■ 首位攻防戦15勝4敗5分けで勝ち点「50」で首位を走る鹿島アントラーズと、12勝5敗7分けで勝ち点「43」で2位に付ける川崎フロンターレの直接対決。リーグ3連覇を目指す鹿島にとって大きな山場となる試合である。
ホームの鹿島は<4-2-2-2>。GK曽ヶ端。DF内田、岩政、伊野波、新井場。MF青木、小笠原、野沢、ダニーロ。FW興梠、マルキーニョス。MF本山は欠場。MF中田浩、FW大迫、FW田代と豪華なタレントがベンチに控える。体調不良という報道もあったDF内田はなんとかスタメン出場。
対するアウェーの川崎Fは<4-3-3>。GK川島。DF森、薗田、伊藤、村上。MF谷口、中村憲、養父。FWレナチーニョ、鄭大世、ジュニーニョ。DF薗田は今シーズン初出場。MF山岸がベンチスタートでMF養父とFWレナチーニョがスタメン出場。FWレナチーニョを前線に近い位置に置く3トップ気味の布陣。MF谷口とMF中村憲のダブルボランチ。
■ 3対1とリードを広げる試合の立ち上がりはホームの鹿島がボールを支配して進むが、前半19分に川崎Fが先制に成功。中盤でMF野沢からボールを奪ったMF中村憲のパスを拾ったFW鄭大世がドリブルから豪快なミドルシュートを叩きこむ。
しかし、鹿島は前半30分に左サイドに流れたMF野沢の左足のクロスをFWマルキーニョスが頭で決めて同点に追い付く。FWマルキーニョスは10ゴール目。
首位攻防らしい白熱した試合になったが、川崎Fは前半32分にMF中村憲のCKをFW鄭大世が顔面で押し込んで勝ち越しに成功。FW鄭大世は15節以来という久々のリーグ戦のゴールで通算9ゴールとなった。前半は2対1で折り返す。
後半開始から雨が激しくなってピッチは至る所で水浸しとなる。両チームともにピッチコンディションに苦戦を強いられる中、後半21分に川崎FのFWジュニーニョが右サイドでボールを持って角度の無いところからシュート。これがGK曽ヶ端の逆を突く形でネットに吸い込まれる。FWジュニーニョの頭脳的かつ巧妙なシュートで、川崎Fが3対1とリードを広げる。FWジュニーニョは13ゴール目。
しかし、後半の残り時間が約15分になったところで、試合が中断した。
■ まさかのノーゲーム①前半の途中から雨が降っていて、後半開始から豪雨の中での試合となった。時間が経つにつれてピッチの上にも水たまりが出来て、ドリブルやショートパスが不可能になった。両チームともにセーフティーファーストでロングボールを蹴り出すことが主になった。
そんな中で、後半30分過ぎの段階で岡田主審とマッチコミッショナーは試合中断の判断。しばらく様子を見ることになった。が、結局、30分ほど様子を見たが、雨が止むことはなくノーゲームの判定。3対1と2点をリードしていた川崎Fにとっては、納得の出来ない結末となった。
■ まさかのノーゲーム②Jリーグのルールでは、「試合が成立しなかった場合は中断した時点から試合を再開するのではなく、後日、改めて、0対0の状態から90分の試合をスタートさせる。」となっている。2007年にはサガン鳥栖と湘南ベルマーレの試合が雷で中断し、後半の再開が不可能となったことがあったが、これもノーゲームとなって、日を改めて0対0の状況からスタートした。そのときは、湘南が前半に1点をリードしていが無効となって、結局、再試合は鳥栖が勝利。やや後味の悪いものになった。
よりによって首位攻防戦で起きた出来事。しかも、2位の川崎Fが2点リードと絶対的に有利な状況での試合の中断とノーゲームの判断。これは、今後、大きな問題になるのは間違いない。
2007年の鳥栖スタジアムでの試合のときは、雷が鳴っていて危険だということで試合の再開を断念した。ただ、今回、鹿島スタジアム周辺にも雷注意報が出ているが、注意報のレベルであり、試合運営者が判断を誤ってしまった感は否めない。
■ まさかのノーゲーム③試合を中断した時点でピッチ上はすでに最悪の状態であった。雨はやむ気配はなく、ピッチが回復する見込みはほとんどなかった。中断すれば、さらにピッチ状況が悪くなる事は明確であり、残りはロスタイムを含めても20分ほど。明らかに試合を続行すべきだったと思う。判断ミスと言わざるを得ない。
川崎Fのサポーターも鹿島スタジアムに多く駆けつけていたというが、鹿島スタジアムは交通の便が悪いところなので、あまり中断時間を延ばすことも出来ず、早急な判断が求められたため、ゆっくりと空模様を見ながら判断することも出来なかった。
これにはルール改正も必要だろう。各国によって事情は異なるようで、試合途中から再開するリーグもある。「試合が成立しなかった場合は全てノーゲーム」というルールであると、本当に試合を中断させなくてはならないような状況に陥った時に、その判断が鈍る可能性もある。
■ まさかのノーゲーム④ACL、ナビスコ、リーグ戦、天皇杯と4つのタイトル獲得の可能性を残す川崎Fは全てのタイトル獲得が可能という幸せな状況であるが、それゆえに過密日程になることが確実。今後、さらに、この試合の再試合が日程に組み込まれるということになると、とんでもない日程になることは確実である。
ノーゲームが決定した後、素晴らしい2ゴールを挙げたものの取り消しになってしまったFW鄭大世がピッチの上で座り込んでしまった様子が映されていたが、その悔しい気持ちは良く分かる。川崎Fとしては気迫を前面に押し出した素晴らしい戦いをしていただけに残念であるが、何としても、もう一度、気持ちを切り替えて、再戦の場でもいいサッカーを見せて王者から勝利を勝ち取ることを期待したい。
■ 初出場の薗田怪我人続出とDF井川の出場停止の影響でセンターバックが手薄になった川崎Fは20歳のDF薗田をスタメンで抜擢。序盤は鹿島の2トップのスピードに苦しんだが、次第に落ち着いた対応を見せるようになった。
勝たなければならない首位攻防戦がデビュー戦という難しい状況であったが、無難に守備をこなし、2点目のFW鄭大世のゴールにつながるCKも獲得。怪我のため後半19分に退いたが、合格点のデビュー戦となった。
残念ながら、記録上は無かったことになってしまったが、この経験は若いDFにとっては大きなものになるだろう。
■ レナチーニョの変化川崎Fの選手は総じて出来が良かったが、特に、FWレナチーニョのプレーが印象に残った。チームに加入して約1年が経過し、アタッカーとしての才能にあふれているということは良く分かるが、セルフィッシュな面があって、それほどチームに貢献できているわけではない。ここ最近はスタメンをMF山岸に譲るケースも多くなっていて、ベンチスタートが増えているが、いい感じでプレースタイルが変化しているように感じる。
チームにはFWジュニーニョという最高のお手本がいるが、そのFWジュニーニョの影響を受けているのか、自らが仕掛けていくことと味方を使うことのバランスが非常に良くなっていて、判断が的確になっている。もともと、才能のある選手であるが、チームメイトを生かすようなプレーが出来るようになると鬼に金棒である。
しんどい戦いが続く中で、MFレナチーニョの変化の兆しは非常に明るいものである。
■ それにしても中村憲剛FW鄭大世の2ゴールをアシストしたのがMF中村憲剛。欧州遠征でも2試合連続でスタメン。日本に帰って来たばかりでベンチスタートも予想されていたが、素晴らしいファイティングスピリットでチームをリードした。
1点目のシーンで激しいチェイスでMF野沢からボールを奪ったプレーは圧巻。鹿島のMF小笠原との対決が注目されていたが、この日は明らかにMF中村憲剛が上であった。
昨シーズンまでもリーグトップクラスのプレーメーカーであったが、昨シーズンと比べても、攻守ともにレベルアップしているように感じる。もはや、日本代表の中でも必要不可欠である。
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