■ サンフレッチェ広島 vs ヴァンフォーレ甲府サンフレッチェ広島がホームのビッグアーチに、ヴァンフォーレ甲府を迎えたJリーグ第5節。広島は、五輪代表の青山がシリア遠征のため欠場。その代役として、MF高柳がスタメン出場。森崎浩・柏木・高柳で組む中盤となった。
対する甲府は、アルベルト・茂原・鈴木健太の3人がFW登録。<4-1-2-3>のシステムで試合に挑んだ。
■ 2対2のドロー試合は、広島が前半17分にウェズレイのパスを受けた佐藤寿人の先制ゴール。しかし、甲府は、FW茂原が前半39分に角度のない位置から決めて同点においつく。前半は、1対1で終了。
広島は、後半開始早々に、ウェズレイの左CKが、相手DF井上のクリアミスを誘って2対1と勝ち越す。しかしながら、後半19分に、再度、茂原がゴールを決めて同点に追いつく。その後は、甲府がボールを支配して、広島がカウンターで攻め込む展開となったが、両チームとも、勝ち越しゴールは奪えずに終了した。
■ 驚きの茂原この試合で光ったのは、なんと言っても、甲府のFW茂原。とにかく、茂原のプレーには驚かされた。
表記上のポジションはFWではあるが、実際には、甲府の攻撃陣は、トップのアルベルトとアンカーの林を除くと、フレキシブルにポジションチェンジを繰り返しているため、茂原のポジションも流動的で、いろんなところに顔を出して、攻撃の中心を担っていた。
一番に気づくのは、ボールをもったときの、落ち着き。昨年までとは、全く違っており、相手のマークが1人であるならば、いつでも突破できそうな雰囲気を漂わせていた。それでいて、無理をして勝負をする場面か、無理をしなくて簡単にはたけばいい場面なのかの状況判断が的確で、チームの流れを滞らせることもなかった。
前節の神戸戦に続いて2ゴールの活躍を見せた茂原。昨年はアクシデントもあって、不遇の時期を過ごした茂原だが、この試合を見れば、オシムジャパンに呼ばれても全く不思議ではないし、それどころか、このパフォーマンスで代表に呼ばれなかったら、その方が疑問に感じるだろう。ヴァンフォーレ甲府で初の代表選手は、茂原になるかもしれない。その可能性は、かなり高いのではないかと思わせるプレーだった。
※ アクシデント
2006年3月20日に川崎市麻生区内の女性宅に侵入したとして、住居侵入容疑で逮捕された。しかしながら、泥酔状態での誤侵入によるもので、事件性が薄いと判断され起訴猶予処分になった。女性とは和解が成立。所属の柏レイソルからは契約を解除され無所属になったが、数々のボランティア活動をこなし反省が認められ、ヴァンフォーレ甲府と正式契約した。
川崎に引越ししてまもなくだったため、道に迷った挙句、自宅とは異なるマンションに到着。たまたま、鍵が開いていた無人のマンションに侵入してしまった。しかしながら、すぐに、自宅ではないことに気づいたため、退室。結果的に、そのときの指紋が残っていたため、逮捕されるに至った。指紋が残っていたのは、高校時代に、自分の自転車が盗まれたときに、他人の自転車を拝借して捕まったときに採取されたものであった。
ちなみに、起訴猶予とは、捜査の結果、犯罪事実は明らかになったものの、事案が軽微である、被疑者が反省している等の理由から、検察官が起訴を見送ること。不起訴となったので、「前科」にはあたらない。■ 3トップの特性を生かしきれていない?甲府のシステムは、<4-1-2-3>。FWアルベルトの横に、2人のウイング的なポジションを置く攻撃的な布陣である。前述のように、茂原・藤田・石原あたりのポジションは、かなり流動的なので、ショートパスをつないで組み立てていく攻撃は魅力的であるが、3トップ気味の布陣にしては、攻撃の幅が狭く、サイドアタックに関しては、物足りなさも感じた。
特に、両サイドバックの田森と井上の攻撃参加の機会はほとんど見られず、FW鈴木健太が、活躍するシーンも見られなかった。キープ力のある藤田や茂原といったタレントが中盤にいて、ポゼッション率も高い。分厚い攻撃が、もっと出来てもいいように感じる・・・。
■ フィットし始めたアルベルト開幕からなかなかチームにフィットしていなかったFWアルベルトが、この試合では、まずまずのプレーを見せた。
甲府のFWに与えられる役目としては、得点以外にも、中盤の動きを引き出すプレーが求められるので、仕事量は多いのだが、それなりにこなしてきているように思える。彼が、チームになじめるのかどうなのかは、甲府の浮上の鍵を握るキーポイントなので、今後、よりいっそうの活躍が望まれる。
■ 決定力が光る佐藤寿人佐藤寿人の先制ゴールは、彼らしい抜け出しからの見事な得点だった。
彼は、このシーンのように、半身の体勢で、相手GKと1対1になったときの、決定力は、Jの中では、頭ひとつ抜けている。GKのどこの部分を通せば、セーブされずにゴールに流し込めるのかを瞬時に判断することができている。
■ 駒野と服部という両サイド広島の特徴のひとつは、両サイドの駒野と服部のポジショニングにある。
同じような、3バックのアウトサイドであっても、各チームによって、ポジショニングは異なっており、広島の両サイドは、どちらかというと、スターティングポジションは低めだが、チャンスと見るや、判断よく高い位置まで攻めあがる。
両サイドが攻撃に行き過ぎると、その裏のスペースをケアしなければならなくなるので、結果として、チームのバランスが崩れてしまって、攻撃的なはずなのに攻撃的にいくことが出来ないという、今のFC東京のような状態になりがちだが、広島の両サイドは、バランスよく、ポジションを取っているので、効率よく、しかも効果的な形で、攻撃参加ができている。
■ 1つの疑問気になる点を挙げると、広島のスターティングメンバーを見ると、もっとチーム全体でポゼッションが出来てもいいような感じもするが、現実には、なかなかポゼッションが出来ておらず、チャンスに拡大するのは、カウンターの場面であることが多い。ポゼッションの鍵を握る中盤は、森崎浩・柏木・高柳(← 本来は、青山敏)。いずれも、高いテクニックをもつ選手であり、最終ラインを見ても、パス能力の高い選手が揃っているにもかかわらずである。
昨シーズン途中に監督に就任したペトロビッチ監督のチーム作りがどの程度まで進んでいるのかわからないし、本心ではもっとポゼッション率を高めたサッカーをしたいのかもしれないが、世界的な流れとして、「レジスタ」と呼ばれるプレーメーカーを中心としたポゼッション重視のサッカーは、少し古くさいスタイルになってきていて、どの位置からでも攻撃を開始できるスタイルが、主流になりつつあるように感じる。
多分、サンフレッチェの場合は、もっとボールをキープして、落ち着いた組み立てもしたいと考えているだろうが、世界的な傾向として、ポゼッション出来ないのではなくて、あえて、ポゼッションサッカーはしないというスタイルが、広まりつつあるように思う。(オシムジャパンでも、同様の傾向が見られる。本来はボランチの、中村憲剛や遠藤保仁をボランチの位置ではなく、攻撃的MFで起用することが多いことも、その流れである。)
ボクも、これまでは、試合を評価するときに、ポゼッションができているかどうかで、チームがうまく機能しているのか否かを判断することが多かったが、こういう安易な判断は、できないようになってきている。「ポゼッションサッカーが正」だという固定概念は、捨てなくてはいけないのかもしれない。
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