンは試合数も減ってしまったので、J2にも中断期間があって、これから1ヶ月ほどは珍しい中断期間に入る。ワールドカップ期間中にもリーグ戦が行われているので、千葉や大分といったワールドカップ戦士をかかえるチームにとっては不利なスケジュールであるが、シーズン当初からわかっていたことであり、残ったメンバーで頑張るしかない。
ということで、同じ時期にJリーグとワールドカップが行われているが、それぞれに良さがあって、どちらがいいとか、悪いとか、判断を下すこと自体があまり意味の無いことである。サッカーのレベル的には、ワールドカップの方がJ2の試合よりもはるかに上であるが、サッカーのレベルと試合の面白さは、多くの場合、比例しないものである。
世界トップレベルの選手が真剣勝負で4年に一度の舞台を戦う姿は美しいが、身近なスタジアムで、生活をかけて懸命に戦うJ2の選手たちの姿もまた、美しいものである。
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