■ 調布から甲府へ味の素スタジアムを出て、急いで、次の目的地・甲府へと向かう。小瀬競技場に行くのは、初めて。そもそも、山梨県に行くのも初めてかも。
味の素スタジアムを出たのが、16:15。京王線に乗って飛田給駅から高尾駅へ。高尾駅に到着したのが、16:50。高尾駅からは、JRの中央線に乗り換えて、普通列車で甲府を目指す。甲府駅到着予定時間が、18:51。あららら・・・。(※ キックオフは、18:30。)
全く各地点の距離感が分からないので、ミステイク。飛田給駅から京王線で八王子に行って、八王子からは、特急の「かいじ」か「スーパーあずさ」で甲府に向かうのが、多分、ベストの選択だったようだ・・・。
甲府駅から、小瀬競技場までは、車で20分程度。臨時バスの最終便は、17:45。(これは、ちょっと早すぎ!!!)しょうがないので、タクシーで。
ようやく小瀬に到着したのは、19:10ごろ。ちょうど、石原の同点ゴールが決まったところだった。
■ 小瀬スタジアムスタジアムの外観は、西京極に似ている。普通の陸上競技場という感じ。でも、中の盛り上がりはすさまじい。
スタジアムは、ほぼ満員。バックスタンドは、超満員で立ち見。
■ 古賀の退場試合の詳細は、前半は分からないので、後半のみ。
1対1の後半8分に、柏のDF古賀が2枚目のイエローカードで退場。これで、試合は、完全に甲府優勢になる。
柏は、MF谷沢に代えて、DF小林祐三を投入。攻撃の枚数が減った柏に対して、甲府は、人数をかけた攻撃を見せるようになる。
ただ、柏のDFも踏ん張って、逆転ゴールを許さない。そんな中、後半37分、甲府の中途半端なパスを拾った柏がカウンター。最後は、左サイドに流れたフランサのパスを、途中出場のFW李が泥臭く押し込んで勝ち越す。
■ また保坂!!!勝ち越された甲府は、アンカーのMF林を外して、前節の神戸戦で劇的な勝ち越し点を奪ったMF保坂を投入。藤田のポジションを一列下げる攻撃的な布陣に変更。すると、投入された保坂が、またまた、大仕事をする。
後半37分に、山本からのクロスボールをヘディングで流し込んで同点にすると、さらに後半39分には、須藤のポストプレーから勝ち越しのゴール。あっという間の逆転劇で、スタジアムは狂喜乱舞した。
これ以上ないくらいのエキサイティングな試合は、そのまま、3対2で甲府が勝利。今シーズン、2勝目を挙げた。
■ 不思議な感覚残念ながら、前半は見られなかったが、試合自体も面白かったし、スタジアムの雰囲気も最高だった。
この試合を見て、なぜ、ヴァンフォーレが小瀬で強いのか、少し分かった気がする。後半35分に柏に勝ち越しゴールを奪われても同点に追いつけそうな予感がしたし、後半37分に同点に追いついてからは勝ち越しのゴールが生まれそうな予感がした。
ここ2・3年、いくつもの劇的な勝利を見てきた観衆は、最後まであきらめないし、選手もあきらめない。
■ 何が観客を惹きつけるのか?この試合の観衆は、11437人。土曜日の夜で、対戦相手が、熱狂的なサポーターをもつ柏レイソルだとはいっても、相当の数字である。(J2初年度となった99年の平均観客数は1469人。)
甲府には、日本代表のキャップをもつMF林健太郎や、ユース世代から日本代表の一員として国際試合を経験してきたDF増嶋竜也のようなエリートと呼べる選手もいるが、現役の日本代表選手は1人もいない。チーム№1のスター選手となったMF藤田にしても、磐田を解雇された後は、ずっとJ2を舞台に戦ってきた苦労人である。雑草軍団といっても差し支えない。
一部の選手を除いて、技術的にそれほど優れているわけではないし、試合中は、単純なミスも多い。ただ、これだけ全員でひたむきなサッカーを見せれれば、自然と観客は引き込まれていく。
確かに、得点力の高いストライカーは人気があるし、華麗なプレーを見せるファンタジスタは、関心をひきつける。ただ、観衆が求めるのは、そういうプレーヤーだけではない。
■ 一体感のあるスタンドキャパがそれほど大きくないという理由もあるが、とはいっても、これだけ、一体感のあるスタジアムは、珍しいと思う。(ベガルタ仙台のユアテックスタジアムの雰囲気が素晴らしいという評判は聞くが、行ったことがないので・・・。)
どのスタジアムでもゴール裏は盛り上がっている。ただ、その盛り上がりがメインスタンドやバックスタンドまで届いておらず、応援団と一般の観客の間に距離感がある場合が多い。だから、小瀬のような一体感を感じることは出来ない。
その理由は何なのか分からないが、考え込まれた(演出された)応援ではなく、自然な応援だから、一般の観衆にも受け入れられているのではないかと推測する。試合が拮抗していたからという面もあると思うが、みんながひとつのボールに集中していて、一つ一つのプレーに、歓声と悲鳴が上がる。その反応は、どうかなと思う部分もあるが、(例えば、どういう状況でも、「シュート、シュート。」「クリア、クリア」と叫ぶあたり・・・。)これだけ、いい雰囲気の中でサッカーができるのは、幸せである。
■ J1の威力J2時代から、ヴォンフォーレ甲府を見てきたものとしては、いまだに甲府がJ1で戦っているのに、ときどき、不思議な感覚を覚えることがある。
松永監督時代も、素晴らしいコレクティブなサッカーをしていたが、でも、なかなか観客が集まらなかった。それが、ほんの数年で、これだけの観衆が集まるようになったのかと思うと、感慨深い。
それとともに、J1の威力を感じずに入られない。多くの日本代表を擁する浦和レッズやガンバ大阪といったビッグクラブと対戦することで、チームと選手は、更なる輝きを放つようになった。
■ 奮闘した須藤試合を振り返ると、ヒーローとなったのは、同点ゴールと勝ち越しゴールを奪った保坂で間違いないが、保坂に負けず劣らずの活躍を見せたのが、CFの須藤。新外国人のアルベルトが怪我のため急遽、出番が回ってきたなかで、素晴らしく献身的なプレーを披露した。
攻撃陣にテクニックのある選手を並べて、それだけで相手DFを崩せればそれは理想だが、現実的には、かなり難しい。そこで、現代サッカーでは、相手DFとタフに戦って、味方がプレーしやすいように働くことのできるCFが重要視されるようになってきた。
チーム事情にもよるが、FWの仕事は点を取るだけではない。得点さえ取れればOKという考えもできるが、それは中盤にタレントの多い、特別なチームの場合のみ。甲府のようなチーム全員で戦うチームには、須藤のようなタイプは必要不可欠である。
この試合の須藤は、記録上は1アシストのみで、ゴールはなかったが、CFとして十分な出来だった。
須藤は、他のチームのCFと比べると、運動量があって、機動力もそれなりに備えている。新外国人のFWアルベルトがフィットすれば、アルベルトの得点力も捨てがたいが、この試合に限ってみると、須藤でも十分に務まりそうである。
■ スペースの使い方に巧みさを感じた柏対する柏レイソルは、古賀の退場が痛かった。その判定は、確かに微妙だったが、2枚目のイエローカードを出されても、文句は言えないレベルだった。
試合は逆転負けをしたが、ただ、後半開始すぐに、11対11の状況では、やや柏の方が、総合力があるかなという印象を受けた。
3トップの甲府に対して、1トップ気味の柏だが、別に守備的なサッカーというわけではなくて、攻守の切り替えの速い、質の高いサッカーを見せていて好感が持てる。特に、攻撃のときには、逆サイドのスペースを活用するのがうまく、甲府の守備陣を苦しめた。
■ ホスピタリティ甲府駅に着いたとき、一番驚いたのは、ヴァンフォーレ甲府のフラッグではなくて、柏レイソルのフラッグがたくさん飾ってあったこと。どのスタジアムでも、最寄り駅には、ホームチームのフラッグだけが飾ってあって、対戦相手のチームのフラッグが飾ってあるケースは見たことがなかった。
サッカーでは、「アウェー」と呼ぶが、野球では、「ビジター」と呼ぶ。この言葉だけを取ると、野球用語の方が相手をもてなそうとする心が見て取れる。
アウェーチームをどうもてなすかは、各チーム、様々である。ほとんどのチームは、無関心に近いが、フクアリ(ジェフ千葉)は、アウェーチームのサポーターの訪問に、歓迎の意を示すアナウンスをしていたのが印象的だった。
どちらがいいのかは、意見が分かれる部分ではあるが、個人的には、甲府や千葉のような「もてなし」は、素晴らしいと思うし、多くのチームにマネをして欲しい部分である。
「試合はもう始まっているんですが・・・。」と言うと、思いっきり、飛ばしてくれたタクシーの運転者さん、スタジアムの売店で、アツアツのポテトを入れてくれたオバちゃん、etc.
甲府というところは、何もかもが、「いい街」だった。
※ 甲府というと、武田信玄。ヴァンフォーレという名前の由来は、「VENT(風)」と「FORET(林)」から。
- 関連記事
-